創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER 作:JNEXEL
美彩はいつも通りの時間に家を出て、バスに乗り学校に向かう。だが、何かが足りていないと思うばかりであった。今日は出校日であるにも関わらず、怜の姿はなかった。もう落ち着いたのだから、再び毎日会えると思っていた。それだけに残念な気持ちになってくる。美彩には怜と史佳、奏以外に親しい友人はいない。怜達の前ではハイテンションに振る舞うのだが、何故か他人からは避けられやすい体質だった。
「怜....学校に来てくれるって言ったのに...」
席が窓際だった事もあり、空調が効いていても直射日光のせいで暑いままだ。美彩はデオドラントシートで汗を拭いつつ、カーテンを閉めた。ふと前を見ると、見覚えのある顔が。
「ふ...み...史佳!?」
美彩は予想外の事態に思わず椅子から立ち上がってしまう。
「朝でしょ。静かにしなさい」
史佳もいつもの言葉で返したが、どこか投げ遣りな感情がこもっていた。美彩は怒らせてしまったのかと、少し萎縮した。
「そ、そんな怒らなくていいじゃん...てか、連絡したのに全然出て来ないから心配したよ?」
「そうなのね...?ああ、携帯変えたのよ。皆に言い忘れてたわ、ごめんなさい」
史佳がポケットから出した携帯電話は、確かに真新しかった。早速美彩は電話番号とLineの交換を持ちかけるが、どういう訳か断られてしまった。史佳はダイバーズを始めたのだからわざわざそこまでしなくていいと言うが、美彩としては釈然としない理由だった。
「ダイバーズに限定しなくても良くない?常に出来るとは限らないし...」
「私、親の跡を継ぐわ。確かダイバーズに関わりのある会社に入るから、向こうにいない時間の方が少なくなるから」
「マジでっ...!?あぁ、そっか...史佳のお父さん、沢山会社持ってるもんね」
史佳の家はいわゆる名家で、彼女の父親は企業グループを束ねる立場にある。その娘である史佳は、その跡を継ぐのは必然となる。
「姉が出て行ってしまってから決まってるのよ。これは仕方のない事だわ」
「史佳...顔怖いよ...?」
姉の事を口にした途端、史佳の表情に苛立ちの色が浮かんだ。美彩に言われて気づき、「ごめんなさい」とだけ言って前に向き直った。古文担当の教師が教室に入ってきたので、美彩も準備を始めた。
「うはぁ、疲れたぁ...史佳、お昼だねー」
「そうね」
史佳に冷たくあしらわれたような気がして、美彩は目をパチクリさせた。史佳が徐ろに美彩の腕を掴み、屋上まで走り出した。
「ふ、史佳...!?一体何!?」
「黙って着いて来れないの?」
屋上に着くと、美彩はその手を振り解いた。
「何か史佳おかしいよ...!!何でそんな無理矢理なの...こんなの、いつもの史佳じゃない!」
「そうね...いや、これも私に変わりは無いわ」
美彩をまっすぐ見据える史佳の目は、冷たさを放っていた。美彩は背筋が凍り、思わず後ずさる。しかし、屋上入口のドアはいつの間にか閉じられており、美彩の逃げ道が断たれた状態だ。
「怜は騙されているのよ...あなたも知っていると思うけど、彼女はJOKERと共に行動している。いや、行動させられているの。何かしらの弱みを握られてね」
「怜が...JOKERと...?でもJOKERは怜にだって攻撃してたのに...!?」
史佳は淡々と告げ、美彩に歩み寄る。
「だから私は戦い始めた...奏さんともね?でもあの人じゃ怜を繋ぎ止められなかった...だけどあなたなら出来るはずよ、美彩。いや、あなたにしかできないことかも知れないわ」
「ちょっと待ってよ!か、奏もって...どう言う...」
「あの人も学校に来なくなったでしょう?そして、どうして私がそれを知っていると思う?...私は見てしまったの。JOKERのそばで戦う怜を...後はあなたでも察しはつくはずよ」
史佳の黒い瞳と声音に美彩は言いようの無い恐怖を味わいながら、吸い込まれていくような気がした。息を震わせ、全身をこわばらせ額を冷たい汗が伝う。美彩は生まれてはじめて史佳を本当に怖いと思った。息が次第に乱れ、意識が揺らいでいく。そして。
「あなただって、いつも見たいな日常が欲しいはず。なら、私に力を貸して頂戴...怜への愛を、加速させるために」
とあるファミレスにハイラック・Jこと前田 拓が訪れた。時間帯という事もあって多くの客で溢れていた。
「早く入れるといいな...何で今日はこんなに暑いんだ...」
拓がファミレスを訪れるのは、ある人物と会うためだった。GDカレッジと呼ばれるダイバー養成施設での恩師と再会するのは、妙な気恥ずかしさもある。店内にようやく入れた頃に、電話が鳴る。
「はい、前田です。あぁ、見えました」
奥の方で手をひらひらと振る影が見え、拓は店員に通してもらい向かった。
「割と久しぶりですね、門松教授。ここ喫煙席なのに仕切りが無いなんてどうなんです?」
拓が向かい側に座ると、門松はタバコを灰皿に押し込み火を消した。
「あってないようなもんだろ、そんなのは。にしてもひっさしぶりだなぁ、前田君?何かいい事でもあったか?」
門松に見抜かれたかと、拓は苦笑して水を飲んだ。
「ずっと和解出来なかった仲間と和解できたもので」
「そりゃあよかったな。お前は変な所で気を遣うから敵作りやすいよな...治したほうがいいぞ、そこは」
「善処します...ところで、渡したいものって」
「これから話す事は全て、君が知っている事に直結する」
門松がいきなり真剣な面持ちで話し始め、拓も無意識に肩をこわばらせた。門松は椅子の下に置いていたアタッシュケースをテーブルの上に乗せようとしたが、料理が邪魔だった。
「やばいな、まだピザ食い終わってなかったわ...!前田君、済まんが皿を避けといてくれたまえ!」
「もう色々台無しじゃないですか...!」
雰囲気を崩され、拓はがっくりと肩を落としつつ料理の乗った皿を隣の席に退避させた。そしてようやくアタッシュケースがテーブルの上に置かれた。
「本当に悪かった...さて、これから本題な訳だが」
門松がアタッシュケースを開き、拓に見せた。その中身を目の当たりにした拓は、手が震えるのを抑えながら凝視する。グレーとオレンジのペイルライダーめいたガンプラ。見紛うはずがなかった。
「Concept...E-57...どうして、これがここに...」
拓の問いに、門松は暫し間を置いて答えた。
「そいつは俺が作ったものだ。もうこれだけでも分かるだろうが、俺がセルケト・ニヒトだ」
拓は一瞬頭が真っ白になった。GDカレッジでν-Type能力制御機能に関する基礎理論や、エスメラルダ鉱石の精錬実験など通常では知り得ない知識を与えてくれた門松が、レイとの決定的な溝を生み出させたセルケトだとは信じられなかった。否、信じたくなかった。
「教授...嘘ですよね...こんな冗談、笑えませんよ...」
「いや、真実だ。俺はこのConcept-E57を使って君達で実験をした」
門松の口調から嘘はなかった。
「俺はν-Typeと言う存在が、どこまで証明できるか知りたかった。発生起源は分からないし、俺が察知するよりもずっと前にサツキちゃんは能力を発現させていた。恐らく一番最初のν-Typeなのかもしれないと見ているが...如何せん発現当初、どう変化が起きたのか調べようがない。体感や記憶なんて当てにできないからね。だから、彼女に比べて発現から間もない君達で試す事にした」
「それであの実験を...」
「ああ。人類進化の瞬間に立ち会いたかったものでな」
「そんな事であんな実験をやったんですか...そのせいで人一人の人生を滅茶苦茶にしたんですか!?」
Concept-E57から助け出した時、レイは最早死に体も同然な程衰弱していた。それを思い出した途端、感情に歯止めがかからなくなった。
「元々俺はZeuSの社員だった。そんで先代の社長から頼まれて、異能者の存在を確かめていた。それまでは何もなかったんだがな、ある奴が研究所に顔を出すようになってから全てが狂い始めた」
「それが何だって言うんです...?」
「アイツはどこで何を調べたか、君達のチームの中に、俺の娘がいるなんて抜かした。義理の母と一緒にいる写真まで見せつけられてな。俺は怜をダイバーズに近づけさせては行けないと思ったもんで、その為に確実な方法を選んだ」
「怜が...教授の娘....??」
ある時から百崎 翼が門松のもとを訪れるようになった。門松は単に勉強のつもりかと思っていたが、次第に翼流のドクトリンに冒される。その末で良心を半ば削られたような振る舞いをするようになってしまう。そして、翼がどこかで入手した怜の写真を見せられたときに、門松は驚愕と困惑で精神が揺れ動き、操り人形も同然に使われ始めた。だが心のどこかで父親としての意識は残っていた。怜らメイポールダンスをダイバーズから一時的にでも遠ざけなければ、何が起きるか分からなかった。自分が分かりやすく敵となってしまえば、彼らの怒りを向ける物を見失わず暴走もしないはずだ。そう門松は決意し、あの実験を挙行したのだ。
「だったら全部説明すればよかった、それだけの話じゃないですか...」
門松の口から語られる全ての真相。拓は話だけは理解しようとするが、感情に邪魔されただ困惑するだけだった。
「俺のアカウントには、盗聴器のようなものが仕掛けられていた。だから俺のダイバーズでの一言一句すらも、向こうに流れてしまう。万が一、向こうに都合の悪いことを言ってしまえば...俺は間違いなく殺されるだろう。そんで、その事だけが怜のもとへ伝わる...尤も、奴らは怜の何をどこまで知っているのかも、言ってなかったがね。だけどそんな事はどっちでもよかった。とにかく俺の事は1mmたりとも怜に知られなければそれで...」
門松の悲壮な決意。拓は何も言い出せず、Concept-E57を眺める。今はZeuSをやめて自由の身になったとして、怜に事実を伝えても余計に傷つけるだけ。何しろ怜の抱いている父親へのイメージを聞かされた拓としても、何となく理解出来る。だとしてもこのまま隠し続けて何かが変わるとは思えなかった。
「僕は怜さん...いや、怜から聞いたことがあるんです。「お父さんはきっと優しくて、素敵な人なんだと思う」と...だから彼女は繋ぎ止められたんだ...だから今も頑張って生きている」
「前田君...君は一つ理解しなければならないね。物でも人でも、最良のイメージを持ったまま終わらせてしまった方が良いこともある」
「そうやって避けるようじゃ、教え子と同じですよ」
無理に調子を取り繕うのは、拓からすると物凄く分かりやすかった。やはり親子なのか、いざ誤魔化そうとしても上手く行かない。
「娘さんと...怜と向き合ってあげてください。今の僕が言えるのは、それだけです」
「...君は随分と成長していたんだなぁ...教え子にここまで言われちまうなんて」
「教授に世話になった分、還元してるんだと思えばいいです。この程度でそれを言うのも変なんですけど、あの娘の傷を少しでも癒せるなら」
前田 拓―ハイラック・Jはダイバーズにログインした。ブルームーンで一番最初に会ったのは、やはりと言うべきかレイだった。当初ダイバーズで再会させるつもりでいたが、門松は自分が決心づくまで待ってくれと言った。それを信じて了承した。この事は今レイに話さなくてもよくなってしまった。
「さっきまで出てたのか?いつになく目のやり場に困るなぁ...」
レイが着ているのは、機体搭乗時に使う専用スーツだった。ハイラックもそれなりに見慣れたものだが、それでも刺激が強い。
「またどうせ出るから。私だって恥ずかしいんだから、放っといて」
着ているレイでさえ、言われると急に恥ずかしくなる。能力制御に必要な物だと言うのだが、もっとマシなものは無かったのかとハイラックは息を吐いた。
「それ以外でも大胆な服着る事あるのに、結局恥ずかしがるんだ...もう止めたほうがいい気もするけど」
「...弱い人間とは思われたくないだけだから。アンタと奏しか多分知らない...それで充分」
そうか、とハイラックはレイの頭にポンと手を乗せた。そこにJ.E.が通りかかったが、レイとハイラックを見るや壁に隠れ楽しそうに観察し始めた。
「英梨さん...やめてよ」
「あ~...バレた?いや〜二人共お似合いっていうかそろそろ夫婦かな〜って思っちゃってさ。こっちも一仕事あるし、ここらでレイちゃん補給しとこっかな」
「は...!?」
「あー、レイちゃんやっぱ可愛い...」
いきなりJ.E.に抱き締められ、レイは硬直した。何とかハイラックに助けを求めようと手を伸ばすが、当の彼は引き笑いしたままその様子を眺めていた。
(レイは愛されやすいのは分かるけど、これは凄まじい光景だな...どうすればいいんだ...)
「撫でれば済むなんて思わないで欲しいんだけど...」
「だから予定変えて俺も一緒に出るって言ったじゃないか」
結局助けてもらえず、解放してもらってからのレイはむくれていた。こういう時の彼女に有効な手段をハイラックは知っていた。
「...JOKERか...?」
ハイラックがガンダムECのコクピットに転移しようとした矢先、JOKERを目撃した。しかし、彼は誰かと言い合いをしているように見えた。
騎士団拠点たる古城の地下。その更に最深部。真っ赤な光りに包まれた部屋の中心を、赤い液体で満たされたガラスの円筒が貫いている。通路用の足場が張り巡らされているが、手摺の外は奈落の底である。
「あなたも邪魔なのよ...成田 美彩も白鳥 奏もいなければ、私は怜を独り占めに出来たのに...んはぁっ...」
ラプラスは円筒の前の手摺に手をかけ、蹲っている。ミニウィンドウには怜の写真が表示されている。そしてラプラスはそれを恍惚とした表情で見つめ、時折甘い声を漏らす。ひたすらに怜の名を呟き、一人悦に浸る。もうこの場はラプラスだけの世界で、他者の介入など許されない。だがそうしている間にも、ラプラスの顔や瞳に青い電子線が浮かび上がっては消えた。身体が大きく跳ね上がり、ラプラスはゆっくりと立ち上がる。指と指の間は液体に浸けられた後のように光っていた。指をハンカチで拭い、それを奈落の底へ放り投げローブの乱れを正した。ポケットからカプセル剤を取り出し、摂取した。一回に飲む量が、明らかに常人が医薬品を飲むそれを遥かに超えていた。
「愛は加速するわ...怜...待っててね...あなたは私の側にいられるようにするから...」
突然通知が入り、ラプラスは忌々しげにウィンドウを消した。だが再び通知音がするため、諦めてウィンドウを表示した。作戦開始を告げる内容だった。ラプラスの瞳が青く光り、デスサイズヘルコープスのコクピットに転移した。
「....行きます」
ラプラスの宣言と同時にデスサイズヘルコープスはこの場から消失し、戦闘区域にテレポートした。既に戦況は騎士団側に有利に向かっているらしく、デスサイズヘルコープスを呼び出したのは決定打を与えるためだとはっきりしていた。
「識別コードがブルームーンじゃない...?騎士団こそ絶対の正義...何故歯向かうか!!」
ラプラスは激昂し、デスサイズヘルコープスを加速させた。機体装甲表面とウイングユニットに青い線が走る。向かい来るサイコ・ザクの背後を瞬時に取り、ベルゼルガでバックパックのプロペラントタンクを両断した。だがサイコ・ザクも同時に、プロペラントタンクをパージしたおかげで難を逃れ、サブアームのザクマシンガンとバズーカを撃ちながらヒートホークを構え、不規則な軌道を描きながらデスサイズヘルコープスへ接近する。
「無駄な事を...思い知れッ!!」
デスサイズヘルコープスのウイングユニットを走る青い線の輝きが強まる。そして翼から一挙に細い光の矢を放った。実弾武装が一瞬で消し炭になり、サイコ・ザクも避け切れず左肩装甲が吹き飛んだ。それでもサイコ・ザクは勢いを止めず、デスサイズヘルコープスにタックルをぶつけた。そしてヒートホークで袈裟に斬りつけるが、それを予期したかの様に、デスサイズヘルコープスはサイコ・ザクの右腕をベルゼルガで貫き引き千切った。そこへ足のブレードを突き刺しコクピットを抉り取った。また、東から別のMS反応が現れるとサイコ・ザクを投げ捨てて急行する。
「叩き落とす...」
リ・ガズィカスタムが大口径ビームキャノンを薙ぎ払うように撃ちながら旋回する。だがデスサイズヘルコープスは"消失"して、リ・ガズィカスタムの脳天を取りベルゼルガで一刀両断にしようとした。だがその瞬間、予想もしない方向から衝撃が加わる。
「何ッ...!?うわぁああっ!?」
どうやら首根を掴まれているらしく、そのまま大地に放り投げられた。デスサイズヘルコープスが体勢を立て直すと、目の前には見慣れぬガンダムタイプMSが立っていた。全体的には赤と白で纏めらているが左肩のみ青く、同系色のクリアパーツが全身に散りばめられている。とは言えそのシルエットはかなりシンプルだった。
「全く...そんな凄い機体作ってさ、弱い者いじめなんて悪いダイバーだね?」
「不意打ちをした貴様が言うことか...!!」
「不意打ちだなんて心外だなぁ...まぁいいや。ラプラス・ライブラ!君のデータ、貰いに来たよ!」
かなり軽い口調で言われ、ラプラスは挑発かと認識した。デスサイズヘルコープスがベルゼルガを構え反撃に出るが、それよりも早く謎のMSが懐に潜り込み左アッパーを突き刺した。左腕のユニットから鉛色の爪が飛び出し、デスサイズヘルコープスを高く打ち上げた。
「うぐぅううッ...!?何だ...何故!?」
「勝てるわけ無いでしょ?さっさと逃げるか援護呼べば?」
「舐めるなッ!!引き裂いてやるッ...!!」
デスサイズヘルコープスがハイパージャマーを起動し、姿を消した。だが謎のMSを駆るダイバーは特に危機感なく、ただ「あーあ、残念だね」と呟いた。そしてデスサイズヘルコープスが真後ろからベルゼルガで袈裟斬りを仕掛けんとした。しかし、ラプラスは目を疑う現象に遭遇した。
「言って聞かないなら、こうするしかないよね?ウェポンビルドアップ!」
謎のMSの左腕に、白い光が集まり実体シールドを形成した。ベルゼルガの斬撃を呆気なく防ぎ、そのまま押し返した。
「武器を転移させた...!?そんな事...出来るはずないのに...!?」
虚空から武器を呼び出すなど、どのガンダム世界にも存在しない技術だった。勿論それをダイバーズでやろうとしても、徒労に終わるしかない。だがこの謎のMSは確かに、何も無かった場所にシールドを出現させていた。ラプラスは動揺した。
「出来ない事をやるから楽しいんじゃない?ほら、やるならやろうよ。負けっぱなしは性に合わないんだろ?」
「黙れぇええッ!!貴様は一体何なんだッ!!」
2振りのベルゼルガで謎のMSを八つ裂きにしようと執拗に攻撃を加える。だがその動きは全て読まれたかのように避けられ、一方的な戦いに変化は生じなかった。
「何なんだって言われてもね、俺は俺だとしか言えないわけよ?もうちょっと分かりやすく質問してくれないと...よし、ブーストビルドアップ!」
デスサイズヘルコープスに回し蹴りを見舞う。謎のMSの踵には高速回転する車輪がついており、そのタイヤには無数の超振動カッターが埋め込まれている。それを食らってしまったデスサイズヘルコープスは、胸部装甲に抉られたような傷をつけられた。そして謎のMSの背後に青い光が集まりバックパックを形成した。デスサイズヘルコープスが素早くベルゼルガで薙ぎ払うが、謎のMSはバックパックのウイングアームを伸ばしてバーニアを噴射、空中に飛び上がり背後に降り立つと右手を掲げた。
「ウェポンビルドアップ!」
「させない...!!死んでもらうッ!!」
デスサイズヘルコープスがベルゼルガを最上段に構え、一気に振り下ろした。それを謎のMSはサイドアーマーから引き抜いたビームサーベルで受けとめ撥ね退けると、右腕に形成したドリル型の武器をデスサイズヘルコープスの腹部に押し当てた。ギュイイイイン!と金属が削れる音が聞こえ、ラプラスは咄嗟にレバーを引くが既に遅かった。ドリルがあっと言う間に装甲を貫き、その衝撃がフレームに伝わり吹き飛ばしてしまった。
「計測不能値の回転数...最っ高だ!...さて、データも取れたし俺はここでお暇させてもらうぜ!」
流石のラプラスも負けを認めるしかなく、これ以上攻撃する気にはならなかったが、謎のMSに対しても憎悪を募らせた。
「デスサイズヘルコープスをやるなんて...どう言うMSなの...!?」
「あぁ、これ?」
謎のMSが自身の装甲を指で小突く。そしてその指をデスサイズヘルコープスに向けた。
「ビルドブレイズガンダム。"造る"、"形成する"って意味の、"ビルド"だ。以後、お見知り置きを。SeeYou!」
気がつけば謎のMS、ビルドブレイズガンダムは姿を消してしまった。ラプラスは歯軋りをしながら機体を起こすが、何故か機体の損傷ステータスが消えていた。稼働状況にも一切の異変が無く、ラプラスはますます訳が分からなくなった。