異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
始めの一歩
状況をチェックする。魂に宿る者達は全員いる。一人でも欠けていれば、迷子にした世界は殲滅されているだろう。なので、全員いるのがデフォルトである。装備品、不思議な袋もある。能力、スキルに欠落は無い。一人でも、この星を殲滅できるが、帰る宛てが無いので、自重をしよう。
で、ここはどこ?『ヘルプ』を唱えて、救難信号を出してみるが、今回も応答が無い。アイツ、また爆睡しているのか?アイツとは僕の片割れで、相棒である姉ちゃんのことである。僕に危険が及ぶ事態には、必ずって言っていいくらい爆睡しているのだ。一度なんか、爆睡中に世界が1つ消え、僕が消えかけたし…
今回は道沿いに歩いて移動する。見落としがあったのかも知れない。前回は一気に転移したからなぁ。やがて街道分岐点にたどり着いた。脇道に道しるべがある。1.5m程の棒に板が打ち付けてある、ゴク平凡な作りのものだ。道標には墨のようなもので、行き先が書いてあった。
『エニケイ村へようこそ』『セーリュー市まで32km』『カゾ王国まで105km』
ゼナまで32kmか…だけど、今回は出会いの機会はあるのだろうか?あのでっぱい好きなサトゥーがいないからなぁ。どうなるんだ?とりあえず、一番近いエニケイ村へ立ち寄ることにした。
ふと、道しるべを再確認…なんてこった…ゼナへ向かう道から歩いてきたようだ。逆だったのか…少し凹む。いいや、だいぶ凹む…ゼナが遠いぞ。
5分ほど歩くと、畑らしき物の向こうに、集落らしき物が見えて来た。これがエニケイ村か?畑らしき物は雑草天国である。いや、これは雑草で無く作物かもしれない。間引きすらされていないようで、膨大に生えていた。
やっと着いた村は全焼していた。骨は散らばっていないので、逃げたのだろう。何かに襲われたのだろう。何に?
急いで避難したのか、収穫用の篭や木製のクワやスキなどの農具がちらほらと放置されている。研いだり、修繕すればまだ使えるレベルである。不思議な袋へしまっておく。そうなると、最近襲われたのだろうか?
日が暮れてきたので、今夜はここに宿泊だな。
------
翌日、ゼナを求めてセーリュー市へと向かう。ぜーリュー市に着くまでの間、何も起きなかった。誰にも会わないし…出会いを求めているのに…
門が見えて来た。そうだ、関所が有るんだった。横道にそれて、壁を透過して密入国ならぬ、密入市をした。賑やかな街並…街道で誰にも会わなかったので、生き物のオーラを色々を感じ取り、孤独感を埋めていく。まぁ、魂に仲間が一杯いるのだが、迂闊に出すと、なんかのフラグが立ちそうなので、迂闊には出せない。
そうだ。市兵による職質があったんだ。旅人らしき者から、身分証を『強奪』して、名前を書き直して、自分の物にした。「種族:人族」「レベル:1」「階級:平民」「所属:なし」「職種:冒険家見習い」「称号:なし」「スキル:なし」「賞罰:なし」とある。よし、これで行こう♪滞在期間が迫っている点は修正しておく。たしか、申請一回につき最長10日だったなぁ。今日から10日間に改竄した。
お金はアコンカグラから貰ったし、前回分の物もあるので、宿に泊まれそうだ。
「そこのキミ!宿の更新がまだならウチにおいでよ!サービスしちゃうよ~!」
ハイテンションな女の子に声を掛けられた。サービス?まだ、無理な年齢に見える。スルーしておいたのだが、
「他より安く~~はできないけど、真心こもった美味しい料理と清潔なベッドもあるからさぁ!」
って、袖を引っ張られて、宿へ連行された僕。
「お母さんっ!お母さんっ!お客さん連れてきたよっ!」
女の子が奥へ向かって声を掛けている。宿屋の娘のようだ。
「新しいお客さんなんて、久しぶりだね……うん?小袋が1つだけ?本当にお客かい?」
入ってすぐにある酒場のカウンターらしき場所から、恰幅のいい女性が出て来た。どこぞのミアさんよりは小柄ではあるが…
「気ままな一人旅だからね。足り無い物は現地調達だよ」
と、答えておく。
「うちは1日素泊まりで大銅貨1枚だよ。大部屋の雑魚寝でいいなら銅貨2枚だ。食事はこの酒場で食べてくれたら1品サービスで付けたげるよ。宿泊客限定のサービスだ」
「10日分纏めて払っておくよ」
「あいよ、ならちょうど銀貨2枚だね」
不思議な袋から銀貨を2枚取りだし、女将に渡した。
「マーサ、お客さんに宿帳書いてもらいな」
宿帳か…適当に書いておくか。マーサが宿帳を持って来て、
「は~い、お客さん代筆するのでお名前をお願いします」
自分で書けないようだ。
「シュウです」
「シュウさんですね。ご職業と年齢をお願いします」
「冒険者見習いで17歳です」
マーサはスラスラと帳面に記入していく。その後、2階の部屋に案内された。フカフカのベッドでしばし、安眠をした。夜行性の僕が夕方近くに目が醒め、階下に降りていくと、酒場は満員だった。
「女将さん、着替えとか日用雑貨を買いに行きたいんだけど、どの辺に買いに行けばいいかな?」
「高くても品質がいいのが欲しいなら中央通りで仕立てて貰うのが一番だ。そこそこの品質でいいなら東通り、安ければそれで良いなら西通りだね。金が余ってるなら内壁の向こうにある高級店で仕立ててもらえばいいが金貨がいるよ。雑貨も服屋のそばにあるはずだから予算で決めればいいね」
「ありがとう。ちょっと、行って来るわ」
とくに服も日用品もいらない。食料もいらないし。
「東通りなら治安はいいはずだけど、スリには注意しな。たまに西から出稼ぎに遠征してくるのがいるらしいからね」
「ご忠告、ありがとう」
そうか、腹黒い奴らがいるのか。狩るかな♪まず、中央通りへと向かった。そこは馬車が行き交う活気のある通りだった。首輪を嵌めている労働者が多い。みんな、奴隷である。中には首輪無しの奴隷もいるけど…そう言えば、リザ達も奴隷だったなぁ。
ちょうど目の前を馬車が通り過ぎる。女奴隷を10人ほど乗せていた。その中に知った顔を見つけた。アリサとルルだ。俺は迷わず『強奪』をして、専用フィールドへ強制転移させ、僕も専用フィールドへ転移した。
いきなり知らない場所に転移し、知らない僕が現れたことで、僕に警戒するアリサとルル。
「奴隷から解放してやろうか?」
「えっ!出来るの?」
アリサに訊かれた。封印無効スキルで、奴隷という身分から解放してあげた。
「こんな簡単に…強制が解除できるの…あなた、何者?」
「お前達の主だ♪奴隷ではないが、きっちり働いてもらうよ」
彼女達の身体を清潔にして、普通の服を着衣させた。
「生活魔法…あなたは魔法使い?」
アリサに訊かれた。
「魔導戦士だよ」
アリサ達の身分証を作る。僕の身分証をコピーして、アリサとルルの名前にして、所属を僕にして、職業をメイドにした。
「これ、身分証だ」
二人に手渡した。それを見て驚く二人。
「なんで、私達のことを知っているの?」
「信じないかもしれなけど、並行世界では仲間だったんだ」
アリサから神の欠片を『強奪』して、破壊した。
「え?それも取り出せるんだ…あなたも転生者?」
「僕は僕だ。転生したことは一度も無い」
「不死なる存在ってこと?」
「そうなるな。まぁ、よろしくな♪」
二人を連れて、セーリュー市へと戻った。そして、宿屋に戻り、二人追加したことを告げ、宿賃を先払いした。二人を部屋へ連れ込み、ベッドに押し倒し、
「今日は、もう寝ろ。パジャマとかは、明日買いに行く。腹減ったら、これでも喰っておけ」
ベッドの脇に、アリサの好きなポテチやコーラを、不思議な袋から取り出して置いた。
「海苔塩だぁぁぁぁぁ~♪コーラも有るの…ありがとう♪」
いいえ、こちらこそ、ありがとうだ。話相手が出来たし。そして、俺だけ夜の街へと繰り出した。
-------
翌朝、3人で朝食を摂って、買い物へ。二人の旅行カバンと町歩き用のショルダーバック、下着と寝間着、アクセサリー、靴などを買ってあげる。
「こんなに買って貰っていいの?」
「仲間には優しくが、僕のモットーだよ」
アリサとの会話は楽しい。ルルは人見知りが激しいので、まだ僕に話し掛けられない。アリサを通して、自分の意見を僕に伝えてきている。
「この街は風呂が無いから、魔法で毎晩綺麗にするよ」
「身体、拭きたいかな。なんか、洗った気がしないんだよ」
なるほど、善処しよう。おぉ、カフェを見つけた。少し、休むか。お茶とお菓子のセットで銀貨1枚ってことで、3人分をオーダーした。
「アリサ、珈琲は無いのか?」
「見た事無いよ」
そうか…部屋で飲むか。あっ、ホットケーキがある。これは二人分を注文、銀貨3枚…高いなぁ。お菓子セットの3倍かぁ。
「美味しいぃぃ~~~♪」
アリサが嬉しそうだ。ルルも少しずつ笑顔を取り戻しつつある。時間は掛かるが、気長に心を開くのを待つか。2年位無理だしなぁ。
しかし、平和は長続きしないのが、常である。何かが来た。
広場を通り過ぎる黒い大きな影。続いて、重低音の叫び声。広場を横切って、城に突き刺さる巨大な火球。手前にあった尖塔が1つ崩れ落ちていく。
「ご主人様…」
不安そうなルル。
「アリサ、昨日のエリアへ転移させる。状況が分かるまで、ルルと待っていてくれ」
「うん♪」
二人を僕専用フィールドへ転移させた。さて、何が出たのかな?上を見上げると、広場の上空には、黒い翼を広げた四本腕の悪魔が浮かんでいる。
2つめの火球が城壁を越えようとした時、青い半透明の障壁が空に伸び、火球は障壁に阻まれた。市兵の反撃かな?
悪魔は広場の中心にある花壇に着地する。何故か、有利な空では無く、わざわざ地上で戦うのを選んだようだ。何かあるのか?
市兵の攻撃はまるで効果が無い。悪魔の反撃は、全方位に真空の刃と衝撃波を放ったようだ。僕に命中する分はフルカウンターの3倍返しで、返品した。悪魔が唸っている。僕の周囲のお店はほぼ全壊である。広場には、何両もの馬車が横転し、人と馬と何かの死体が転がっている……。
ヤリ兵達は悪魔の餌食になっている。悪魔が咆哮をすると、何かしらが起きて居る。あれは呪文か?今回は、落雷が騎士達に落ちて感電死している。
僕は悪魔の前に立った。
「面白いマネをしてくれるな」
僕の視線を受けてたじろぐ悪魔…本当に悪魔か?魔族っぽいけど…僕に向けて魔法を撃ち込んで来るが、全て3倍返しのフルカウンターで返品していく。魔法が効かないと見るや、尻尾ではたきに来た。素手で触れると灰となって霧散してく、2本の尻尾。聖属性の僕に攻撃?自殺行為だよ♪
尻尾の消えた悪魔に、魔法使い達の魔弾が撃ち込まれていく。火球、火炎嵐、風刃、気槌、雷撃、石弾、砂嵐、水弾、氷弾、吹雪など、あらゆる属性の魔弾が撃ち込まれていく。いや、僕にも撃ち込まれているんだけど、スルーする。
だけど、悪魔に兵士達の魔法は効かない。それはそうだ。聖属性の魔弾が無いから。仕返しに悪魔が魔法使い達へ雷撃を放っていく。それを防御障壁で防御していく魔法使い達。手助け程度に、ホーリーニードルを放った僕。聖なる針が刺さり、苦悶の表情になっていく悪魔。
えっ?悪魔がブレス攻撃を僕にしてきた。3倍返しのフルカウンターで返品。たじろぐ悪魔は、ブレスを受けて全身がただれていく。羽を展開して、空へ逃げようとしている。僕は妖刀村雨を手にして、飛ぶ斬撃で、羽を根元から斬り落とした。血塗れになって、地面にしゃがむ悪魔。兵士達の方を見ると、ボロボロのようだ。気力だけで立っている者がほとんどのように見える。
悪魔は自ら、自分の赤黒い心臓を取りだして、天に掲げた。段々鼓動が速くなっていくようだ。自爆でもするのか?予想は的中し、つんざくような轟音と閃光が心臓から溢れ出た。
光が治まった時には、障壁に守られた数人の魔法使いと累々たる死体、下半身だけになった悪魔の屍骸。地面は悪魔の屍骸から城門に向かって扇状に地面が焼け焦げ、城門もまた半壊していた。焼け焦げたのか、悪魔の屍骸は黒い塵になって崩れていった。