創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER 作:JNEXEL
レイ、ウェルス、グラハムの3人は交流区画第6区画に転移した。そして互いに対戦を申し込むという形でマッチングクリアし、バトルエリアへ転移する。
「こっちの"隊長"は遅れてくるようだな?」
グラハムがハイラックの不在に気づき、ウェルスに事情を問うた。ウェルスはBLADETのコンソールを調整しつつ、ハイラックから預かっていた作戦プランに目を通している。
「ああ、試したい物があるからとは言っていた。それで後から来る訳だ...レイ、俺の動きはまだ覚えているか?」
「それなりには。行けるよ」
ヘイルソーサレスREがBLADETの隣に、そっと着地した。それと同時にグラハムのブレイヴカスタムが変形し、先行した。それに続く形でBLADETとヘイルソーサレスREも移動を開始する。バトルエリアの景色は、恐らく熱帯雨林だ。機体の全長を超える高さの木々と、薄っすらと漂う霧がそれを物語っている。しかしこれは、戦うにはかなり過酷な環境であると言えた。
「ウェルス!グラハム!...何かが来る!」
レイは何かを察知し、ウェルスとグラハムに注意を促す。そこから間もなくして、空から光の激流が降ってきた。
「遠距離砲撃か...!いいだろう、このブレイヴに酔いしれるがいい!」
グラハムはレバーとペダルを巧みに動かし、ブレイヴカスタムの変形と解除を繰り返しながら次から次へと降ってくる、光と弾丸の雨を掻い潜る。BLADETも左肩のバインダーで防ぎつつBアームズのガトリング砲で撃ち落とす。
「既に奴らは俺達が来るのは予想済み...か!」
「ウェルス!左!!」
ヘイルソーサレスREがホークカスケードを放ち、BLADETへ近づこうとする機影を追い返した。ウェルスも気づきつつあったが、レイに迎撃を任せれば問題無いと判斷した。
「おいおい...こりゃあ凄い連中だなぁ...だがこのハンブラビから逃れられると思うなよ?」
ティターンズブルーに染まったハンブラビが空中でバレルロール、背中のビーム・キャノンを連射しながらヘイルソーサレスREの身動きを固める。しかしヘイルソーサレスREは一度バーニアを切って自由落下して避け、再浮上しながら左腕のGNバルカンで弾幕とした。
「近づけさせないってのはまぁいいな...だがそいつぁ、子供のやり方だなぁ?」
「だから、何...!!あぁっ...?」
ハンブラビが変形を解除、バックパックから円盤状のデバイスが飛び出した。直角的な軌道を描きつつ、ヘイルソーサレスREの死角を狙ってビームを放った。レイは一瞬ファンネルだと誤認したが、ハンブラビから伸びているワイヤーを見てインコムだと理解した。
「落とす!!」
ホークカスケードから撃ち出される絶対零度の光弾が、インコムの一つを凍結させる。そこへGNバルカンを撃ち込み破壊した。だがそのせいか、ハンブラビがBLADETへ向かうのを許してしまった。
「いただきだなぁ...?海ヘビを味わえぇ!!」
ハンブラビが右手首からワイヤーを伸ばし、BLADETの拘束を試みる。だがウェルスはすぐに察知し、BLADETのスラスターを微妙に使いながら避ける。しかし、ハンブラビのダイバー"ジェレミー・アンヴィッジ"はニヤリと唇を歪ませた。
「かかった...ぬっはっはっはっ!!その海ヘビは狙った獲物は逃さんよ!」
「こちらを...追尾するのか!?」
海ヘビと呼ばれる電磁ワイヤーがまるで意思を持ったかのようにBLADETを狙って軌道を変えた。
「そぉらぁ!!一本だけじゃねぇんだよ!そっちのお嬢さんも剛毅なもんだぜ!このハンブラビにその機体で格闘戦か?」
「アンタの鼻は明かしてやる...!」
ヘイルソーサレスREが左腕からGNビームサーベルを伸ばし、ハンブラビの首元へ突き出す。当然ハンブラビはぐるりと回転しながら回避、同じくビームサーベルを発振し薙ぎ払った。その時ジェレミーは「来たか」と呟いた。
「ダイ、リンディ!来い!」
「他にもハンブラビが...まるで"野獣"か...!!」
BLADETの真上から2体のハンブラビがやって来るのを目の当たりにし、ウェルスは奥歯を噛んだ。雨あられの如く降るビーム・キャノン。BLADETはその弾幕を潜り抜け、ヘイルソーサレスREとの合流を目指す。だがそれをリンディ機は見逃さなかった。
「見りゃあ伝わってくるよ!やけに骨のありそうなやつだってことはね!」
「女...!?いや、知ったことか!!」
BLADETがBアームズからビームソードを引き抜き、リンディ機が放つビームを弾き返す。そしてBアームズのガトリング砲で近づけさせまいとしたが、今度はダイ機が真下から迫る。
「姐さん!こっちは接近戦でやります!」
「あいよ!じゃあ、あたしは砲撃だ!」
ダイ機がリアアーマーからハイパービームジャベリンを引き抜き、BLADETを真下から突き上げる。しかしBLADETはGNフィールドを展開して防ぎ、そのままリンディ機へ接近する。リンディ機のフェダーインライフルによる狙撃は正確ではあったが、自分の隣に立ってくれる彼女に比べると大した事はない。
「アイツほどはない!」
「何だってさ!!あたしを舐めんじゃないよ!!」
リンディ機が後ろに軽く退き、両足のミサイルランチャーを斉射した。BLADETに簡単に撃ち落とされるが、リンディの顔に陰りはない。むしろこれくらいしてくれなければと言いたげだ。
「ダイ!海ヘビだ!」
「了解、 姐さん!引っ捕らえてやる!」
前後を挟まれ、海ヘビで拘束される。ウェルスはそれでも余裕を残していた。なぜなら、自分の考えを察してくれるのはエルニアだけではないのだから。
「何だコイツ...んなッ!?」
ダイ機の右半分が突然氷漬けにされ、吹き飛ばされた。ウェルスはヘイルソーサレスREにサムズアップをして見せ、すぐに戦いに集中させる。
「やらせてもらう!」
「よくもあたしの可愛い弟分を!!」
BLADETのビームソードと、ハンブラビのフェダーインライフルから発振されたビームアックスが鍔迫り合う。その最中、唐突にリンディ機の背後から衝撃が襲いかかった。ウェルスもリンディも驚く余り、空を見上げた。真っ黒なRX-78が2体の間を飛び越えていく様子に、リンディは何をされたのか察した。しかしその頃には機体がバランスを崩して危うく、熱帯雨林に真っ逆さまとなる所であった。
「アタシを踏み台にした...きゃぁああ!?」
「流石のコンビネーションだ...でもまだ隙がある。途中で数が増える事も考慮すべきだったとはと思わないか?」
ハイラックのガンダムECが、2連装ビームキャノンの銃口をハンブラビに向ける。
「しゃあねぇか...!リンディ、ダイ、撤退するぞ!」
ジェレミー機がインコムでガンダムECを退かせると、リンディ機とダイ機を伴って虚空へと消えた。
「二人共、待たせたな」
近くに降り立つBLADETとヘイルソーサレスREを見、ハイラックは通信をつないだ。
「予定より早かった気はするが...一体何の準備があったんだ」
ウェルスが怪訝そうな顔をするので、ハイラックは頭を掻いた。
「実は大多数戦用に準備してたウェポンユニットがあってね。それを使おうとしたらケイトさんに止められたんだ。"キャパオーバーだ"って」
ハイラックがそんな物を用意していたとは、レイは当然としてウェルスも知らなかった。ハイラックから送られた画像はGP-03ステイメン ウェポンシステムだったが、レイはこれを見て口をぽかんと開けた。
「アンタ...これをやる気だったの?」
「それに近いものを。無理を押して出撃したはいいが、グラハムさんと一緒にビグ・ザムを仕留めた時には使い切ってしまってね」
「はぁ...アンタってそう言う所あるよね...限りあるなら、計画的に使いなよ」
「まぁ、気をつけるさ...今後使うかどうか分からない...え?」
今まで拒絶されていたはずのレイから話しかけられ、ハイラックは驚きを隠せなかった。彼女の声音からも苛立ちはなく、単に軽く注意しているだけなのだと分かった。
「また夫婦漫才みたいなのが見れるな、ハイラック。追いつくまで俺が作戦指揮に回る」
ウェルスが面白しげに呟き、BLADETを上昇させ先行した。
「あ...何てこった...。...レイ、もう大丈夫なんだな。安心したよ」
「うん...後で話があるから、すぐにログアウトしないで欲しいんだけど...」
レイがおずおずと言う。ハイラックはいつもの調子で分かったと返し、ガンダムECを浮かせた。ヘイルソーサレスREもそれに追随し、作戦への合流を急いだ。
SECTOR 2。ここは元より他のSECTORとは隔絶されており、デュークらによってパスを繋がれてしまった。ラビアンローズのような超巨大作業ドック艦を彷彿とさせるような景色は、騎士団の面々を驚かせた。
「これがマザー・メタトロンか...随分と変わった形をしているが。確か、31の2乗だとか言ってたな」
デュークはコントロールルームから見える巨大な戦艦に舌を巻いた。純白の装甲に、横から見れば円環状の形をしている、かなり奇妙でありながらどこか神聖さを感じさせる造りをしていた。"ガイア・ギア"に登場する戦艦で、恐るべき事にMSを30機も搭載できる。作戦指揮能力にも運用性にも優れ、戦艦そのものの火器も威力が高い。これを騎士団の誰かが用意していたと言う訳ではなかった。
「まさか運営がこんな物を隠し持ってたなんて、想像がつきません。ある意味オーパーツですからね、これ」
カリウスがコントロールパネルを操作し、マザー・メタトロンの稼働ステータスを逐一確認する。
「王はどこでこれを知ったのか...いや、今はそんな事はどうでもいい...ん?入れ」
ドアからノック音が聞こえ、デュークが入室を促した。中に入ってきたのは薄い紫のシャツに、マゼンタと黒のレザージャケットを羽織った少女だった。サイドテールに纏められた黒く長い髪と赤い瞳をしている。
「スワン・マスターピースです。本日付でデューク麾下の部隊に配属となりました。よろしくお願いします!」
「話には聞いているが...本当にいいのか?入った組織からいきなり離反する事になるのだが」
デュークは彼女の顔を見て、レオンから密かに受け取った資料の記述を思い出した。あの黒い魔獣に乗せられていたのは彼女だった。そしてケルベロスを操縦するに当たって絶対条件となるのは、ν-Typeである。しかもただν-Typeを乗せればいいという話ではなく、能力の暴走寸前の状態となる必要がある。そして操縦を始めた瞬間に一時的な自己の損失を引き起こし、デスマシーンと化すのである。今のスワンを見ても、狂気に染まりやすいという風には見えないのがその証左だ。
「大事な友達を傷つけてしまった...その償いはすべきだと思いますから。どんな事があっても乗り越えて行くつもりです」
スワンの瞳から強い意志を感じ取ったデュークは、彼女こそ騎士団に相応しいと感心した。
「強いな、君は...。その意志こそ、騎士団に必要なものだ。早速で悪いが出てもらえまいか?一応表面的には王に従わないと上手く行かんのだ」
「了解です、デューク」
「済まんがカリウス、後を頼む」
デュークとスワンは仮設デッキに向かい、それぞれの機体に乗り込んだ。不思議な事にSECTORだけは、ダイバーも機体も同じ場所に存在できる。と言うのもSECTOR自体、新規発売された機体をダイバーズで動かすためのテストエリアも兼ねているからだ。
「でも集団で動くの初めてです。ご鞭撻お願いしますね」
スワンはブルームーンでの戦闘経験はほぼ皆無だった。もちろんその事情はデュークも知っていた。何しろその事態を招いたのは自分達だったのだから。
「そこまで気負う必要もないだろう。誤射と指揮官の指揮に気をつけさえすれば文句は言われん。ガンダム・バエルアイゼンリッター、出る!」
白銀の鎧と形容できるカラーリングのガンダム・バエルが高く飛び上がった。腰のガンダム・フレーム露出部が追加装甲に覆われ、左腕にはシールドとトールギスⅢのメガキャノンを合体させた様な武装が取り付けられていた。腰のソードホルダーは、オリジナルより長めに作られたバエルソードを懸架している。その反対側で、歪な形をした剣のような武器も懸架されている。翼の電磁砲も、ストライクフリーダムのクスィフィアス3を基にした物に一部換装している。これだけ重武装しているように見えるが、それでもエイハブリアクターの出力が有り余るらしく、機動力は損なわれない。製作者たるデュークですら驚いた事だった。
「JOKERを倒すのは王の指示でもあるが、私の望みでもあるのだ...これは果たさねば戦士足り得んな!」
デュークはJOKERが来るであろうSECTORへバエルアイゼンリッターを転移させた。
「置いてかれた...いや、これってついて来いって事だよね!」
スワンはデュークがいきなり出発したのにげんなりするが、頬を両手で叩き気合を入れ直す。大破したジム・ドミナンスに代わり、"BF-AR"に登場したM91を自分専用にカスタムした機体を用意していた。外観は細かく見れば違う程度だが、腰のヴェスバーの代わりにサイドアーマー、両腕のビームシールド、推進機能にのみ特化したミノフスキーブースター、機能追加を施したジェットペネトレイターランスなど接近戦に強く調整している。スワンは深呼吸した後、目を大きく見開いた。
「スワン・マスターピース...ガンダムF91-
何故か突然昔の癖が出たと思ったが、スワンは敢えて気にしないことにした。
作戦に出ていた一同は、ブルームーンに帰還しそれぞれの状況を報告し合う。J.E.とタカイワも他の区画を巡りSECTORへの侵入可能ルートを探していたらしく、新たに4地点から向かえるようになった。
「とは言え開発者に接触なんて出来なかったから、どうやって同時突入するのかって話以前の問題だしね...」
J.E.は疑似マップ図をスワイプしながら、交戦区域にバツマークでマーキングをした。
「そう言えば、SECTORで戦ってる時にちらっと見たけど...倒した機体からダイバーが飛び出したりしてるの、見ちゃってさ...」
エルニアがフルーティストウイングから取得した戦闘リプレイの一部を、周囲に見せた。フルーティストウイングがその場で拾ったと見られるビームサーベルを、背後から不意打ちを狙ったプロトタイプアッシマーTR-3[キハール]の頭に突き刺した瞬間、キハールのコクピットが開きダイバーと思われる人影が出てくる様子が映し出されていた。一同が要領を得ないという顔をする中で、エスだけは身震いした。あれと似たような場所で戦った事がある。その経験からSECTORでの戦いは地獄そのものだと考えた。必死に悟られぬようにしていたのもあって、何か言われる事はなかった。
「そう言えばレイさんでしたっけ、どこへ?」
重要な会議なのだからいないのは不自然だと思ったタカイワが周囲をキョロキョロと見るが、アヤカがそれを制した。
「そう言うのは無粋って奴です!」
「待っていたのか?」
ハイラックがガンダムECの対大多数戦用オプションユニットの調整を一段落させ、デッキから降りた所レイとばったり会った。だが先程から彼女の姿を見ていたので、待ってくれていたのだろうと思う。
「凄いね、あれ」
レイもガンダムECのオプションユニットを目の当たりにして、面食らう。
「さっき見せた写真の通りだろう?今回は悠長にやるわけにも行かないから、出来る限りそれに合わせて動かないとね」
ガンダムECもガンダム改に比べると細い部分でのカスタムに終止していた。というのも、今回の戦いは個々の連携が必須になって来る。ワンマン的な戦いに向いているガンダム改では、上手く状況をコントロール出来ないと見ての事だった。そして、作戦指揮をする立場となった以上、それに合わせたカスタムをする必要があったので、ガンダムECは通信系の強化に重きを置いている。そしてハイラックはフレームパーツにディテールを可能な限り施した為、基礎スペックはガンダム改を僅かに超えていると言う。
「それはそうと、行かなくていいのか?」
「私が向こうで言うことはウェルスに全部伝えてるから大丈夫...ハイラック...いいかな」
レイに改まって言われ、ハイラックもじっと彼女を見つめる。
「あの時の...ハイラックは全然悪くなかったのに、なのに私...ハイラックに酷い事言って傷つけしまって...ごめんなさい」
あの時と言われ、ハイラックはすぐに思い出した。セルケトと言う男の実験の事だった。
「頭まで下げなくていい...俺もずっと君の事を避けて来てしまったのだから、同罪だ...そうだ。これ、また付けてくれるかな」
ハイラックがポケットから何かを出し、レイに握らせた。手を開くと、FAITHの隊章を象ったヘアピンが。
「これ...どうして...」
「ここに来る前、実験に使った場所に行ったんだ。そこで拾った。流石にあのままじゃ不味いと思ったから、運営に問い合わせて新しいのと交換した...何とか間に合って良かった」
「...ねぇ、これ...前みたいに付けて...お願い」
不意にレイは上目遣いでハイラックを見つめた。それがハイラックの心臓の拍動を早めてしまった。心の奥底では、まだ好きでいてくれたのかと思いたくなった。
「分かったよ。これでいいかい?」
レイがいつも着けていた場所を思い出しながらヘアピンをつけてやると、妙な懐かしさを感じた。
「ありがとう...ハイラック」
顔にこそ出なかったものの、ハイラックには嬉しそうに見えた。普段大人びて見える彼女でだが、時折見せる年頃の少女らしさは今も以前も変わらなかった。