異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
「少女の事は…」
「可哀想に、死んで仕舞いましたね」
ニコリと笑った御者。話がわかる人で良かった。馬車は街より高台にある男爵城へと走っていた。
『カリナ嬢を保護しました』
仲間のファルコンから念話が届いた。殺される前に、確保できたようだ。
『しばらく預かっていてくれ。あと、同化吸収出来たら、しておいて』
『了解です』
ファルコンとの念話を終えると、城に着いた。無駄にデッカい城である。ミトによると、市内の3割を占める敷地に、森や池まで有るらしい。占領できたら、テーマパークにでもするかな…
入口前のロータリーの左右に20名ずつのメイドが並んでいる。無駄に人件費が発生しているような。
「ようこそおいでくださいました。商人様」
だから、商人では無いのだが…一人だけいた執事服の青年が挨拶して来た。
「お招きありがとうございます」
挨拶を返しておく。ここでトラブルはゴメンであるから。で、持ち物は特に無いので、預ける物も無い。そのまま、城の中へと通された。執事を先頭に僕達は付いて行く。ミトが「マップ探査」をしてくれているので、少し安心である。
『男爵の隣に偽勇者、魔族のコピー体がいるよ』
ミトから探査結果が念話で届けられた。魔族の本体は、森の中にいるらしい。監視を付けているので、少し安心だ。
そして、男爵の待つ部屋へ…
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「やあ、ようやく来たね。ハトコ殿、紹介しよう、私を助けてくれた商人とそのメイドだ」
トルマが僕達を男爵に紹介してくれた。ミトがむっとしている。メイドだと紹介されたから。
「はじめまして、駆け出しの冒険者のシュウと申します。こちらは、仲間のミトです。メイドではありません」
身分を少し修正して、自己紹介をした。修正されたことでトルマがむっとしている。
部屋にはオッサンの家族の他に、3名の男女がいる。部屋の隅に2人ほどメイドさんがいるが、数には入れていない。
一人は口ひげに黒髪の小太りの中年男…コイツが男爵か?二人目は黒髪の女性…男爵の無娘だろうな。そうなると…三人目は細マッチョの黒髪黒目のイケメン青年…偽勇者だ。あれ?魔族はどこ?
「そうか君が、トルマの命を救ってくれた商人様か。ありがとう。感謝するぞ。どんなにお礼を言ってもいい足りないくらいだ。広いだけで、裕福とは言えぬ領地だが、ゆっくり羽を伸ばして、旅の疲れを癒して欲しい。たいした持て成しが出来ぬのが心苦しいが、好きなだけ滞在されるがよろしかろう」
おい、約束は反故か?男爵は、わざわざ立ち上がって、僕の傍まで歩み寄り、礼を言ってきた。
そして、僕達を蚊帳の外に置き、ムーノ一族で談笑会が開かれている。男爵の娘、ソルナは、爆乳系である。偽勇者はあの爆乳で、毎晩包まれているのか?
しばらくすると漸く、僕達も会話に参加でき、祝い金の徴収のことを訊いてみた。
「なんの事だ?執政官から今年は不作だと聞いていたからね。そんな事をしたら領民が飢えてしまうじゃないか」
いや、実際に飢えていますけど…
貧困が蔓延していることを訊くと、
「ふむ、どの村も裕福とはいえぬが、飢えるほど徴税はしていないよ。今年は執政官からの提案で、食料を分配したはずなんだが?」
事実とは違う。その執政官がガンなのか?いや、領内の視察をしない男爵の罪は消えない。
「今日、馬車の前に飛び出して轢かれた少女がいました。御者は、平民を轢き殺しても、馬車を止めるなと言われていたそうですが、本当なのですか?」
「残念ながら事実だ」
事実なのか…領民を何だと思っているんだ…
「シュウ様、それには理由があるのです。一昨年に私と妹が乗った馬車が、子供を轢いてしまった事があったのです。私達はすぐに馬車を止めて子供を介抱しようとしたのですが、瞬く間に包囲されて誘拐されそうになったのです」
っと、ソルナ。それにしても…
「俺と出会った時の話か?その時の子供や包囲した人間達は、町に潜んでいたムーノ解放軍とかいう盗賊の集団だったそうだぜ?もっとも盗賊だっていうのは、後で執政官様に教えて貰ったんだけどな」
「あの時は素敵でしたわ」
なるほど、偽勇者君がソルナに出逢う切っ掛けイベントのせいか…それにしても…
それに、ムーノ解放軍?解放軍なのに、盗賊?盗賊がキーワードか?
「国境の移民税とかも、執政官殿の提案なのですか?」
「実は近年、領内の村から子供や娘達が誘拐されて、別の領地で奴隷として売られるという痛ましい事件が、起こっていてね。執政官の提案で、正規の奴隷商人や村長の許可証を持たない者には、重い税金を掛けて水際で犯罪を阻止する事にしたのだ」
村ごと移民したくても出来ないようだが…事実が男爵まで届いていないのか?
「市内に潜伏した盗賊の一味は、大丈夫なのでしょうか?」
「執政官が大丈夫だと言っていたから大丈夫だ」
と男爵。いや、盗賊よりも、罰則項目のある兵が大丈夫では無いのだが…
「それに盗賊ごとき何人襲ってこようと、この聖剣で退治してくれるぜ」
偽勇者が偽の聖剣を手にして、豪語している。
「可能ならば、一度、その優秀な執政官様に、お会いしてみたいです」
「もちろんだとも、今は手が離せないらしくてね。隣の別棟で仕事中なんだよ。仕事が一段落したら来ると言っていたから、そのうち顔を出すだろう」
そいつが魔族か?「執政官」と言うだけで、名前が出て来ない。
「先ほどから皆様、執政官様を役職でしか呼んでおられないようですが、執政官様のお名前は何と仰るのでしょうか?」
「ふむ、何だったかな?すまない、いつも執政官としか呼んでいなかったから、名前をど忘れしてしまったよ。年は取りたくないものだ」
はぁ?普段から名前を呼んでいない?ますます怪しい。
「最初の頃はお名前で、お呼びしていたはずなのに、最近は執政官様としかお呼びしていなかったので、忘れてしまいましたわ」
と、ソルナ。おかしいだろ?お前は、老齢性健忘が、遥か遠くだろ?
「すまない、俺は最初から、執政官様としか呼んでいないので、知らないんだ」
と、偽勇者。グルのお前には訊いていない。
「ん?ありゃなんだ?」
偽勇者が声を上げた。彼の見ていた方には、バルコニーがあり、街の正門までを一望出来た。バルコニーから見えたのは、ごま粒のような人々が、中央通りに若出している光景である。
メイドさんの一人が、情報を収集する為に、部屋から出て行った。
『市内にスケルトン20、死霊魔法師1』
と念話で情報が入った。
『処分しておけ』
『了解!』
既に、市内には仲間を、展開してある。
バルコニーから市内の騒動を眺めているムーノ一族と偽勇者。僕とミトは室内にいて、様子を窺う。そうだ、想い出した。
『地下牢にいるニナを保護しておいて』
『了解!』
念話で仲間達に指示を出す僕。
『森に展開している魔族とゾンビ軍団の掃除が終わりました』
独自判断で、仲間が動いてくれたようだ。
『サンキュー、ジム、ネギ♪』
ミトは黙って「マップ探査」で、警戒をしてくれている。僕と仲間達との念話を聞きながら。
「男爵!執政官様がおいでです」
「エラル卿。私ではなく男爵様にちゃんと様を付けたまえ」
ノックの無しに、誰かが入って来た。入ってきた2人を見て、バルコニーから戻ってくる男爵。
「ああ、待っていたよ執政官。大変なんだ、城壁の外に不死の魔物が攻めてきているんだ。もしかして不死の王が復活したんじゃないのかい?」
「男爵様、高速馬車を用意しました。勇者様は男爵様とご一緒に、公爵領までお逃げください」
「だが、それでは領民が……」
「大丈夫です、私がこの城に残って何とかします」
そうして、乗っ取るのか?この領土は僕が貰うんだけど…
「ムーノ一族を排除して、、住民を全て不死の魔物に変えるわけだね、短角魔族の執政官殿♪」
驚愕に顔をゆがめて振り向く執政官。逃がさない。この部屋に結界を張る。その後で、主運動術で執務官に近寄り、ホーリーナックルを叩き込んだ。聖なるオーラに触れ、苦しみながら、その正体を露わにした。黒い肌にコウモリ羽と言う魔族の姿をね。
「貴様!執政官様に何をした!」
魔族と知っても、魔族の味方をする騎士エラルが、僕に剣を抜いて襲い掛かって来た。
カッキーン!
聖剣を手にしたミトがエラルの剣を防いだ。
「悪いが、彼に手出しはさせない」
魔族を見て叫び声をあげたソルナ。腰を抜かしたムーノ一族。ソルナを護ろうと仁王立ちしている偽勇者。
「聖剣ジュルラホーンよ!今こそ、俺に魔族を討伐する力を与えたまえ!」
偽勇者が魔族に対峙しているが、
「ユウシャよ、我に与えられた偽剣で、我に歯向かうか!愚かなり」
「ほざけ、魔族よ!本物の執政官様を、どこにやった!」
仲間同士の茶番か?ミトはエラルの意識を狩り終わったようだ。茶番に付き合う気は無い僕は、魔族を灰にしてあげた。
「執政官様が消えた…」
男爵が困惑している。トルマは腰を抜かしたままである。
「執政官様が魔族だったなんて。俺の事を、最初に勇者だと認めてくれたのは彼なのに……」
偽勇者が凹んでいる。これも茶番か?
「男爵様、ニナ・ロットルという名誉子爵を、ご存知ありませんか?」
ニナのことを訊いてみた。彼女は、既に保護をして、同化吸収済みである。
「うむ、知っているとも。5年ほど前に、公爵閣下が、我が領土に派遣してくれると手紙で寄越してくれた執政官候補だ…うん?なぜ候補なのだ。我が領土には既に執政官がいるのに。だがニナ子爵には変死した先代の執政官の代わりを頼むと……」
混乱する男爵。
『市民達は落ち着きを取り戻しました』
ファルコンから念話が届いた。僕の横にニナが転移してきた。
「シュウ様」
僕に跪くニナ。
「彼女が、本来の執務官のニナ・ロットル名誉子爵だ」
と、男爵に紹介した。立ち上がり、男爵を睨みつけるニナ。
「魔族に執務官をさせるとは無能な領主だな。これより、この領地はシュウ様の物とする。ここに契約書もある」
ニナが男爵にトルマのサイン入りの契約書を提示した。
「なんと…トルマ…貴様…」
「何時の間に…こんな物を…この詐欺師野郎!」
僕に罵声を浴びせるトルマ。
「無礼者め!ミト・ミツクニ公爵がおいでなのに、無様な姿を晒すな!この無能な一族め!」
この世界のニナは、毒舌系か?ミトが身分証明書をムーノ男爵に見せた。
「ミト・ミツクニ公爵様…世直し旅の…」
再び腰を抜かした男爵とトルマ。
「ミツクニ卿として、申しつける。この領地は、シュウ・ヨハネ・鬼門の領地とする。いいな!」
「メイドでなかったのか…」
トルマが呟いた。お前には、メイドって紹介はしていないぞ。
面倒なので、魔族の用意した高速馬車に、ムーノ一族と勇者君を強制転移した。乗車が終わると、馬車は勝手に高速で走り出した。どこへ行くだ?まぁ、いいか。
「じゃ、早速だがニナ、執務を頼む」
「わかりました。シュウ様」
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ミト、ニナと共に市内を視察。市民達が、何故か僕に跪いている。誰が、何を伝えたのだ?
「この地はムーノ一族から、シュウ様が領主になると、告げてあります。名の無き神の神官であるシュウ様がね♪」
って、ニナ。
「後、この地に、名の無き神の騎士団である幽玄龍騎士団が駐留するって、ファルコン達が、アナウンスしていたわ」
って、ミト。知らない間に、仲間達が動いていた。そう言えば、親衛隊のメンバー達が、市内にいるし。そういうことなのか?
「ボルエナンの前に王都に寄るよ。王に一言言わないと気が済まない」
って、ミト。20年前の王軍の暴挙の件だな。街の人達は、亜人であるリザ達に嫌悪感を持たずに接してくれた。アンデッド達から市民を護る戦いに参戦していたから。ポチとタマはアイドルのような扱いだし。
「ニナ、まず貧困からの脱却を目指してくれ」
「わかりました」
戦闘メイド達は領内の各集落へと放った。魔族が残っていたら、叩く為である。
「この世界にはサトゥーがいないの?」
やっと合流したカリナ。
「その分、僕が調教してあげる」
「あんたが?恐いよな…」
再会を祝って、胸を揉んでみる。う~ん、ソルナより、筋肉を感じる良い胸だ。
「往来で揉むな~!」
「どこならいいのかな?」
「どこでも…ダメ…ダメだって…」
ここにプレイルームを作るかな…
「で、父や姉はどこ?」
「公爵領にいるようよ」
って、ミト。
「無事なのね。それなら、それでいいわ」
「う~ん…先立つものが無いんだけど…」
って、ニナ。問題はそこだよな。何に金を使ったんだ?税収は当分無しの方向だし。どうする復興費用は?
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その日の夜、ささやかな夕食会という炊き出しを行った。市民の皆に食事を振る舞っていく。贅沢は敵なので、すいとん汁である。
「炊き出しなんか、あの男爵様が領主の時は無かったよ」
「さすが神官様ですわ」
って、好評のようだ。
「当分は、前領主の行ったことによる貧困が続くが、シュウ様の指導の元、復興をさせる。だから、しばらく耐えて欲しい」
と、ニナが熱弁を振るっている。市民達は拍手でソレの応じている。
「神官様が治めてくれるなら、耐えるよ」
「そうだそうだ」
問題は復興費用だ。今回稼いだ魔核を売るか。ミトは隠し財産は無いらしいし。
「誰か、商人スキル持ちはいないか?」
前回はサトゥーがいたが、今回はいない。
「そうね、お抱えの商人は必要よね」
ってミト。どこかに商人がいたような…そうだ、あの世界だ。とある世界から商人を呼び出した。
「商人が必要だからって、拉致ですか?」
灰色の髪を持った行商人であるオットー・スーウェンが、僕を睨んでいる。
「オットーの腕が必要なんだよ。ダメ?」
「う~ん…必要って言われると弱いなぁ…わかりました。この世界で辣腕を振るいますよ」
ヤル気になってくれて助かる。
「報酬は何がいい?」
「この先も、僕を同行させてください。色々な世界で行商人をしていきたいです」
「じゃ、頼むよ」
後はプレイルームを作って、カリナと…