※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#5

先ほど私は、国内の格差問題について触れた。だがそれは市民だけではない。私たち皇族も、その問題は避けて通れない。

我が国は400年以上の歴史があり、現在の皇帝はゾンネンアウフガング家出身だ。しかしずっと同家から皇帝が出ていたわけではなく、建国以来皇帝を輩出している家門は10家ほどある。言い換えれば我が国は、建国以来国内の有力貴族間で、皇帝の座を回しているといったら理解できるだろうか。もちろん平和裏に皇帝を輩出する家門が変わったわけではなく、裏でドロドロの暗闘劇が繰り広げられた。上院には皇帝に対する弾劾権があるため、過去には弾劾を受けて玉座から追放された皇帝も複数いる。もちろん弾劾された皇帝が「ハイわかりました」と玉座を降りるわけがなく、もめたあげくあわや内戦か?というケースになったこともある。当然その家門は、その後の処遇でとことん冷遇され没落した。そして皇帝を輩出した家門が多数出たことで出てきた問題が、皇族間の格差問題である。

我が国の皇族は2種類に分かれる。歴代皇帝の直系男系子孫が「直系皇族」といわれる人たちで、それ以外の皇族は「傍系皇族」と呼ばれる。同じ「皇族」といっても、その扱いは天と地ほど違う。直系と傍系が同格なのは護衛につく警官・兵士だけで、外出時の随員の数は言うに及ばず、公式行事の席次も、下座に近い位置に席がある事が多い。

だが一番の違いは、公職に就けるかどうかである。基本傍系皇族は、皇帝になる資格がない。それどころか宮廷内の官職でも、高い官職に就ける可能性は低いのが現状だ。

この問題をややこしくしているもう一つの原因が、「家格」といわれる称号である。皇族と貴族は爵位を持つが、それは領土の大きさだけを示すものにすぎない。これに対して「家格」は、歴代当主並びにその一族が就いた公職に由来する。家格は全部で8種類あるが、私の出身家であるゾンネンアウフガング家は、数多くの政府高官を輩出してきた家柄なので「プロコンスル」という称号を持つ。ところがオルガの実家ネマネッチ家は傍系皇族で、おまけに大公という爵位を持ちながらも、これといった実績のない家柄であるため、家格を与えられていない。傍系とはいえ皇族で家格のない家はほとんどないため、彼女の一族は、いつも肩身の狭い思いをしている。

そのことだけでも精神的なストレスなのに、オルガ自身「妾腹の子」である事に劣等感を抱いている。彼女がぐれていたのも、庶子である事をみんなにバカにされ、いじめられていたのが原因だった。あまりの荒れっぷりに実家を勘当同然の形で追い出され、誰も引き取り手がなかった彼女を見かねた私が引き取り、10年近く前から一緒に暮らしている。

私と一緒に暮らすようになって、オルガは以前よりも精神的に落ち着いてきた。だが子ども時代から受けてきた精神的な傷は大きく、成人した現在も定期的にカウンセリングを受けている。だがその効果ははかばかしくなく、当人もストレスがたまるとイライラを爆発させる。寝るときも、睡眠薬を使わないと寝付けない。これまでに、薬も何回も変えている。

そんな彼女の性格を十分知っていたはずなのに・・・ああ、またやっちゃったなぁ・・・

「アンタね」

「オルガは、顔を真っ赤にして私に迫ってくる。

「私がそういうことに触れるのを嫌がるのを知っているよね?なのに、なんで私の前でこの話題を持ち出すわけ?ケンカ売ってるの?」

ねぇねぇねぇと、彼女は執拗に私に絡んでくる。

「私と一緒に暮らしているのは、貴族社会から『あの子はいい子だ』と思われたいからなんでしょ?自分の評価を高めるために、私をダシに使っているんでしょ?ねえそうでしょ?」

こういう状態のオルガは、本当に手に負えない。いつもは放っておくのだが、今日はこれから枢密院と上院の質疑がある。このままだと遅刻してしまう。

その時、ルイーゼがパチンと両手を叩いた。

「いい加減にしてよ!いい年こいてダダをこねてみっともない!」

だが、自分の出自をバカにされたと思っているオルガは、ルイーゼにも突っかかる。

「みっともない?原因を作ったのはこのバカ皇女よ!」

顔色はますます赤くなり、眉もつり上がった上に、目も据わっている。

「拾われた仔猫の分際で、ご主人様にかみつくとはいい度胸ね。この恩知らず!」

「なんですって!?もういっぺんいってみろオイコラ!」

激高したオルガは、ルイーゼに詰め寄り、あらん限りの罵声を言い放つ。ルイーゼも、負けずと言い返す。ダイニングは、あっという間に混乱状態に陥った。私は2人を引き離そうとしたが、2人は頭に血が上ったままだ。

「引っ込んでろバカ皇女!」

「お姉様が甘いからこうなるのよ!」

だがその直後、2人の間にサーベルが現れた。同時に

「いい大人が何をやっている!やめろ!」

という、キャサリンの怒声が響いた。

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