異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
---サトゥー---
少しずつ、街の外へ出て、狩りをしながら、戦闘技術を磨いていく。
「おぉ、上達してきたな」
街で意気投合したリリオという市兵の女性の友人であるイオナに、剣術を習っている。リリオは弓兵だったので、大剣使いのイオナを紹介してくれたのだ。
「なぁ、サトゥー。一緒に旅に出ないか?」
リリオに訊かれた。
「市兵が旅に出られるんですか?」
この街を護る兵である。旅にいくほどの休暇は貰えないと思う。
「いや、脱走兵がいてな。ソイツを見つけて連れ戻す任務なんだ」
脱走したのは、魔法兵であり、運用の為に、リリオ、イオナ、あとルウという盾使いは、その魔法兵のチームメイトであるそうだ。
「なんで、脱走したんですか?」
「ゼナは…あぁ、脱走したのはゼナ・マリエンテールって言うんだが、爵位家の娘でね。この街を統べているセーリュー伯の政局の駒なんだよ」
この世界では、爵位の上下関係は絶対であり、魔法兵という価値もあり、セーリュー伯の政局の駒になっているらしい。
「自由に恋愛も出来ないんだよ。伯爵が、嫁に行けと命じれば、知らない男の元へ嫁ぐ運命だったから。仲間内では、好きな男が出来て駆け落ちでは無いかと噂もされている」
恋愛くらい好きにしたいよな。
「でも、問題が1つ。ゼナは門を通らずに、街を出たようなんだ」
門を通らずに?まさか、転移術か…
「うん?サトゥー、何か心当たりがあるのか?」
しまった。無表情スキルを使うのを忘れていた。
「いえ、何でも屋の店長の知り合いが、転移術を使っていたなぁって、想い出したんですよ」
「転移術だと?高位の魔法使いか…ゼナもスゴい男を見つけたな」
ゼナさんの駆け落ち相手をアイツと断定したリリオ。
「何でも屋の店長から、訊き出すかな」
◇
ナディさんと店長が、俺を睨み付けている。
「おい!営業停止にするぞ。その転移術使いは、どこにいるんだ?」
俺からの情報で、リリオ達が、店長とナディさんを尋問している。
「知らない」
「嘘を吐くと、為にならんぞ。サトゥーの話では、お前の恩人だそうだな」
その言い方では、俺が密告したようでは無いか。
「恩って、なんだ?」
「言える訳無いだろ?営業停止にすれば良い」
「そうか…ルウ、手続きをしろ。さぁ、二人共一緒に来て貰おうか」
店長とナディさんの手首を縄で縛り、連行しようとするリリオ。
「この世界のサトゥーはクソだな!」
アイツの声だ。俺、リリオ達がアイツの方へ振り向いた。
「親身に接してくれた恩人を兵に売り渡すとはなぁ」
「うっ!」
仲間も連れて来ていたようで、店長とナディさんをリリオ達から、奪い取った。
「ユーヤ、ここではもう住めないな。一緒に来るか?」
「頼む」
「では、クソのサトゥー、あばよ!」
次の瞬間、俺達は街中にいた。俺達だけを残し、店ごと転移したようだ。
---シュウ---
ユーヤとナディは、セリビーラで何でも屋をすることにした。営業許可をゾナから受け、正式に開店をした。
「お前、やることが斜め上だな。店ごと転移って…」
ゾナが苦笑いしている。ゾナに店ごと転移した理由は話してある。
「セーリュー市兵も、エゲツ無いマネを。供述しなければ、営業停止って…独裁都市なのかい?」
セリビーラから出ないゾナは、他の都市の実情を知らないみたいだ。
「まぁ、クソみたいな街だよ。亜人差別が酷すぎる。たぶん、教育がそうなんだろうけど、街の住民もほぼ全員、亜人差別を平気でする」
「まぁ、ここは寛容だよ。お前視点で困っている奴がいたら、連れて来ていいぞ」
って、ゾナも独裁者では無いのか?
「今後はどうするつもりだ?」
「仲間と共に、迷宮を攻めたいな。迷宮都市に住んでいるんだもの」
「それはそうだな」
王とは、友好条約を締結した。で、爵位もくれるそうだ。都市核持ちは爵位持ちで無いとダメらしい。
「今後は、ヨハネ伯爵と呼べばいいのか?」
「シュウでいいよ。貴族は嫌いだから」
「貴様らしいな」
ゾナとの会談を終え、家に帰宅した。
「ユーヤを追い出すなんて、酷い!」
アーゼがプンプンしている。たまには怒る事も大事なので、スルーした。
「ねぇ、イチロー兄ぃが追い出したって、本当か?」
僕の上に載っているミトに訊かれた。
「まぁ、原因を作ったのはアイツだよ。市兵に密告した経緯は知らないけど、この世界のサトゥーはクソだな」
「そうなんだ…ねぇ、いずれ、兄ぃと戦うの?」
それも手ではあるが、アイツのチートさを考えると、戦った結果、この世界が消えるとマズいなぁ。
「それもサトゥー次第だよ。売られたケンカは買うけど、こちらからは売り出さない」
今宵もミトの身体を堪能して…
「お前、本当にちっぱいが好きだよな」
って、苦笑いしているミト。いや、ミトはちっぱいでは無い。微乳なだけだぞ。
---サトゥー---
「敵は相当高位な魔法使いのようだ」
俺の宿で、今後についての会議をするリリオ達。今回も、アイツの魔法をゲット出来なかった。あれって、魔法なのか?そこが問題である。
「で、どこへ向かうんだい?」
リリオに訊いた。ゼナ捜索隊のメンバーに、編入されてしまった俺。身分は臨時市兵だと言う。
「オーユゴック公爵の公都を目指そうと思う。あれだけの高位の魔法使いだ。大都市に行けば、何か情報が得られるかと思う」
兵舎から馬車を借りて来たそうで、その馬車で移動するそうだ。まぁ、旅費もセーリュー伯爵から支給されるらしいので、俺としても悪く無い話である。
「上司に話したら、その魔法師もゼナと共に連れ戻せってことだ」
まぁ、戦力アップにはなるだろうが、連れ戻すことは無理だと思う。そもそも、この街の住民では無いと思われるから。まぁ、リリオ達は上からの命令は絶対なんだろうな。
旅の準備が難航していた。今までは旅の準備は何でも屋でしてくれていたそうだが、今はもうこの街に無いから、バザーなどで出物を見つけ、回復薬や、武器の予備などを揃えていく。
「う~ん…」
イオナが唸っていた。
「どうしたんだ?」
「セーリュー伯が、金の出し惜しみをしているそうなんだ。で、ゼナの家に負担させるって…」
脱走の罪は家族も同罪なのか?
「アイツのとこ、名ばかり士爵で、収入があまり無いんだよ」
手元に置きたい奴が金を出さないのか…脱走したくなるよな、そんな上司だと。
「で、どうなったんだ?」
「ゼナの弟が家督を継いでいるんだが…家を売ったって」
イオナが金をテーブルの上に置いた。
「家を売り、家財を売り…2足3文で売れたそうだよ」
イオナが拳を握り絞めている。
「じゃ、ゼナの弟は?」
「路頭に迷うだろうな」
マップ検索をしてみたのだが、マリエンテール姓の者は誰も、この街にいないようだが…
---ゼナ・マリエンテール---
「姉さん…」
目の前に弟であるユーカムがいる。シュウさんが、連れて来てくれたのだ。
「酷い話だよ。ゼナの捜索費用を彼に用立てさせたそうで、家も家財も売り払って、捜索隊に渡したそうだよ」
って、路頭に迷っていたユーカムを保護してくれたそうだ。
「ありがとうございます。姉と再会出来て嬉しいです」
「まぁ、この街で暮らしなよ。生活支援はしてあげるから」
「働いて役立ちたいです」
とは言うものの、弟はまだ若く、戦力の足しにはならない。
「私の身体を自由にしていいですよ」
勇気を振り絞って、シュウさんに告白した。
「既に自由にしているけど…これ以上、どうしろと?」
目を点にして、私を見つめるシュウさん。う~ん、じゃ、どうすれば、役立てるんだ?
「当面、ダミーの家の管理をしてくれるか、ユーカム」
「はい、わかりました」
ダミーの家とは、この屋敷は入口から入れない構造にしてあるので、ここへの転移陣を置いている家である。その家の厨房は、炊き出しの拠点として、主に使われていた。
「金欠なので、贅沢は敵だよ。当面はね」
自費で炊き出しをしているので、金欠気味だそう。足り無い時はセーラの実家へ行き、寄付をして貰っているとか。
「まぁ、喰うだけなら、どうにでもなるかな」
アーゼさんの所でも寄付をして貰っているらしい。
「しかし、惨いなぁ。家と家財を売れって」
そう、酷い話である。私を必要としているなら、セーリュー伯が出せば良いだろうに、一銭も出さなかったそうだ。
「セーリュー市を奪うか」
「奪うって?戦争するんですか?」
ユーカムが訊いた。
「しないよ。都市核を奪えばいい。都市核が無ければ、伯爵の地位は維持できないだろ?」
それはそうだけど、都市核って、盗めないような…
---シュウ---
ミト、パリオン、ナナと共に、セーリュー市の都市核の間に潜入した。パリオンが何かをして、ミトが設定を弄り、ナナが所有者情報を書き換えた。
「これで、この街も僕の物だな。ナナ、ここのマナを制限して、揺り篭に回して、森に分けられるか?」
「設定が終了したと宣告します」
ナナは仕事が早くて良い。
「いいのか?」
って、ミト。
「問題無いだろ?」
ついでにまだ、発見はされていない、ここの迷宮核も、貰った。これで、悪魔も発生しないだろうな。まぁ、発生しても迷宮核があるので、すぐに対処は出来そうだ、
次に王様の部屋へ転移した。
「え!」
僕とミトとパリオンが一緒にいることに驚く王様と宰相。
「まさか、王祖ヤマト様…後、そちらはパリオン神ですか?」
二人共有名人で助かる。説明の手間が省けた。
「なぁ、意味分かるよな?」
僕のことを見る二人の顔からは血の気が失せていく。
「分かります…」
「で、話なんだけど、セーリュー市の都市核と、そこにあった成長途中の迷宮核を奪った」
奪った理由を王と宰相に告げた。
「そんな訳で、セーリュー伯を処分してくれないか?」
「処分ですと…」
「被害者であるマリエンテール家を男爵にして欲しい。その上でユーカム・マリエンテール男爵に、太守代行を任せたいんだよ。理解してくれるかな?」
「それは…私の一存では…」
「王の一存では決められないのか?なぁ、ヤマトよ。この国の王ってお飾りか?」
「違う。お飾りではなかった。今はどうなんだ?!」
「ヤマト様…わかりました。その案を飲みます」
「それは良かった。パリオンが天誅したくて、ムズムズしていたから、早い決断は良いことだ。早急に王令を出せよ」
用事が終わり、家に皆で帰宅した。
---オーユゴック公爵---
また、アイツが動いたようだ。王に呼び出され、王の間に参上した。
「よく来てくれた、オーユゴック卿よ」
宰相から、この度の騒動の顛末を聞かされた。
「なんですと…アイツの配下に、王祖ヤマト様とパリオン神様ですと…」
それは、この国の王より上の存在であるってことだ。神と元勇者が配下って…アイツは何者なんだ?
「まぁ、話を聞く限り、彼の言い分は分かる。配下の爵位家に横暴な振る舞いをしていたのは見逃せない。マリエンテール卿の娘を政局の駒にし、マリエンテール卿の家、家財を総て売り払わせた振る舞い…この国の爵位持ちは金に汚くなっているのが、嘆かわしい」
王の顔は悔しそうだ。本来なら、王が断罪すべき所を、アイツが行っているからだろう。
「オーユゴック卿はどう思う?」
「アイツのした都市格の強奪は許せる事では無いですが…アイツの言い分もよく分かります。セリビーラの件もそうですが、ヤリ方は許せる行為では無いですが…」
王も宰相も頷いている。許せる行為では無いが、導き出される結果は正しいってことだ。セリビーラでは、今も私財で炊き出しを行っているそうだ。
「彼は何をしたいのだろうな。悪役に徹し、貧乏クジを引き…どこへ向かいたいのだろうか?」
王はアイツの本質を見いだしたようだ。そう、悪役に徹しているのだ、彼は。リリアンからの報告では、セーラは楽しそうに生活しているそうだ。アイツは、神託の巫女を奪い去ったという汚名を着て、セーラを神殿という鳥かごから解き放ってくれたように見える。
一体、何を目指しているのか。そこだけがわからない。それがアイツの行動に、賛同しかねる理由である。
---シュウ---
王令は速やかに、セーリュー伯爵に届いた。セーリュー伯爵は、王都の牢へ連行され、セーリュー市の運営資金にメスが入り、一門に属する爵位家に無理強いをしていないかのチェックを始めていた。言わないこともするんだ。少し感心したり。
「じゃ、この街を頼めるか?ユーカムよ」
「はい。謹んでお受けいたします」
「街の運営でわからないことは、オーユゴック卿を頼れ。あの公爵は信用出来る」
「わかりました。黒字運営をして、炊き出しの寄付を出せるようにします。姉の事をお願いしますね」
ゼナのことをお願いされてしまった。どうすればいいかな?まぁ、したいようにさせるか。
---サトゥー---
旅先で、驚愕な事実が、リリオ達を襲った。セーリュー市がマリエンテール市になったそうだ。
「何が起こったんだ?マリエンテール家は士爵で、太守にはなれないはずだが…」
何かが起きたようだ。俺達はセーリュー市へ引き返すことになった。