異世界で出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:もっち~!
---シュウ---
突然、山の中に転移して固まっているルル。仲間達も固まっていた。王祖ヤマトと出掛けたのに、ルルと戻って来たから。
「お兄様、何をやらかしたのですか?」
やっと、白音が声を掛けてきた。
「王祖ヤマトとルルをトレードしてきた♪」
頭を抱えている白音。
「はぁい?」
リーンが驚いている。
「いや、あの子、サトゥーの知り合いだったから、サトゥーの奴隷と交換してきた。だって、こんなに可愛い子をを奴隷にしたままなんだよ、アイツは!」
僕はルルに掛かっていた『強制』を『無価値』にして、奴隷から解放した。
「えっ!」
何かが変化したらしいルルが驚いている。
「奴隷の少女を解放する為に、王祖と交換ですか?さすが、シュウ様です♪」
セーラは僕に笑顔で抱きついて来た。
「価値が違うだろ?」
リーンは異を唱えている。
「価値?僕の価値だと、ルルの方が上だよ。ルル、サトゥーの元でつらかっただろ?ここには奴隷は一人もいない。みんなと姉妹と思って接していいからね。慣れるまで、セーラとゼナにまかせる」
---サトゥー---
ルルは連れて行かれた。落ち込んでいるアリサ。術の解けたカリナとヒカルの身体を、きれいにして、ベッドに横たえた。
「アイツ、何者なの?」
アリサに訊かれた。
「わからないんだよ。ステイタスがまるで見えないんだ」
この世界に来てから、アイツだけだ。ステイタスがまるで分からないのは。後、アイツの使った術、魔法、スキル、それに対する抵抗力が得られない。アイツ、何者なんだ?ゲームマスターなのか?
あの局面で、ゲーム画面が開けなかった。アイツの仕業で、間違え無い。アイツが転移アウトすると、開けるようになったから。
「ねぇ、ルルを取り返してよ!」
アリサに泣き付かれた。しかし、ヒカルの受けた仕打ちは尋常では無い。泡を吹いて白目を剥くまで拷問したようだ。俺の知っているアイツに、そこまで出来るとは思えない。カリナの受けた術もよく解らない。あれは何だ?
『何?王祖ヤマト様ではないか』
カリナが持つ「知性ある魔法道具」のラカが声を上げた。まさか、ヒカルが王祖ヤマトなのか?もしかして、失踪って俺と同じように、ここに召喚されたのか…
ヒカルは俺の幼なじみで、同じ職場にいた後輩である。本名は高杯光子であり、職場では後輩氏と呼ばれていた。それが、仕事を放り出しての突然の失踪である。俺にとっては半年であったが、ヒカルにとっては数十年の時が経っているのかもしれない。
「うっ…え…イチロー兄ぃ?」
ヒカルが意識を取り戻した。
「あぁ…」
俺の本名は鈴木一郎である。ヒカルからイチロー兄ぃと呼ばれていた。
「会いたかった…ずっと…」
目からポロポロと涙を溢し、俺に縋り付いてきた。
「アイツに、何をされたんだ?」
思い出したくないかもしれないが、訊いておかないといけない。
「アイツ…恐い…尋常じゃ無いよ、アイツ…魔王なんて、アイツに比べたら赤子だよ」
魔王が赤子…なんだ、その尋常じゃなさは。
「アイツ…有り得ない物を使役していた」
「有り得ない物?」
「うん…獣の数字だよ」
獣の数字…たしか、聖書に出てくる666か?
「アイツ、きっと…うん、そうだよ。敵にしちゃダメだよ。殺されるならまだいい。ロストされたら、もう転生すら出来無いんだよ」
ヒカルが真っ青な顔で、震えている。
「マジ?トライヘキサを使役しているの?」
アリサの顔色も悪い。
「それって、強いの?」
「おい…聖書を読んでいないの?」
「ドラゴンよりも?」
「目の前で黒龍の成龍が、トライヘキサに捕食されてしまった。そうだ!あいつ、ドラゴンマスターだったんだ」
「ドラゴンマスター?ドラゴンの主?」
「そう、龍王と呼ばれる存在だよ」
龍王…ラスボスじゃないのか…どっかのRPGだと…
「アイツらはどこに向かっているんだ?」
「あの方向だと、エルフの里だわ」
ヒカルが教えてくれた。エルフの里?何をしに行くんだ?龍王に用は無い場所に思える。
「おい、追うよ。ルルを取り替えすぞ」
「イチロー兄ぃ…まさか、私を返品するの?」
あっ!そうなるのか…そうなると、奪い取るしか選択肢が無い…
「まさか、奪い取る気なの?」
アリサがジト目で見ている。う~ん、現状では難しそうだ。ステイタスの分からない相手だ。最初に会った時に、アイツに言われたっけ。相手の力量が分からないでケンカを売ると死亡フラグが立つと。まさに、そんな気がしている。
「アイツもこの街に滞在していたんだ。アイツのパーティーメンバーを調べておこうか」
パーティーメンバーで、パーティーの特色が見えてくるはずである。
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しかし、調べてはみたのだが、思う様に情報が集まってこなかった。表立って活動していないせいもあるとは思う。アイツの手柄のほとんどは俺が貰っているし。そもそも、アイツが泊まっていた宿屋が見付からないのだ。どこに泊まっていたんだ?
全マップ検索で宿屋をリストアップして、一軒一軒漏れの無いように調べたんだけどなぁ。宿以外に泊まれる場所となると、野宿か…
手詰まりになった頃、知り合いのトルマ・シーメンが情報を持って来てくれた。この男は、現シーメン子爵の弟で、オーユゴック公爵の甥である。賊に襲われていた処を助けた縁で知り合った。
「えっ?オーユゴック公爵家の入り婿?」
意外な事実である。入り婿?データ検索すると、現公爵には二人の孫娘がいる。一人は、サガ帝国の勇者ハヤト・マサキの従者で、もう一人は神託の巫女である。どちらも入り婿を取るとは思えない。
「入り婿って、誰の?」
「それが、教えて貰えなかったんだよ。二人のどちらかだと思うんだけど…」
それはどちらかだろう。選択肢は二つしか無いんだから。うん?本当に二つか?もしかして、オーユゴック公爵家の家族扱いだとしたら。何かしらの便宜を図った見返りの可能性があるなぁ。
この街に停泊していたことを考えると、この街にある、テニオン神殿に所属する巫女の可能性は高い。なんの便宜を図って貰ったのだろうか?
神託の巫女であるセーラをマップ検索で調べてみた。すると、この街にはいないと出た。おかしい。この街の神殿の巫女である。それも神託の巫女ともなれば、不急な外出は出来無いはずである。まさか、アイツが攫ったのか?そして、公爵を強請って…
ペンドラゴン卿として、公爵を表敬訪問して、事実を聞き出すことにした。『尋問』スキルをオンにして、公爵と歓談をしていった。その結果、神託の巫女は廃業して、セーラ・オーユゴックとして、アイツに帯同していた。更に彼女の姉であるリーングランデ・オーユゴックも、勇者の従者を廃業して、アイツに帯同しているそうだ。それは、公爵として、アイツへの恩義を果たすことであって、決して強請りでは無いようだ。
「で、彼は何者なのですか?」
俺は最後の尋問をした。
「ふっ…その質問自体が無意味だよ。分かる者だけが、分かれば良い存在だ。訊いて時点で、君は事実を知ることは無いだろうな」
と…何者なんだ?
確か、ゼナさんも一緒って言っていたかな?ゼナさんの父であるマリエンテール士爵に、会いに行ってみた。
「今更、何か用かね?悪いが、帰ってくれ。君の顔は見たく無い」
って言われた。どういうことだ?
「あれ?サトゥーじゃないか」
街を歩いていると、ゼナさんの親友のリリオに声を掛けられた。
「墓前に花でも手向けに来たのか?」
「誰の墓前ですか?」
俺の言葉を受け、リリオの表情が険しくなっていく。
「お前…ゼナが報われないだろ?お前のせいで…」
まさか…ゼナさんが…だって、アイツと一緒に旅をしているはずだ。
「旅に?あぁ、そうだよ。だけど、人間としてのゼナはもういないんだ!お前のせいだ!」
怒り心頭のリリオに話を訊いた。俺が彼女を置いて旅に出た為、彼女はベルトン子爵に叱責を受けた上、激しく罵られたそうだった。そして、魔が差した彼女は高みの塔から…
「助からないと思った。顔面は潰れていたし…だけど、あの方がゼナに手を差し伸べてくれたんだよ。結果、命は取り留めた。だけど、ゼナは人間ではなくなったんだ。ゼナの生きたいという声を叶える為に、違う種族としてゼナに道を開いてくれたそうだ」
そして、人間では無くなったゼナさんは、この街から出て行った。亜人差別が激しいこの街では暮らせないから…
「あの方って?」
「高位の魔法使いだそうだ。ゼナが弟子入りを望んでいた。今はどうしているのかな…」
知らなかった。だから、アイツは俺にヤリ逃げと怒りを込めていたのか…
---シュウ---
ようやく、ボルエナンの里がある森の前まで来られた。結界が張られている。僕が先頭を歩き、結界を無効にして、正しき道を歩いて行くと、ツリーハウスの点在する場所に出た。着いたのかな?ミーアに確認すると、
「うん♪」
だそうだ。着いたらしい。だけど、エルフのオーラを感じ無い。誰もいないゴーストタウンのようだ。うん?頭上から微かにハイエルフのオーラを感じる。僕はそのオーラ目がけて転移した。
展望台のような場所に出た。窓から宇宙が見える。ここって、衛星軌道か?周囲を見ると、無防備な姿勢でうたた寝をしているハイエルフ様を見つけた。『脱衣』させて、『マリオネットモード』でハイエルフ様の身体を操り、アレを調べた。うん♪、この子は出来るな。問題はハイエルフってことだな。ハイエルフは鬼門である。まぁ耳を避ければ問題は少ないと思うけど。この世界に来て、一番かわいいと思えるレベルである。唇を試食してみる。う~ん、柔らかい上に、吸い付き感がたまらない。
そろそろ目覚めそうなので、『マリオネットモード』を解除してみたのだが、ハイエルフ様が僕に抱きついてきた。その拍子に彼女へコネクトインしてしまった。あれ?僕は脱衣していないのに…なんでだ?うっ、このハイエルフ様が何かの術を発動したようだ。彼女の中はサイコーである。なんだ、この感触は…
「私をお嫁さんにしてください…」
って、プロポーズされた僕。なんで?どうしてよ?
プッシュ!
密閉ドアが開き、誰かが入って来た。
「あなたは誰?アーゼ様、何をされているんですか?」
「この方がプロポーズされたから、お受けしたのです♪」
目の前のハイエルフ様の表情はのぼせているようだ。うっ、何かやらかしたか?僕は逃げるように、その場から転移した。
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地上に戻ると、ミーアの両親が出迎えてくれていた。
「お兄様、どこに行かれていたんですか?まさか、やらかしていないですよね?」
白音の詰問、首を横に振る僕。
「あぁ~、やらかしたんですね?で、ハイエルフとですか?」
なぜ、ハイエルフと決めつけるんだ?って、白音が頭を抱えている。
「お兄様、この世界のハイエルフ、エルフは耳じゃないんですよ。額に口付けで婚約、口に口付けで結婚だそうですよ。で、どちらをやらかしましたか?」
そうなのか…まずいなぁ、後者だよ。
「さすがはお兄様です。どの世界に行っても、ぶれずにハイエルフと問題を起こしますね!」
って…さすおにみたい言わないで欲しい。凹み気味の僕。
「いった~♪ダーリン♪」
先程のハイエルフ様が僕に走り寄り、抱きついて来た。えっ?どうして?
「お兄様、責任はとってあげてくださいね。この世界のハイエルフは、神の花嫁として作られているそうですよ♪」
まさか、だから勝手にコネクトインしたのかぁぁぁぁ~!心の動揺を見付からないように冷静に応対した。
「じゃ、僕とは結婚は出来無いよ。僕は僕が神であることを否定して生きているからね♪」
僕の言葉で戸惑うハイエルフ様。でも、何かに気づいたようで、その表情は明るい。
「なるほど…否定しているけど、神なんですね♪」
何故、そうなる?否定しているんだから、違うだろうに…
「ミーア、彼は神なの?」
ハイエルフ様のお付きの者がミーアに訊いた。
「うん♪」
頷くミーア。おい、そこは否定しろよ~!
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僕のやらかしてしまったハイエルフ様は、アイアリーゼ・ボルエナンと言い、通称はアーゼだそうだ。で、白音が間に入って交渉してくれて、本隊と合流後に、リヴェリアの里から、ハイエルフを数名、留学扱いで送り込むことで、納得してくれたそうだ。
「じゃ、私も旅に行けるんですね?」
「アーゼ様、代わりの者が来るまでダメです」
いや、まだ揉めているようだ。ハイエルフである養女のリヴェリアは、主賓級の扱いであり、彼女は戸惑っていた。で、僕まで主賓級の扱いに…肩が凝るんですか。
ナナはここで、改良してくれるそうだ。ナナを一目見て、ホムンクルスと見抜き、元々、この里に研究者がいたそうで、その資料を元に改良してくれることになった。
ミーアを送り届けたし、次はどこへ行こうかな?セーラ、リーン、ゼナに相談してみた。
「迷宮都市なんかどうですか?」
って、リーン。なんか、楽しめそうだな。まさか、オラリオでしたって、オチでは無いよな。
「そうだな。そこへ行くか。じゃ、ここで、補給して、ナナの改良が終わり次第、出発にする」
---サトゥー---
ゼナの墓前に花を手向けた。俺のせいで…
「気にするなよ。今のゼナは幸せだと思う」
って、リリオ。
「だって、師匠と呼べるヤツと旅をしているんだから」
そうなると、公爵の孫娘二人も、命に関わる問題が起きた可能性がある。そうだ、姉の方は、勇者を召喚するのに命を捧げていた…アイツの目の前で…
そうか、アイツは『蘇生』術を持っているのか。たぶん、それは人間が扱えるものでは無いのだろう。だから、僕では習得出来無かったんだろう。
「で、お前達はいまどこに停泊しているんだ?」
「オーユゴック公爵領です」
「うん?確か、そこの神託の巫女が奇跡の体験をしたらしいぞ」
「奇跡ですか?」
「巫女長、司祭長が、御業を直に見られたと感動しているらしい」
アイツだ…神殿で何かが起こって、アイツが暗躍して解決したのだろう。
「そうそう、私達、迷宮都市に派遣されることになったんだよ。迷宮の運営の仕方を勉強するって目的でね」
迷宮都市?
「そこには何があるんですか?」
「王都直轄領の迷宮都市でね、セリビーラの迷宮って言うのがあるんだよ。上層、中層、下層に分かれていて、内部は物凄く広いらしいよ」
そうなのか…アイツも行きそうではあるな。
「じゃ、俺達も向かおうかな、そこへ」
「そうか、じゃ、迷宮都市で再会だな♪」
アイツは、エルフの里で、何をしたいんだ?それも気になる。エルフの里へ、まず向かうかな?