※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#51

「私は小さい頃から『弱い人間は生き残れない』と両親に言われて育ってきた。それに、私は育ちが育ちだから、他人を容易に信頼できない性格だからな。そのことは、マリナだって知っているだろう? 」

苦しげに息を吐きながら、オルガが呟いた。

「とにかく、さ」私はオルガの発言を遮った。

「ご飯食べて、薬飲んで、横になろう」

「うん」オルガは、力なく頷いた。

今朝オルガが持ってきた朝食は、彼女が作ったのではなく、私付きの女官たちが作ったものだった。

「本当は、私が作りたかったんだがな……」

スプーンを口に運びながら、オルガが呟いた。今朝の朝食の味付けが違うのは、そのせいか。断っておくが、今朝の朝食を作った女官の腕が悪い、というわけではないから。

「ああそうだ、ルイーゼはどうしている?」

私がオルガに尋ねると、

「お姉様、リイナ、おはようございます」

そう言いながら、ルイーゼが部屋の中に入ってきた。

「ルイーゼ、起き上がって大丈夫? 」私が尋ねる。

「うん、幸いなことに、今回の症状はすぐに落ち着いたから。で、お姉様、具合はどう? 熱は下がった? 」

「うん、夕べよりはだいぶ楽になった……でも今度はオルガが……」

「どうしたって? 」

「熱で苦しんでいる。今朝体温を測ったら、体温が39度近くになっていて……」

それを聞いたオルガは、私に軽く肘鉄をした。よほどルイーゼに、自分が弱いところを知られたくないのだろう。

「見栄をはったってしょうがないでしょ?人様に『苦しい』『助けて』って言えるようになりなさいって、いつもお姉様から言われているでしょ? 」

ルイーゼは、冷ややかな口調でオルガに言葉をかける。

「私のことは放っておいてよ。あなたにとっては私みたいな『バカ皇女』より、お姉様の方が大事なんでしょ? 」

ムッとした口調で、オルガも言い返す。

「人が心配しているのに、その言い草はなに? 」

ルイーゼが発した声調には「普段仲が悪いのにもかかわらず、お姉様の手前心配しているのに、なんてことを言うの」という、憤りの感情がこもっていた。

「うっさいわね、あなたに心配されなくても、さっさとご飯を食べて薬飲んで寝るわよ。文句ある?」

このやりとりがきっかけで、二人は延々と口論を続けた。

私は、二人に気づかれないようにため息をつきながら、その様子を見つめていた。

二人の諍いはいつものことだが、少なくても病人の前でケンカをするのだけ早めてほしい。それにあなたたちも、具合が悪かったんじゃなかったっけ?「甘いものは別腹」とはよく言うけど、君たちは自分の体調に関係なくケンカしているでしょ?

頃合いを見た私は、この不毛な争いに終止符を打つべく、二人の目にとまるように、ポンポンと手を叩いた。

「はいはいはい、二人ともそこまで」

二人は、ばつの悪そうな表情で私の顔をうかがった。

「朝っぱらから、ギャーギャー騒ぐのはやめて。今の私は病人だし、あなたたちも具合が悪いんでしょ? 自分たちだって体調が悪いのに、病人の前でよくケンカできるわね。そんなエネルギーがあるんだから、明日にはピンピンしているよね? ああうらやましい。ねえ二人とも、そのエネルギーを私に分けてくださいな」

私はかなりいらだち気味に、二人に文句を言った。

今どんな状況なのか、二人もわかっているのだろう。黙ったまま、そのまま立ちすくんでいる。

「今さら二人に『仲良くして』なんてわがままは言わない。でもここは私の部屋で、夕べ私は、熱で苦しんでいたの。そんな姉に対し、あなた方は私のことそっちのけでくだらない口論をしていた。今私がどんな気分なのか、あなたがたにわかって? 」

さすがに、二人ともここで私に文句を言うのはまずいと思ったのだろう。

「お姉様、申し訳ありません」

「皇女殿下、少しは慎むよう努力します」

二人は口々にそう言いながら、私の掌に頬ずりした。

「わかっているのなら、もう少し大人になってね、二人とも」

二人はしおらしく「すいませんでした」といいながら頭を下げた。

その様子を見ながら、私はキャビネットの上にある食器を見て、今は食事中であることを思いだした。彼女達の起こしたゴタゴタで、料理はすっかり冷めてしまっている。

「ごめんね、マリナ。料理をまずくするようなことを言って」

ルイーゼもなにかいいたげだったが、それを必死に我慢していた。おそらくオルガに文句を言いたかったのだろうが、口にしたら今度こそただでは済むまいと思ったのだろう。

オルガもルイーゼの様子を見て、ムッとしたような表情を見せたが、おそらく自分が「居候」だと言うことを自覚したようで黙っていた。

私は視線を、ルイーゼの方に動かした。

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