※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 33 Automata

レギルスアパテーがF91-Mを岩盤に押し込んだまま、何度も殴りつける。F91-Mの装甲の至る箇所が凹み、レギルスアパテーの殴打の激しさを物語る。

「皆で幸せになるなら...史佳を仲間外れにしちゃ駄目でしょ?一方的に悪者にして、酷い事だと思わないの?」

ミサが無機質なトーンで問いただす。スワンは今の彼女とはまともに会話できないと、説得は諦めていた。F91-Mがレギルスアパテーの拳を受け止め、バーニアを全開にしつつ巴投げの要領で地面に叩きつけた。しかし、地面に接触する手前でレギルスアパテーは姿勢制御し着地した。そのままレギルスビットをF91-Mを岩盤ごと粉砕しようと、雨の様に降り注がせた。

「逝っちゃえ...もう分かり合えないなら」

ミサはつまらなさそうに吐き捨て、離脱しようとレギルスアパテーを浮上させた矢先。F91-Mが煙の中から飛び出し、ビームランチャーを刺突用兵器に改造した"ジェットペネトレイター"をレギルスアパテーのバックパックに突き刺した。ジェットペネトレイター後部のブースターも点火し、更に推力を上げレギルスアパテーのバックパックを僅かながらに掘削していく。

「あんまり言いたくないんだけどね...やっぱりどう変わっても美彩は美彩だよ...スタンドアロンで戦うの苦手だったのに...」

ミサは前衛を務めるのが元から苦手だった。レギルスアパテーの武装からして、彼女の得意とする後方支援の立ち回りが全く活かせない事は、スワンは薄々感じていた。

「...だとしても、史佳の為ならどんな手を使っても斃す」

レギルスアパテーが強引に体の向きを変え、レギルスライフルからビームを照射した。これをF91-Mはビームシールドで防ぎ、ビームサーベルでレギルスライフルの破壊を試みた。しかし、レギルスアパテーは手首からビームサーベルを発振させ逆にジェットペネトレイターを真っ二つにした。

「しまった!?けど、まだ終わらない!...終わらないんだから!!」

F91-Mのミノフスキー・ドライブ内蔵型ブースター"ミノフスキーブースター"がカバーを開き、光の翼をはためかせた。この圧力にレギルスアパテーは呆気なく撥ね飛ばされ、森林の中へ放り出された。逃げさせまいと、スワンはウェポンセレクタからビームサブマシンガンを選択した。リアアーマーからビームサブマシンガンを装備すると、レギルスアパテーの落下地点を囲うように連射しつつ着地した。しかしレギルスアパテーの反応は忽然と消滅していた。否、騎士団なら何らかの手段を使って、この直下に広がるSECTORに隠匿したに違いない。いずれにせよ窮地は脱した事に少しは安心できた。しかしやはり、変わり果てた美彩の言動と史佳の目論見が全く見えて来ない事に焦りを感じた。いけない、とスワンは慌ててブルームーンに通信を送る。やはり応答は無かった。しかし、上空からMSが下降するのが見えた。恐らく騎士団のダイバーを見つけたので尋問するために、機体を鹵獲するのだと理解した。これもある意味スワンにとって好都合だった。グランドスラムガンダムと軽装状態のBLADETが着陸、拘束用のワイヤーを伸ばしてF91-Mを縛り付けた。

「騎士団か...まさかここを嗅ぎつけてくるなんて、敵ながら恐れ入るよ。君の名前を教えてもらうぞ?」

スピーカー越しに久々に聞いたシローの声に、心做しかスワンは安堵した。デュークの指示通り、投降する旨を伝える。

「スワン・マスターピースです。ブルームーンに投降します、抵抗は致しません」

投降はシローもウェルスも予想外だったらしく、暫く言葉を失った。そしてウェルスが口を開いた。

「投降か...処遇についてはキャプテンが決める。どうなろうと受け入れてもらう...」

突然、シローが思い出したように声を上げた。

「スワンって...まさか君か!?騎士団に連れ去られたって...無事だったんだな。よかった...!」

「レイに助けてもらったんです」

ファトゥム08から伸びるワイヤーで再度拘束され、そのまま牽引されブルームーンに着艦した。

「わぉ?F91!いい趣味してるね〜!」

ケイトがサイリウムを振り回して誘導する。シローがグランドスラムから飛び降り、空いているデッキを開放した。

「あれに乗ってるの、誰か分かるか?」

「さぁ?誰?」

「スワンだよ。ほら、新入りだった娘」

あぁ!とケイトは手を叩き、急いでF91-Mのもとへ走った。拘束用のワイヤーを切断すると、コクピットからスワンが顔を出した。

「やっぱり戦艦って不思議ですね。バトルエリアにいるのに、交流区画みたいで!」

「そう言う事ができるように、MOD組んだだからね!久し振りスワンちゃん!」

 

スワンはウェルスに連れられブリッジに入った。ここまで一切言葉を交わしていないのは、スワンからして見ればウェルスの雰囲気が若干怖く感じられたからだ。そしてウェルスからすると、スワンの事は知らない上に騎士団からやって来たと言う事実が警戒すべき要因になっていた。スワンがやって来るのに気づいたキャプテンは、帽子をかぶり直した。

「一先ずは...よく無事で戻って来てくれた。レイの事といい、二人共辛かっただろう。心中察して有り余るくらいだな」

「ご迷惑をおかけしました...申し訳ありませんでした。私をどう扱っても構いませんが、せめて...怜の戦いが終わるまで、微力ながらお力添え出来れば」

スワンはキャプテンが制するよりも前に深々と頭を下げ、謝罪した。元はといえば自分自身に力が無かったが故に、史佳の手に落ちてしまった。これはスワン自身の罪に変わりなかった。

「お前が来たと知ってからそうするつもりだが...すぐに所属を変えられるわけじゃない。変わるまではお前は騎士団から投降した捕虜として扱う。不本意な扱いかも知れんが、レイやブルームーンとダイバーズの明日の為に力になってやってくれ」

「願ってもない事です...このスワン・マスターピース。この身を以て、尽力致します!」

再び無意識に昔の癖が出てしまうが、全く気にならなかった。決意を示すには、これが一番なのだ。

 

JOKERの進撃は留まる事を知らず、次々と騎士団勢力のMSを蹂躙していく。中には上位ダイバーの実力者もいたようだが、JOKERにまるで虫けらの如く潰された。

「これは...何だというのだ...!?」

JOKERにより壊滅寸前と報せを受け、バエルアイゼンリッターのデュークが駆けつける。赤と黒の騎士の通った道を示すかのように、MSの"亡骸"がそこら中に転がっていた。

「あの中には改革の徒がいる...これ以上はやらせん!!」

デュークは一気にレバーを前に倒した。バエルアイゼンリッターのウイングバインダーからレールガンを展開、JOKERの足元めがけ放ち左腕のメガキャノンで薙ぎ払い撃ちをした。しかし、どの弾もJOKERの目前で消失した。

「そこを退け...殺されたくなかったらな」

ジョーカーは声を低くして警告する。尤も、警告したとして退く相手では無いと分かっていた。

「まさかあの剣一つでここまでとは...純粋に恐れ入る。だがそうでなければ困るのだ!!」

デュークはレバー付近のスライドスイッチを押し上げた。メガキャノンの砲口に粒子が集中した、その瞬間に奔流となって噴出した。轟音が空気を揺らし、残骸が跳ね上がる。しかしJOKERはバリアフィールドで強引に押し切って飛び上がると、ブレイヴエッジをガンモードに変形、銃口を分裂させて一斉に放った。バエルアイゼンリッターは被弾する前に後ろへステップ、ウイングバインダーのレールガンで相殺した。煙を突き破ってJOKERのブレイヴエッジが襲いかかる。バエルアイゼンリッターは素早く反応し、シールドで受け流しレールガンをぶつけた。

「こいつは他とは違うってか...」

「負けられんだけの理由があるからな!」

シールドからビームサーベルを抜き放ち、バエルアイゼンリッターはくの字を何度も描きながらJOKERの左側に接近、空中へ突き飛ばした。JOKERはバリアフィールドごと衝撃を受け流すため、敢えて一撃を受けて上昇した。ブレイヴエッジ ガンモードでバエルアイゼンリッターの行く手を阻むように撃ち込むが、互いの読みが噛み合い状況が動かなくなった。しかし、経験の差が流れを変えた。デュークはJOKERの放つビームの方向を読み、かつわざと機体を旋回させるタイミングをずらした。

「もらったぞ!JOKER!」

「ふざける...なッ!」

バエルアイゼンリッターのビームサーベルが振り下ろされる。JOKERが咄嗟にブレイヴエッジをソードモードに切り替え、受け止めた。

「俺は...記憶を取り戻さなきゃなんねぇんだ!邪魔するなら全部破壊するってんだよ!!」

ジョーカーの叫びに呼応し、JOKERのバックパックから翼が分離する。そのまま回転しながらバエルアイゼンリッターを追い返し、バックパックへ再ドッキングした。

「記憶だと...!?なぜ貴様がそれを知っている?」

SECTORのどこかに、JOKERのコアデータなる物が保管されている。デュークは騎士団の中心人物と言うこともあって、トオルという男や王から聞かされていた。所謂"JOKERの記憶"と言う事だったが、当然ジョーカーが知っているはずが無いと考えるのが妥当であろう。ジョーカーの声に焦りが表れているという事は、どこかで彼がSECTORに記憶を閉じ込められていると知ったのだろう。とは言えデューク自身も、その証拠となる物を見たことが無く、半信半疑であった。

「...記憶がどこかにあると、本気で思っているのか?」

「当然だろ...ここに来た瞬間から頭が痛くて仕方がねぇ!変な声も聞こえてくる...そうとしか思えねぇだろ!!」

ジョーカーは声を荒らげ、JOKERのバーニアを最大にした。ブレイヴエッジの刀身から水平方向にホログラムの分身が生成され、同時に5つもの斬撃を喰らわせた。バエルアイゼンリッターもサーベルとシールドで弾き返すが、それでもJOKERの執拗な攻撃に防戦を強いられる。

「その稚拙な考えは...さては若いな...!!」

「だからどうしたぁッ!!」

JOKERが片翼を分離させ、リアアーマーから取った柄とドッキングして"デュランダルジョーカー"を装備した。猛烈な速度で真横に薙ぎ払ったが、バエルアイゼンリッターはバク宙を描き見事に避けきった。

「だから自分を制御出来んのだ!ただ一人の苦しみで他者を巻き込む...まさに幼稚そのものだ!!」

バエルアイゼンリッターは再びメガキャノンを展開、最大出力で叩き込んだ。JOKERもデュランダルジョーカーを分離させシールド代わりにしたが、それよりも早くメガキャノンが着弾し壁に深くめり込まされた。

「これだけやっても無傷とは...だがこれで分かったろう!今貴様が、一時の苦しみから逃れたいが為に積み上げた屍の山を!ゲームだからと言って済む問題ではない!」

「知るかよ...コイツらだって...無関係な連中まで抱き込んで生け贄にしてんだ...そんなお前らに言われたく...無いね...!」

ジョーカーは嘲るように言い放つが、それとは裏腹に唇と腕が震える。そしてその瞳には涙を浮かべていた。

「大体、俺がこんな事をやらなきゃ行けなくなったのも、全部...騎士団、お前らのせいだ...!守りたかった物を蘇らせてやるとか...その為にν-Typeを潰せとか...そんな事だけ刻みやがって...俺がアイツを守れなかった罪の...これが罰だって思わなきゃ、やって行けなかったんだよ...!それを今更やめろと言われて...立ち止まれなくなってんのに、都合の良いこと言うのかよ、お前らはッ!!」

"アイツ"と口走った途端、ジョーカーの頭痛が更に強くなった。それでも叫びを上げる。守りたかった物が何だったのか、なぜこれを罰だと思わなければならなくなったのか。全てを知らぬまま終わらせる気は微塵もなかった。

「JOKER!?」

突然声が聞こえ、ジョーカーもデュークもその方へ目を向けた。ヘイルソーサレスREとガンダムECがJOKERのもとへ駆けつけたのだ。

(コイツ...あのトールギスの...!)

レイはバエルアイゼンリッターを見るや、一瞬で相手を見抜いた。ダブルオーダイバーとビルドストライクがJOKERによって屠られようとするのを、呉越同舟の流れで食い止めようとした事を思い出す。

「一先ずは下がらせる...!」

ヘイルソーサレスREがホークカスケードを数発撃ち、バエルアイゼンリッターを近づけさせまいとした。しかしデュークはこれ以上の戦闘を不要と判断し、撤退した。

「何とか間に合ったな...何!?」

ハイラックがほっとした瞬間に、JOKERが壁から抜け出しブレイヴエッジで、背後からヘイルソーサレスREを斬りつけようとした。ハイラックはガンダムECに急いでシールドで防がせ押し返そうとした。だがJOKERの剣圧は尋常ならざるもので、シールドにヒビが入り始めた。

「レイ...下がれ!やはりJOKERは...!」

ハイラックはレイに後退を促した。しかし、ヘイルソーサレスREはJOKERへ歩みより、JOKERの胸部装甲に優しく触れた。次第に青く淡い光がヘイルソーサレスREとJOKERを包む。

 

「何だここは...」

ジョーカーが目を開くと、白い靄に包まれた空間に立っていた。手に持っているハンドガンを見て、ここが夢の中で見た景色なのだと分かった。そして目の前で力なく座り込み天を仰ぐ青年の後頭部に銃口を向けた。無論、その青年の前には女が血溜まりの中に倒れている。

「お前は何も守れなかったんだ...これからも失い続けるしかない。だから、俺が裁く...」

ジョーカーの指が引き金に乗せられ、今にも力を込めようとした。

「お前に明日は来ない....永遠にな」

しかし、引き金を押す彼の手を別の手が引き留めた。

「もうやめて...ジョーカー」

レザージャケットを羽織った青い髪の少女がジョーカーの腕を押し戻し、拳銃を下ろさせた。

「何でお前がここに...」

凝視するジョーカーに、レイは首を横に振った。

「分からない...でもこれに近い景色は、夢で何度も見た...だけどずっと意味が分からなかった。でも今なら分かる気がする」

「いいから退けよ...俺は!」

ジョーカーが再び拳銃を上げようとするが、それでもレイは強引に押し戻した。

「もういい加減にしてよ!これ以上...自分を傷つけるのはやめて!!」

レイは涙ながらに訴えかけた。彼のやっている事が、まるで過去の自分と同じように感じられた。だからこそ止めたいと願ったのだ。他人を傷つければ、余計に自分の心が痛む。それで生きる実感を得るような生き方をしているのは、レイには痛いほど分かる。ジョーカーは手が震えながらも、もう一度拳銃を青年の頭に向けた。

「だけどコイツは...俺なんだ。俺は誰かを裁きながら自分自身を裁いていた...そいつはこれまでも、これからも変わらない。けど、何を守れなかったのかも分かんねぇ、自分の罪が何なのかもハッキリしない...ああやって戦い続ければ分かると思ってたのに...余計に見えなくなっちまう...!!」

ジョーカーの顔が苦痛で歪み、普段の覇気が消え失せていた。そして引き金を引いた。パン、と乾いた音と共に頭を撃ち抜かれた青年は血の海に、状態を投げ出し地に臥した。

「その罪なら私も一緒に探すから...だから、もう自分を殺そうとするのは...やめて...お願い...!!」

膝から崩れ落ちるジョーカーを、レイが抱き締めた。ここまで苦しんでいたとは全く気づけなかった事への悔しさと、仲間を失う悲しみを味わいなくないという意思がそうさせた。

 

「止まった...」

レイの意識はヘイルソーサレスREのコクピットに戻った。眼前のJOKERは双眸の輝きが消えていた。完全に動作を停止したのだ。

「何だったんだ、今の...。あぁ、レイ。今すぐブルームーンに戻ろう。このままだと危ない」

「そうね...JOKER運ぶの、手伝ってくれる?」

ヘイルソーサレスREとガンダムECはJOKERの両腕を担ぎ上げ、SECTOR 3を脱出した。レイはじっとJOKERを見つめ、悔しげにまぶたを閉じた。

「あんなの隠して...ずっと一人で戦ってたなんて...」

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