異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
---ミト---
シュウは凹んでいる。正体がバレかけた影響らしい。って、言うか、正体はバレているんだけど…アイズちゃんは正直なので、訊くと素直に答えてくれたというか。
エロ神ってことにしているエライ神様。父なる存在に魂を貰い、地上へと落とされた殲滅兵器の成れの果て。複数ある宇宙の第13番目の宇宙の統べる神様。
称号が丸見え状態で、『女性の敵』『エロ神』『女難の相持ち』と散々な称号が大量に並ぶ中で、『天国、地獄の二国の王』『バンパイアの王』『ドラゴンの王』と並び、最後に『神殺し』『存在してはいけない者』と表示されていた。
一方ヤマトさんの称号は、『災厄なる者』『救世主の弟』『存在してはいけない者』とある。
存在してはいけない者…イレギュラーと呼ばれる存在である。そういう者達は存在だけでなく、能力も存在してはいけないレベルらしい。
これらの情報は、イチロー兄ぃにも見えていたそうだ。だけど、敢えて触れてこなかった事柄のようだ。
親衛隊のファルコンさんに訊いてみたのだが、
「騎士団の戦力ですか?それは知らない方が良いレベルですよ。この世界にいる戦力だけで、この世界を制圧可能なレベルですから」
と、笑顔で言われた。どんだけの戦力を持っているんだ?
「レベルは?」
兄ぃが訊いた。
「レベルは無意味ですよ。戦闘はゲームでは無いんです。遊びでもないんです。命を賭けた戦闘ですよ」
「最強なのか?」
サトルさんが訊いた。
「最強では無いです。随分前の戦闘時に、多くの仲間の命を失いました。団長の娘さんも…護りたい者を護り切れない、悔しさがわかりますか?」
ファルコンさんの問いに、私達は答えられなかった。そういう戦いを経験していないから。子供を護れずに失う悔しさなんかも、わからないし。
「仲間を全員護りきれるようになるまで、団長の鍛錬は終わりません。レベルとか、ステイタスとか関係ないんです。いくら高くても、カンストしていても、護れないのでは意味が無いからです」
だから、レベルの上がらないオラリオでの鍛錬。レベルに頼らず、身体に覚え込ます鍛錬なんだろう。リアルで考えた場合、級や段はあっても、レベルなんて物は存在しない。つまりは、そういうことなんだろう。
「いいですか?死なないことを第一に考えてください。団長にこれ以上、悔しい思いをさせたくないですから」
ファルコンさんはそう言って、兄ぃ達、先遣隊を送り出した。
---シュウ---
ヤマトとリザ、タマ、ポチを連れて、あの世界へ。馬車の中で暇そうだったので、今夜の宿につくまで、僕と過ごすらしい。
「この世界のお肉は食べられるらしいぞ」
「おぁ~?」
「嬉しいです♪」
「では、血抜きをしないとダメですね」
ヤマトにはシステムから情報を得て貰う。『ヴィジョネイル』というハッキング系の能力を持っている。なので、僕の騎士団の電脳戦チームのリーダーである。
「周辺にダンジョンが3つ。近場の草むらに、一角兎がいそうです」
草むらに向かうと、気配を感じる。
「一定数を維持するようなので、狩りまくっても問題は無いようです」
「はいはいさー?」
「まかせてなのです」
「二人には負けません」
と、意気込みを語った肉食娘達は、狩りを開始した。うん?
「な…クマもいるみたいだけど」
「あぁ、いますね」
ヤマトが遠隔で狩っているし。10分ほどで一角兎が1000匹程度とれたようだ。取れた獲物を、手早く捌いていくリザ。ヤマトはクマさんを捌いている。
「毛皮はどうしますか?」
「売れる物は持ち帰る。内臓は捨てて行く。袋の中が生臭くなるから」
僕の持つ不思議な袋は、ミト達のストレージのように、無制限にはいるのだ。時には人間だって…
「専用フィールドは?」
異次元にある僕の専用フィールドは、リアル時間に対して、時間がほぼ停止している。なので、腐敗物の保存などに、利用できる。
「巨大は鯨が収納されているんだよ。クマより、利用価値があるだろ?」
「ですね~♪」
って、一角兎を草むらで捌いていたら、血の臭いに反応してクマが寄って来ている。手の空いている僕が、それらを瞬殺していく。
「なぁ…君達はギルドに所属していないのか?」
知らない男性に声を掛けられた。草むらで肉を捌いているのが珍しいのかな?
「所属していませんけど」
会話中にもクマさんが現れて、瞬殺して、ヤマトの前に置いていく。
「良かったら、うちのギルドに入らないか?見ていたんだが、一角兎を難なく倒し、グリズリーを瞬殺って…凄腕だと思ってね」
『このゲームはギルド単位でチーム戦をするんですよ』
って、ヤマトから念話が入った。
「いや、辞めておくよ。時間が合わないと、迷惑をかけるからね」
って、お断りをした。
「そうか…もし気が変わったら、連絡をくれるかな」
って、『ツヴァイ』って男性プレイヤーのメアドが送られて来た。
「で、君のキャラネームは?」
「シュウです」
「わかった。シュウ、気が変わったり、困ったことがあれば、気軽に連絡をくれ♪」
『あのギルドはブルーカラーで、このゲームではトップギルドの1つです』
並行世界を経験済みのヤマトは、情報が豊富のようだ。
--------
狩りが飽きたので、サトゥー達の馬車に転移した。僕の不思議な袋から、サトゥーのストレージへ肉を移動していく。
「一体、何匹捌いたんですか?」
「うさぎさん1000匹くらい?」
「クマさんは15匹なのです♪」
ポチタマコンビが嬉しそうにサトゥーに報告した。
「で、その世界はレベルアップできそうなのか?」
モモンガに訊かれた。
「レベルアップは出来ない。ただ、スキルとか称号の追加はあるようだよ」
サトゥーがリザのステイタスを見ているようだ。
「確かに…『うさぎ捌き名人』ってあるなぁ」
頬を赤らめたリザ。尻尾が嬉しそうに踊っている。
「肉の在庫が枯渇しそうになったら、呼んでくれ。また、仕入れに行ってくるから」
肉捌きに参加しなかったポチタマは、植物の採取をしてくれていた。これは、持ち帰って、植物図鑑でも作るかな。
王都の屋敷に転移した僕達。
---ミト---
王様から迷宮都市の土地を頂いた。それも3区画も…私と兄ぃとシュウの分なのだろうな。シュウと兄ぃは屋敷を既に持っているらしいのだが。
「いや、貰えるものは貰っておこう♪」
馬車は4台編成になるようだ。1台目には、チセ、ヴァイオレットなどの眷属、2台目には私とシュウーとセーラ達爵位家の者達、3台目には荷物、4台目にはメイド達である。周囲を彼の親衛隊で囲み、敵襲に備えるようだ。って、敵襲するバカがいるのか?
荷物は転移術で既に運び負えていた。なので、途中で必要になりそうな日用品が、大切そうにダミーとして載せられていた。
「ミトには言っておこうかな。実は、もう1チーム作ったんだよ」
って…おい…この世界を征服するつもりか?
「どんなメンバー?」
一応訊いておく。
「司令塔は養女の一人に任せた。違う世界の魔王の血筋だ」
魔王の血筋の養女?
「あとは、悪魔が主体で、ヴァンパイアとアサシンだな」
って、ダークサイド系じゃないのか?何をやらかすんだ?現状のチームだって、女神、リッチがいる異常なチームなんですが…
いやいや、私達を守護している親衛隊も、異常なレベルなんでしょ?
「ファルコン達?そうだな…神殺しが3名、フルカウンター持ちが1名程度だよ」
神殺し…危険な戦力だ。魔王なんか赤子では無いのか?
「うん?この世界の魔王がよくわからないんだよ。悪魔王では無く、魔物王っぽいんだけど、配下は悪魔って言うのが、ちぐはぐって言うか。そもそも、悪魔も魔王も、巫女の身体に降臨しないと思うんだよ」
彼はセーラを見つめている。それに気づいたセーラは顔を赤らめて、顔を伏せた。
「だって、聖属性なんだよ巫女ってさぁ…なんで、身体の中に降臨するんだろう?まるで、聖属性の何かが変化して悪魔とか、魔王になるって感じだよ」
それは、言われて見るとそうだな。降臨してから、巫女の肉を喰うなり、血を飲むなりすれば良いはずだ。わざわざ体内に降臨して、身体を突き破って出てくるって…
「敵は神かもしれないよ」
神?
「神々が国盗りゲームをしている感覚ってことだよ」
ゲームの駒として、異世界の日本人を召喚するってことか?
「転生者は理不尽な死を迎えた者…アリサとかがそうだ。一方、デスマーチな世界で過労死をして転移した者…サトゥー、ミト、モモンガとかがそうだ。その2つのせめぎ合いってことはないのか?」
う~ん、どうだろうか?
「後、アーゼの話…創造神により、送り出された世界樹と神達、そしてハイエルフ、たぶん、ハイエルフの世話をするエルフもだけど、おかしくないか?既に、生物がいる世界に、異世界から生物を送り込むって」
神々が降臨した時には、竜神アコンカグラ様がいたはず。そのことからドラゴン族もいたと推測される。
「送り出されたのではなく、種族データをアップロードしたんじゃないのか?」
ドラゴンだけの国盗りゲームではつまらないから、神というデータを新たに作ったってこと?
「エルフは天使の代わりなのかもな」
「どうして?」
「天使はドラゴンが嫌いだよ。神もだけど…」
へ?
「いいか、エヴァに禁断の果実を食わせた蛇って、ドラゴンのことだ。天に住まいし者はドラゴンが嫌いんだよ。神の玩具であった、人間に知恵を持たせた大罪種族だから」
あ…
「で、竜神から神に転移召喚の術を教えたっていう下り…人間同士による代理戦争をさせようとしていたのでは?」
それは思ってもいない仮説だよ。神と天使に、ドラゴンでは全面戦争になり、この世界の存続は危ぶまれる。でも魔王と勇者の戦いなら、この世界の存続にまで響かないってことか。
「問題は神楽だな…手がかりが少なすぎる」