※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#42

「ルイーゼ・ヴィクトリーヌ・エリナ・ビルギット・フォン・ゾンネンアウフガング=ユーベル。あなたの外面の良さと高い交渉能力を見込んで、あなたの姉であるエルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン・フォン・ゾンネンアウフガング=ユーベルが命じます」

「はいエルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン殿下、何なりとお命じください」

「RBSへの手続き、お父様並びに私たちの親戚への根回しは、あなたがやってほしいの。ネマニッチ家に関することは、私がやります。お願いできますね?」

「はい殿下、全力を尽くします」

「それでは、お願いね」

私はそう返事をすると、妹のてのひらに優しくキスをした。

「ねえルイーゼ、私にとってはあなたもオルガも、かけがえのない存在なのよ。だから今日みたいなゴタゴタは、なるだけ控えてほしいの」

その言葉を聞いたルイーゼは、申し訳なさそうな表情を浮かべ、静かに首を縦に振った。

 

それから10日後、必要な手続きを済ませたオルガが、私の屋敷にやってきた。

「エルヴィラ・ジャンヌ・マリナ・カーリン・フォン・ゾンネンアウフガング=ユーベル皇女殿下、ルイーゼ・ヴィクトリーヌ・エリナ・ビルギット・フォン・ゾンネンアウフガング=ユーベル皇女殿下、皇女というにはあまりにもふつつかであるであるオルガ・エリザベータ・リイナ・キャスリーン・デア・ラドスラヴ=ネマニッチを受け入れてくださり、どうもありがとうございます」

感謝の言葉を口にするオルガの目には、うっすらと涙が浮かんでいたは気のせいか。

その様子を見ていたルイーゼは、まだなにか不満があるのか、ぷいっと横を向いていた。それを見たオルガも、露骨にルイーゼをにらみつける。

そんな二人の様子を見た私は、素早く二人を手招きすると、てのひらを思い切りひねりあげた。二人の口からは「痛っ! 」「げっ! 」という声が漏れる。

「私の言いつけを、もう破る気なの? 」

私がにらみつけると、二人は「ごめんなさい」という表情を浮かべ、しばらくの間黙り込んでいた。

オルガが私の屋敷にやってきてからというもの、私は彼女が私の屋敷の雰囲気に馴染めるよう、いろいろと気を遣った。もちろん、オルガがルイーゼや私、そして私付きの侍従・女官と衝突を繰り返すというのは想定内である。

案の定、オルガは私付きの侍従・女官と些細なことでケンカをしてはヒステリーを起こす、ということを繰り返した。しかしそれは彼らにとっては重々承知の上で、オルガの不平不満に丁寧に耳を傾けながら、彼女に皇女としてのあるべき姿を、一から根気よく仕込んでいった。そしてオルガ一緒に生活していくうちに、彼女への対処法を地道に学んでいった。

そしてそんなある日、意外なところから彼女の理解者が現れた。

所用で私の屋敷を訪れたアダルベルト枢密院副書記官長(当時)が、用件を終えた後に屋敷の応接室で、私とオルガ3人でお茶を飲んだ。彼はオルガと向き合うと、この屋敷での生活について尋ねた。

彼女は私の心遣いに謝意のを述べつつも、事あるごとにルイーゼと衝突しており、そのたびに私や屋敷の人たちに申し訳ないと思っていると、その胸中を明かした。職員たちにはいろいろとよくしてもらっているが、自分の育った環境の影響で、今まで自分が粗雑に扱われていたこと、そして自分の犯してきた罪のために、彼らの親切をどこまで信じたらいいのかわからないといった。

「君の過去の行状と罪は消せない。しかしここの屋敷の人たちが君を受け入れたということは、君自身が知らない長所を認めたからこそ、君を引き取ってもいいと申し出てのだよ。だから君は、この屋敷の人たちをもっと信頼しなさい」

オルガはハイわかりました、といいつつもこう言った。

「でも、表面で優しくしていながら、陰で私の悪口を言ってるんじゃないか? という疑念がいつも頭の中をまとわりついて離れません。表面ではニコニコしているけど、ワタシのいないところでは、ひそひそと陰口を叩いているんじゃないかな、って……」

「少なくても私は、あなたのいないところであなたの悪口を言ったことはないわよ」

私は、彼女の発言に色をなして反論した。

「そりゃ、私みたいな人間を引き取ってくれるんだから、あなたがそんな子ではないことは私もわかってるわ。 でもそのほかの人たちは、どうしても信頼できない」

そう答えるオルガの視線は、私ではなく下に向けていた。その様子を見ていたアダルベルト副書記官長は静かに首を横に振り、私は口を真一文字に結んだ。

幼少時に受けた虐待の影響で、オルガは今も対人関係で苦しんでいる。感情の起伏が大きく、些細なことで激高するため、彼女をよく思っていない人は多い。だが本来のオルガの性格は、神経質で寂しがり屋である。

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