※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 35 開示された記憶

ジョーカーは吸い寄られるかのようにコクピットハッチを開け、光る柱を直接見上げた。目には涙が浮かび、心は奇妙な歓喜に包まれる。ここに自分の失った全てがある。そう思うだけで自らを断罪し続けた意味があったのだと。突如アラートが鳴り響き、急いでハッチを閉じた。

「何だってんだよ、こんな時に!!」

ジョーカーは怒りを顕にし、モニターを睨む様にして見渡した。反応は真上からだった。

「ここで会ったが百年目ってんだ!誘い出して正解だったぜ!」

レオンはJOKERを視認するなり指をパキパキと鳴らし、レバーを握った。

(デューク、済まねえ...俺は一世一代の賭けに出る。もしかしたら犠牲なく改革出来るかも知らないんだ!)

ハイゼンスレイⅡ・ラーを降下させ、CSBのヒートブレードを起動した。砲身に沿った形状の刃が赤熱化する。そのまま落下の勢いを利用し、JOKERを脳天から一刀両断せんとした。しかし、JOKERが真後ろへ飛び退いた事で未然に防がれてしまう。

「野郎...ッ!!いつまでも邪魔ばっかしやがって!!」

JOKERはブレイヴエッジをガンモードにし、ハイゼンスレイⅡラーの足元を撃ち抜く。だが放たれる光の矢はハイゼンスレイⅡラーを避けて壁に吸い込まれた。

「このハイゼンスレイにはな...Iフィールドがあるんだよッ!」

ハイゼンスレⅡラーがバーニアを全開にしてJOKERに突進する。CSBのヒートブレードとブレイヴエッジの刃が交錯し、大きく火花を散らした。

「この...破壊者が!」

もう片方のCSBからもヒートブレードを伸ばし、JOKERの顔面めがけて突き刺す。JOKERは素早く反応して頭を逸して回避、ハイゼンスレⅡラーの腹を蹴り飛ばして自由の身となった。そのままJOKERが反撃に転ずる。ブレイヴエッジの刀身から水平にホログラムの分身体を生成し、5列もの斬撃を数回に渡って叩き込んだ。ハイゼンスレイⅡラーはCSBの長刀身を以てしてもその斬撃の全てを防ぎきれず、3度も斬りつけられてしまった。

「な、何だこの攻撃はッ!?」

「一々お前に説明してられっかよ!」

ハイゼンスレイⅡラーに昇龍斬りを見舞い打ち上げると、バックパックのアーチャーフィッシュとブレイヴエッジ ガンモードを一斉に放った。かなりの数の光弾がハイゼンスレイⅡラーを襲う。しかしこの機体にはIフィールド発生装置がある。ビーム攻撃の殆どは無効化されてしまうのだ。ジョーカーもそれを理解しているはずなのだが、このSECTOR ZEROに来た瞬間から冷静な判断がし辛くなっていた。

「前より弱くなってるってのかい...丁度いいチャンスという事だな!!」

ハイゼンスレイⅡラーが両腕からCSBを分離、クロー形態に変形させる。同時に背部の強化型ウィンチキャノンも射出し、JOKERの周囲に取り付かせた。JOKERは身をぐぐっと屈め、真上に向かって勢いよく跳躍した。蜘蛛の形をしたクローが真下から猛烈な速度で迫る。そして左右を縦横無尽に飛び回りながら高出力ビームを放ち続ける強化型ウィンチキャノン。これらをブレイヴエッジ一本で捌くのは至難の業だろう。JOKERはグルリとロールしながら上昇し、ブレイヴエッジ ガンモードで強化型ウィンチキャノンを退け、急降下しつつCSBのクローを蹴りつけ踏み台にし、再び飛び上がった。もう片方のクローが拡散メガ粒子砲を発射するが、JOKERはビームシールドで防ぎつつアーチャーフィッシュで爪に当たる部分を撃ち抜いた。

「ビットばかりに気を取られやがって!」

背後にハイゼンスレイⅡラーが現れ、両肩のユニットカバーを開いた。そこから密の細かい拡散ビームを放射した。JOKERはまともに攻撃を受けてしまい、水面に叩きつけられた。幸いにも床面のある場所だったため水没しなかったが、これが底無しの場所であれば無事では済まなかっただろう。

「散々手こずらせやがって!これで死ねよJOKER!!」

ハイゼンスレイⅡラーにCSBと強化型ウィンチキャノンが帰還する。CSBが変形して基本形態になり、ヒートブレードを再起動した。かなり出力を上げているのか刀身にスパークが走っていた。一瞬ふわりと浮き上がり、そのままカワセミの如く猛スピードで降下した。X字に交差したCSBを前面に突き出し、JOKERに向かって更に速度を上げた。

「何で急にバリアフィールドが使えなくなるんだ...!クソッ!」

ジョーカーはコンソールに表示されているJOKERのステータスで、バリアフィールドの項目が消えていることに気づいた。このSECTOR ZEROにいる時はJOKERとしての力を封じられているのかも知れないと、ジョーカーはウェポンセレクタから"Invisible"を選択した。機体に透明の膜らしきものが覆い被さり、JOKERを相手の視界から消し去った。レオンもすぐにこれに気づき、レバーを後ろに力一杯引いた。

「消えた...だと!?バリア以外に何かあるってのか!?後ろ!?」

突然背部のフルドドⅡユニットが爆発し、ハイゼンスレイⅡラーは転倒させられた。強化型ウィンチキャノンも接続アームを切断され水中に投げ捨てられてしまった。

「黙ってやられる訳にゃ...しまった...!?そこへは行かせん!!」

レオンは光る柱へ向かおうとするJOKERを落とそうとレバーを前に倒すが、モニターに突然、「非戦闘区域」と表示がなされ機体を動かせなくなってしまった。

「何がどうなっている!?えぇい、奴は何故動かせるんだ!この作戦は無駄に出来ないというのに...!!」

動けなくなったハイゼンスレイⅡラーには見向きもせず、JOKERは光る柱の前で静止した。コクピットハッチを開き、ジョーカーがその柱に手を触れた。柱から光がジョーカーに向かって流れ出す瞬間、心臓がバクンと拍動した。脳が膨張するような感覚がし、そこから抜け出したい衝動に駆られる。しかし手は一向に柱から離れようとはしない。ジョーカーは痛みに呻きながら、柱を凝視する。

「うっ....ぁあああッ....!!ガハッ...うぐッ...!!な、流れて来やがる...うぁああああああ!!!」

ジョーカーの瞳が緑色の光を灯す。その光はやがて全身と機体を覆い尽くし、SECTOR ZERO全体を照らした。

 

ある夏の日。この日もかなり暑かった。気温は38度、日本の夏は湿気も高いので体感気温はそれをゆうに超えていた。大学生の男女二人が学内の敷地にある噴水の前に座っていた。やはりこの暑さは身に堪えるのか、女子学生は足を水につけていた。

「暑ぅい....」

女子学生はあまりの暑さに耐えかねてレースの上着を脱ぎ、隣に座る男子学生の膝の上に置いた。

「おい英梨...自分のくらい自分で持てよ...地味に膝が暑いんだよ」

黒いシャツを着た男子学生がそう言うと、上着を畳み英梨のカバンの中に突っ込んだ。英梨はそれを見るやへらへらと笑いながら「ゴメンね」とペロリと舌を出した。

「暑ちぃ...飲み物買ってくるわ...」

「ねぇ絢斗〜、私のもよろしくー!」

絢斗は面倒そうに英梨を見、片耳だけつけていたイヤホンのイヤーピースを、ポケットにあったフェイスシートで掃除した。

「欲しいのあるなら自分で言えよ。お前の好みなんざ知ったこっちゃないね」

「え?彼女を暑い中に再び連れ出す彼氏がいんの〜?まぁ、行くけどねっ。ちょっと待ってて」

英梨はハンチングキャップを被り直してミュールサンダルを履き、絢斗のもとへ駆け寄った。ただでさえ暑いにもかかわらず、英梨は絢斗の腕に抱き着くような格好で歩く。英梨にとってはこれでも幸せなのだが、絢斗としては地獄そのものだった。コンビニに入り、ドリンクコーナーの前で立ち止まる。

「ふはぁ...涼し...」

英梨が冷蔵庫の扉を開けて冷気を浴び涼んでいる。絢斗は呆れ気味に舌打ちをして英梨を冷蔵庫から退かせた。

「店で遊んでんじゃない。お前いくつだよ」

「へ?23だけど?」

「コイツ俺より2歳も歳上なのにガキみたいなことすんのかよ...最悪だな」

「こんな最悪な彼女でも愛してくれるのは、どこの誰?」

英梨が意地悪そうに笑いながら絢斗の頬を突く。絢斗は「俺も物好きになっちまったもんだ」と呟き、冷蔵庫からミネラルウォーターをだしてカゴに入れた。英梨もジャスミンティーを取って同じカゴに入れる。レジまで行こうとした所で、英梨がアイスクリームが陳列された冷凍庫をじっと見つめていた。絢斗はそれを見るや英梨の好きだったアイスパフェをカゴの中に放り込んだ。

「いいから帰るぞ。店でギャーギャー騒ぎたくない」

「ダイバーズやるの?じゃあガンプラ買いに行かない?」

「行かねえ」

レジで店員にカゴを渡し、奥の棚にある煙草の番号を伝えようとしたところで、英梨が指でバツマークを作った。

「そんな若いうちからタバコは駄目。そんな事で先に逝かれちゃ嫌だからね」

「そういう時だけ歳上ぶるのやめろ...つーか先に逝くってどういう事だよ」

絢斗の問いを英梨は笑顔でスルーした。支払いを済ませ店を出ると、絢斗は袋からアイスパフェを取り出し、英梨に握らせた。

「ははーん...絢斗ってそういう所あるよねぇ」

こう言った事の一つでも彼の愛を感じる。英梨にとっては嬉しい事だった。徐ろに絢斗は鞄からカメラを出してシャッターを切った。

「あっ...また撮ってる。SDカードが彼女の可愛い写真でいっぱいになるぞ〜?」

英梨がからかいながらスプーンでパフェをひと口分掬い、絢斗の口元に差し出したが無視された。

「いい顔してたら迷わずシャッターを切る。それが俺の信条だ」

カメラを持っている時の絢斗は、英梨にはどこか少年のように見えた。

 

家に帰り着くと英梨は真っ先にシャワーを浴びに行ったので、絢斗はエアコンをつけてテレビの電源を入れた。夏という事もあってビアガーデン特集が放送されているようだ。

「氷室とか桜井に聞いてみるか...アイツらならすぐ飛んできそうだしな」

絢斗はこう言った友人達と酒を飲むのは好きな方だった。英梨とも飲みに行くことはあるものの、彼女の場合酒は好きなのにかなり弱く、酒癖が悪い為その機会はかなり少ない。携帯電話のロックを解除し、LINEのアイコンをタップしようとした時に、英梨が脱衣室から出てきた。

「お、ビアガーデンじゃん。いつ行く?」

英梨は絢斗の隣に座り、寄りかかると肩に頭を預けた。

「お前とは行かないって...大して飲めもしない奴連れてってどうすんだよ」

「私だって好きで変な体質になったわけじゃないんですぅ!さて、ダイバーズ...やる?」

絢斗と英梨はそれぞれのコンピュータのスキャナにガンプラを置いた。絢斗の機体はトールストライクガンダムグリッターを基礎にしており、カラーリングが赤と黒と白で纏められている。両肩にはハイペリオンのアルミューレ・リュミエールの端末がついたビットを装着している。英梨の機体はダブルオーガンダムセブンソード/Gだが、背中に比較的小型ではあるがブースターを備えたバックパックを着けている。そして2人はダイバーズへと意識を"ダイブ"させた。

 

交流広場第1区画。ガンプラダイバー"JOKER"と"エリィ・パーファシー"はこの地に足を踏み入れた。草原と未来的雰囲気のある街並みが丁度良く存在するこの区画では、最も多くのダイバー達が利用する場所でもある。サーバーもそれに合わせて堅牢に構築されているようで、滅多な事では障害を起こさないらしい。エリィはJOKERがマッチングを開こうとする前に声をかけた。

「ねぇ絢斗。こないだ話したの、どうかな?」

「あんな胡散臭いのに入れるわけ無いだろ。考えても見ろよ。矜持が〜とか、儀礼を〜とか、相手を敬えとか。見てるだけでただ痛いし、このゲームする連中の大半は勝ちゃあいいとしか思ってねぇよ」

「じゃあ一度だけ見に行くだけでも、ね?」

エリィがやけに頼んでくるので、JOKER渋々承諾した。そのまま彼女の指定したエリアへ転移した。今度は第4区画にやって来た。石畳の広がる、ローマ帝国時代辺りのヨーロッパを彷彿とさせるような景色が広がっていた。エリィに連れられるまま歩き続けると、眼科に海が広がる岬に辿り着いた。彼女が指差す先を見ると、ぼんやりと城のようなものが見えた。しかしあそこへは転移できるのか、JOKERには甚だ疑問であった。エリィは空中に指を向けた。するとウィンドゥが表示され、そこにパスコードを入力した。

「絢斗もあの城へ行けるようになったよ。試してみて?」

エリィに言われるまま、JOKERは転移先のリストを表示した。確かに"第4区画 エリアB"の表記がある。恐る恐るそれをタップした。

「な、何だこれは...」

転移した先は、海の向こうにあった城の中だった。エリィも間もなくしてやって来たので二人は歩き始めた。内装はやや質素でありながら殺風景では無かった。すれ違う人々の雰囲気もただ、気取っているのではなく本物なのだと感じ始めた。

「どぉ?入りたくなった?騎士団」

エリィがJOKERの顔を覗き込み、問いかける。

「いや...これが本物だとしてよ...別の意味でやっていけそうも無い」

この空気感は他のクランではまず味わう事はないだろう。

「これは...見ない顔だね?エリィ君。彼は?」

緑髪の男に出くわして、エリィは会釈をしてJOKERを紹介した。

「JOKERと言います。私のパートナーです」

若干気恥ずかしそうにするエリィを見て、緑髪の男は微笑みJOKERに右手を差し出した。

「僕はトオル・アルマーニュ。騎士団ではまぁ...それなりの立場に居る。けど気にしなくていい。僕もそれで態度を変えられるのは苦手な物でね」

「お生憎様、俺は入る気は無いんでアンタとも仲良くする必要はないな」

JOKERはその手を引っ込ませ、トオルを警戒した。何故か彼から胡散臭さを感じてならなかった。トオルは苦笑して握手を諦めた。

「そうかい...それは失礼したね。見学と言うならいつでも歓迎するよ。それじゃごきげんよう、エリィ君」

トオルの姿が見えなくなると、エリィはJOKERを角の陰に呼んだ。

「あの人騎士団のトップとほぼ同格なんだよ?何考えてんの...!」

「それなりのって言ったから俺もそれなりの対応をしただけだ。何か間違った事でもしたのか?」

「あぁもう!これ誰かに見られてたら終わってたよ!今度から気をつけて...」

「知るかよ...」

エリィはその後見学の話を伝えてくると言い、JOKERは彼女の居室で待つこととなった。

「カメラばっかりだな...人の真似すんのやめたら」

壁掛けの棚に並べられたカメラを一台、手に取りギャラリーを開いた。JOKERもとい絢斗は中学高校と写真部に所属していた事もあり、撮影の腕はプロに近い物と認められた経験がある。英梨も興味を持ち始めたのか、実際に指導をした事があるがその期間も僅かのうちに終わっていた。しかし彼女はこっそりと練習をしていたようで、沢山の写真がカメラに保存されていた。仮想世界なのでスクリーンショットなのだが、カメラのオブジェクトを介す事で実際に写真を撮るのとほぼ変わらない感覚で撮影できる。

「地味に上達してんのが腹立つな...ん?何だこれ...」

写真を次々と切り替えながら、あるものが目に留まった。何かの施設かと思われたが、その中心に鎮座しているのは建造物のように見えた。しかしよく見ると機械のようであった。そして周囲の景色に違和感があった。ズームして見ると、恐らく人間と見られる影とマシンのサイズ比が不自然だった。人間に対してこのマシンはあまりにも大き過ぎる。突然ドアが開き、JOKERは急いでカメラを棚に置いた。しかし部屋に入って来たのは英梨では無く、トオルだった。

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