創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER 作:JNEXEL
「敵が来る!!」
ハイラックと一時的に別れ、エスのみがコロニー内を一直線に北上する運びとなった。その最中、ビルを突き破ってMSが目の前に現れた。エスは急いでレバーを引き、ゼイドラを着地させる。
「何だコイツは...ガンダムフレームか...?...やる気かよ!」
黒いガンダムフレーム機が幅広の太刀と短刀を構え、ビルの残骸から跳躍した。エスは急いでゼイドラを他のビルの陰に隠すが、数秒もせずにガンダムフレームの持つ太刀によって真っ二つにされた。
「隠れても無駄だ...簡単に見つけられるから」
黒いガンダムフレームから聞こえる声は少年の様だが、その割に冷淡であった。
「コイツ...!!」
ゼイドラは後退しながら左手のビームバルカンを乱射した。しかしガンダムフレームには共通の特徴がある。それはビームを無効化するナノラミネートアーマーの存在だ。対モビルアーマーとして考案されたという説があるが、これは他の世界観のMSと戦うダイバーズとも見事に噛み合っていた。ビーム兵器主体の機体が多いこのゲームでは圧倒的有利に立てる。エスもこの機体を目にした瞬間、それは覚悟していた。その上でどうやって戦うかを考える時間を稼ぐしかないと、立ち回る。
「名前が出てきた...!バルバトス・ゲーティアってか!」
ゼイドラのモニターに、黒いガンダムフレームの名前が表示された。バルバトス・ゲーティアと言うようだが、頭と背中の翼型のユニットのせいでバルバトスとは気が付かなかった。バルバトス・ゲーティアはそのまま高く飛び上がると急角度で降下し、サイドアーマーのレールガンを展開。ゼイドラの背後を撃ち砕いた。ゼイドラが踏み込もうとしたアスファルトが爆ぜる。エスはそれに感づきレバーを前に倒した。そのままウェポンセレクタを操作、ゼイドラソードを選択した。
「ガンダムフレームが相手なら、ビームは牽制と思うしかない!」
腰から伸びる尻尾のようなパーツを引き抜き、右手首にマウントした。ビームサーベルに匹敵する切断力を持つ、この実体剣ならバルバトス相手でも戦える。ゼイドラがゼイドラソードの切っ先を勢いよく突き出す。バルバトス・ゲーティアはそれを短刀で受け止め、滑らせながら前進してゼイドラの鳩尾に膝蹴りを食らわせた。
「アンタ、邪魔だから消えろよ」
「悪いけど、俺はここじゃ止まれないんだ」
ゼイドラガンをバルバトス・ゲーティアの膝に押し当て、トリガーを引いた。ズドドドド!!と連射音がするのと同時にバルバトス・ゲーティアが真後ろへ飛び退いた。いくらナノラミネートアーマー言えど、至近距離でしつこく当てられれば少しは痛手になるとエスは期待していた。だが現実は甘くなかった。バルバトス・ゲーティアの動きに変化が無いと言う事は、ただ驚かせただけに過ぎないのを意味していた。
「それじゃあ、さっさと終わらせるか」
バルバトス・ゲーティアのダイバーはそう呟くとレバーを一気に前に倒した。バルバトス・ゲーティアがくの字を繰り返し描きながらビルの間を縫う。
「どこからやる気なんだ...!」
ゼイドラはゼイドラソードを収納し、上昇しつつ右手のビームバルカンと左手のゼイドラガンを斉射。手当り次第目の前の建物を破壊する。だがそんな悠長な方法は自らを不利な状況に陥れる。
「何を...している!」
煙を太刀で薙ぎ払い、バルバトス・ゲーティアが眼前に迫る。その太刀筋がゼイドラガンを両断した。ところがエスは口許に笑みを浮かべる。
「そう来ると思ったよ!」
「武器を掴んだ...触るなよ...ッ!!」
ゼイドラが太刀ごとバルバトス・ゲーティアの腕を掴み、スイングしようと引き寄せた。バルバトス・ゲーティアも抵抗しようとして短刀を逆手持ちから持ち替え、ゼイドラに突き刺そうとした。しかし、短刀はあらぬ方向から飛んできた銃弾によって粉砕された。バックパックのウイングユニットを使い、逆にゼイドラを振り回してやろうとするがそれも背後からの銃撃によって、爆煙を上げた。
「見抜かれてる...!?」
バルバトス・ゲーティアのダイバーはウイングユニットの弱点を見抜かれたと思い、咄嗟に真後ろを見た。そこには真っ黒なRX-78-2に酷似した機体が立っていた。
「余所見してる場合かよ...このまま落とす!」
バルバトス・ゲーティアがどこかに注意をそらしたのを好機とみるや、ゼイドラは力いっぱいに振り回してビルに叩きつけた。投げ出されたバルバトス・ゲーティアはビルを二棟ほど破壊しながら吹き飛び、やがて機能停止した。否、余程機体性能を過信していたのかショックを受けているに違いない。
「ふぅ...初っ端に出てくる相手にしちゃあ、強い...ハイラックさん、居るなら居るって...!」
エスもようやくハイラックの合流に気づき、溜息をついた。
「悪いね。だけどまぁ、よく被弾しなかったもんだよ、流石だ。それで、さっきの百里からは何も出なかったどころか、被害者だったみたいだ」
「でも騎士団の識別コードが...」
「恐らく逃げ出してきたんだろう。乗ってたのは女の人だったけど、やってる事がおかしすぎると泣いてたし、もうこれは考える余地もない」
「騎士団を倒すんですね...こうなる事は何となく分かってたんで、驚くも何もないけど...やってやりましょうよ!」
エスが強気に笑むのを見て、ハイラックも釣られて笑いそうになった。
「君はそういう時になると元気だな」
「ダイバーズの平和の為に!とか考えてたら燃えてきたんですよ!」
先を行くゼイドラの背中を見ながら、ハイラックは少し憂う。
「そう言う時代が俺にもあったのか...なんて言えないか。そんな人間でも無かったのが、今更悔しくなってきたよ」
「思ったより敵が少ない...何なの?」
ZⅡのエルニアは、想定よりも早くフィールドの端に到着してしまった事に違和感を持った。ここまで来るのに遭遇した騎士団の機体は3機。そこまでの腕もなかったのですぐに対処できた。
「こちらブレイヴのグラハムだ。合流する」
ブレイヴ指揮官用試験機がZⅡの目の前で変形を解除して降り立った。
「もうここには何もないです。このまま西ルートか、北ルートへ合流した方がいいかも?」
「そうだな...確かにここに来るまでに、何かと出くわすことは無かった。南側もセカンドが動いているがそれらしきものも無しと聞いている。とりあえず君は西ルートへ回ってくれ。不安要素は取り除くべきだろう?」
西ルートと言えば、ウェルスとシローが向かっている。グラハムはエルニアの不安をすぐに察し、そこへ向かわせる気でいた。
「私はそのまま北ルートへ向かう!作戦は必ず成功させるぞ、いいな?」
「は...はい!グラハムさん!」
余りにも雰囲気がガンダム00のグラハム・エーカーそのものであった。エルニアは思わず敬礼をしそうになり額をハンカチで拭った。
「でも、そうさせてくれるならありがたいかな...その恩は戦果で返さなくっちゃね!」
エルニアはペダルを踏みZⅡを上昇、MA形態に変形させて西ルートへ急行する。北ルートの航路を跨ぎ、ウェルス達との合流を目指すがその道中で予想し得なかった物と遭遇してしまった。
「4方向から、敵...!?」
左右と上下からMSの熱源反応が近づいてくる。エルニアは出来る限り振り切って、西ルートに入った段階でウェルス達と対処しようと考えた。しかし。
「速度じゃこっちのがダンチなんだよ!」
ZⅡに今にでも追いつくような速度でMSが接近する。エルニアはぎょっとして急旋回させるが、その時点で追いつかれてしまう。
「速すぎる...何!?」
「このハイゼンスレイⅡ・ラーで、お前を灰にしてやる!」
互いに変形を解除、ZⅡのビームサーベルとTR-6ハイゼンスレイⅡ・ラーの
「アンタら騎士団が何を考えてるか知らないけど!下らない騒ぎを起こしてダイバーズから人が離れてくの、分かんなさそうね!」
ZⅡがメガビームライフルを薙ぎ払うように放つ。ハイザックが巻き込まれ撃墜したが、ハイゼンスレイⅡラーは依然として健在だった。
「これもダイバーズを新たなステージ引き上げるってんだ!そんな事すら受け入れられないオールドタイプは、引っ込んでろ!」
レオンは照準をZⅡの左足から僅かに離れた場所に固定した。ハイゼンスレイⅡラーのCSBが変形、ロングビームライフルが放たれる。エルニアはこれに仰天、すぐさまレバーを反対方向に倒して難を逃れた。
「こっちが避けようとした方向へ撃ってきた...!?」
真横からビルドガンダムMk-Ⅱがビームサーベルで斬りかかるが、ZⅡはバックパックのクレイバズーカで追い返し、ビームサーベルで背中から串刺しにして撃墜した。
「エルニアッ!!」
「何だと...そうかい、そっちもお仲間引き連れてきたってか!」
少年の声が聞こえ、レオンはZⅡの救援と見た。ハイゼンスレイⅡラーのCBSが両手から離れ、極めて複雑な変形を経て巨大なクロー型のユニットとなった。そのままウェルスのアルケーへ向かって射出した。
「行け、ファング!この程度は造作もない!」
アルケーはコンテナからGNファングを射出、ハイゼンスレイⅡラーのCBSにぶつけ破壊を試みるが、あっさりと回避されてしまった。ウェルスは元よりビット系武装の類を使う経験が少なく、今回の作戦の為にアルケーを選んだのは、その練習も兼ねていた。
「ビットならこっちの方がやってんだぜ!舐めるなよ!」
ハイゼンスレイⅡラーの背中から強化型ウィンチキャノンが2基射出、CBSと挟み込むように配置した。CBSの拡散メガ粒子砲と強化型ウィンチキャノンによる砲撃で網の目のような弾幕を形成する。これほど密な攻撃を仕掛けられては並大抵の相手では対処できない。そう、相手が並大抵であるならば。
「...分かった!その手で行くんでしょ?」
エルニアは何かを悟ったかのようにZⅡを変形させ、メガビームライフルをハイゼンスレイⅡラーの眼前目がけはなった。目の前を通り抜ける光の矢にレオンは舌打ちをし、機体をZⅡへ向けた。
「お前ごと潰してやろうか!?」
「あ〜らら、こっちに見惚れちゃダメでしょ!」
ZⅡが変形を解除、バックパックのクレイバズーカをハイゼンスレイⅡラーのすぐ近くで砲撃した。拡散砲弾でカメラアイが片方潰れ、レオンは驚愕した。それが大きな隙を生み出してしまう。
「これで、チェックメイトだ」
ハイゼンスレイⅡラーの真下にウェルスのアルケーが潜り込み、GNバスターソードで縦一閃に斬り裂いた。
「この俺が...まぁいいさ、作戦はもうじき完了するんだ、撤退する!」
激しく損傷したハイゼンスレイⅡラーは虚空へと飛び去った。
「助けに行くつもりだったのに助けられちゃった...てへっ」
エルニアはZⅡのマニュピレータをアルケーの右腕に接触させる。いわゆる「お肌の触れ合い回線」である。
「そこまで無茶するような奴じゃなかっただろ...どうしたんだ急に」
エルニアの腕は、ウェルスもよく知っていたがここまで場を荒らすようなアグレッシブさを見せる事は無かった。彼女の戦いはBLADETと共にある事で真価を発揮する。だが今回はまるで違っていた。エルニアもそれについてはよく分からない、と答えた。
「でもさ...ウェルスだって同じだったでしょ?私達の"妹分"の為に出来る事はやりたい...ってね?私見てたからね?キャプテンさんの前であんな事言っちゃうなんて、びっくりだよ!"俺達だってアイツのことは放っておけない"ってさ」
「なッ...お前はあの時、アヤカと喋ってただろ...!?」
「ウェルスの小声は聞き慣れてるから分かるの」
長い付き合いだからこそ、少しの事でも気づける。そういう間柄だ。
「ハイラックから通信...?こちらZⅡのエルニア!どうしたの?」
唐突にガンダムECから通信が入った。
「エスがやってくれた!作戦は完了、帰投してくれ」
「ちょっと待って、私達もそこ行くから!ウェルス、擬似太陽炉ちょっと大変でしょ?乗ってく?」
エルニアは即座にZⅡを変形させてアルケーに近づいた。アルケーも手をかけられそうな場所にマニュピレータを置き、GNドライブ[t]の出力を最小限に抑えた。アルケーを乗せた状態で移動しながら、エルニアが不意にくすりと笑った。
「何か昔思い出すよね...ほら、BLADETのBアームズが完成する前。意地でもBLADET使わないで、アストレイノワール使ってた時期」
「...どうしてその話を...まぁ、確かに長距離移動は厳しかった...だから何かとフルーティストウイングに頼ってたな」
ウェルスはやや気まずそうな顔をした。今では彼女を守る立場になれているが、BLADET完成前は逆に守られる事が多かった。その事が彼にとっては歯痒い思い出だったのだ。自分をここへ導いてくれた彼女に報いる事が、何よりも果たすべき事だと自らに課していた。
「あの時、お前が導いてくれなかったら...そんな事すらも話すなんてなかっただろうな...ありがとう、エルニア」
ほぼ聞こえぬ声で呟いていた為か、エルニアに聞き返される。しかしウェルスは「何でもない」と返した。ふと視界が少し歪むのを感じ、何度も瞬きをした。
「おはよ怜ちゃ...んん!?」
英梨が起床し、仕事部屋から出てきた矢先にあるものが目に飛び込んできた。ホットサンドにハムが乗ったサラダとコーヒー。要するに朝食な訳だが、ここまでしっかりした物を朝に食べるのは就職直後以来だった。怜がひょっこりと台所から顔を覗かせた。
「おはよう英梨さん...一応朝ご飯作ってみたから...後、色々借りたけどちゃんと洗ったから大丈夫」
「あ、あぁ...そうなんだ?自分だけで良かったのに私のまで...やっぱり怜ちゃんって、根は優しいんだ?」
英梨から優しいと言われ、怜はすぐに台所に引っ込んだ後玄関を出た。
「あっ...!?私...今何か変なこと言った?」
英梨はポカンと見送った。
(優しいとか、言うなっての...すぐ頭が真っ白になるじゃない...!)
怜はバスに飛び乗り、図書館へ向かった。こうして自分だけの時間を満足に取られるようになった今、高校生としてやるべき事はやっておきたかった。国連大学に合格したとはいえ、その後の内申点も評価対象になる可能性が高いのだ。昨日、美彩を通じて片桐に問い合わせたところ後1週間休んでしまうと入学が絶望視されると言われていた。30分ほどバスに揺られ、図書館に到着した。流石にこの夏日ではレザージャケットは無理があるので、英梨から譲ってもらった水色のノースリーブパーカーを選んだが、それは正解だった。しかし怜の性格上、その下には長袖の薄手のシャツを着ている。そして白いスキニーパンツである。図書館に入るとすぐに作業用デスクを予約し、空くまで英単語帳を読みながら時間を潰す事にした。
「あ...怜?久しぶりっ」
何と美彩も図書館を訪れていた。髪を切っていたので怜は最初は気づかなかったものの、声と顔ですぐに美彩だと分かった。
「美彩...!て言うか、どうしてここに...」
「え?決まってんじゃん、怜に会いに来たんだよ!」
「建前が適当過ぎない...?」
美彩はすぐに怜の隣のデスクを予約し、彼女に密着するように座った。美彩が余りにも安心したような顔をするせいで、怜は何も出来なかった。