こっちにも一個置いてみたくなって投稿しました。
至らない点、多々あるかとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
詳細は省こう。
端的に言って、俺は
そして女になった。俺の美醜感覚がズレていなければ、それなりに可愛い女になったと思う。少なくとも男視点で言う「ぽっちゃり」や「ブス」ではない。元男の俺が言うのだから間違いない。
勿論元男なので、男に恋愛感情を抱く事は一切ない。想像だけで吐き気がする。
折角女の子になったのだから、女同士だからこそ許される過度なスキンシップ……そしてその先の、めくるめくレズレズしい
男の時はマリアナ海溝からのスタートだったが、女になるという、生まれた時からエレベストよりも高い山に登頂成功しているのだ、
……だと、思っていた。
「……
「ぁ……あ、す、すみませ……」
「……はぁ」
野郎への一切の興味が無かったために中学の時点で女子中を選んだ事はミスではなかったと思う。女子中の中でもお嬢様中学と呼ばれる類いの学校で、粗暴でがさつなギャルなんて数えるほどしかいないし、教職もほぼ女性。野郎は滅多に見る事が無い。
生徒は優秀で基本お嬢様。といっても現代で言うお嬢様なので、「~ですわ」とか「おほほ」とかそういうけったいな存在はいない。むしろサバサバ系というか、ルールさえ守っていればという冠がつくだけの普通の女の子だ。
「平良木さん、ちょっとどいててくれる?」
「ぅ、ご、ごめんなさ」
「あ、いいからいいから。謝らなくていいから」
容姿のレベルも相当に高い。いずれは政界へ行くお嬢様や、既に父親の秘書なんてことをやっているお嬢様までいるものだから、見た目には相当気を遣うのだろう。そうでなくとも清潔であることが優先される校風であるゆえか、先程上げたギャルでさえも身だしなみには気を遣っている。ギャルにしては、だが。
勉学は勿論スポーツも欠かすことが無いお嬢様達は、文武両道を地で行く。
屋内部活動も勿論あるのだが、何故か屋外部活動や屋内でも体育館を使用する部活動に入りたがる女の子が多く、基本的に文芸活動系の部活はマイナーだ。っていうか下火だ。
一応理由として、屋内系の部活は家で出来るから、だそうな。
茶道や花などは不特定多数と共に習うより、家で先生と一対一の状態で覚えた方が、効率がいいとの事。
「平良木さん……ちょっと、チョロチョロしてないで座っててくれない?」
「ひっ、……あ、は、はい……」
「……」
さて、そろそろ現実に目を向けよう。
お嬢様、という生物は、基本的に性格がキツい。
いやまぁ女の子ってみんなそんなものだって言う意見もあるだろうけれど、お嬢様は自分に厳しく他人にも厳しくって生態をしているので、高圧的というよりは高圧力なのだ。気圧されるのだ。
そんな場所に放り込まれた子リス……訂正、子豚たる俺。
基本的に居場所は無く、教室の隅っこで大人しくしているのが関の山。
周囲に邪魔者扱いされ、いや真実邪魔者で――大人しく学校が終わるのを待つしかない。
なんて惨め。しかし、これを選んだのは他ならぬ俺。
「……」
「ひ……ご、ごめんなさい! 退きます、退きますから怒らないで!!」
「……まだ、何も言っていないのだけれど?」
というか、俺がコミュ障過ぎるだけとも言う。
そうとしか言わない。
「はぁ……」
大きなため息を吐く。
またやってしまった。
「……~~~!」
枕に顔を埋め、思いっきり叫ぶ。
音自体はさほどでもないが足をばたつかせたために同居人に頭をはたかれた。
「おかえり。帰って来て早々埃立てないでくれない?」
「ぅ……ごめん……」
「あぁ、怒ってるわけじゃなくて……もう、そろそろ慣れてくれても……」
女子中から帰っても俺に安息の地は無い。
何故なら寮に住んでいるから。しかも2人部屋だから。
そしてもちろん、同居人もお嬢様だから。
「……ねぇ、
「ぅ……なに……?」
「目、瞑ってよ」
真奈美は俺の下の名前。
平良木真奈美と、結構長い名前。
そんな、学校じゃあ苗字しか呼ばれない俺の下の名前で呼ぶ、唯一の女子。
同居人の彼女がいるから、俺は今日までやって来れたんだと思う。
だって。
「ん……」
「んちゅ……じゅるる……」
後頭部を抑えられて、唇に温かい物が当たって――唇と歯を割って、ぬるぬるしたモノが入ってくる。
抵抗することなくされるがままにしていれば、彼女は俺の唾液を吸い取ったり舌を引っ張り出したり歯茎を舐めまわしたりとやりたい放題に咥内を犯す。
元からベッドに横になっていたのだ、上半身を起こしただけの体勢だった俺は簡単に倒され、激しく求められた。
「んぶっ……ふぅ~……」
「ぷは……」
激しいキスが終わる。
だって、彼女が俺を求めてくれるから。
だから俺は、挫けずに学校に通えている。
「甘ぁい……はぁぁ~……」
彼女は身体を掻き抱き、俺の唾液を噛みしめるように味わっている。
なんでも俺の唾液は砂糖菓子よりも甘く、それでいてしつこくなく、後味も良い最高の味なのだとか。世辞の類いである事は分かっているけど、それでも嬉しいものはある。
だって美少女に、俺の唾液が美味しいって言ってもらえたとか、それだけで昇天モノだもの。
「真奈美、まだシャワー浴びてないよね……?」
「う、うん……帰ったらまず、シャワーは浴びない……だよ、ね?」
「うん。じゃ、……いい?」
さらには。
俺は制服を翻す。
胸が見えるか見えないかくらいまで服をたくし上げて、腹を露出させる。
「すんすん……~ん~! 極上……!」
彼女は俺の汗の臭いを嗅いで顔をうっとりと歪め、
「それじゃ……れろ」
「ひゃう!」
「んちゅ……れろ、れろれろ……はぁぁんちゅう~……はふ、あぅ……」
「んっ! ひぃ、んん! んひゅぅ……!」
俺の腹を、懇切丁寧に舐めまわし始めた。
腰骨も、下腹部も、ヘソも、あばらも、脇腹も、下乳も……彼女の舌が通って行く。
「美味し過ぎるぅ……! もっと、もっといい? 良いわよね!?」
「ひぅ!」
「あ……ご、ごめんなさい。がっつきすぎた……またやっちゃった……」
余りの剣幕に怯えた声を出してしまえば、彼女はすぐに引いてしまった。
またやってしまった。
この怯え癖、本当になんとかしたい。
「い、いいよ……大丈夫だから、その、もっとやっても……ぇ、我慢する、から……」
「……殺しに来てるわね。そんな無理矢理やることでもないし、もういいわよ。ほら、早くシャワー浴びてきなさい」
「ぁ……は、はい……」
折角求めてくれていたと言うのに怒らせてしまった。
ここでの生活で唯一と言っていいほどの優しさなのに、俺はそれを仇で返してばかりだ。
あれ、泣けてきた。
「……やりすぎた」
壁一枚を隔てて聞こえてくる泣き声に、自責と後悔と罪悪感で頭がいっぱいになる。
こうして後悔に押し潰されながらもあの子が顔を埋めていた枕の匂いを吸い込んでいるのだから、救えない。
現在シャワーを浴びている彼女――平良木真奈美は、特異体質だ。
彼女の体液は、極上の味がする。それは唾液でも汗でも――尿でも、血液でも。
汗が気化した体臭だって天にも昇るような良い匂いだし、先程の様に直接舐めたら理性が飛ぶほどに舐めつくしたくなる程に美味。
真奈美と一緒の部屋になれたのは、恐らく私が生まれてから現在までの中でもトップクラスの幸運だと思う。
実際私に部屋を替われと言ってくる女は山の様にいるし、彼女の使用済みの歯ブラシなんかを流してくれと言ってくるような女までいる。
学校ではわざわざ真奈美の側を通り過ぎてその匂いを肺に取り込むと言う事をしているようだし、あわよくばぶつかってその味を確かめようとする奴までいる始末。
だからこそ、これだけ真奈美の匂いで溢れたこの部屋になれたのは幸運中の幸運。さらに勇気を出してキスや体液を要求してみれば、真奈美はその身体を差し出してくれるではないか。
これが幸運でなくてなんというのか。
「……はぁ」
けれど、同時にとてつもない量の罪悪感が襲ってくる。
あんな可愛らしい子が私のような女の食い物にされて、ファーストキスも奪われ同性に身体を舐めまわされて、その上で邪険に扱われる。
……気が強い事が生きていく前提条件という環境で育った故か、気を抜くとすぐに威圧的になってしまう。その度に真奈美は怯えているのがとてもつらい。
慣れてくれ、なんて。
どの口が言うのかという話だ。
「……!」
ふわ、と。
美味しい香りが鼻孔をくすぐる。
今まで悩んでいたことがすべて吹き飛び、私はベッドから降りてふらふらと脱衣所に向かった。向かうと言ってもそれほどは離れていない。
そんな脱衣所の扉を開けば、今まさにショーツを履こうかという姿勢でこちらをむいている真奈美の姿が。
「えっ、あっ……」
「早く着替えてくれない? 次、私入るから」
あぁ、また!
なんでそう高圧的に言うの?
「ぁ、ぁ、ご、ごめんっ」
「いいから、早く着替えてよ。謝ってるヒマないの」
「じゃ、じゃあ着替えは外でするから、ど、どうぞ……」
そう言って下着とパジャマを持って脱衣所をでる真奈美。
すれ違いざまにふわぁっと真奈美の香りが広がり、私を包んだ。
あぁ……美味しい。
「っと……」
服を素早く脱ぐ。
洗濯籠へそれを突っ込み、バスルームの扉を開けた。
「ほぁ……」
先程の擦れ違いの比ではない量の匂いに包まれる。
そして風呂桶に少量の水が溜まっているのを確認して、私はにっこりと笑みを浮かべた。
無理を言って、身体を洗う前に全身を伝った水を溜めて欲しいと頼んであるのだ。
無論完全には無理だとわかっているので少量である事に目くじらを立てたりは……多分、バスルームから出たら言ってしまうと思う。
会話に困ったら文句を言ってしまう……最悪な癖だ。
「あは……♪」
桶の中の水をもう一つの風呂桶へと小分けにし、小分けにした方へボディソープを入れて泡立たせる。さらにもう一つ桶を作り、そちらはシャンプーに。
十分に泡だったらそれで体や頭を洗っていく。勿論リンスも忘れない。
「んんんっ!」
極上の匂いを肌に染み込ませる。
髪質がうるおい、肌が潤っていくのを明確に感じ取った。
そうそう、極上の味以外に美容にもいいのよね、あの子の体液は。
鼻歌を歌ってしまいそうになるが、そればかりはぐっと抑えた。
あの子を泣かせたお風呂場で鼻歌を歌うなど、そんなにも嫌な奴はいないだろう。
自らの性格を変える事は一朝一夕にはいかないが、行動だけでも気を遣わなければ。
でも、本当に。
「……なんであんな子が、私の部屋に来たのかしらね」
あんなに良い子が。
こんなに悪い女の場所に。
「……」
髪を流し、身体の泡を取った後、風呂桶に残った水を頭から被る。
爽やかで甘い香りが鼻孔をくすぐり、潤沢な快感が全身を駆け抜ける。
いつもであればこのまま自慰を始めたいくらいの劣情を催すが、それをしていてはあの子が眠ってしまう。今日ばかりは、というより今日までには言っておかなければならないことがあるのだ。
火照る身体をどうにか鎮めて、浴室を出た。
「なんであんな子が、私の部屋に来たのかしらね」
壁越しに聞こえたその呟きに心臓を掴まれたような錯覚を覚えた。
それはもしかしなくとも、俺の入学時にあったいざこざの事だろう。
そもそも出自的には普通である俺が、何故お嬢様学校なんて場所に入学できたのか。
勿論勉強を頑張って、中学受験にも励んだ。難関であったのは事実だし、学力という点においてはこのお嬢様学校に在籍できるだけの実力があると自負している。
だが、圧倒的に家柄が足りない。
先にも言ったが、ここは政治家の娘や芸能人の娘なんかが集う、やんごとなき学校である。俺のような庶民では、受験に受かる受からない以前の問題で、受験させてもらえるはずがないのだ。
だが、あの頃の……小学生の頃の俺は、女子中にいけば全てが上手くいくと思っていた。入ってしまえばゴールだと思っていた。だから、なんとしてでも入学せんと、この学校の周辺によく偵察……と称したチャンス作りをしに来ていたのだ。
そこで俺は幸運にも――出会ってしまった。
道路に倒れ伏す、お婆さんに。
身体が小学生と言っても、中身は一応大人である。
すぐにお婆さんを仰向けに起こし、意識や脈、呼吸の確認を取った。意識こそなかったが、幸いにして脈はしっかりしていたので、失礼かと思いながらもお婆さんの荷物を漁って携帯電話を取り出し、119で救急車を呼んだ。小学生の身分では、スマートフォンなるものは持っていなかったから。
これまた幸い救急車はすぐに来て、お婆さんは運ばれていった。というのも、俺はその時小学生。そしてお婆さんの名前すら知らないと来たものだから、救急隊員に「ありがとう、でも君はもう帰りなさい」と言われてしまったのだ。反論の余地も無く、救急車を見送った後お婆さんの無事を祈りながら家路に着いた。
問題は、その後。
翌日は特に何もなく、それとなくTVや地元新聞に目を通しては高齢者の心停止と言った記事を探し、何も見つからない事が逆に不安を煽る……そんな1日を過ごした。
その翌日の土曜日。
学校の休みであったその日に、特に来客の予定もない俺の家のインターホンが鳴らされたのだ。はーい、と応対した母親が玄関からなかなか戻らない事を不安に思った俺は、そろーっと玄関を見に行った。
そこにいるわいるわの黒服集団。
母親も腰を抜かしていて、やっぱりインターホンはカメラ付けた方がいいと確信した。
当時は小学生女児とはいえ、中身は大の大人。当時はまだ前の俺よりも若かった母親に守られているだけなんてことが出来るはずも無く、黒服たちに真っ向から立ち向かったのは今にして思えば蛮勇が過ぎると言えるだろう。
女児に何が出来るというのもあるが、大人の前に出てしまっては人質になる可能性だってあったのだ。考え無しここに極まれりである。
結果的に言えば黒服たちが悪人だったという事は一切無かった。それは彼らを一言で下がらせた、随分と見覚えのある老齢の女性によってわかったこと。
にこにこと笑うその顔が、苦しそうにしていたあの時の顔と重なるまで少々時間がかかったが、俺が「あの時のお婆さん?」と問うと笑みを一層深め、俺を抱き上げてくれたのだ。
そのお婆さんこそが、このお嬢様中学の理事長であったというのはもうわかりきっていることだろう。話の流れ的に。
詳しい病状を話す事は無かったが、俺の行動によって命が助かったらしいお婆さんは、救急隊員から俺の特徴を聞いて俺の住所を突き止めたという。小学生などという最も特徴のない時期の子供を、伝聞だけの情報で探し出せるその組織力に幼ながらに震えてしまったのを覚えている。
だが、そんな恐怖よりも上位の驚きが、それを塗りつぶした。
直後に放たれたお婆さんの言葉。
「そうそう、お礼がしたかったの。何か欲しいものはある? なんでも叶えてあげるよ」
恐らく、小学生の欲しい物などたかが知れているからこその質問。
お婆さんであれば確かに「なんでも」叶えられるのかもしれないから一概には言えないが、それでも俺が欲しがるのはお人形さんや可愛い服くらいだと思っていた事だろう。
だが、何度も言うが当時の俺はゴールしか見えていなかった。
これはチャンスだと、作り続けていた努力が実を結んだのだと確信して、言った。
「あの中学校に入学したい」
そんな俺の言葉を聞いて、お婆さんは目を真ん丸にした。
そんな言葉を吐くとは思っていなかったのだろう。なんせ、当時の俺は小学二年生。中学の事など欠片も考えていないのが普通の時期である。
母親が’そういうタイプ’であると思ったのか、母親に目を走らせるお婆さんだったが、母親も母親で動揺を隠しきれていなかった。当然、まだ言っていなかったから。小学二年生が母親に「○○中学に入りたい」なんて普通は言わないだろう。
母親の反応と俺の真剣な目を見てか、お婆さんは一度人差し指を口元に当ててから、にっこりとほほ笑んだ。
「じゃあ、あと四年。しっかり待っているから、ちゃんと勉強してきてね?」
正直、子供の戯言だと思われて流されたのではないかと思った。
それだけ言ってお婆さんは「お邪魔しました」と帰ってしまい、そこから四年、音沙汰は一切無かったのだ。
無論勉強はしていたし、最早日課になっていたお嬢様中学の周囲の視察も怠らなかった。
ただ、淡い期待だけを抱いて迎えた、小学六年生最後の二月頭。
家に帰った俺に、母親が震える手で渡してきたそれは、お嬢様中学の送り先が書かれた大きな封筒。中にはお嬢様中学の受験票に、二月の中頃に行われる試験と面接の予定表と一枚のメッセージカード。
メッセージカードには簡潔に、
『まだ私の学校に来てくれる気があるのなら、受け取ってください。その気がないのなら、誤送として送り返してください』
そう書かれていた。
送り返すなんてはずもない。巡り巡った、ようやく手に入れたこのチャンスを逃して成るものかと、その封筒を大事に大事に保管して、更なる勉強と面接練習に励んだ。
そうして、試験当日。
俺は圧倒された。
女の子たちの、レベルの高さに。
それでも気張って試験に臨み、流石に面接は慣れたものと十割の自分を出し切り、家に帰って力尽きて眠った。
合格発表はその半月後、三月の頭。小学校最後の日の帰宅時に、丁度郵便配達で届いた。 昔の就職内定なんかよりもよほど緊張したと思う。なんせ、この紙きれが俺の全てを決めると言っても過言ではないのだから。
だからこそ合格の二文字が見えた時には、柄にもなく飛び上がって喜んでしまった。
母親とも喜びを分かち合い、恐らくその日は人生でも一か二を争うくらいにはテンションが高かったと思う。
入学式の日も高かったが、長らく脱線していたイザコザのせいでガクンと下がるので、やっぱりあの日が一番だろう。
そのイザコザというのが、なんでもあの受験票は学校側が把握していない一枚だった、という問題。すわ偽造書類かという騒ぎになり、ルンルン気分で入学式に行った俺を待っていたのは、怖い怖い教師陣による職員室への連行であったのだ。
目つきのキツイ、女性教師三人に囲まれて問い質される。
恐ろしさに声も出ず、おどおどとした態度は三人をイラつかせたことだろう。
事態を聞きつけたお婆さんが来てくれなければ、俺は失禁していたかもしれない。
その後は少々手続に時間をかけたが、晴れて書類は正式なものと認められ、俺も生徒として認められた。だがそのイザコザによって入学式に出られなかった事や、同学年となる子達との顔合わせも出来なかった事は俺のテンションをガタ落ちさせ、案内されたクラスに着いてもそのテンションが上がる事は無かった。
恐らくはそこでクラスメイトのみんなに「暗い子」「地味な子」という印象が焼き付けられたのだろう、俺は俺で怒られる事が怖くなってしまって、後は負のスパイラルである。
俺がさっさと気持ちを切り替えて、「おっはよーございまーす!」とでも言えていればまた違ったのだろうが、一度あった嫌な思い出は引き摺ってしまう面倒くさいタイプの俺。
その結果が今の現状と繋がる。
さらに悪い事は続くモノで、学校側が把握していた生徒数は偶数。俺を入れると余りがでてしまう。そこで、寮に住まう予定の生徒たちから「一人部屋が良い者」を一人だけ募り、空いた相部屋に俺をねじ込む事になったのだ。
俺のような庶民出の者が一人部屋になるより、ある程度地位や身分の整った生徒が一人部屋になるほうが角が立たないだろうと言う配慮である。
長らく脱線したが、そういった経緯で俺は彼女と相部屋になった。
元々は俺のような庶民ではなく、彼女と同じかそれ以上の地位や身分をもった生徒がここに住まうはずだったのだ。
「あんな子」と称されてしまうのも、深く頷けるというもの。
彼女にも、そして一人部屋になってしまった生徒にも迷惑をかけてしまった。
罪悪感でいっぱいである。
「……み。真奈美!」
「ぁ、は、はい!」
「……私の話、聞いていたわよね?」
回想に耽っていると、突然名前を呼ばれた。
顔を上げると、そこには少し火照った頬を綺麗に染めた彼女が。
その肌にそぐわず、とても不機嫌そうな顔でこちらを見据えていた。
「ご、ごめっ、ごめん……うとうと、してて……」
「……っはぁ~。いい、もう一回だけ言うから、聞き逃さないでよ。面倒くさい」
彼女はイラついた表情を隠さずに言う。
本当にとろくて申し訳ない。これが元々の生徒であれば、彼女も快適な中学ライフを送れただろうに。
「は、はい」
「六月の体育祭。二人三脚は私が組んであげるわ。何か文句はある?」
「え」
先にも言ったが、このお嬢様中学は文武両道の学校だ。
当然、高めた武を競い合う行事であるところの体育祭も存在する。
その中の種目、二人三脚は当たり前だがパートナー必須で、しかしそうなると問題が出てくる。
俺のせいで、今学期の一学年は生徒数が奇数なのだ。
二人三脚の文字通り、二人のパートナーを創って行けば、当然一人があぶれる。
その一人は当然俺になるのだとばかり思っていたが……。
「何? 嫌なの?」
「え、あ、い、嫌じゃない! け、けど、いいの……?」
「どうせ組む人いなかったんでしょ。私が組んであげるって言ってるんだから、素直に喜びなさいよ。それとも何? 他にパートナーがいるの?」
「い、いない! いない、いないから……よ、よろしくお願いします……」
そう言うと、彼女はにんまりと笑う。あぁ、可愛らしい笑みだ。
「よろしい」
そして俺をベッドに押し倒した。
抵抗はしない。いつもの事だから。
要は抱き枕のようなもので、その代りを俺が担っているのだ。
正直言って役得に他ならないし、彼女の寝息を耳元に眠りに就けるなんて、天国もたるやといった所。
自らの身体に押し付けるように抱きしめて来たり、時には覆い被さって来たり。
それを眠ったままに行っているというのだから恐ろしい。何度理性が吹っ飛びそうになった事か。
「おやすみ、真奈美」
「ん……おやすみ、
彼女の名前を呟いて、目を閉じる。
大丈夫。
まだ、大丈夫。
奈央が癒してくれるから、俺はまだ頑張れる。
総評:描写・文章がくどい。