むろん、これはお義理だ。
すると彼は、アタシが本当にキモチよくなってきたと思ったようだ。調子に乗って
「ウッ! ウッ! ウッ! ウッ!」
とかなんとか、珍妙な声を出し始めた。
どうも彼は、本当にアタシに歓んで欲しいようだ。そう思ったアタシは、ちょっとだけ彼にお付き合いをしてあげることにした。
彼の動きに合わせて、アタシは腰を動かす。
背中を愛撫していた両手を、ゆっくりと腰に移動する。
するとどうだろう、彼の口からは
「ホッ! ホッ!ホッ!ホッ!」
という、間抜けが声が出てきた。
ああ、おっかしい。
こっちはちっともキモチよくならないのに、あっちはそれにちっとも気づいていない。
心中に湧いてくる嘲笑が表に出ないように、アタシは彼ににっこりと微笑む。
彼は汗まみれになりながら、必死になってアタシの深い部分を突いていくるんだけどさ、それがもう見当外れなところばかり。コイツ、本当にオンナのことわかっているのかな? この程度の男がアタシの将来の夫? ふざけないでよ!
テキトーに私の中をついてかき回したヤツは、一度自分のモノを抜いた。
「バックでいいかな?」
なに、この強引な場面転換は。
自分さえキモチよくなれば、女性の気持ちははどうでもいいってこと?
腸が煮え来るを我慢しながら、アタシはベッドから立ち上がった。
両手をベッドにつき、お尻をヤツの目の前に突き出すと、アタシはヤツのいる方向に視線を向けた。
手で髪を触って挑発し、中に入るよう促す。
ヤツはそれを見ると頷き、思い切りよく入ると、何度もアタシのカラダを突き、かき回すことを繰り返した。
だがそれでも彼の貧相なイチモツは、アタシに快楽を与えられず、腰の動きも単調でアイディアに乏しかった。乳房も愛撫していたが、それはただ強く揉みしだけばいいという感じで、私が望む世界にはほど遠い。
それでも 彼は、アタシが絶頂に達すると思っていたのだろう。
「出すよ」
というと、自分のエネルギーをアタシの中にぶちまけた。
「アアッ……」
アタシは半ばやけくそ気味に声を出すと、彼は満足したのか
「フ──ッ」
と、長く息を吐いた。
彼のモノが私から抜かれるのを確認したアタシは、くるんとひっくり返り、ベッドのそばにあったキャビネットに置かれているティッシュを手にり、自分の局部を丁寧に拭うと、さっきまでカラダに巻いていたバスタオルを纏った。
ベッドの上に座ると、アントンの腕を掴んで、隣に座るよう促す。
「ねえ、あんたさ……」
アタシは怒りをかみ殺した声で、彼に話しかける。
「な、な、なんだよいったい。そんなおっかない顔しちゃてさ」
ヤツはアタシの隣に座りながら、恐る恐るといった視線を向けてきた。
その股間には、アタシとヤツの愛液がべっとりついたままなのを、アタシが見逃すはずがなかった。もちろん、ヤツは素っ裸のままだ。
「ちょっと、いったいなにを考えているの! それをつけたまま、ベッドに座らないで! 毛布が汚れるでしょ!」
「ああ、ごめんよ」といった彼の表情は「いちいち騒ぎ立てんなよ」という表情が垣間見えた。
「ここはアタシの部屋なんですからね!それに一度肌を合わせたくらいで、女心を支配できたと思ったら大間違いだから!」
「そんなのわかってるよ。僕だって子どもじゃない」
文句を言いながら、ヤツはテッシュで、自分の局部についた愛液を拭いた。
「バスローブを着なさいよ。部屋の主人がバスタオルを羽織っているのだから、これは礼儀ってもんでしょ」
ヤツは口元でゴショゴショいいながら、バスローブを羽織った。
「女性は、そういうところもちゃんと見ているんだからね。それにあなた今まで、こんなセックスをしてきたの?」
「セックスってそんなモノだろ?」横目で睨みながら、ヤツは言い返した。
「手抜きの愛撫をして、女性の意思や感情を無視して中に入り、テキトーに引っかき回して、自分がキモチよくなったら一方的に射精する。それのどこがセックスなのよ!」
「じゃあ聞くけど」 ヤツは、明らかに不満げに返してきた。
「君がいう『セックス』というのを教えてもらおうか?」
「いい、セックスというのは……」
なんでここで、セックスについての講釈をしなければならないのか? アタシは頭がクラクラしてきた。
「たまっている欲求を晴らすか、子どもを作るためのモノだろ?」
「それだけ?」
「違うのか?」
コイツは、なんといういびつなセックス観の持ち主なのか?
「じゃあ言うけど、あなたは女性のどこに引かれるの?」
「顔とカラダ。でもどちらかと言えばカラダかな」
「性格はどうなの? 頭の良さは重視しないわけ?」
「僕に従順であればそれでいいよ」