※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#47

それからのオルガは、立ち振る舞いも言動も以前と比べておとなしくなった。

だが習慣とは怖ろしいもので、そう簡単に悪癖が直るわけではない。ちょっと気を許すと、彼女はとたんに調子に乗っては、屋敷の侍従・女官に迷惑をかけ、私はそのたびに彼女を叱りつけた。

私はオルガの育った環境を知っているから、彼女がこんな性格になるのもむべなるかなと思う。私が小さい頃に育った環境も、オルガと似たり寄ったりだったから、彼女が愚痴をこぼす気持ちもわかる。

しかし私の場合は、周囲から爪弾きされても、周囲に八つ当たりした記憶はない。自分がイヤな目に遭ったら、一人でウジウジ抱え込まず、信頼に値する友だちを見つけて、彼ら彼女達にいろいろ話し合っているうちに、いつの間にか仲良くなっていた、ということが多かった。

でも、オルガはそれができなかった。家庭でも学校でもいじめの対象になり、彼女を積極的に庇ってくれる友だちはできなかった。

それでも彼女はまわりの雰囲気に溶け込もうと、自分なりに努力していた。だが彼女の願いは、真っ当な人たちには受け入れられることはなかった。それが後々、取り返しのつかない汚点になることになるのだが……。

やっと心の底から出会える人たちに巡り会えたと思っていたら、実はとんでもないワルだった。彼らなら、自分を受け入れてくれるのだろうと思っていた。しかし不祥事が起きた後、彼らは蜘蛛の子を散らすように、彼女の前から姿を消した。「友だち」と思っていた人たちから見捨てられることほど、惨めなことはない。心身とも打ちのめされたオルガは、しばらく正体無い状態で過ごた。そんな彼女を見た私は、彼女から笑顔を取り戻すのだと、硬く心に誓った。

幸いなことに、 私付きの侍従・女官は、以前からオルガの生育環境について、同情的な見方をする人間が多かった。そのことが、私やオルガにとって、どんなによかったかわからない。屋敷の侍従と女官は、オルガに対し穏やかな言い回しと振る舞いをすることを心がけた。彼らの心遣いがオルガにもわかったのだろう。気がつくと、彼女は私の屋敷の雰囲気に、すんなりと溶け込んでいた。侍従や女官に懐くようになり、学校でも人が変わったように笑顔を見せるようになった。あまりの変わりっぷりに、どちらがオルガの本当の性格なのかと、級友たちの話題になったほどである。

やがてオルガは、料理に興味を持つようになる。私付きの女官には料理好きが多く、彼女がそうなったのは自然なことだったのかも知れない。それがきっかけで「食育」に興味を持つようになった彼女は、人が変わったように勉強に打ち込み、宮廷行政学院の栄養学科管理栄養士専攻に合格した。

管理栄養士専攻の学生は忙しい。授業だの実習だの研究だので、月曜から土曜日までびっしり授業が組まれている。最終学年になると、学内で夜を明かすことも多かった。

大変じゃないかと私が尋ねると

「やりたいことが見つかって、それに打ち込んでいるのだから平気だよ。高等部時代の私だったら、絶対に耐えられなかったと思う。だからあなたには感謝しているの」

と答えたオルガの表情は、あの騒動の頃とは別人のように生き生きとしていた。

休日のたびに、彼女は

「今週は、こんな料理を作ってみたんだ」

といっては、学校の調理実習などで披露した料理を、侍従・女官に振る舞う彼女を見て、ああこの子はやっとここまで立ち直ったんだなと、私は感慨深げに思ったものだ。

しかし、大人になっても治らないところもある。些細なことで、ルイーゼや私の友人たちともめ事を起こすのはまだ我慢できるが、男癖の悪さ、時折でるあらっぽい口調がなおる気配はなく、それは私にとって気がかりなことの一つだった。遠回しにそのことを注意しても、私は大人なんだから、やかましくいうのはやめてくれない? と反撃されるのもしょっちゅうだった。

それでもかつての不良仲間とは縁を切り、大学の同級生とうまくやっている姿を見て、彼女はだいぶ印象が変わった、と思いたいんだけどね……。

 

「ねえマリナ、さっきからなに黙りこくっているんだ? 」

オルガから声をかけられ、私はハッと正気に戻った。

どうやらデザートを食べながら、かつてのオルガを思い出していたのを不審がられたようだ。

「ううん……何でもない」

苦笑しながら、私はオルガに返答した。

「なんでもないって……お前、本当にへんなヤツだなあ」

憮然たる表情を浮かべながら、オルガが私に応じる。

「オルガ……あなた、だいぶ変わったなぁ……って」

視線をオルガに向けながら、私は呟いた。

「そりゃそうさ。エルヴィラ達と一緒に過ごすようになって、何年経つと思っている?一つ間違えれば、私は即ホームレス確定だから、放り出されまいと必死だったんだよ」

 

 

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