異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
---モモンガ---
徹夜続きの仕事の最中に寝落ちした筈なのだが、知らない場所…いや、ゲームで見たことのある場所にいた。背広にネクタイ姿だったのだが、何故かTシャツにバミューダパンツ姿である。何が起きたんだ?
目の前にはゲーム画面のような窓がいくつか見える。マウスが無いのにどうやって操作するんだ?って、視点を移動するとポインターが追従しているようだ。どうやって、クリックするんだ?クリックと念じてみると、おぉぉぉぉ~、クリック出来た。
俺の名前はモモンガになっている。これは長きに渡ってプレイしているゲームで使っているキャラネームだ。そうなると、あの世界に転移したのか?はて?無敵に近いキャラだったのだが、レベルは1になっている。これはつらい…アイテムはなし…更につらいって…称号は何故かある。『魔王候補』『超越者』『不死の王』…なんか、ラスボス的な要素が満載である。ジョブは平民…なんだ、このギャップは…覚えている魔法は無い。スキルは『死者再生』だけあった。蘇生でなくて再生?もしかして、アンデッド兵は作れるのかな。戦う術が現状で、敵になりそうな物は作れないので、しばらく放置だな。
次に、全マップ探索をしてみた。『シガ帝国王都』とタブ上部に表示され、王都内のマップが表示された。マップ上に青い点が表示されて、『サトゥー』と表示されていた。これって、従兄弟の一郎か?本名は鈴木一郎なのだが、何故か『佐藤さん』と呼ばれてしまうってことで、ゲームでの名前を『サトゥー』にしたのだった。現状が分からない俺は、サトゥーの元へ向かうと…アイツも俺に向かって来ているみたいだ。青い点が俺に向かって近づいて来ている。
「サトルさん?」
一郎と思しきサトゥーが、声を掛けてきた。あぁ、俺の本名は鈴木悟である。で、一郎より少し歳上だったりする。なので、『さん』付け呼びである。
「一郎か?」
頷く一郎。
「ここはどこだ?」
一郎に訪ねた俺。
「どこのかのゲーム内の世界のようだよ。サトルさんって、もしかして、デスマーチな勤務して寝落ちしました?」
頷く俺。
「それですよ。俺も徹夜続きで、仕事場の机の下で寝たら、この世界にいました」
はぁ?まさか、過労死後の世界か?過労死したご褒美に、楽しいゲーム世界生活が出来るのか?
「この世界には、ヒカルもいましたよ」
ヒカルとは、一郎の幼なじみで、一郎の会社の後輩である高杯光子のニックネームである。たしか、激務の末失踪したとか…どこかで過労死していたのか…
「で、なんで、一郎はそんなに若い姿なんだ?」
15歳くらいに見える一郎。
「サトルさんも18歳くらいですよ…」
一郎から手鏡を貰い。自分の姿を見てみると…高校生時代の俺がいた。
「どういうことだ?」
「わからないんです。俺の知り合いが、謎に挑んでくれています。立ち話もなんですから、俺の家に来ませんか?」
一郎は、この世界が長いのか?家を持っているって…
「来てどの位だ?」
一郎とは没交渉ではないが、お互い激務で最近、連絡を取っていない。そう…ヒカルって子が失踪してからは、一郎からメールすら来ていない。
「まだ半年くらいかな?」
うん?彼女の失踪が半年前くらいじゃなかったっけ?
「あぁ、産まれ育った世界と時間の流れが違うんです。ヒカルなんか、もう数十年住んでいますから」
俺が怪訝な顔付きをしたのか、一郎が説明をしてくれた。暫く歩くと、大きな屋敷に着いた。
「ここが俺の家です」
表札には…読めない字…
しかし、メッセージウィンドウに、『シカ国語をマスターしました』と表示されると、読める様になっていた。新しい文化に触れると、マスター出来るのか?そうだと、便利だ。
「ペンドラゴン男爵邸?一郎…お前、男爵なのか?」
半年で男爵まで上り詰めたのか?
「まぁ、そんな感じです」
苦笑いする一郎。二人で門を潜り、屋敷の中に入った。広い…こんな家に住んでいるのか…
「独身か?」
「えぇ…」
「独身の男爵ともなると、見合い話が来るのでは?」
「好みなら受けますけど…それに、俺は隣に居を構えるミツクニ公爵の配下の男爵ですから…公爵が認め無いと結婚は出来ないんです」
一郎の表情は苦笑い気味だった。何か裏があるのか?って、ミツクニ?水戸黄門の配下なのか…
「ミツクニ公爵って言うのが、ヒカルなんですよ」
絶句する俺。TSしているのか?白い髭を生やして、越後のちりめん問屋の隠居をしていたり。
「あぁ、ミツクニ公爵っていっても、ヒカルは女性のまんまですよ。見た目は30代くらいです」
TSはしていないのか…
「じゃ、彼女と一緒になれば良いだろ?」
「彼女は主がいます」
「旦那が公爵なのか?」
いや、それなら公爵夫人と言うはずだな。
「ヒカルは主の眷属です。主自体は爵位が無いんですよ」
爵位を持っていない人物の下僕なのか…公爵なのに…それって、性の奴隷にされているのか…妄想しまくっている俺。
「まぁ、所謂性の奴隷ですよ。まったくアイツは、俺にも爵位を丸投げするし…」
アイツ?丸投げ?
「アイツって?」
「俺達の主でシュウってヤツです」
一郎の主でもあるのか…
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翌日、一郎とヒカルちゃんの主に会うことが出来た。見た目18歳程度の若造である。
「うん?モモンガだと…」
俺を見て何かを考えている一郎達の主。
「アインズ・ウール・ゴウンって知っているか?」
何で、それを知っているんだ?それは…
「なんで、『ユグドラシル』で作ったギルド名を知っているんだ?」
「そうか…あの世界は『ユグドラシル』と言うのか…」
え…なんで、彼女がいるんだ。ゲーム内で、ギルド仲間である弐式炎雷が作った、ナーベラル・ガンマが、アイツのメイドの中にいた。
「なんで…おい!なんでだ?」
目の前にいる理不尽そうな男に、掴み掛かろうとした俺。しかし、ナーベラルに投げ飛ばされた。
「主様に何をされるのですか?」
床に転がる俺。一郎が手を添えて、俺を立ち上がらせてくれた。
「主だと?お前の主は弐式炎雷だぞ!」
困惑しているナーベラル。
「サトゥー、モモンガに説明していないのか?ソイツが魔王化したら、サトゥーのせいだからな!」
魔王化?そうだ、俺はあのゲーム内では、死の支配者であるオーバーロードであったはずだ。なんで、俺の姿は、あの禍々しいアバターでは無いんだ?
「すまない。説明不足は認める。で、サトルさん…あぁ、モモンガの本名です。サトルさんのプレイしていた世界もあったのか?」
「あったよ。不死の支配者がいて、ナザリック地下大墳墓って場所でロストさせた」
何?ロストさせただと!怒りが込み上げていく俺。不死のネクロマンサーだぞ!死ぬ訳ないだろ!!
「そうか、ロストさせたことで、別の世界の日本から、再度召喚されたのか」
召喚…誰に?
「サトゥー、説明責任はお前にある。もう少し理解してから、話し合おう。次も刃向かったら命の保証は出来ないぞ」
俺の命か…コイツは何様だ!
「あぁ、すまない」
一郎はアイツの言葉を受け入れている。どうしてだ?俺は、一郎に連れられて、一郎の家に戻った。
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「アイツ自体は優しいんだけど、アイツのガードが許さないんだよ」
一郎によると、アイツはナーベラルを含めたガード数名に護られているそうで、危害を加えようとする者を、ガード達には排除する役目があるらしい。今回は一郎の知り合いってことで手加減してくれたが、次は本気で排除するかもしれないらしい。
「まぁ、アイツを護る為だ。理解してくれ。アイツが戦うと、この街が危ないからさぁ」
苦笑い気味の一郎。なんだ、その戦闘力は…暴漢を排除するだけで、街が危ないだと…
「お前は、どうしてあんなヤツを庇うんだ?アイツは何様なんだ?」
怒りの籠もった言葉を一郎へと投げた。
「アイツとは、持ちつ持たれつの関係だよ。この世界で生き抜くには必要な人物だ。それよりも、サトルさんのステイタスに『不死の王』ってあるけど…これが、原因だと思うよ」
確かにある。これがアイツのガード連中を刺激したのか。
「後、『超越者』と『魔王候補』って言うのも、刺激する要素だよ」
「そういう設定だったからな。あのゲーム内では…」
再度、アイテムボックスを見てみると、あれが無い…世界級のアイテムである『脈動する赤黒い球体宝玉』が無い…まさか、ロストさせられたのか…くそっ!
「敵対せずに仲間になれば、優しい仲間思いのやつだよ」
「俺のアイテムを勝手にロストしたのは、アイツか?!」
「違う…ここはゲーム世界のようだけど、ゲーム内では無いんだよ。ゲーム内で持っていたアイテムは持ち込めない。この世界の神が持たせたい物しか、持てないし、持ち込めないんだ」
一郎からこの世界について、レクチャーを受けた。多くの転移者、転生者がいること。そのほぼ全員が、様々な並行世界の日本から召喚されたこと。この世界に元々いなかった者の中から魔王と勇者が産まれるらしいこと。
「だから、警戒されたのか…『魔王候補』って、ステイタスにあったから」
ぶっきらぼうに俺に接したのは、そのせいだったらしい。一郎も初めて見たそうだ。アイツが初対面の相手に、あんなにも理不尽でぶっきらぼうな態度を取ったのを。一郎の知り合いだと油断して、アイツの仲間が危険に晒されることを恐れたのかもしれないらしい。
「たぶん、サトルさんのゲーム内のキャラを知っていたから、警戒したんだと思う。実は俺も警戒はしているよ。サトルさんとは戦いたくないけど、魔王は倒さないとダメだから」
魔王とはそういう存在なんだな。もし、俺が魔王になったら、一郎のせいになり、一郎と戦うことになってしまうそうだ。心穏やかに生活するのが良いと一郎は言うが…
---シュウ---
もしかして、って思っていたことが、現実になった。鈴木悟が鈴木一郎の従兄弟だったとは…ステイタスに『魔王候補』『超越者』『不死の王』とあった。ラスボス対決はコイツかな?もし、そうなったら、サトゥーはどう動くかだな。
鈴木悟が、ゲーム内アバターで無かったので、ナーベラルは別人と判断したようだ。もし、同一と判断したら、戦うだろうな。戦わせたくないけど…
「サトルさんのことですか?」
ミトに訊かれた。頷く僕。
「『ユグドラシル』って、どんな世界なんですか?」
「救われない世界だな。例え、魔王を排除したところで、醜い人間が多い世界だ」
「どうするんですか?」
「掃除中だよ。醜く愚かな生物を排除しているんだけど、国の中枢にも湧いていてね。どうするかな…」
「オラリオよりも?」
「まだ、オラリオの方が平和だよ」
恐怖と自作自演の奇跡で、人々の心を掴んで配下にしていく魔王。巧みな手法である。僕にはマネが出来ない。いや、したくないなぁ。王になんかなりたくないもの…フーテンの寅さんのように行く先々で恋愛が出来ればいい程度だ。僕の欲望なんて。
僕の上では、ヴァイオレットが奉仕をしてくれている。久しぶりだったせいか、スキンシップが過剰なんですが…ミトと話がしにくい…だけど、邪険には出来ない。ヴァイオレットの肌の感触を味わう僕。それと共に、ヴァイオレットの身体に不具合が無いかのチェックもしていく。
「今後はどうする?」
ミトに訊かれた。
「モモンガはサトゥー預かりにする。で、オラリオで2チーム体制で鍛錬は積んでくれ。迷宮都市に戻れる日までに、あっちの掃除を終わらせるから」
「了解です♪って、今日はダメだね…ねぇ、片腕を貸して」
ヴァイオレットに遠慮してか、僕の片腕を谷間に挟むように抱き締めて、寝入ったミト。
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『ユグドラシル』の大陸に戻った。あの娼館はティナにマークしてもらっている。売買部門の倉庫の入り口が見付からないのだった。なので、出てくるのを待っている。ティアには街に入る道を警戒して貰っている。奴隷の密輸を見つける為だ。中々尻尾を出さない八本指。