※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 29 もう一度歩き出す為に

あの不気味な出来事から逃げ出し、怜はようやく帰宅した。英梨はまだ仕事なのか帰って来ていない。そう思っていた。英梨の仕事部屋は基本的に鍵がかかっていて入る事が叶わないが、なぜか半開きになっていた。怜は多少の罪悪感を感じつつも、覗いてみる。デスクトップマシンのそばに置かれているのは、間違いなくガンプラダイバーズ用のスキャナ"DGS-02"だった。彼女もガンプラダイバーズをプレイしているのかと内心驚くが、更に目を疑うものを見てしまった。スキャナの上には朧気ながらも見覚えのある機体が。あれは確かアウトフレーム―。頭から捻り出した時にある疑念が浮かび上がった。

(J.E.って...神宮寺 英梨(Jinguji Eri)ってこと?確かJ.E.は記者だって...英梨さんはケースワーカーじゃなくて、記者...!?)

怜は英梨にまで騙されたとショックを受けた。まさか自分の境遇をネタに金を得ようとしているのではと、震えた。程なくして英梨はダイバーズから戻って来たのかリクライニングチェアを起こした。そして、怜と目が合ってしまう。

「あ...怜ちゃんお帰り...」

「英梨さん...本当は記者だったの...!?私は騙されたって...」

震える怜に、英梨はハッと口を開いた。帰ってきた時に、どこかで夕食を食べながらでも本当の事を話そうと考えていた。しかし怜から聞いていたよりも早く帰ってくることは想定外だった。

「それはね...うん。今まで騙すようなことしてごめんなさい。けど、これだけは本当だから。怜ちゃんの事は、何一つ記事にはしないから...約束させて?」

英梨の真摯な眼差しに怜も次第に警戒するのをやめた。

「...私も驚き過ぎた...ごめんなさい、英梨さん」

そして二人は、示し合わせたかの様にリビングに行きガンプラの箱を開けた。怜は咄嗟に詰め込んでいたヘイルソーサレスが壊れる一歩手前だったので、肩を落とした。

「無理ないんじゃない?あ、そうだ!これ使う?」

英梨が本棚をずらした。ここに引っ越した当初から、大きな本棚がある事は知っていた。しかし、有ろう事がスライド式の二重構造だとは思いもよらず、怜は呆けた顔でその様子を眺めていた。しかもその奥の棚には、素組のガンプラが整然と並んでいるではないか。ここまで綺麗な立ち姿で置かれているのは、模型店を見てもそこまで多くない気がした。一番下の段付近はまだ手付かずと見られるガンプラの箱が詰められている。英梨は怜からヘイルソーサレスとルミナクェーサーを借り、"在庫"の中から箱をいくつか取り出した。

「これなんてどう?ガデッサなら、同じCBとガ系で纏めたらしっくり来るでしょ」

「...そう考えてたけど、なんで分かったの?」

「え?怜ちゃんが可愛いから?」

英梨は何気なく適当な理由を言ったが、再び怜の調子を狂わせてしまう。

「だからそう言うのいらないって...英梨さんってそっちの人?」

怜が仕返しにと、敢えて普段より冷た目にあしらった所英梨は慌てて首を横に振った。

「そんなんじゃないわよ!?私だって彼氏いるんだから」

「あの高岩って人?」

「高岩は後輩よ。仲は良いけどそんな風じゃないしね。てか高岩は奥さんいるから」

「じゃあ一体...?」

英梨が一瞬だがやや寂しげな顔をしたのを見て、怜は嘘じゃないと理解してこれ以上は聞かないことにした。二人とも気を取り直し、機体の改修に取りかかった。怜はヘイルソーサレスを、英梨はアウトフレームの改修とルミナクェーサーの強化プラン考案を並行して行う事となった。

そして翌日。怜は寝る前にブルームーンのメンバー全員に、復帰する旨をメッセージで送っていた。その時間がやって来ると同時に英梨と共にダイバーズへ意識を"ダイブ"させた。

 

「レイさんがログインしたです!」

アヤカが真っ先にレイのログインを知らせた。キャプテンもシローも安堵し、意気揚々と作戦の準備を始めた。程なくしてレイがブリッジに入ってきた。レイは真っ直ぐキャプテンの目の前に立ち、ゆっくりと頭を下げた。

「黙って離脱して迷惑をかけました...」

レイが"ごめんなさい"と言おうとした矢先、キャプテンが彼女の頭を撫でた。

「仕方の無い事なのは俺たちも分かっている。謝罪なら戦果で返してくれればそれでいい。ともかく、戻るとよく決心してくれた。ありがとう、レイ。さて、これから作戦開始だ。概要はJ.E.から聞いているな?すぐに準備に取り掛かってくれ!バトルエリアに入り次第戦闘になるかもしれんからな!」

「了解...!」

レイは真っ直ぐキャプテンを見て、その後すぐにブリッジを後にした。今の彼女は、これまでよりも遥かに変わっていた。その瞳には強い意志が込められているようだ。デッキは準備に追われているため騒がしかった。レイは服装を専用のスーツに変え、ヘイルソーサレスのもとへ走った。両肩アーマーが小型化し、背部に取り付けていたGNクローも撤去されて以前に比べスッキリした印象を与える。重量バランスの問題も考慮して、英梨と相談した結果このような姿となった。GNハイメガランチャーも新型バズーカ"ホークカスケード"に変わっている。この姿のヘイルソーサレスは、再生したという意味も込めて"ヘイルソーサレスRE"と名付けている。

「...BLADET...」

ヘイルソーサレスREの隣にはウェルスのBLADETが立っていた。レイは急いでヘイルソーサレスREのコクピットに転移し、BLADETに回線を繋いだ。

「やはりお前は戻って来ると思ったよ。...ん?雰囲気が違うような...なるほど、そう言う事か」

ミニウィンドウ越しにレイを見たウェルスは、顔にこそ出さなかったが胸中では安心していた。自分が知っていた頃に比べ、更に強くなったように感じられる。頼もしさが違っていた。

「AとBに分かれてSECTOR7に入る。俺とレイとグラハム、ハイラックがB隊として出る。要は第二波出撃だ。エスとエルニアとシロー...後はあのうるさいご令嬢が先行する。B隊の指揮はハイラックが執る。こういう時くらい、アイツを信じてやってくれ」

ウェルスが作戦を簡単に説明してくれたお陰で、レイはすぐに理解した。そして、彼の頼みも了承した。

「英梨さんと色々話してた。作戦が終わったらちゃんと謝ろうって思ってるから」

「なら、その場を取り持つくらいはするが...」

「大丈夫。ちゃんと出来るから...えっと、お兄ちゃん?」

最後のは彼女なりに精一杯の冗談をぶつけたつもりだったが、ウェルスは何も言わず回路を切断した。とは言えレイも次第に恥ずかしくなり、コンソールパネルに突っ伏した。

「誰だレイに馬鹿なこと吹き込んだのは...J.E.とか言ったか...絶対に許さ....っ」

ウェルスは恥ずかしさもあったが、驚くあまり笑う方が大きかった。吹き出すのをこらえるのに必死になり、回線を切断したのだ。流石にそのような事をされると、冷静沈着なウェルスでも調子が狂ってしまうものだ。

 

「エス、聞いた?お兄ちゃんだってさ!」

「えぇ?何だって?」

エルニアから通信が入り、エスは片手間に読んでいたマニュアルを思わず閉じた。エスがブルームーンに合流してからというもの、ストライクNEXTのストライカー規格を狙われて、試作武装のテストをする役割まで担うようになっていた。今回は近接戦闘に特化した試作ストライカー"タキオンストライカー"を装備している。X字の航空翼と、本体となるブロックからは無色透明のクリアパーツで構成された推進装置が特徴的だ。それだけではなく、ストライカー下部から伸びるアームには可変式の対艦刀"エストック・可変式ビームソード"が懸架されている。これはエスが最も扱いやすいと計算されたリーチの対艦刀で、ビーム・ライフルへの変形機能も持ち合わせている。更に合体してアンビデクストラス・ハルバードにもできる代物だ。機体名は差し詰め"タキオンストライクNEXT"と言ったところか。

「You have control!エスさん、エルニアさん、シローさん!出撃OKです!」

タキオンストライクNEXT、フルーティストウイング、グランドスラムガンダムそれぞれにアヤカからの出撃要請がアナウンスされた。エスはレバーを一気に前に倒しペダルを踏み込んだ。

「エス・ブラックベイ...えぇと...よし!I have control!タキオンストライクNEXT行きます!」

タキオンストライカーの翼のスリットから透明のクリアパーツが迫り出した瞬間、オレンジ色の光を放ちストライクNEXTを大空へ飛翔させた。

「タキオンストライカー...凄い...!!」

「ちょっとエス!感動してないで早く行くよ!」

エルニアのフルーティストウイングがバード形態に変形し、一直線にSECTOR7の入口へ突入する。シローのグランドスラムも、ファトゥム08に乗ってその後に続いた。エスはすぐに機体を急角度で降下させ急行した。

「JOKERが先行してくれているから、そのまま俺達はSECTOR7内にいる騎士団連中を叩く!行くぞ!」

シローの指示にエスとエルニアはサムズアップで応えた。

「レイから黙って借りたけど使えるかな...」

フルーティストウイングもこの戦闘に合わせてケイトが換装していた。エルニア自身も普段使っているフルートユニットやビットファンネルは、BLADETと組んでいるときでないと効力が高くならないと認識していた。その上で支援機として戦う要件も満たしたG-アルケインから武装を用意した。フルドレスユニットと、ルミナクェーサーの予備用として置かれていたカスケード・ビームボウを選んでいる。後者はレイに無言で借りているため、怒られ覚悟をしなければならなかったのが手痛かった。だが今は作戦中だ。そんな事を考える余裕はない。

「今はエスの援護に集中しなくちゃね!...エス!敵が来てる!」

「あぁ、今見つけたッ!!」

エスもその敵を目にした。オレンジ色の躯体だが、見合わずかなり長い腕を持つ特異な外見をしたMS。クァバーゼ。木製帝国の"死の旋風隊(デス・ゲイルズ)"の隊長"ギリ・ガデューカ・アスピス"が駆るMSとしてその名が知られている。特徴的な長い腕は接近戦を得意とする機体に対し遥かに有利を取りやすい。先端部のビームソーで斬り刻まれると一溜まりもない。頭頂からはメガ粒子砲が真っ直ぐ伸びており、腕で捕縛して接射する事もできる。いきなり初戦からタキオンストライクNEXTが不利な相手が現れた事になる。だがエスはこれこそボルテージを上げるのに、充分な条件と受け取った。

「行くぞ!!」

エスはレバーを前に倒した。タキオンストライクNEXTが一気に加速し、クァバーゼと距離を詰める。右手の方のエストックをビームライフルモードに切り替え、足止めに数発撃ち込んだ。クァバーゼは素早く反応してヒラリと空中に舞い上がり両足に追加したと見られるミサイルランチャーを放つ。しかしあっさりとタキオンストライクNEXTは回避し、もう2発放った。とは言えエスは射撃が不得手である。本来クァバーゼの顔の横すれすれを狙うつもりが離れた所に撃ってしまった。

「最初のは偶然だって分かってましたよ!まぁ近づけない事にはどうにもならないか!」

頭部バルカン砲"イーゲルシュテルン"を撒きつつ、腰のビーム砲"バラエーナ改"で退路を塞ぐ。いくら狙い撃てないとしても、牽制くらいなら問題ない。だがクァバーゼと言う見慣れぬ機体を相手にどう戦うか。エスは思考を巡らせつつ隙を狙う機会を伺う。エルニアのフルーティストウイングも、初めて扱うはずのカスケードに簡単に順応したのか接近する騎士団の機体を次々と撃ち落としていく。

「なぁんだ...思った以上に使いやすい!そっち!」

右側にぬっと現れたカットシーとグフR35めがけ、フルドレスユニットを展開する。標的が増えるまで引き寄せ、エルニアの指がトリガーにかけられた。

「フルドレスって、眩しいんだから!!って、分離しちゃってぇ!? 」

意気揚々とアイーダ・スルガンの真似をしたが、突然フルドレスユニットが分離して陣形を作ったかと思うと、拡散ビームを放ち敵機を一掃してしまった。エルニアはR.C.の機体の性能がどれほど凄まじい物だったかを思い知らされた。

「強過ぎじゃ...て言うか、分離するなんて聞いてないし!!あぁもう!エスを孤立させちゃったじゃない!」

一方、シローのグランドスラムは着実にSECTOR7の探索を進めていた。SF映画に出てくるような、空中都市の"地下"を彷彿とさせるような光景にある種の感動を覚えた。そんな事も束の間、敵MSの反応が現れる。

「よし...砲撃する!」

デザートカラーのガルバルディβとブラストインパルス、アストレイゴールドフレーム天がグランドスラムを囲い込み、同時に挟撃に入った。しかしそれはシローの予測の範疇だった。ゴールドフレーム天がトリケロスからビームサーベルを発振、背後から串刺しにしようと迫る。だがグランドスラムはファトゥム08から飛び上がってこれを回避、バックパックからミサイルランチャーを装備した。

「そのくらい読んでいたさ!しかし奴らは素人集団なのか?やけに手応えがない...」

ブラストインパルスがシルエットから高出力ビーム砲"ケルベロス"を展開した矢先、勢い余ったゴールドフレーム天にコクピットを貫かれ爆発した。挙句グランドスラムの放ったミサイルがゴールドフレーム天を地面に叩きつけた。ガルバルディβがビームサーベルを抜き放ち、グランドスラムに斬りかかる。グランドスラムは素早く回り込み、マシンガンで頭部を蜂の巣にして蹴り落とした。ようやく僚機反応が見つかり、一安心した。

「JOKERか...!どうしたんだ?」

JOKERが直立不動であった。シローはジョーカーに何度か呼びかけ、何とか応答してもらえた。

「奴ら、パスをぐちゃぐちゃにしていたのか....」

「パス?」

「ファイルのアドレスって言えば分かるだろ。このSECTORサーバー群は、それぞれに直接転移は出来ない。全てが地続きになっていて、境界を越えるだけで移動出来る....そのはずだった」

「俺はコンピュータには詳しくないんだ...あ、要するに境界を封鎖されているのか?」

「封鎖されてんのもあれば、おかしな場所を経由して向かわなきゃ行けなくなってたり、孤立していたりだ。恐らく奴らは作戦の為にここのパスを書き換えまくっているに違いない」

ジョーカーは正体不明の頭痛に、再び襲われたまま出撃していた。それでも強引に思考を働かせてこの原因を探る。

「ジョーカー様っ!!遅ればせながらリタ・リーゼリット、推参致しましたわ!」

オーバーリアクションも甚だしい声に、ジョーカーもシローも咄嗟に耳を塞いだ。シナンジュローズオーラがJOKERの隣にふわりと着地した。作戦の手筈を確認する為に、エウクレイデスⅡにいるリタと回線を繋いだ。それが災いしてか、ジョーカーはリタから一方的に好意を寄せられるようになった。性格と端正な顔立ちがリタのタイプだったと言うダブルパンチに、流石のジョーカーも閉口した。それ以上に驚いたのが、今のリタが着ている服がワインレッドの陣羽織風の着物だった。ジョーカーの顔つきから日本人と分かったので用意したのだろう。

「お前なぁ...俺の頭痛が酷くなるだろうが!!クソッタレが、考えてた事全部抜け落ちたじゃねぇか...」

ジョーカーに怒られると、リタは珍しく素直に黙り込んだ。シローはその様子があまりにも不思議で、何とも言えぬ顔をした。

「全部がギャグになってしまったら趣旨が変わるだろ...まぁいい。取り敢えず、パスが書き換えられた以上俺達で進むのは無理だ。他の区画を経由してバトルエリアに再転移、そしてパスが繋がっているところへ移動するしかないらしいな」

現状を踏まえジョーカーはそう判断した。

「え...結構無理があり過ぎませんこと?」

「仕方無いだろ。恐らくパスの書き換えまでは俺にはできない。となればその権限を持った奴が連中に居る。そういう事だ」

「なら第二波には別の区画に行ってもらう必要があるな」

シローはブルームーンにメッセージを送った。

 

「JOKER...?」

ヘイルソーサレスREに暗号回線が入る。レイは迷わず接続した。

「何?」

「後からキャプテンも言うだろうけど先に言っとく。俺が来るまでSECTORの入口は確保しろ。俺の権限なしじゃSECTORには入れない」

「アンタが...?どういう事?」

「推測だが俺は運営の狗にさせられたかもしれないってことだ」

プツンと通信が途絶えた。JOKERの言う通り、キャプテンから作戦の予定変更が言い渡された。レイとウェルス、グラハムの三人は交流区画第6区画へ転移した。

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