異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
音を立てて馬車が夜の丘陵地帯の間の街道を進む。初日は距離を稼ぎたいので、姫とマッチーに寝ずにがんばれと言っておいた。追っ手が来ると厄介だからだ。僕とエリカで、周囲の警戒をする。
馬車の中では、僕の親衛隊のメンバーであるフレイが、みんなの装備を作っている。彼は戦闘スミスで、戦闘も出来、鍛冶も出来るマルチプレイヤーである。
「魔族の魔核なので、初期装備としては、結構いいんじゃないかな?」
リザにはヤリ、ポチには短剣、タマにはブーメラン、アリサには仕込む杖、ルルには、無限マガジン付きのショートマシンガンである。異世界での装備を参考にしたようだ。
「どこかで、経験値を稼がせないとな」
ゼナが僕に寄りかかり寝ている。ポチ、タマはアリサとじゃれている。楽しそうだ。特に御者は必要無いのだが、いないと怪しまれるので、リザが哨戒役として御者台にいる。ルルはフレイの仕事を興味深そうに見ていた。
明け方近く、後方から馬が近づいて来た。追っ手か?ゼナを起こし、夜更けまで夜更かしをしていた者達は寝かしておく。御者台には寝なくても大丈夫なエリカがいる。
「おい!止まれ!」
イオナの声。エリカが止める動作をする。姫とマッチーが止まった。
「中を見せて貰うぞ」
僕とフレイがゼナを隠すように座り、得物に手を掛けた。幌をまくし上げられて、リリオと目が合った。
「見つけた♪」
なんか、緊迫感の無い声。
「ゼナっち、大胆だな、脱走とはな」
って、リリオ。
「何の用だ?」
僕が問いかけた。
「ちょっと待て!斬るな!敵対行動はしない」
両手を掲げたリリオ。
「では、何の用だ?」
「私達も脱走してきたよ♪」
はぁい?
「青春しないと、女の価値があるうちにさぁ」
まぁ、確かに…
「ゼナっちだけズルい!私達も連れていって。ちゃんと働くからさぁ~」
ダダを捏ねるリリオ。ルゥが呆れたように見ている。うん?後方からもっと多くの馬の音。
「なぁ、追っ手が来たんだが…蹴散らしていいか?」
「お尋ね者になるぞ!」
って、イオナ。
「姫、マッチー!脇道へ行け!」
御者では無く、馬に直接命令する僕。馬車が脇道へと入っていく。リリオ達が付いて来た。追っ手は、二手に分かれた。脇道を追走する部隊と、出口付近に回り込む部隊に。
「なんで、こんなに追っ手いるんだ?」
「ゼナっちは貴重な魔法兵士だからだよ」
「魔法使いは沢山いるだろ?」
「剣も使える魔法使いは少ないのさ」
セーリュー伯の持ち駒ってことか。他の領主へ高く売れそうだ。
「どうするの?」
心配そうなゼナ。
「マッチ-、姫!止まってくれ。迎え撃つ♪」
僕とフレイが馬車を降り、追っ手に向かって、走り込む。こっちは瞬殺系戦士が2名である。瞬時に終わった。死人に口無し。誰にやられたか、分からないだろうな。
「良し、次は出口付近だな」
うん?誰かの腹の音が聞こえた。
「飯にするか」
「わぁ~い♪」
マッチーだった…夜通し走って腹が減ったらしい。人化して寄って来たマッチーと姫。ゼナが不思議そうに見て居る。
「えっ?どこに乗ってました?」
あぁ、そうなるか。話していなかったから。後で説明しないとダメかな。馬人族って紹介してみるかな。馬車の食料庫から食料を持って来る二人。今度はリリオ達が不思議そうに見て居る。
「なぁ、なんで調理済みの食べ物が、馬車から出てくるんだ?」
あぁ、馬車に設置した食料庫は、オーダーすると調理された物が出てくる。その仕組みは、キャッスルドランで調理した物が、転送されてくるだけと言うか。
「あぁ、あれは、転送陣が組み込まれているんだって」
ゼナが説明をしてくれた。
「転送陣?どこかで調理した物が、転移してくるの?」
イオナに訊かれ、頷く僕。チートな設備だと想います。
アリサ達も起き出して、朝からハンバーガーを食べていた。肉食娘達も気に入り、それをオーダーしている。リリオ達も興味を持ち、馬役以外は、全員ハンバーガーであった。
「なんだ、この肉は…」
「牛肉だよ。スパイスで味付けをして、臭みを消してあるから、食べやすいと思うよ」
この世界の牛肉はクセがある。オーミィ牛なる高級牛肉は別格であるけど。
「なんだ?その白い飲み物は?」
イオナがアリサに訊いた。
「カルピスだよ~」
「って、なんだ?」
「ミルクを発酵させた物だ」
そして、カルピス信者が激増していく。
「こんなに種類があるのか…」
厨房で色々な味の奴を1杯ずつ、転送させてきたのだ。ちなみに、僕はオレンジ味が好きである。
で、食事の後、問題になることが発生した。排便である。女性ばかりのパーティー故、我慢する者がいるはずだ。なので、排泄物の強制転移をしてあげた。転移先は、あの洞窟の中である。いつか、巨大な肥だめにしてやる。僕のささやかな野望だ。
「で、彼女達は?」
食後の休みに、ゼナに訊かれた。
「ケンタウロスの姫です」
「デュラハンのマッチーです♪」
う~ん、僕の紹介を待たずに、自己紹介をする空気を読まない二人…
「なぁ…デュラハンって、魔族で無いのか?」
リリオに訊かれた。
「魔族がこんな可愛いはずないだろ?馬車の馬だよ」
みんなの見て居る前で、馬姿になる二人…驚く人間達…亜人3人娘は、興味深そうに見て居る。ポチとタマはどうやれば、なれるのか訊いてきたし…
「馬が…スゴい…」
イオナが感動しているし。大丈夫か、このパーティーは…
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脇道を進むと巨石文明の跡地らしき場所に出た。
「こんな場所があったんだ…」
ゼナが呟いた。巨石に昇る幼子軍団。子供は高い処が好きだよな。
「今夜はここらで野営するか。急ぐ旅でも無いし、出口辺りで待ち伏せされているだろうし」
リリオ達がテント張りを手伝ってくれた。3張りほど設営した。リリオ達の分、子供達の分、新婚であるゼナと僕の分だ。
だが…リリオ達が僕達のテントに来た。どういう経緯で結婚に行き着いたのかを訊きたいらしい。
「どういうって…う~ん…夢心地で、気づいたら…結婚指輪をしていた」
真っ赤な顔で言い終わると俯いてしまったゼナ。
「ゼナっちの説明は、よくわからんのですよ。新郎様、白状してくださいね」
そうね、こっちに降りかかるよね。
「う~ん…勢いで…」
「指輪は、いつ用意されたのですか?それが、鍵かと…」
イオナがいいところを付いて来た。
「いつ…心に決めた時から…」
「それは、いつですか?」
随分前だけど…何か…って、言えないよな。この世界では最近知り合ったんだし。
「そうなんだよね、私もそこが疑問なんだよ」
って、ゼナがイオナの援護射撃に回った。どうして君まで、そっちサイドなの?
「まぁ、随分前に作っておいた。こういう時の為にねぇ。だって、こういう時って、思った時に行動しないと、逃すでしょ?」
随分前は、それで逃しましたし。
「なるほど、事前準備が大事なんだ」
リリオがはっとした。
「新郎様の方は、ほぼ自白が取れましたが、新婦様、どうして受け入れたんですか?奥手のお前が!」
あぁ、なんとなくわかった。ダークホースのゼナに、先に寿されたことが、ショックだったようだ。この3人…
「どうしてって…う~ん、初キスを捧げたし…」
「はあ?キス程度で?」
リリオは誰とでもキスするのか。
「え…えぇっと…」
目が泳ぐゼナ…
「怪しいなぁ…」
怪しいよな…その態度は。嘘が吐けず、逃げ場を失うのは、ゼナの良さでもあるが…
「う~ん…初めて抱き締めてくれた…」
「ハグくらいで?」
それくらいで、結婚はしないよね…普通は…
「うっ…もう、よそうよ。こんな話…」
真っ赤な顔で僕を見るゼナ。抱き締めてあげる。
「うっ!いいなぁ…」
って、ルゥ。ハグくらい、いつでもしてあげよう♪僕の心は女体には広いから…
「リリオ先生、もしかして…」
イオナが気づいたか?
「まさか…そんなことをする子では、無いはず…新郎様、ツルペタですが、それでも良いんですか?」
「ツルペタでは無いよ」
ちゃんと谷間あったし。うっすら生えていたし。僕の発言に、ものスゴく驚く3人の姦し娘達。
「見たんですか…」
「まぁ…」
「ゼナっち…どういうことかな?」
追求のキバは、ゼナに再度襲い掛かっていく。
「もう!シュウさん、正直すぎだよ~」
顔を上げたゼナは真っ赤であった。正直者のゼナには、言われたくないのだが。
「そうだよ…初デートの時に、捧げました。中にタップリと頂きました」
意を決して白状したゼナ。その発言により、姦し娘達は、石化したのでは無いかくらいに固まった。
「初デートで、中出しって…」
「ですから、責任は取った訳です♪」
姦し娘達は、それ以後質問をして来なかった。ゼナに先を越された訳だし…もしかすると、リリオ達は口だけで、まだ初物なのかもしれない。
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夕方、リザ達が獲物を捕まえてきた。経験値を稼いで来たようだ。フレイとエリカが、指導をしてくれたようだ。
リザ達は獲物を捌くのが速い。奴隷の時に、速く正確に捌かないと、折檻されたことがあったらしい。
「夕食はバーベキューにするか、獲物の肉で」
肉がダメの者達は、食料庫にオーダーしていた。ルルとアリサとゼナである。ダメって事は無いけど、豪快な料理にビビっているようだ。リザは捌いて食べやすい大きさで焼いているのだが、ポチは豪快に丸焼きしているし…途中で捌くのが飽きたらしい。見かねたリザが、食べられない部分だけ、除去をしてくれていた。
「なぁ、新郎様、どんな魔法が使えるんだ?」
って、リリオ。
「どんな?う~ん…大抵のことは出来るよ。魔導師だからねぇ」
「へ?神官なのに、魔導師なの?」
ゼナが驚いている。
「僕の正式なジョブは魔導戦士だよ。で、僕は神官では無く、聖者なんだよ」
ゼナが驚いている。マジに神官だと思っていたようだ。これって、結婚詐欺になるのだろうか?
「聖者…神官とどう違うんだ?」
「神官は神に仕える人でしょ?誰でもなれるけど、聖者は聖属性の者ってことかな」
と、自己解釈を話した。聖なる化け物が聖者とは言えないし。聖なる人は聖人という解釈の僕。
「聖属性…」
正確には違うけど…
「まぁ、そんな感じだよ」
「どう違うんだ?普通の者との違いは?」
「僕の場合は、普段リミッターを掛けている。リミッターを解除すると、人間だと燃え上がってしまうから。悪魔程度なら素手で灰になるよ」
たぶん、この世界の神も触れば、ロストできるに違いない。
「危険…聖属性って、そんな危険なのか?」
イオナに訊かれた。
「聖属性自体はそうでもないけど、最上位の聖属性だから…」
姦し娘達の興味は僕に移ったようだ。
「魔法使いと魔導師の違いは?」
ルゥが質問をしてきた。
「魔法使いは呪文を唱えて魔法を発動するけど、魔導師は魔法へ導くスキルがある。これは、自分で新たな魔法が作れるってことだ」
魔法陣での発動する魔法を見せた。
「呪文は要らないのがメリットだけど、デメリットは魔法陣発動の方が魔力を喰うことかな。それだけ、威力もデカいけどね」
「浮遊術はどうすれば良いんですか?」
立ち直ったゼナが質問をしてきた。
「浮遊術は…効率が悪いよ。浮くだけで、飛行するわけでは無いから。浮くだけなら、ダウンバーストを地面に撃ち込んで、上昇気流に乗るのが一番簡単かな」
実際にゼナが実演をしてみた。浮かんだというか、発射された感じだ。人間ロケット状態のゼナ。着地はどうするんだ?
見えない翼を展開して、ゼナを迎えに行く。上空150メートル付近で浮かんでいるゼナを発見して、抱き締めて地上へお持ち帰りをした。
「恐かったよ~」
泣きじゃくるゼナ。かわいいなぁ~
「ダメだよ。着地のことを考えないと」
「だよね~うっ、うっ、うっ、うぇぇぇぇ~ん」
大泣きになってしまい、ここで質問タイムは終わった。
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翌朝、何かの気配で目が醒めた。なんかヤバそうだ。フレイも気づいて、外に出て臨戦態勢を取った。
「エリカ!何かレーダーに反応は有るか?」
エリカ本人が寝ているとき、AIが代わりに対応してくれる。
「レッドアラートです。何かの大群が何かを追っています」
大群?こっちに来たらマズい。僕は空から、フレイは地表から、何かの大群に向かって近づいて行った。
近づくにつれて大群の正体が判明し出した。
『エリカ、姫、マッチー!戦闘モードに移行しておけ。ドラン!野営地をガードしろ!一匹も近づけるなよ!』
『了解!』
何かは、飛行型昆虫タイプの魔物であった。
「フレイ!飛べ!」
「了解!」
『ドラン!飛行編隊を出せ!数が多すぎる。僕とフレイだけではキツい!』
『了解!』
空中戦用の部隊をドランに2部隊常駐させている。ハンガーから彼女達がテイクオフしていく。
「フレイ!後方から殲滅しろ。僕は追われている者を確認して、保護する」
「了解!」
先頭はどこだ?大空を滑空していく。先頭目がけて…
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いた!6本足の猪に跨がる赤い兜を被った鼠人族とエルフの少女。ミーアだ!そうなると、このステージのボスはあいつか…
『敵の正体は大羽蟻、毒攻撃と酸攻撃持ちだ』
ドランにいるフィンから念話が届いた。潰すのが一番だけど、ミーア達まで巻き込みそうだ。追走中は危険だな。
ミーア達の真後ろに『ファイヤーウィール(火の壁)』を発現させた。避けられない蟻達が燃えていく。えっ?燃えても大丈夫らしい。なんで、頑丈なんだよ。だけど、羽が燃え尽き、地面に落ちていく。すると、地面を駆けて追いかけ始めた。今度は『エアースタンプ』で潰していく。
潰されると判断した蟻達は、地面に潜っていく。マズい。ミーア達を僕専用フィールドへ強制転移させた。すると、蟻たちが混乱状態になり…野営地へ向かい始めた。更にマズい。最後の手段…魂に宿る仲間達を解放した。何かのフラグが立つかもしれないけど、手段を選ぶ暇は無い。
その瞬間、空気が鳴動し、地面すらも揺らすくらいの衝撃波が生じた。蟻達は飛行することがままならない状態へ…そこへ仲間達が一斉放火を仕掛けた。目の前で立ち昇るキノコ雲が多数。流星雨よりは火力は低いはずだ。そう思いたい。
蟻さんを殲滅し、仲間達が戻っていく。野営地へと戻る僕とフレイ。