※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#48

それを聞いて、私は思わず苦笑した。

「オイ、なにを笑っているんだよ」オルガが突っかかる。

「そうよね、あなたは『ここから追い出されたくない』一心で、必死になって『いい子』を演じていたんだよね。それがおかしくってさ」

「当然じゃん。まさかお前の口から、ああいうセリフがでるなんて想像だにしていなかったよ。「普段気弱そうに振る舞っている人間ほど、本気で怒らせたらなにをしでかされるかわからない』、って、正直怖かった。あんな目に遭ったら、私だって必死になっていい子になりたいと思うさ」

ゆっくりと頭を振りながら、オルガはいった。

「マリナ、お前に救ってもらって、私は嬉しかったよ。手厳しいことをいわれることも多いけど、お前は本気で私のことを心配してくれているってわかった。それがどんなに心強かったことか……」

彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「他人に話しかけられて『それは社交辞令でしょ?』と突っかかることも、以前より減ったようだしね」

「それなんだがな」ぼそっとした調子で、オルガが言葉を続ける。

「あなたも知っての通り、私ってばさ、あちこちから爪弾きされてきたから、他人に親切にされたり、優しくされても、それを素直に受け取れなかったんだよ。だからそうした時に、どう振る舞ったらいいのかわからなかった。感謝の念を示しているつもりが『礼儀知らず』と思われたりさ。

逆に優しい言葉をかけられて、それを真に受けたらさ、今度は『あの子、お世辞言っているのがわからないのね』だの『ちょっと調子に乗りすぎてない?』って、陰口を叩かれてさ。そんなことをしょっちゅう言われてごらんよ。精神的におかしくならない方が不思議だろうが」

そう言うオルガの顔には、この屋敷に来る以前のことは、何もかも忘れてしまいたいという表情が浮かんでいた。

「あなたがこの屋敷にやってきた時、本当は心配でしょうがなかったんだよ。この屋敷でうまくやっていけるのかなって。幸い、あなたはなんとか立ち直ってくれた」

そこまで私は言うと、ハ──ッと長いため息をついた後

「いろいろあったよね……」と、言葉を吐き出した。

「そうだよね、ここまでくるのにいろいろあったよね」ぽつりと、オルガが呟いた。

「ルイーゼのことをのぞけば、ね」

ルイーゼの名前を口に出した直後、オルガの顔はみるみる険しくなっていった。

オルガが私に屋敷にやってきてからも、妹は彼女を徹底的に無視したばかりか、自分付きの女官・侍従に対し、彼女の依頼には応じないようにいい渡した。もちろん彼ら彼女達も、そんなムチャクチャな命令を受け入れるわけがない。妹の悪巧みは彼らを通じて私に知られ、私は妹をきつく叱りつけた。

しかし、それでおとなしく諦める妹ではない。今度は学校内の自分の取り巻きに、オルガに関するあることないことを吹き込み、彼らを通じてオルガに関する根も葉も悪い噂を流した。オルガが睡眠薬を常用するようになったのは、そのことが原因だ。カウンセリングを受けても、睡眠薬の種類を変えても症状が改善せず、彼女の精神状態はずっと不安定なままだ。

「エルヴィラ、いい精神科のいい先生いないかな?」

私の顔を見るたびに、彼女はそう言ってこぼしていた。

オルガはイライラが募ると、呼吸音が荒くなる傾向がある。今もそうだ。気がつくと、彼女はデザートを含めて、料理を食べ終えていた。

しばしの間、私の部屋を重苦しい空気が支配する。

「だからね、私にとっては、あなたしか信じられない。なんだかんだ言いつつも、私のことを庇ってくれたのはあなただけだから」

オルガは真剣な面持ちで、私に視線を向けた。

「そう思ってくれるのは嬉しいのだけどさ」

私もデザートを食べ終わると、視線をオルガに向けた。

「公の場で他人と接する時は、もうちょっと丁寧な口調で話した方がいいと思うよ」

諭すような口調で、私はいった。

そのとたん、オルガはほおを膨らませると、そのままぷぃっと横を向いた。

「ほらほらほら、その癖はやめなさいと、私はさんざん口を酸っぱくしていって来たよね? わかっている? みっともない」

「……してんじゃん、丁寧な口調で話してんじゃん」

子どもっぽくダダをこねるオルガに、私はいらだちを覚えた。

「20歳過ぎのいい大人が、いつまでもそんなガキみたいなしゃべり方してるんじゃないの。それに言いたくないけど、あなたとルイーゼの諍いごとだって、半分以上はあなたにも非があるんですからね」

「……なによ? なんだかんだ言って、実の妹に肩入れするのね、あなたって」

「ルイーゼがこぼしていたわよ。オルガはいくつになっても、しょうもないことでダダをこねてくるし、口調はあらっぽいし、振る舞いはガキっぽいって」

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