※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#4

「ええそうですわ。両陛下も皇子も皇女も、皇族関係者はみな、四六時中監視されている。そう思って結構ですわ」

「そ、それじゃ、今この瞬間も……わ、私が殿下のお部屋に入ったことも……」

「筒抜けですわ。何もかも」素っ気なく、私は言葉を返す。

「侍従や女官は、スパイということになるじゃないですか」

「そういうことになりますわね。でもそれはお互い様ですから」

「酒の銘柄にほとんど関心がないこと、テーブルマナーの悪さはもちろん」

私はシャンパンを一口含めて、さらに言葉を続ける。

「アナタの女性関係とその性癖、そして今晩ここで起こるであろう事はみんな……」

ここまで言うと私は口元を、彼の耳元に近づけ

「みーんな、みーんな、知られていると思った方がいいですわよ」

アントンの身体は、ブルブル震えている。

「他の皇族の屋敷でも、そんなことが行われているのですか?」

「それが、私たちの住む世界ですから」

「誰も信用できないじゃないですか」

「敵と味方を即座に識別できなければ、宮廷では生き残れませんわよ」

「いやな世界だ……」

ヤツはがっかりとうなだれると、シャンパングラスを持ったまま、テーブルの上に突っ伏した。

「あら、こんなのは序の口ですわよ。ありもしないことをでっち上げられ、下手を打てば命を奪われる危険性もある」

そこまで言うと、私はグラスに残っていたシャンパンを飲み干した。

「それが、これからアナタが関わろうとしている世界の実態ですわ」

アントンは突っ伏したまま「うう」とうめいている。

フン、小心者と、私は彼をにらみつける。

「それでも、あなたは『女帝の夫』となることを望むのですか?」

「女帝の夫……」

彼はそういうと、頭をテーブルから起こした。そして

「ハハ、ハハハハハハ」

と、けたたましい笑い声を上げた。

「ビジネスの世界と、似たようなものじゃないか!」

へえ、と私は呟いた。

「我々の業界も、食うか食われるかの世界だ!しかし、我々はそんな世界でもしぶとく生き残ってきた!」

(だからなんなのさ)と、私は心の中でツッコミを入れる。

ヤツは、残っていたシャンパンを一気に飲み干した。そして視線を私に向けた。

「帝室の威光が我が一族の事業拡大に役に立つのなら、こんな嬉しいことはない。僕は、キミの夫に相応しいということを、これから証明してみせる!」

「そこまで言うのでしたら」私は冷ややかな口調で言った。

「あなたには、いろいろと直してもらうところが多いですね。というか、そればかり」

「わかったよ。僕はいろんな意味で、至らないところが多い人間だ。いや、多すぎるといっていい」

「そこまでわかっているのでしたら、早速実行してもらいましょうか?」

「ああ、早速そうするよ。それで、どこから手をつければいいだろうか?」

「そうねえ」

アタシは、小首をかしげながらいった。

「もう夜も遅いことだし……とりあえずは、シャンパンについてのマナーから学んでいただきましょうか?」

そう言うと、私はテーブルから立ち上がり、ワインセラーから1本のワインボトルを取り出した。それをテーブルの上に置き、栓を抜く。

「お願いします」

彼はシャンパングラスを手に取ると、それを私に差し出した。

「ほら、さっそく間違っている。そうじゃないでしょ?」

「え?」

と、ヤツはキョトンと表情を浮かべた。

私は、ため息をついた。

こんな粗忽者が、将来の夫? 笑わせないで。

「シャンパンをつがれる時は、グラスをテーブルに置くの」

しまったという表情で、彼はグラスをテーブルに置いた。

私はシャンパンをヤツのグラスに注ぐと、すぐさま持っていたシャンパンを、自分用のグラスに注ぐ。

アタシは身に纏うバスタオルを整えると、アントンの目を見据えて

「はい、シャンパングラスはこう持つの」

といって、正しいグラスの持ち方を実演して見せた。

「今晩みたいな正式な食事会では、グラスの持ち方で人となりを判断されるから、気をつけるのよ」

「ああ、わかったよ」

とヤツは返事をしたが、すぐさま小声で

「くそ、うっせぇな」

と呟くのを、私は聞き逃さなかった。

「はぁ? いまなんかいった?」

「いいや、なにもいっていない」

と言い返すヤツの表情は、明らかに挙動不振者のそれだ。

「いいや、いった」

「キミの空耳だろ?」

ヤツはどうしても、悪態をついたことを認めたくないらしい。

「ふーん、だったらそれはそれとして」

というなり、私はシャンパンをグラスの半分ほど飲み下した。

「オイ、ひどいじゃないか。乾杯なしで、自分だけ美味しそうに飲むなんて」

彼は抗議するが、私はそれを無視して残りの半分を一気に飲み干す。

 

 

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