それは突然の事だった。
三門市に大量の門が開き、そこから大量のトリオン兵が現れた。
「門発生!数は38、39、40……依然増加中です!」
ボーダー本部の作戦司令室。本部長補佐の沢村響子の声が室内に響く。それによってその部屋にいる全員が息を呑む。この日が来るのはわかってはいたが、いざ来ると遂にか……っと思ってしまう。
「任務中の各隊へ通達!オペレーターの指示に従って展開、速やかにトリオン兵を殲滅せよ」
防衛の指揮官である忍田本部長は巨大なモニターを見上げ、出現したトリオン兵の動きを確認する。
トリオン兵達は三々五々、ありとあらゆる場所に散らばっていた。
「トリオン兵は本部基地から見て、西、北西、東、南、南西方面に分散して進軍中」
「分かれたか……」
忍田は厄介だと思った。ボーダー本部は警戒区域のど真ん中にあるので、敵に散らばられてしまえた場合、こちらも戦力を分散させて対応しなければならない。近界民の狙いが侵略の場合、トリオン兵に警戒区域を突破させる訳にはいかない。
しかし各個撃破では間に合わないので……
「現場の部隊を三手に分ける。東、南、南西方面の敵に当たれと伝えろ!」
忍田はそう指示を出した。
「さて、トリオン兵は5方向に別れさせたし、様子を見ますか」
アフトクラトルの遠征艇の中にて、遠征艇の主人のエドはそう呟く、
「んー、今のところ玄界の兵は来ないね」
「随分と遅いな。俺達は侵略より女だから早く来てくれよぉー」
愚痴るのはエドが信頼する部下のブラッドとロット。2人も他の4人同様に女を犯すのを重視している。
「まあ仕方ない。だが、女が出たら直ぐに動くぞ。脱出機能がないトリガーを持つ雛鳥や、男の親鳥が現れたらラービットで、女が出たら黒トリガーを使っても確実に拉致するぞ」
「「「「「了解」」」」」
エドの言葉に全員が同時に頷く。殆どのメンバーは基本的に面倒臭がりだが、女が関係すると目の色を変えてやる気を出すのがこの6人なのだ。
エドは空を飛ぶトリオン兵、バドから手に入る情報を見ると……
「へー、やるじゃんこいつら」
西と北西に放ったトリオン兵はたった2人の人間相手に押されている。片方はサングラスをかけた男、もう1人は人間離れした異形の姿をした何かだった。
「こいつらも拉致したらハイレインの旦那も喜びそうじゃね?」
ディーゴがエドにそう口にするがエドは首を横に振る。
「欲しいのは山々だが、止めておこう。リスクが高過ぎる」
特に異形の姿をした方。アレを捕まえるのは骨が折れそうだ。下手したらこっちからも犠牲者が出る可能性があるし。
そこまで考えていた時だった。
「おい旦那。見ろよ!旦那が気に入っている女子がいたぞ!」
「何っ?!」
ディーゴの言葉にエドは2人の強者が映るモニターから視線を外して、ディーゴの指差すモニターを見ると……
「マジか?!こんなに早く見つかったなんて運がいいなぁ!」
「しかもあの狙撃手、俺が気に入った幼女なんだよ!絶対に捕まえようぜ」
エドがラッドの記録を見た際に特に気に入った美しい女子が曲がる弾丸を駆使してバムスターを倒していた。見るとディーゴが気に入りそうな幼女もいて狙撃で援護していた。
「へー、かなりの美人っすね。エドさん。後で俺も犯して良いっすか?」
「却下だ。あいつは俺の物だ」
ロットのお願いに対してエドは即座に却下する。それを聞いた5人は少なからず驚いた。今までこのメンバーで何百人と拉致して犯したが、その際にエドが独り占めしたいと言った事があるのは今回を入れても3回しかないからだ。
その事から5人はエドが本気でモニターに映る少女ーーー那須玲を独り占めしたいと考えているのが簡単にわかった。
そしてエドが頑固である事を知っているロットは彼女を犯すのを諦めた。
「そっすか。んじゃ彼女達3人から拉致しますか?」
「だな。脱出されたら厄介だし速攻で行くぞ。ナイン、セベル。『卵の冠』と『窓の影』を用意しろ」
エドが欲望に塗れた表情でそう指示を出すと、ナインとセベルも同じような表情で頷いた。女を拉致する場合一切の躊躇いなく黒トリガーを使うのが彼らのやり方である。
「バイパー!」
那須隊隊長の那須玲はそう叫び変化弾を放つ。放たれた弾丸は目で追うのも困難な複雑極まる軌道を描き、トリオン兵の弱点を穿つ。それによってバムスターは地響きを立てて地面に倒れ伏す。
「お疲れ様、玲」
チームメイトの熊谷友子が玲を労うと玲は顔を綻ばせる。
「ありがとうくまちゃん。それよりここのトリオン兵は倒したし次の場所に……」
そこまで言った時だった。
ベキッ
バムスターの残骸から、不意に鈍い音が響いた。2人がバムスターを見ると、バムスターの厚い装甲の一部にヒビが入っている。そしてそのヒビは徐々に広がっていき……
「なに?こいつ?」
「新型……かしら?」
そこにいたのは初めて見るトリオン兵だった。大きさは3メートルと小さいが他のトリオン兵と違ってフォルムが比較的人間に近いトリオン兵だった。
同時に……
ブゥン
「門?!」
友子が叫ぶ中、新型トリオン兵の横に黒い門が開き、中から2人の人間が出てくる。そこから出てくる2人を見て玲と友子は絶句する。
「ひ、人型?!」
「しかも黒い角……黒トリガーが2人?!」
玲と友子が絶句する中、門から出てきた2人ーーーナインとセベルは口笛を吹く。
「ありゃこっちの情報バレちゃってるね」
「まあウチの国はデカイからな。それより急ごうぜ。あそこにいる美人さんと幼女狙撃手はエドさんとディーゴさんのお気に入りだからな」
美人さんと幼女狙撃手という言葉に玲と友子が反応しかける。しかしその前に……
「だな。んじゃ早速……『卵の冠』」
ナインがそう口にするとナインの手から卵のようなモノが現れて、そこから大量の鳥が生まれ、玲と友子に襲いかかる。
「アレは……!」
「玲、下がって?!シールド!」
言いながら友子が前に出てシールドを展開するが……
「無駄無駄」
ナインの言葉通りシールドは鳥に触れると同時にキューブとなって地面に落ちる。それが複数となればシールドなど役に立たずに破壊される。その光景に友子が驚く中、鳥が友子に触れると……
「かっ……!」
「くまちゃん?!」
言葉と共に友子は形を変えながら小さくなり、やがて手に収まる位の大きさのキューブとなった。
予想外の光景に玲が絶句していると…….
「ラービット」
ナインの言葉に新型が動き出し、腹を開けてキューブとなった友子を腹の中に入れた。
ガシャンという音がして腹が再度閉まるとナインとセベルは喜びを露わにする。
「よっしゃ巨乳女ゲットだぜ!」
「こいつについてはエドさんとディーゴさんは独り占め云々言ってなかったからな。4人で犯しまくろうぜ」
「おう!んじゃ処女は俺が貰うからな!」
その言葉を聞いた玲は友子が食われた事による衝撃から立ち直る。
「……で」
「あん?どうした美人ちゃん?」
ナインが震えている玲に話しかけると、玲は顔を上げて憤怒を露わにする。
「ふざけないで!くまちゃんを返して!バイパー!」
言うなり玲は両手から大量のバイパーを放つ。バイパーはありとあらゆる方向からナインとセベルに向かっていく。
「対する2人は……」
「セベル」
「はいよ」
セベルが頷くと2人の足元に黒い門が開き2人はその中に飲まれていく。そして門が閉じると同時にさっきまで2人がいた場所にバイパーが襲いかかり地面を穴だらけにする。
「空間を操るトリガー……!何処に……?!」
玲が辺りを見渡そうとした時だった。
『那須先輩後ろです!』
チームメイトの狙撃手の日浦茜から通信が入ったので振り向くと……
「遅い遅い」
視界には先の2人がいて、目の前には友子をキューブにした鳥が大量に……
「そ、ん……な」
その言葉を最後に玲も友子と同様にキューブとなって地面に転がった。同時にラービットが友子と同じように腹の中に入れた。
「良し。最後に幼女狙撃手を拉致って終わりだな」
「あいよ。あの幼女を手に入れたらディーゴさん喜びそう……おっと」
言いながらセベルは後ろに跳ぶ。同時にさっきまでセベルがいた場所を光が穿った。それを見たセベルは邪悪な笑みを浮かべながら再度『窓の影』を使う。狙撃手との距離は200メートル弱。マーキング無しでも届く範囲だ。
そして……
「ひいっ?!」
空間移動を使い、2人は怯えている狙撃手の真ん前に立ち……
「『卵の冠』」
ナインの手から鳥が生まれ茜に襲いかかる。
「や、やだ……!」
その言葉を最後に茜もキューブとなった。同時にナインとセベルははしゃぎだす。
「よっしゃ3人ゲットしたぜ!幸先良いな!」
「ああ。それより早くずらかるぞ。他の連中に捕まったら面倒だ」
セベルはそう言うとキューブとなった茜を持って遠征艇に繋がる門を開くので2人は門の中に入る。そして玲と友子を捕まえたラービットが門をくぐると門は閉まった。
それから2分後、那須隊オペレーターの支岐少夜子から救援要請を受けた他の部隊が来たが、そこには誰も居なかった。