※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 34 SECTOR ZERO

レオンは王の間に招かれた。騎士団の階位はデュークと比べても低く、騎士の階位を束ねる士長の立場にあった。その彼が王から直々に呼び出されるとなれば、平穏ではないのは明らかだ。

「前に話した件だが...引き受けてくれるか?」

王が試すようにレオンを見据える。

「自分は汚名返上をしたく、この作戦を引き受ける所存であります」

JOKERやブルームーンに煮え湯を飲まされる経験をしたレオンにとっては、王からの特命に関して汚名返上以外の意味を持たなかった。

「かなりの意気込みのようですね...あれ程の機体...ハイゼンスレイⅡ・ラーをスクラッチで作っただけの事はある」

部屋の奥から緑髪の青年が現れる。トオル・アルマーニュだ。レオンに歩み寄ると、ある物を手渡した。レオンが手を開くと、そこにはデュークと同等の階位である、伯爵の階位章が。

「何故これを...まさか...!」

驚くレオンに王は愉快そうに笑みを浮かべた。

「これを達せば、貴様の階位をそこまで引き上げようではないか。」

レオンは手の震えを必死に抑え、思考を巡らせる。伯爵の階位になれば、王に次ぐ権力を行使できるようになる。となれば、革命勢力が一番に目指していた無血改革が達成される。この作戦を受けるには、後に引いてはならないと気を引き締めた。しかしそれだけの権威を手に出来る伯爵階位を、なぜこのタイミングでレオンに与えようとしたのかも測りかねた。

 

レイはヘイルソーサレスREからデッキに転移し、JOKERへと歩み寄る。J.E.が彼の額をハンカチで拭うのを見るに、彼女が言っていた関係は本当なのだと思い何もせずに立ち去った。あの中に入っていく事自体、不要な干渉と思えた。レイとハイラックはブリッジに入り、適当なシートに腰掛けて休息を取ることにした。その入れ替わりか、ウェルスとエルニアがブリッジを出て行く。

「お?二人共戻ってきたな?」

アヤカに何らかのマニュアルを送っていたキャプテンが、二人に気づいた。

「キャプテン?どうしたんです?」

ハイラックがコーヒーをメニューから呼び出そうとして、その指を止めた。するとキャプテンはウィンドウを開き、誰かを呼んだ。ブリッジの入口から足音が聞こえ、レイもハイラックも思わず背もたれ越しに振り向いた。そこには黒い髪をサイドテールに纏めた、紅い瞳の少女が立っていた。レイは声を震えを抑えつつ、席を立った。

「もしかして...奏...?」

「うんっ。レイったら意地でもスワンって読んでくれないね?久し振り、怜!」

スワンはにっこりと笑顔を見せ、レイの手を両手で包んだ。あれだけの悲惨な戦いの後で、まさか戻って来るとは考えても見なかった。レイは衝動的にスワンを抱き締め、よかったと何度も呟いた。

「...?彼女、騎士団のようですけど...大丈夫なんですか?」

ハイラックはこっそりスワンのステータスを確認し、所属が騎士団のままな事に気がついた。キャプテンはコーヒーの入ったマグをハイラックに手渡し、専用のシートに座った。

「一応捕虜だ。完全に移籍するには運営の処理の都合上一週間はかかる。前はそうでもなかったんだがな?」

そうなんですかとハイラックは納得し、再会の喜びを分かち合うレイとスワンを眺める。

「ところで...レイとハイラックさんにはまだお伝えしていませんでしたね。騎士団の現状について」

スワンが唐突に真面目な顔をして、ウィンドウを表示した。そして騎士団の組織図を映しレイとハイラックに向けた。

「ヴォルクール騎士団は現在、内部分裂が進んでいます。このデュークの一派が現体質に反発し、革命勢力として行動しています。二人が見たかどうかは分かりませんが、銀色のバエルがその象徴です」

銀色のバエルと聞いて、二人は互いの顔を見た。

「そのバエルなら見たことがあるよ。暴走中だったJOKERを圧倒してたように見えたな」

「それなら話は早いです。デューク麾下の革命勢力は騎士団全体の6割を占めるようになりました。既にキャプテンにはお話していますが、そちらと連合を組む為に、ある戦艦の指揮を頼んでいます。」

「戦艦って...?」

レイがきょとんとした顔でスワンを見つめる。スワンはくすりと笑い、レイに「可愛いっ」と言って説明を続けた。

「マザー・メタトロン。恐らく知っている人は限られてくるでしょうけど、その戦艦を確保する事に成功しました。何のためか運営が保有しているようですが、私達が確保作戦を始める頃には、完全に放置されていました」

「マザー・メタトロン...ねぇハイラック、聞いたことある?」

レイはダイバーズの為にガンダム作品を勉強したことがあるが、流石にマザー・メタトロンや登場作品たるガイア・ギアは認知していなかった。ハイラックも少し首を捻るが、確証に自信がないのを承知で口にした。

「ガイア・ギアか?...ちょっと待ったアレは確か、並の大きさではなかったんじゃ...!」

「よくご存知で...!MS30機は乗せられるそうなんですけど、スケールミスなのか沢山乗せられますよ!」

興奮気味なスワンとは対照して、レイとハイラックはやや引き気味の反応を見せた。ブルームーンですら切り詰めて10機が限界だと言うのに、その3倍を超える搭載数を持つマザー・メタトロン。これを運用するなど正気の沙汰とは言えなかった。

「キャプテン!JOKERさんが出撃しちゃったです!あ...、J.E.さんまで!?」

アヤカが切迫した様に声を上げた。キャプテンは何事かとメインモニタを操作し、JOKERの反応を追った。SECTOR 3方面へ真っ直ぐ向かっているらしく、マーカーが一直線に動いているのを確認した。そのすぐ後にJ.E.の物と見られるマーカーも現れた。

「何てこった!ウェルス、エルニア!JOKERがそこへ向かった、足止めを頼む!そこの3人も出撃だ!」

「了解」

レイ、スワン、ハイラックの3人はブリッジを飛び出し、それぞれの機体へ転移した。

「やっぱりSECTORに...JOKERの何かがあるんだ...」

レイは先に見たヴィジョンが頭から離れず、すぐに何とかしたがった。だが今の自分が彼の為に何が出来るか。自分の想像とは次元の違うJOKERの苦しみを解くことが出来るのか。否、そうしなければならないのだ。

「レイ、ガデッサヘイルソーサレスRE。出る」

ペダルを踏みレバーを前に倒した。ヘイルソーサレスREが軽快な加速の後、ブルームーンのカタパルトデッキから勢い良く飛び立った。それに続き、ハイラックのガンダムECとスワンのガンダムF91-Mが出撃した。

 

SECTOR3の内部に進入したJOKERの位置をマップに表示させ、J.E.は追跡を開始した。予めJOKERには発信機を取り付けておいた為、追いかけるのは容易となった。アウトフレームは今回の出撃にあたって、取材用のバックパックから換装しており、エールストライカーのような配色をしたシラヌイを装備している。バックパックの下部からアームが伸び、オオワシのビームキャノンを懸架する仕様だ。シールドとライフルはガンダムアストレイシリーズ共通の物を携行している。

「あんな状態で戦えるわけ無いでしょ...そう言う自分勝手は要らないって...もう...!」

視界の隅に騎士団と思われるガンダムMk-Ⅱが入り、目撃される前に仕留めようとドラグーンを1基射出した。死角から見事にガンダムMk-Ⅱを撃ち抜き、バックパックに帰還させた。正直まともな戦闘をするのはかなり久しく、J.E.はやや不安があった。ドラグーンは半分マニュアルで調整しながら量子通信を使って操作していた。これも何ら問題なく扱えた事から、戦いの勘はまだ失くしていないのだと安心した。しかし。

「反応が出たり消えたりしてる...きゃっ!?」

突然左横の柱が砕け、アウトフレームは大きくバランスを崩した。J.E.は何とか制御して事なきを得るが、煙の中から正体を見せたMSを前に身震いした。彫像のようでありながら、半壊した機械人形めいた白き死神―デスサイズヘルコープスだ。

「なぜ有象無象風情がここに...いや、関係ないわ...すぐに消してあげる」

デスサイズヘルコープスの魂の座で、ラプラスは静かに告げる。両手のベルゼルガを輝かせ、真っ直ぐにアウトフレームに接近する。右手のベルゼルガが変形、斧の形を成しアウトフレームの脳天目掛け振り下ろす。しかしアウトフレームがシールドで受け流しビームライフルで、デスサイズヘルコープスの頭すれすれ目掛け狙い撃ってきた。ただのダイバーなら今のベルゼルガで一瞬で始末出来る。しかしこのアウトフレームのダイバーは他とは違うのではと思い始めた。

「ただの偶然...それを解らせてあげる」

デスサイズヘルコープスは両手のベルゼルガを斧に変形した状態にし、縦横無尽に不規則な軌道を描きつつ斬撃を叩きつける。

「コイツ、やけにうざい動きして...!!うわっ!?」

ベルゼルガの刃がアウトフレームの頭上の僅か上を通り抜け、背後の柱を破壊した。J.E.は、急いで距離を取りつつレイに救援を要請しようとしたが、躊躇した。絢斗がもし本当にJOKERになっていたとしたら、その責任の一端は自分にもある。ならばこの事件は二人で蹴りをつけなければならないと思っていたからだ。裏で合流しなかったメイポールダンスのメンバーと共に調査を続ける中で、その意思が大きくなっていった。かつてJ.E.も騎士団のメンバーだった。それが全ての始まりだとしたら―。そう思うと後悔ばかりが胸を埋め尽くした。

(こんな強い奴がここに置かれたってことは、この近く...それかこの近くのSECTORにJOKERの全てが?だったらさっさと倒さないと!)

J.E.は戦いに全神経を集中させた。デスサイズヘルコープスの挙動は未だに読みきれないが、反射でどうにかダメージを被らずに済んでいる。どうにか勝機を見出さねばと注意深く敵を観察しはじめた。

「有象無象が...鬱陶しいと言っている!」

ラプラスはアウトフレームを目の前に、形容し難い気持ち悪さを感じた。薬の効果とデスサイズヘルコープスの機能によって、意識を無理矢理拡張している影響だろう。何者かすらも分からない思惟がラプラスの脳裏を過ぎり、ますます憎悪を募らせた。左手のベルゼルガを真横に薙ぎ払い、アウトフレームがシールドを向けた。しかし接触する前に手を止め、右のベルゼルガを一気に振るった。

「その程度に引っかかるなら、やはりそういう事でしょうね」

アウトフレームの反応が一瞬遅れ、やむなく右手をベルゼルガの柄に伸ばして受け止めた。その時J.E.とラプラス、両者の思考が一瞬止まりかけた。

「この声...って...史...佳....!?」

「...よりにもよって...許さないッ...!」

アウトフレームから聞こえる声に、ラプラスの顔は更に悍ましく歪んだ。なぜこの女が。男恋しさに家の跡を継ぐその直前で逃げ出し、挙句一族そのものを潰そうとした女。桜庭の名を汚した疫病神。ラプラス―史佳が最も許せぬ、その女までもが目の前に現れた。

「死ねぇえええッ!!死んで償え!!桜庭の血を汚した罪をッ!!死んで償いなさい!!」

「史佳!私って分かってるなら話を聞いて!!史佳ッ!!」

アウトフレームのバックパックからドラグーンを射出、デスサイズヘルコープスの背後と上下に取り付かせ一斉に放った。

「一族の裏切り者の戯言など聞けない!」

しかし史佳の怒りに呼応し、デスサイズヘルコープスの青い光の線が強く輝く。そしてウイングユニットが広がり、微細ながらも何物も貫く光の矢を放射した。その光の矢は鉄の翼の裏側からも放たれ、ドラグーンを全て灼き払った。高密度に放射されたレーザーによりアウトフレームは一瞬で焼け焦げになり、センサー系統は愚かカメラアイですら瀕死となった。デスサイズヘルコープスはそのままアウトフレームを、奥の壁に叩きつけ、首に手をかけ握り潰そうとした。

「情欲に負けて家すらも壊そうとした!お父様はそう言ってあなたを許さなかった!死を以て償わない限り、あなたの罪は消えない!いや...死んだとしても消えるはずはない!だがこのままのうのうと生きようとするなら...私が裁くだけの事ッ!!」

グギギ、とフレームが軋む音。アウトフレームのコクピット全体に反響する。しかし、J.E.の顔には多少の恐怖はあれど、妹を憂う姉の表情が浮かんでいた。

「あの家はね...人の未来だって勝手に決めるんだって分かったでしょ...!史佳が跡継ぎになるって話をお母さんから聞いた時、やっぱりそうだって思った!人は...自分の未来を自分で選ばなきゃいけないの!史佳だって継ぎたくない事くらい...」

英梨が自分の夢に触れようとするのを遮るように、史佳は声を荒らげる。家を守る為に捨てて来た、自分自身を見まいとするかの様に。

「黙れッ!!疫病神が何を宣うかッ!!」

「じゃあ...図書館の司書になるって夢は嘘だって言うの?その為に本について沢山勉強しなきゃって張り切ってたのは何だったの?私も史佳も、やりたい事がきちんとあった!ならそこに向かって進むのは間違ってないの!」

やりたい事に向かって進む。史佳は無意識に反芻した。史佳の瞳が潤み、唇が震える。

「だから家を出る時、言ったんだよ...?史佳がもし、やりたい事を選びたいって思った時はいつでも力を貸すよって。私は今でも史佳を誇れる妹だって...子供の時だって頼りにしてたんだから」

史佳は英梨の声に、どこか心が暖まるのを感じた。途端に身体にかかっていた力が弱まり、コンソールに上体をぶつけてしまった。上手く力が入らないままの腕を上げ、モニターに映るアウトフレームへ手を伸ばした。

「英梨...お姉...ちゃん....」

「史佳...おいで」

英梨は史佳が正気を取り戻したのではないかと感じ取り、アウトフレームの両手をデスサイズヘルコープスのコクピットに差し伸べた。その刹那、史佳が苦痛に叫びを上げデスサイズヘルコープスのウイングユニットが光を放ちはじめた。

「史佳...史佳ッ!?」

「なら...私はどうすればよかったの!!そんな事されたら、私は...私はッ!!」

デスサイズヘルコープスの全身を青い輝きが包み、SECTOR3を覆い尽くす程のエネルギーを放出した。

 

SECTOR3を抜けたJOKERは、SFゲームに出てくる、度を超えた広い通路を航行していた。

「見たこともないゲートを通りゃ、何だここは...まだ頭が...けどこの先にさえ行けば...」

レーダーに4つの反応が。ジョーカーはレバーを後に引いて制動をかけ、ウェポンセレクタを操作した。JOKERの右手に持つブレイヴエッジが変形、ガンモードとなる。未だ距離はある為、牽制としてバックパックのビーム砲"アーチャーフィッシュ"を展開、通路の奥へ放った。その直後、銃声音が聞こえた。この連続する破裂音はマシンガンの物と見て間違いない。

「最低限の警護ってか...あっさりと通してくれるってんなら、何かあるって事かよ!」

ジョーカーは苛立ち混じりにレバーを叩き、ペダルを力いっぱい踏んだ。真正面から迫るペイルライダーの顔面を、すれ違いざまに撃ち抜いて破壊した。今度はインフィニットジャスティスとAGE-FXが柱の陰から飛び出し、JOKERの行く手を阻んだ。

「言ったはずだぜ..."全てを破壊してやる"ってな!」

バリアフィールドを解き、ブレイヴエッジをソードモードに変形し薙ぎ払う。これだけでもかなりの風圧を生じ、インフィニットジャスティスを大きく仰け反らせる事に成功した。JOKERがインフィニットジャスティスの腹を蹴りつけ、頭頂部のマスト型センサーを引っ掴み首をもぎ取ろうとする。インフィニットジャスティスも抵抗しようとJOKERの腕を掴み引き剥がそうとする。そこへAGE-FXがCファンネルを飛ばしJOKERに一泡吹かさんとした。だがJOKERはぐるりと向きを変え、インフィニットジャスティスを盾にしてこれを防いだ。そのまま蹴り倒すと、AGE-FXに指を向けクイクイと曲げ挑発した。その矢先、また別の反応が現れた。ジョーカーが反応のする方へ目を向けた瞬間、眩い光が辺り一帯を覆い尽くした。

「ツインサテライトキャノンを最大で叩き込まれて平気な奴なんていないだろ...これでレオンにいい報告できる」

光の正体は、G-ファルコンとドッキングしたガンダムDXのツインサテライトキャノンであった。仲間諸共食らわせたらしく、AGE-FXの反応がロストしていた。だがこれだけの威力をぶつけられれば、JOKER言えど無事では済まないだろう。DXのダイバーは余裕たっぷりの顔をした。しかし、それが命取りになるとは知る由もなかった。JOKERの反応は消えていないどころか、DXの眼前に迫って来ていた。DXのダイバーはぎょっとし、身の毛もよだつ感覚を味わった。

「ひっ...!?な、何で...ぐわぁああああああああ!!?」

JOKERのブレイヴエッジがDXのコクピットを貫く。

「相手が何なのか分かってないみたいだな...お前みたいなバカが一番先に死ぬ。その位分かってんだろ」

ジョーカーは面倒そうに吐き捨て、DXを蹴落とさせた。そして、目の前の大きな扉にJOKERを近づけた。コンソールに"SECTOR ZERO"の文言と認証画面が表示され、ジョーカーは左手の甲の"J"の刻印をかざした。扉に灯っていた赤のランプが緑に変わり、開いた。走査線以外の光がない廊下を歩いた先は、他のSECTORよりかなり狭い部屋に出た。円筒状らしく、壁は円形にカーブしている。天井も床らしい床は無いかと思われた。有るとすれば、中央を貫く柱を繋ぐためと思われる狭い足場しかない。よく目を凝らせば、足場の下に水が溜まっていた。辛うじて床面らしきものが見えたが、当てになりそうもなかった。ジョーカーはこのフロアを貫く、青の淡い光を灯す柱に吸い寄せられるかのように視線を向けた。

「ここに...."俺"があるのか...」

得体の知れない恐怖はあれど、渇望していたものを前にジョーカーの心までもが吸い込まれるような気がし

た。

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