※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズ Side:JOKER   作:JNEXEL

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episode 9 苦無き策

「じゃあ、俺の番か」

ジョーカーが唇をニヤリと歪ませる。ブレイヴエッジで真横一閃、デスサイズヘルコープスに5列もの斬撃が加わり大きく仰け反ったところへ居合で斬り抜け、回し蹴りを喰らわせた。

「今の攻撃は一体...!?」

機体ダメージ値を見てラプラスは驚愕した。今の一連の攻撃だけで撃墜寸前に持ち込まれていた。JOKERはデスサイズヘルコープスが体勢を立て直す前にブレイヴエッジをライフルモードに切り替え、3発撃ち込んだ。

「志やら機体は大層ご立派なのに、腕は大した事ないんだな...もう少し自分の事知ったらどうだ?」

「な、何をッ!!」

デスサイズヘルコープスの左腕が吹き飛ばされ、戦力を失う。その上ジョーカーの嘲るような声に、ラプラスの戦意は消えかかっていた。この状況をエスは当然黙ってみていられるはずが無かった。

「クソッ....お前の相手は俺だ!!」

ストライクNEXTがビームブラスターを放ち、JOKERの注意を引きつけた。放たれた光弾をブレイヴエッジの刃で斬り潰し、JOKERは刃先をストライクNEXTへ向ける。

「やるか?ν-Type」

「上等ッ!!」

ストライクNEXTがバーニアを全開にして急速接近、シュベルトゲベールで素早く薙ぎ払う。JOKERは余裕を見せながらブレイヴエッジでそれを弾き、手刀を頭にぶつけストライクNEXTを撥ね飛ばそうとした。だがストライクNEXTも素早くビームブラスターをマウント、左手で受け止め押し返した。

「ギリギリだが追いつける...追い返すくらいならできるかも知れない!」

エスは妙な手応えを感じた。ここまでやれるなら、何とか自衛して離脱できるかも知れない。そう見ていた。

「追い返す、か....やれるもんならやってみろよ」

一方のジョーカーは、ストライクNEXTを葬り去る為の手立てをすでに見出していた。何かしらの邪魔さえ入らなければ、一瞬で片付けてしまえると確信した。ストライクNEXTが左腕下部のラッチから円筒状のデバイスを取外し、JOKER目がけ投げつけた。デバイスが縦に伸張、眩い光と共に全方位に向けてレーザーを放射した。ジョーカーは急いでビームシールドを起動させ防いだ。

「そうか、そう言やぁコイツはあの時に...そりゃそうか!」

ジョーカーは青いアルケインのレーザー放射を受けた時の事を思い出した。確かにその場にはストライクNEXTも居た。JOKERが常時展開しているバリア・フィールドを唯一貫通しうるレーザー攻撃。エスはそれを見ていたのだから学んでいたとしても不思議では無かった。

「このまま斬り伏せてやる!」

エスの狙いが見事に的中し、ストライクNEXTを飛び上がらせた。シュベルトゲベールで逆袈裟に斬り込もうとした。しかしまたしてもJOKERのブレイヴエッジに阻まれてしまう。

「そのまま逃げりゃ良かったものを...お前の動きは読めるって言ってんだろ」

ジョーカーはつまらなさげに溜息をつくと、レバーを前に倒した。JOKERが右足をストライクNEXTの腹部に押し当て、蹴り飛ばした。

「なッ...!?まだまだぁ!!」

エスはスラスターを最大限に噴射させ、ストライクNEXTの姿勢を強引に制御すると、サイドアーマーのビーム砲"バラエーナ"を展開した。フリーダムガンダムの持つ中で最大の火力を持つこの砲塔を、ストライクNEXTも備えていた。背中のウイングバインダーから腰部に位置変更した事でレスポンスが向上しており、いざという時の反撃にも使える。バラエーナの砲口から赤と白の閃光が迸り、空を裂きながらJOKERへ喰らいつく。

「...馬鹿が。読めるって言ってるって分からないのかよ...ν-Type連中ってそんな奴ばっかだな。もういい、興醒めした。さっさと片付けてやるから感謝しろ」

ジョーカーは呆れ果てたように呟いた。ブレイヴエッジを真横一閃、光の砲弾を"切断"すると最大戦速で突き進みストライクNEXTの眼前に到達した。エスはこの一瞬の出来事で心臓が止まりそうになった。

「JOKERって....JOKERって何なんだよッ!?」

今までも死線を越えて戦い抜いてきたはずのエスでさえ、JOKERの持つ力に恐怖せざるを得なかった。彼の前に"ロストフリーダム"や"もう一人の自分"、"ミナ・ツバクラメ"と言う言葉が霞んでしまう。

「俺は俺だ。この世界の切り札ってところだ...」

JOKERのブレイヴエッジの刃先がストライクNEXTの首を貫き、刎ね飛ばした。そしてライフルモードに変形させると僅かに距離を取りストライクNEXTのコクピットに銃口を向けた。

「うっ....うわぁあああああああっ!!」

エスは絶望するしかなく、悲鳴を上げる。俺は何にもなれないまま終わってしまうのか?仲間の頼み事も果たせずに消えるしかないのか?結局何も救えるほどの力など無かったと言うのか?否応無しに押し寄せる自問が精神を押し潰していく。もはや万事休すである。

「―狩りは終わりだ、ν-Type」

ジョーカーは静かに死刑宣告をした。ブレイヴエッジの銃口からホログラムの分身体が現れ、同時に火を噴く。アサルトライフルにも匹敵する連射速度で撃ち込まれる光の矢に、為す術も無くストライクNEXTは全てを受けて大地に叩きつけられた。

「もう生きていないだろうよ。あ?....チッ、また面倒な仕事が増えたな...ま、こっちはこっちでさっさと片付きそうだからボーナスゲームってな」

また別の反応が現れ、ジョーカーは面倒そうな表情から一変して不敵な笑みを浮かべた。現れたのは青いG-アルケイン"ルミナクェーサー"だった。

「よぅ、お前も懲りない奴だな」

「あの機体...!?またアンタがやったって言うの、JOKERッ!!」

両膝をつき佇む黒いストライクガンダム。レイはハッキリと見覚えがあった。スナイプ、と小さく宣言するとカスケードのパーツが回転し、弓の形を取った。そして銃口から青白い光の矢が放たれ、空を裂き突き進む。粒子そのものが超低温故か大気中の水分が凝結し、白い靄を発生させた。光速相当のスピードで迫るビームをJOKERは軽々と避け、ブレイヴエッジを数発撃つ。ルミナクェーサーもサマーソルトの要領で着地し、再びカスケードで狙撃する。これもJOKERはブレイヴエッジの一閃で弾き飛ばした。しかし、JOKERが不意に空を見上げたまま動かなくなったのでレイも何事かと同じ方向を見た。プトレマイオスのように回転する格納庫に、フリーデンⅡを模した船体、そこから真っ直ぐ前に伸びる二つのカタパルトデッキ。ルミナクェーサーのモニターにはブルームーンと表示された。

「ブルームーン...どうしてここに...Ez-8...シロー?」

ブルームーンから飛び降りる青いEz-8。

「本当に居た...!JOKERまで!!」

Ez-8のシローは、機体の着地位置をルミナクェーサーと挟み込むポイントに動かした。ルミナクェーサーもストライクNEXTを庇う位置に移動する。

「はいはい、分かってますよ...投降しろってんだろ」

「何っ...!?本気なのか?」

何も抵抗を示さず、JOKERが両腕を上げ投降の意思を表した。シローもレイもエスも面食らいしばらく呆然としていた。

 

ブルームーンに機体を格納した頃には戦闘エリアから交流区画に転移していた。ストライクNEXTは仮設ケージの中に固定され、その隣にルミナクェーサーが収容された。ルミナクェーサーから降りたレイの姿は、青いスーツから黒いレザージャケットに赤のミニスカートに変わった。

「あ、レイ!久し振り」

作業着姿のケイトに声をかけられ、レイも頷いて返答とした。

「あの機体凄いよね...!何か、勢いがありそうな感じ!」

ストライクNEXTを見上げるケイト。中々好みだったらしく、興奮気味に眺めている。レイはそうね、とだけ返してブリッジに向かう。その道中でシローを見かけた。彼と話をしているのは見慣れぬ青年だった。レイが見るに冴えない感じではあるが、ごく普通のダイバーという印象だった。ザフトの白服も印象的である。

「ちょうど良かった。レイ、こっちに来てくれないか?」

シローに手招きされ、レイもそこへやって来た。

「この娘がレイ。あのアルケインのダイバーだよ。多分君とは年が近い」

エスはレイと言う青い髪と瞳の少女を見るなり目を丸くした。

(き、綺麗な人だ....って何考えてんだ俺は?)

「アンタ、どういうつもり?黙って見つめられても気持ち悪いだけなんだけど」

意味も無く見つめられたレイは嫌悪感を隠さず言い放つ。エスは我に返ったのと同時に、若干のショックを受けた。それを見ていたシローは、悪い予感が的中したと言わんばかりの顔だ。

「いや、別にそう言うんじゃ...!...さっきは助けてくれてありがとう...」

「ごめん、そう言うのいいから。それじゃ」

言葉を続けるのを遮り、レイは踵を返して再びブリッジへ歩き出した。呆然と見送るエスに、シローは苦笑いを浮かべながら肩を軽く叩いた。

「彼女は相手が初対面だとああだからな...俺が代わりに謝るよ、済まない」

「シローさん、そんな事は...!何ていうか、そう言われる気はなんとなくしてましたから」

意味も無くジロジロと見てしまったを自覚した時から、そう思っていた。

「それじゃあ、俺はこれで。ありがとうございました。...ブルームーンの皆さんにもよろしく伝えておいてください」

「ああ!また会えるといいな!」

エスはそのまま別の区画をメニューから選択し、シローに挨拶して転移した。それと同時にケージからもストライクNEXTが消え、ケイトは思わず声を上げた。どうやらストライクNEXTを細部まで観察していたようだ。

 

「お、戻って来たか?」

キャプテンがレイの入室を認めると、シートに座り直した。

「何の連絡も寄越さず色々やってたみたいだな?本来ならペナルティの一つもぶつけてやらにゃならんが、JOKERとやり合って無事に帰ってこれたんだ。今回は見なかったことにする。だが次また馬鹿な真似をしたら今のようには行かないからな?」

「....分かってる」

キャプテンの寛大な処遇に内心感謝しつつ、レイは近くに置かれているバインダーノートを手に取った。パラパラとめくってみると、質問と回答の記録のようだった。

「これ、何?」

「ん?ああ、さっきまでシローにジョーカーへの尋問を任せててな。その記録だが奴の答えがごちゃごちゃだったもんだ。そこでお前にも頼んでおこうと思っている」

「何で私が?人とコミュニケーション取れないの分かってるでしょ?」

「だがお前は分からないことがあれば脅してでも聞き出そうとするだろ?嫌な奴であればあるほどな」

キャプテンが笑みを浮かべる。レイは言い返すことができなかったので、仕方なく了承した。そもそもダイバーズはいちゲームでしかなく、捕虜などと言うものも存在しない。だがJOKERと言う危険な存在に対しては特段の措置を取る必要性はあった。レイがブリッジを出ようとした矢先、キャプテンが口を開いた。

「そう言えばだが、アヤカがお前を見つけようと必死こいてたんだよ。ちゃんと礼の一つでも言ってやれ」

レイは思わず足をピタリと止めた。

(あんなに酷い事をしたのに...)

 

ジョーカーを収容しているという部屋の前に立ち、ドア越しに声をかけた。

「アンタがここにいるって事でいいんだよね、ジョーカー?」

しかし、しんと静まり返ったままで音沙汰無し。レイはセキュリティ装置にパスコードを打ち解錠した。確かにジョーカーはこの部屋に居たが、どういう訳か優雅にティータイムを楽しんでいた。

「アンタ...自分がどういう立場か分かってないって訳?」

狂人を見るかの様な目でレイは睨む。ジョーカーは一切気にせず自然体のままだ。

「どうだっていいだろ。何だ、逆ナンって奴か?大歓迎したいがお前みたいな幼児体形じゃあな...」

何の証拠もなくいきなり幼児体形呼ばわりされ、レイは眉を顰めた。スレンダーな方だとよく美彩に言われるのだが、特に関心がないレイであっても不愉快に思わざるを得なかった。

「さっきもアホみたいに質問攻めに遭ったからな...人気者は辛い。んで、お前は何を聞こうとしてるんだ?あんな事やらこんな事まで答えてやるよ」

レイは彼の発言を戯言として無視して、質問を始めた。

「普通に答えてくれればそれでいいから。JOKERってのは、本当にアンタのダイバーネームなの?」

「そりゃあそうだろ。何でそんなことから聞くんだ」

あっそう。と言いながら、ジョーカーの言質を取りシローの調書と回答を照合する。要領を得ない答えや矛盾があればそこから核心に迫れると考えての事だった。

「次。ν-Typeって呼ばれるダイバーを狙っているのは本当?関係のない人まで巻き込んでるんじゃないの?」

「俺が潰すのはν-Typeだけだ。まぁ、そうじゃない奴も邪魔をするなら消すしかないけどな」

さも当然の様にジョーカーは答える。そこに悪びれる様子もなく、それが当たり前だと言いたげだった。

「アンタ...それ本気で言ってるの?」

「あぁ。そこにいた奴の運が悪かっただけさ。じゃあ聞かれてばかりでうんざりしてるから俺からも聞かせてもらおうか。お前の機体、物を凍らせるよな?あれは一体何だ?似たような事ならエクシアダークマターにもトランジェントグレイシャーにも出来る。けどあのアルケインを見る限りじゃ、補助的な役割にしか見えなかったんでね」

ジョーカーの考察はレイの機体の特徴を端的に捉えていた。カスケードも、アルケインに使われているパーツもレイの戦い方と能力に合わせて調整したものだ。たったあれだけの戦いでここまで見抜かれ、レイは凍りついたように硬直した。

「...JOKERの解析じゃお前からはν-Type反応の有無が交互に出てきて困るんだよ。潰すかどうか判断もできやしない。お前の方こそ一体何者だ?ν-Typeじゃないのかよ?」

ジョーカーからν-Typeと言う単語を向けられ、レイは言葉を詰まらせた。

「ν-Typeは聞いたことがあるだけで、詳しい事は知らない。私はそうじゃないと思う...と言うかどうだっていいでしょ、そんな事は...!」

レイの返答になるほどな、とジョーカーは頷きコーヒーを一口飲む。

(ν-Typeは分かってるみたいだな...が、コイツはやはり何かおかしい。俺にも分からないということは...分かるようになるまで張り付いてるしかない、か)

 

「お前が記録してくれたデータは役に立ったよ。JOKERに最初に遭遇したあのストライクのダイバーと接触せねばならないようだ」

騎士団の拠点としている古城。その地下室にいる男二人。デュークはウインドウを閉じ、レオンに向き直った。

「それならそれで結構だ。しかし、こうも立て続けに変な奴らとしか戦わなくなると思うと気が滅入る」

「変な奴?どう言うのだ?」

「物を凍らせる力を持ったG系、だとよ」

レオンがグラスからボールアイスを取り出した。デュークはそれを見て「凍らせる、か」と独りごちる。

「そいつも多分あの場にいたから、JOKERとも敵対してんのは間違いない」

「そもそもJOKERに味方などいないはずだがな...それで、奴はどこへ消えた?方向だけでも助かるが」

「トレミーなんだかフリーデンなんだかよく分からない艦の中に突っ込まれてる所までは見たぜ?」

レオンの言う特徴を、デュークはサーチ用のウィンドウに入力して検索した。そして一番目に表示された画像を見て、納得した。デュークも少しながらではあるが見覚えがあったのだ。

「これは...確かブルームーンとか...!収容しているという言うならばこれともコンタクトを取らねばならないようだな...ラプラスめ、なぜこの事を先に言わなかったのだ...!」

「あの出しゃばり女王様、どうするよ?こっちで面倒見てやれって冗談だよな?」

レオンがうんざりした様子でソファの背もたれにだらんともたれかかる。

「冗談なものか!あの機体を任されている以上、こちらで育ててやるしかないだろう!」

ラプラスの空回りにはデュークも頭を悩ませていたようだった。

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