異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
---リムル---
調査を終えて戻って来たアイツは、難しい顔をしていた。
「で、どうだったんだ?」
「あぁ…カプリコン1だよ、リムル君…」
カプリコン1かぁ…VR世界確定だな。サトゥー達の産まれ育った世界は…
「そうなると、この世界に於ける神の正体も分かったよ。ここを作り上げたプログラマーの鈴木一郎と高杯光子だ」
うん?誰だ?
「サトゥーとミトのリアル体だよ。と、いってもこの世界の鈴木一郎と高杯光子はアバターであるが…そもそも、この二人がリアルに存在する確証も無い」
ミトは泣き崩れていた。パリオンは彼女に掛ける言葉が浮かばずに、オロオロしている。
「次に、リムル君とキリト君がどこから来たのかだが、たぶん、同じ世界だと思う」
同じ?それは違うだろう。俺は転生スライムだったんだから。
「リムル君の疑問はもっともだが、たぶん、キリト君は植物状態で、菊岡の手でソウル・トランスレーターの実験台にされたのだろう。で、リムル君は、まさかスライムに転生していると知らない、刺殺体の君をソウル・トランスレーターで第2の人生を歩ませようとしたんでは無いかと思う。その結果、転生した世界では死亡が確定し、この世界へと飛ばされてきたんだよ」
なるほど…過労死は方便か…過労状態での突然死ってヤツだったんだろう。
「で、僕は、ソウル・トランスレーターで狙撃されたんだと思う。この身体は僕の身体では無いから…能力が一部使えないし、リムル君もそうだろう?」
捕食者が使えない。頷く俺。
「この世界で再現出来ない能力は使えないんだよ。プログラマの想定外ってことだ。たぶん、それを補う為、サトゥーの能力コピースキルが、あるんだと思う」
なるほど…神であるプログラマは未知なる能力の仕組みを理解し、実装して行っているのか。
「ここから出られるのか?」
キリトが質問した。
「キリト君の場合は、桐ヶ谷和人君が目覚めればねぇ。リムル君は死んでいるから無理だけどな」
「お前が持ち帰れよ!」
「あぁ、そうするよ」
エロ神にお持ち帰るしてもらうことにした。
「問題は、君達のいた世界と僕が狙撃された世界が、違うことだ。君達のいた世界では、医療、人工知能のアップグレード化が開発の目的であるが、僕のいた世界では、手を汚さない殺戮兵器としての利用だった。この場合、1つのサーバーに2つの世界がリンクしていることになる。このサーバーは、どちらの世界にあるのか、それとも第3の世界にあるのかだ」
なるほど…それは大問題だ。誰が管理している世界なんだ?
「外部との連絡手段を手に入れないと、何にも出来ない。ここの世界の宇宙は無限に広がっていない。AIの維持管理にサーバーを大量に使っているのだろう」
そうなると、陸地部分も狭いかもしれないなぁ。
「後、ミトから聞いた話だけど、召喚者は様々な世界の日本から召喚されたと言うんだ。そこから得られる結論は、召喚者はAIだ。転生者がソウル・トランスレーターを使われた者だと言える。ミトは召喚者で、サトゥーは転生者だ。言っている意味が分かるよな?」
サトゥーが黒幕の可能性があるってことだな。俺とキリトが頷いた。
「高杯光子も、こちら側に来ていると思う。たぶん、召喚術を教えたという龍神がそうなんだろう。AI達に、他のサーバーのAIを呼び出すファンクションでも教えたのだろう。その龍神をサトゥーは試し撃ちで殺して終った。たぶん、リアル世界では混乱しているのでは無いだろうか。AIの神は死んでも生き返るが、ソウル・トランスレーターで来ている神が死ぬなんて、想定外だったろうからな」
アイツがニヤリと笑った。その場合、死んだらどうなるんだ?
---メタボ氏---
菊岡達が右往左往している。プログラマの一人である高杯光子が、トランス先で死んで閉まったのだ。リアル体の彼女の身体に、その情報はフィードバックされてしまったらしく、ショック状態が続いていた。
「想定外だぞ!どうして、殺したんだ?」
菊岡が怒鳴る。
「転移直後、記憶が曖昧なんだ。それは、システムの問題だぞ」
責任を菊岡に押し付ける。
「こっちだって、優秀なプログラマを失うのは痛い。助けてくれ」
俺にはプログラミングは無理である。企画を売り込み、プログラマと顧客の間を調整するのが仕事なんだから。
まさか、サトゥー君が転移直後に、アレを使うとは思わなかった。後輩氏と今後の相談をしてもらう為に、あの場に出現させたのが、裏目に出たのだった。
「鎮静剤で大人しくさせて、睡眠薬で眠らせたが、どうするんだ?」
「ソウル・トランスレーターで回復させるしか無いだろう?」
精神や脳のダメージを減らす、夢の装置に賭けるしか無いだろうな。
「龍神として転生させるのか?」
「他に手は無い…ミトにするって手もあるが、権限が無いからな」
---シュウ---
ミトとアーゼがやって来た。
「ねぇ、私達全員をお持ち帰りして欲しい」
全員…有りではあるが…
「直ぐには帰れないぞ」
「お願い…消えたく無い…」
既にミトの精神はボロボロのようで、限界が近づいている。アレコレ思い悩んだようだ。
「アーゼ、ミトを頼む」
「うん…」
アーゼも元気が無い。真実を知ったからだろうか。僕はリムルの元へ向かった。
「どうしたんだ?俺じゃ出来ないそ」
「シエルと話がしたい」
《解 どうそ》
「外部と連絡を取りたい。どうすればいい?」
《解 データラインを使うしかないでしょう》
データラインか…
「どこにある?」
《解 端末に接続されていると思います》
端末かぁ…アーゼ達じゃ無いよな…あれはモバイル端末だし、固定局のはずだ…あっ!閃きが舞い降りて来た。そういうことか…だから、1つずつあって…あぁ
「何か閃いたのか?」
リムルに訊かれた。
「あぁ、見落としていたよ。なるほどね。ちょっと行って来るよ」
端末と思しき場所に転移して、救難信号を流し込んだ。頼む…届いてくれ!
しばらく待つと、仲間が転移してきてくれた。
「団長、こんな場所にいたんですか」
助かったかな?電脳チームのファントムが来てくれた。
「ここって、どこの世界のサーバーだ?」
「リムルとサトゥーとキリトが産まれ育った世界ですよ」
やはり…
「リムルとサトゥーの本体は?」
「リムルは荼毘にふされ、サトゥーは脳溢血で、キリトは脳の酸欠状態でソウル・トランスレーターのお世話になっています。ちなみに、高杯光子は、危篤状態です」
そうか…プログラムのアップデートは出来ないようだ。今がチャンスか?
「誰が、管理しているサーバーだ?」
「通称メタボ氏である保田芽衣です」
サトゥーとミトの上司か。繋がったなぁ。
「菊岡は絡んでいるのか?」
「えぇ、VR世界の構築を保田に依頼したようです」
「で、学園都市のある世界との関係は?」
僕にとっての一番の懸案事項である。
「十字教がソウル・トランスレーターに、異世界追放の術式を組み込んだ為、同じ発想から作られたもう1つのソウル・トランスレーターにリンクしたようです」
なるほどね。
「で、状況は?」
「学園都市のある世界は、世紀末へ進んでいます。団長と一緒にいた奴らが、現世に現れて、混乱していますよ」
あぁ、僕の置き土産だな。僕の魂だけ飛ばされて、それ以外の者は置き去りになったようだ。
「ここに持ち込めるかな?」
「今、副団長が思案しています」
ヤマトなら、どうにかなるだろうな。
「で、戦力はファントムだけ?」
「僕じゃ出来ないでしょ?出来る人材を持ち込みましたよ」
はい?ファルコンの後から、真っ赤な顔で俯いている美琴が現れた。
「なんだよ~。そんな目で見るなよ~」
もっと、良い女体は一杯あっただろうに…なんで?
---リムル---
アイツとその仲間が戻ってきた。呼び出せたようだ。そして、アイツから、手に入った真相を俺、キリト、ミト、アーゼ、パリオンに話してくれた。
「菊岡さんが絡んでいたのか…」
驚いた表情のキリト。俺の身体は荼毘にふされたそうだ。まぁ、転生スライムとして生きる覚悟があるから、いいけど。
ミトはショックからか、その場で崩れるようにして倒れ、パリオンとアーゼが介抱している。
「ミト、アーゼ、パリオンは、消えるかもしれない。バックアップを取っておくから、心配はするな」
彼女達はモバイル端末の可能性があるらしい。端末自体は、都市や迷宮を制御するコアという物だったらしい。それらの端末は地脈というデータラインで繋がっており、この世界のベース部分でデータの蓄積及び解析をして、改良の為のデータにしているらしいと言う。
「開発担当だった二人のプログラマを失ったんだ。この世界をメンテ出来る者は今いない」
「転生者はもう出ないのか?」
キリトが訊いた。
「それは菊岡次第だが、サーバーの能力を超えた場合、この世界は崩壊する。わかるよね?」
サーバのメンテ要員不在で、データを増やし続けると、ハングアップしやすくなる。その場合、AIがまずダウンするだろう。回避方法は色々とあるが、素人なら負荷の大きい順に停止若しくは削除するだろう。
「その場合の負荷の大きな存在は、勇者、魔王といった召喚者達と、ハイエルフ、神と呼ばれる特権階級の者達だよ。リムル君は問題無いよ転生者だから、負荷は掛けていないからね」
だから、あの3名は消える可能性があるのか…
「なぁ、お前の能力で、どうにかならないのか?」
「現状では無理だよ。僕の本当の身体では無いから…能力に制限があるしなぁ」
悔しそうなアイツの顔。避けられない事態のようだ。かと言って、俺も能力の制限があるし…困ったなぁ。
---シュウ---
翌日、パリオンが消えていた。そのことはがミトへ大ダメージを与えた。
「シュウ…消えたくないよ~」
弱気な表情のミト…テンちゃんが寄り添っている。アーゼはしきりに僕とのスキンシップをしてきた。次に消える予感があるようだ。
「ダーリン…消えたく無いよ。ねぇ、ダーリン…」
見ていて痛々しいアーゼ。だけど、今の僕には何もしてあげることは無い。ただ抱き合うこと以外…何も無い…くそっ!
アーゼの予感は的中した。翌日、僕の見ている前でアーゼは消えた。交わっているのに、消えていくアーゼ。泣いているアーゼを抱き締めても、そこには物的な感触はまるで無かった。なんてことをするんだ。人工知能だって、人格を持っているんだぞ!
---菊岡誠二郎---
サーバーにエラー表示が出ていた。どうしたんだ?原因を探ると、コントロールソケットが見付からないらしい。ダイレクトに世界を制御するにはマシンパワーが足り無いので、世界を数エリアに分割し、神とハイエルフの2種類のAIに任せていた。それらが消えていた。なんでだ?アクセスログをコンソールに出して、チェックすると、保田が削除していた。何をやっているんだ?
「おい!保田!何を勝手にやっているんだ?!」
「はぁ?過負荷状態だぞ、原因を消すのが当然だろ?」
コイツ、素人か?
「OSのモジュールを消すってどういうことだ?」
「はぁ?」
わかっていないようだ。OS自体を知らないようだ。
「基幹モジュールだぞ。どうするんだ。データの取得すら出来ないぞ」
「都市核と迷宮核で取得できるだろ?」
こいつ、仕様すらわかっていないのか?
「その取得したデータのヤリトリが、出来ないってことだ」
「なんで?」
危機感を感じない保田の表情。マズい、キリト君を救出しないと…
---リムル---
「何?」
アイツの表情が険しい。何かあったようだ。
「どうしたんだ?」
「システムモジュールを削除したらしい」
はぁ?なんで?
「この世界とのリンクをさせていた通信ソケットモジュールだそうだ」
それは…アイツとキリトの部屋に行くと、倒れているキリトを見つけた。
「おい!大丈夫か?」
大丈夫でなさそうだ。
「まずいなぁ。美琴、微電流を流しこんでくれ」
「えっ!微電流は得意じゃないよ~」
「殺すなよ!」
「何が起きているんだ?」
「魂と本体のリンクが切れたんだ。本体は死んだはずだ」
あぁ、そういうことか。
「魂はここにあるから、向こうでソウル・トランスしても、リムル君のようにはならない」
「御免なさい!」
美琴の悲痛な叫び…死んだらしい。咄嗟にアイツがキリトの魂を手にして、身体にしまった??
「僕の魂に貼り付けておく。これしか手が無い。そうなると、高杯光子と鈴木一郎もダメだな」
あぁ、そうなるな。って、お前は?
「僕か?暗殺兵器だぜ、本体と元から繋がっていないよ」
なるほど…
「医療用のソウル・トランスレーターの被験者は全滅だな」
そうだね…