※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 32 淡く、儚く、虚しく

「JOKER...そっちに行っても?」

柱の陰からJ.E.はJOKERに声をかけた。彼はJ.E.を一瞥するや、舌打ちをして無言で立ち去ろうとする。その表情は苦痛を無理に隠しているように見えた。

「待ちなさいよ、人が呼んでんのに無視は無いんじゃない?」

たまらずJ.E.は柱から飛び出してJOKERの手を掴んだ。

「何でそんなに俺に固執する...!お前がいたんじゃ気持ちが悪いのが戻ってくるんだよ...とっとと消えろ」

苛立ちを隠さず言い放つが、震えが含まれていた。しかしそれで引き下がるJ.E.ではない。

「私が側にいると苦しそうなのは...キミは私と何か関係があるかもって思ったからでしょ?」

真剣な眼差しでJ.E.から見つめられる。だがJOKERは苦虫を噛み潰したような顔をしてJ.E.を突き飛ばした。思えばレイを助けた時から変化が生じ、SECTORに向かうと決まった際には常に何かから逃れるような感情に苛まれていた。JOKERの記憶もSECTORに存在している。この事実も余計に彼を焦らせてしまう。

「私は...キミがレイちゃんを助けようとしたのを見た時、はっきり分かったよ。....レイちゃんをああ言う風に評価したんだから間違いないって、そう思えたもの。キミは葛城 絢斗だってね」

「葛城...絢...斗....??」

J.E.の言う名前をJOKERが反芻した瞬間、頭に無数の針が刺さるような痛みが襲いかかる。呻き声を上げながらよろけるJOKERをJ.E.は急いで介抱するが、また突き飛ばされてしまった。

「何なんだよ...本当、何なんだよ!お前は俺の何なんだ!」

JOKERは怒りに突き動かされるがまま、J.E.を壁に追いやり襟首を掴んだ。だがJ.E.は怯えることなく真っ直ぐにJOKERを見つめた。

「神宮寺 英梨...キミの恋人よ」

「はぁ....!?何だよそれ...気でも狂ってんのか...!?」

「そうかもね。キミのおかげで幸せな夢いっぱい見られた。だからそれを見続けたくて狂ったのかもしれない。でも、私はそれくらいキミの側に居たいって思ってる」

「ふざけるな...んなのあり得るわけ無いだろ...何で俺なんかにそんな関係が...」

「私の知ってる絢斗はね...とにかく自分勝手で、自分大好きみたいな人だった。だけど、その割には人助けが好きな、いい奴。自殺しそうになった私のことだって助けてくれたもの」

J.E.はそっとJOKERの頬に触れた。レイやタカイワとは違って、無機質な冷たさしか感じられなかった。だが不思議と、絢斗の手と似たような物を感じた。

 

レイのヘイルソーサレスREとハイラックのガンダムECがブルームーンから飛び出した。早速レーダーに敵影反応が映り、二人共臨戦態勢に移行した。

「敵は20...そっちは大丈夫か?ついてこれるな?」

「任せて。アンタの背中は私が守るから」

レイの声から力強さを感じ、ハイラックも戦意を高揚させた。

「言ってくれる...頼もしい限りだよ!」

ガンダムECのバーニアを最大にし、先行する。今回は腕のビームガトリングに代わって、BD3号機と同形状の2連装ビームキャノンを装備している。ビームライフルを使っても良かったが、混戦が予想される状況でエネルギー切れを起こすわけには行かない。

「...真正面から来るかい!」

ガンダムECの真正面から、ストライクフリーダムが接近する。背中の兵装ウイングからスーパードラグーンを射出、両手に持ったビームライフルを連結させ狙撃する。ガンダムECはスーパードラグーンから放たれるビームを華麗に避け、2連装ビームキャノンで撃ち落としながらシールドのグレネードランチャーをストライクフリーダムから遥か下を狙い撃った。ストライクフリーダムがバク宙をしながら距離を取ろうとした時、ハイラックはしめたと口許に笑みを浮かべた。ガンダムECの放ったミサイルがストライクフリーダムの両足に直撃した。VPS装甲によりほぼ無効化されるが、予想だにしない被弾で動きが止まっていた。そこへガンダムECが急速接近、ストライクフリーダムの眉間をビームサーベルで貫いた。刀身を引き抜くと、ストライクフリーダムは力なく落下し爆発した。

「素人か...!しかし、素人集団とは言えよくここまで集めた...何ッ!?」

真下と頭上から光の矢が迫る。ハイラックは機体を前へステップさせ、頭上を見上げた。先にも戦った3機編成のハンブラビだった。

「こないだは舐めた真似をしてくれたね!けど今度はそうは行かないよッ!!」

リンディが猛々しく叫ぶ。ガンダムECの真下からはダイ機が。リンディ機がフェダーインライフルで薙ぎ払い撃ちをしてガンダムECをダイ機の方へ追いやろうとするが、その既のところでヘイルソーサレスREに銃身を掴まれた。

「砲撃機が前に出るかい!!」

「別に...ヘイルソーサレスは後衛だけが取り柄じゃないんだけど」

フェダーインライフルを押し退け、ホークカスケードの砲口をハンブラビのコクピットに押し当てた。

「おいおい初っ端から何やってんだぁ?一度戦った相手に不覚を取るなんてよぉ!」

「こいつらのリーダーか...!」

今度は上空からジェレミー機が突っ込み、ビームサーベルでリンディ機とヘイルソーサレスREを分断した。そのままフェダーインライフルでヘイルソーサレスREを追い払う。

「今度はアタシらでぶっ潰してやるよ!」

リンディ機は再びフェダーインライフルからビームアックスを発振、ヘイルソーサレスREに突きを放った。しかしヘイルソーサレスREは左肘のGNカッターで受けとめ跳ね返すと、GNバルカンを斉射してフェダーインライフルと脚部のミサイルランチャーを粉砕した。

「姐さん...!?うぐわぁあっ!?」

「そら見たことか!余所見している場合じゃないだろう!」

ダイがリンディ機の被弾に気づき、援護に回ろうとした矢先。ガンダムECのビームサーベルに右腕を肩ごと斬り落とされた。ダイ機は反撃にビームサーベルで切り返すが、呆気なくシールドで受け止められ、逆に首を刎ねられた。

「コイツら...何だ!?この位置取りは!?」

ジェレミーはガンダムECとヘイルソーサレスREの位置取りに、目を疑った。残った2機の連携を確実に阻害可能な場所を陣取り、擬似的なタイマンを発生させているのだ。

「同じ敵なら、このやり方は通用する。そう言うのはすぐに学習するものだから...アンタらはここで消えろ!」

ヘイルソーサレスREのホークカスケードに青白い粒子が集まり、収束される。ジェレミー機がフェダーインライフルを2挺持ち、不規則な軌道を描きつつ連射する。ヘイルソーサレスREは弾幕を華麗に掻い潜り、ガンダムECのもとへ向かう。

「こっちへ来るってのかい!こんな所で引き下がれないんだよッ!!」

リンディ機が変形し、背部のビームキャノンを撃ちながらバレルロールし離脱を図るが、ガンダムECが先回りしてハンブラビの上に飛び乗った。リンディは再び同じ方法でやられたと思い、テールランスでガンダムECの足首を貫こうとした。しかしその頃にはガンダムECは離れてしまっており、自らの武器で機体を貫通する始末を迎えた。

「ぁああああああああッ!?じ、ジェレミーッ!!」

「それじゃ、さようなら」

そしてダメ押しにとヘイルソーサレスREのホークカスケードの最大出力砲撃を受け氷とともに散華した。

「ふざけやがって!よくも俺の可愛い部下達を!ぬぅわぁああああッ!?何だ一体...!?」

ジェレミー機が変形した時、真後ろから剣で貫かれ爆散した。レイもハイラックも何事かとモニターの解像度を最大にした。赤と黒の翼。これだけで何者かすぐに分かった。JOKERである。

「JOKER...良かった、これなら何とかなりそう...」

レイがありがとうと言おうとしたが、JOKERはヘイルソーサレスREの隣をすり抜け一人先を行ってしまった。

「少しは口を利いてやればいいのにな...いや、さっき...」

「ハイラック?」

ヘイルソーサレスREの左手がガンダムECの肩に乗せられ、ハイラックは「何でもない」とレーダーの調整をした。

(ジョーカーと言い合ってた人は...間違いなく神宮寺さんだ。多分そのせいか...?)

 

「何が...恋人だッ...!!何がいい奴だ...!!」

ジョーカーの頭痛は、J.E.から離れても続くようになってしまった。その苦痛を振り払いたい衝動に駆られ、戦いを求める。

「ん...?え...うわぁああああああ!!!!」

警戒中だったケルディムガンダムサーガが、突如現れたJOKERによって達磨にされた。他の騎士団の機体達も突然のJOKER襲来に動揺を隠せなかった。

「JOKERをやれるまたとないチャンスだ!各機、突撃ッ!!」

続々と騎士団の機体達がJOKERに襲いかかる。しかし、JOKERの実力と性能によって尽く圧倒されてしまう。数秒足らずで中継基地はMSの残骸で溢れかえった。JOKERの装甲表面に一瞬、赤い電子線が走った。空中から降り立つ救援部隊を見るや、不敵な笑みを浮かべ機体を猛ダッシュさせた。

「JOKER!?」

「お前には喋らせねぇよ」

JOKERのブレイヴエッジの一太刀でフェニーチェリナーシタαを斬り裂き、蜂の巣にした。その勢いを殺さぬままマン・ロディに突っ込み、ブレイヴエッジで貫き迎撃に出たストライクルージュに投げつけた。ジョーカーはSECTORの入口を見つけると、左手の甲の刻印をコンソールにかざした。これでこのSECTORへはJOKERがいるだけで自由に出入り可能になった。SECTORの入口から続々と出てくるMSらにブレイヴエッジの切っ先を向けた。ジョーカーの目にはもう、殺意しかなかった。

「来るなら来い!全てを破壊してやる!!」

 

「SECTORが開いた...?ちょっと待って、これ...」

軍事基地と思しきエリアにやって来たレイとハイラックだが、MSの残骸がそこかしこに転がる凄惨な光景に目を疑った。ダイバーがバトルエリアから転移しているのか残骸は少しずつ消えるが、瓦礫が散らばる様子だけでも生生しく感じられた。

「入り口がわかったと言うなら、間違いなくジョーカーだと思うけど...これはいくらなんでも...酷すぎる」

経験豊富なハイラック言えど、ダイバーズでこのような光景を目の当たりにしたことが無かった。そもそも大規模戦闘自体、発生する事が稀である以上仕方のない事だった。

「想像でしかないけど、彼が暴走している可能性もある...確か、SECTORが分かってから様子がおかしくなったんだろう?」

「英梨さんとケイトはそう言ってたよ。......もしかしたら、私のせいかも知れない」

「レイが...?どう言うんだ?」

「あの白いデスサイズと戦ったとき...ジョーカーが助けに入ってくれた。でもそれから私、彼とは直接会ってないんだ...心にもない事やらせたから...」

レイがジョーカーの変化に気づいたのは、ケルベロス戦より後で、英梨から聞いての事だった。しかしその変化がどういう物か具体的に分からず、そのまま時間が過ぎてしまった。そして、自分に力を貸してくれた時からおかしくなってしまったと、責任を感じるようになった。助けてくれた仲間を逆に苦しめた。そんな感情を抱かずにはいられなかった。

「...レイ、何も君が原因とは決まった訳じゃないんだ。後で神宮寺さんに聞いてみたら分かるかもしれない」

「...ありがとう、ハイラック...じゃあ取り敢えず、先を急ごう」

ヘイルソーサレスREとガンダムECがSECTOR 3へ進入した。やはりここもSECTOR 7と同じ景色が広がっていた。突然頭上を何かが横切り、レイはぎょっとした。

「これは...フルセイバーか...!?」

ハイラックは落下物を見て面食らった。GNソードⅣフルセイバーのGNカタール形態が飛んできたのだ。特殊素材の刃もかけており、刀身全体にヒビが走っている。シールドの代用にもなるほどの堅牢さを持っているにも関わらず、ここまで損傷を与えているとすれば、答えは一つしか出ない。

「言わずもがな、か...!行くぞ、レイ」

ガンダムECとヘイルソーサレスREは更にSECTOR 3の奥へと進んだ。

 

「ブルームーンって...どこだろ...」

F91-Mのスワンは、デュークから突然騎士団を離脱するように言われ、彼独自の作戦を遂行することとなった。その為にはまず、ブルームーンに復帰する必要があった。マザー・メタトロンを確保したものの、改革勢力の中に戦艦の運用に長けた者が一人もいなかった。ダイバーズで戦艦を動かす事など本来ありえないのだから致し方無い。そこでブルームーンに在籍した事のあるスワンに白羽の矢が立った。スワンも戦艦の扱いに慣れている人物で、真っ先にキャプテンを思い浮かべていた。

「機体の反応...?どこ...!?」

レーダーならアラートが鳴り響く。スワンは急ぎ警戒をするが、それらしき影は見当たらない。

「えっ...!?」

頭上から降り注ぐ光の雨。まさにゲリラ豪雨その物だった。スワンは即座に両腕のビームシールドを起動させ、やり過ごしつつ脱出した。だがその光の雨粒は急角度で軌道を変えてF91-Mを追い始めた。

「ビームが追尾するの...!?そんな馬鹿な!?」

岩盤を踏み台に反対方向へ飛び上がり難を逃れた。そして空を見上げた瞬間、スワンは嫌でも光の雨の正体を知った。

「ガンダム...レギルス...」

白と黒のツートーンカラーで纏められたガンダムレギルスが、光の渦の中から姿を表した。"ガンダムレギルスアパテー"。まるで彫像の様な装甲の表面を青いラインが走っている。そして、レギルスのダイバーの名前にスワンは驚愕した。

「ミサ・ミサって...そんな...美彩!?」

「...奏」

震えが止まらないスワンとは対照的に、ミサは感情が消え失せたかのように無表情でF91-Mを見据えた。

「史佳が怜に会いたいって言ってるから...会わせなくちゃ...だから、奏...退いて?」

レギルスアパテーがF91-Mを指差すと、夥しい数のレギルスビットが雨嵐の如く動き出した。

「これじゃビームシールドだって持たない...使うしか...!」

F91-Mの背部から伸びるユニットが開き、青い光を放った。機体全体が黄金色の光りに包まれ、亜光速まで一瞬で加速しレギルスビットを躱しながらレギルスアパテーへ接近する。レギルスビットがF91-Mの残像に攻撃していると知ったミサは、レバーを軽く引きウェポンセレクタを操作した。レギルスアパテーが両手首からビームサーベルを発振させ、F91-Mに斬りかかる。スワンは残像で幻惑させられると思ったが、その予想は簡単に裏切られた。レギルスアパテーはF91-Mを確実に"認識"しながら攻撃を仕掛けているのだ。

「残像すら見破った!?まるで違う人と戦ってるみたいじゃ...でも相手は間違いなくミサだ!どうすれば...!!」

F91-Mもサイドアーマーからビームサーベルを抜き放ち、レギルスアパテーと打ち合う。激しい剣戟の最中、互いの剣が鍔迫り合いスパークが迸った。

「ミサッ!何でこんな事を!?どうして史佳に付いて...あの人が何をしようとしているのか分かってるの!?」

「関係ないよ。史佳と怜が仲良くなれば、それで終わる...おかしいのは奏の方だよ。何で怜を騙した奴を庇おうとするの?今の怜を庇うってことはそういう事なんだよ?」

「違う!怜はきっと、皆が幸せにダイバーズを遊べるようにしたいから戦ってる!また4人で遊びたいって思ってるのは同じなのに、何でこんな事になってしまうの!?こんなんじゃ、何の意味もない戦いだけが続くのに...!」

次第にF91-Mが押され、レギルスアパテーが更に推力を上げた。F91-Mの限界稼働時間が終わったのを機に更に押し込んで岩盤に叩きつけた。スワンは衝撃で頭をコンソールとシートにぶつけ、気絶しそうになった。口からは紅い雫が零れ落ちる。

「史佳は....怜を何だと思ってるの...?美彩にこんな事やらせて...自分だけが満たされればそれでいいって...そう思ってるなら...」

スワンは奥歯を噛み、レギルスアパテーを睨んだ。もう躊躇う方が美彩を余計に傷つけてしまう。ならば自分が倒して史佳の"呪い"から何としても、美彩を解放しよう。そうすれば史佳も気づいてくれるはずだと信じて。

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