※この作品はR-18です。

Naked Desire〜姫君たちの野望   作:右野向左衛門

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#17

「そうやって、居丈高にいうのはやめてもらえないかな?」

アントンは、偉そうなな口調でアタシに食ってかかる。

しかし、この部屋の主人はアタシなのだということを、このオトコはまったく理解していないようだ。その気になれば、突然死に見せかけて、毒を盛ってアンタを消すことも造作ないのよ、といいたいのをこらえて、アタシも負けずに言い返した。

「怒鳴るのは勝手だけどさ、こっちだって頭にきているのよ。夜分遅くに客人にテーブルをドンと強く叩かれ、それを聞きつけた私付きの女官が、主人の部屋でなにが起きたのかを確認しにきた。それが女官の仕事だからね。とはいえこちらとしては、そのことが彼女達に知られてはまずい訳よ。おまけに、二人ともこんな格好でしょ? さっきアタシの部屋にきた女官は、二人は痴話喧嘩をしていたと思っているわ。ねえ、さっきもいったわよね。アナタがこの部屋にやってきてからの出来事は、全て侍従・女官に監視されているんだって」

一気にまくし立てたアタシは、椅子に座ったまま安酒のボトルを掴むと、それをグラス一杯にに注いだ。

次から次へと湧き上がる感情を抑えられなかったアタシは、安酒を一気に飲み干すと、わざと「ドン!」と音を立てて、グラスをテーブルの上に置いた。

アタシが機嫌が悪いことを悟ったのか、アントンはすっかり意気消沈といった体で、椅子にもたれかかっている。こういうときこそ、しゃんとした姿を見せて欲しいのに、なんと情けない居住まいをしているのか。

「待ってくれ、じゃあ、ベッドでのやりとりも全て記録されているということか?」

言い訳じみた言葉を発するヤツの額には、うっすら汗が浮かんでいる。

「今晩この部屋で起こったことは、両陛下に知らされているだけではないわ。我が国にある複数の情報機関でも共有されるはずよ」

「じゃあ……じゃあ……僕はこれからいったいどうなるんだ……」

ヤツは目を泳がせてオロオロしながら、小声で呟いた。

もしアントンがアタシの立場だったら、大勢の味方がいる前で「正しいのは俺だ!」といわんばかりに、尊大に振る舞うのは、先ほどまでの言動からも明らかだ。そしてネチネチと嫌みを浴びせ、相手を精神的に追い込むに違いない。

だがここは、アタシの部屋だ。それだけでも己の振る舞いには細心の注意を払わなくてはいけないのに、このオトコにはそういう細心さがかけらもなかった。

自分の振るまいが取り返しのつかない事態になるということを、彼はようやく認識したようだが、遅すぎる。ここまで愚鈍なオトコを、アタシは見たことがない。

蛇に睨まれた蛙のように怯えているアントンをみながら、アタシは先ほど女官がきた時、コイツにレイプされたといえばよかったという後悔の念が、ムクムクと頭の中に湧いてきた。

深夜皇太孫が、自室で花婿候補といわれる男性に強姦された。

皇太孫の部屋から大きな音がしたので、女官が強引に部屋に入ったら、部屋の中で皇太孫が、裸同然の格好で突っ立っていた。察しのいい女官だったら、どう見ても「皇太孫がレイプされた」と思うだろう。

この件がもみ消される可能性もある? それはアタシも考えた。何しろヤツの実家は、我が国はもちろん、世界の食糧流通を牛耳る企業なのだ。その気になれば、あれやこれやと理由をつけて、王室を揺さぶることだって、彼らは平気でやるだろう。

しかし、アタシと女官が結託して「レイプされた」と国王陛下に訴えれば、いったいどうなるか? それを考えただけでも、アタシの気持ちは重くなるのである。

アタシは被害者だから、事が露見した直後は世間から同情されるだろう。しかし同時に、国内メディアにとっては特大のネタである。彼らは、アタシの派手な男性関係について、あることないことを書き立てるだろう。国内の「保守」を標榜する皇族・貴族は、この機に乗じて「マルガレータを皇太子の座から追放し、別の皇族を皇太子にしろ」と騒ぎ立てるのは目に見えている。

私が皇太孫の座から追放されたら、その後には誰がつくのだろう?

常識的にみれば、アタシの後釜はエミリアだろう。

だが皇太孫が女性である事自体受け入れられない連中が、エミリアを皇太孫の座につけるとは思えない。例え彼女が守旧派の受けがよくても、だ。

彼らが皇太子の座につけようとしているのは、現皇帝の次男と三男。この二人はアタシの叔父だが、お互いの関係は最悪といっていい。どちらの叔父も男尊女卑思想の傾向が強い上、極右政党の関係者とも深いつながりを持つ。2人のどちらからが皇帝に即位したら、帝国は内乱状態になると、危惧する人も多い。

アタシの行動一つで、帝国は分裂する。

皇太孫としてそれだけは、なんとしても阻止しなくてはならない。

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