「それではここを……平良木」
「はい」
いくら中学程度の範囲を理解しているからと言っても、勉学から手を抜く事はない。単純にここが難関私立で勉強速度が速いと言うのもあるのだが、俺の生きていたあの日本と、あの地球と全く同じ歴史を辿ったと決めつけるのは早すぎるし、何より性格的にサボろうという考えが出て来ないのだ。怖いから。
だから真面目にこうやって授業を受け、指名された事で席を立って黒板に向かう――のだが。
「っ……」
クラス中、全員が全員俺の方を向く。見定めるような、値踏みするような目。異質なものを見る様な目。俺の通る通路沿いの席の子は面白そうに口元を歪め、フンと鼻で笑う。
残念ながら奈央とは違うクラスで、だからこの場に俺の味方は居ない。
「……うむ。完璧な答えだ。戻っていいぞ」
「はい」
手早く黒板(何故か教室だけは旧態依然とした黒板)に答えを書き込み、そそくさと逃げるように席に戻る。ふふ、という微かな笑いが聞こえて、顔を伏せてしまいたくなった。
コミュ障故に何で笑われたのかはさっぱりわからないが、多分俺におかしなところがあったのだろう。
今のところいじめらしいいじめにあった事も、いじめ現場を見た事もないが、これほどの数の女子が集まる場所、そういった事が無いはずがない。だから、出来る事ならきっかけを作らないように立ちまわりたいのだが、俺の場合はスタートダッシュを躓いている。
この際俺自身はどうなっても特には構わないのだが、奈央にまで被害が及ぶとなれば打って出るしかない。お婆さんから貰ったせっかくのチャンスを不意にするのは気が引けるが、もしそう言う事があれば、手を出してしまう事も視野に入れておくべきだろう。
もっとも、杞憂で済むのならばそれに越した事はないのだが。
「……ではここ。平良木、頼めるか」
「はい」
……しかし、本当にあてられる回数多いなあ。やっぱり他の考え事をしているのが透けてしまっているのだろうか。教師の指名は戒めであるのだろうから、恐らくはこちらの上の空もお見通しという所かな。もう少し、真面目にやらなきゃ。
特に問題に躓く、という事もなく、完璧に答えを書く事が出来たと思う。
勿論の事ではあるが、彼女が頻繁に指名されるのは彼女の内面が明け透けであるだとか、上の空であるからだとかいう理由ではない。
それよりももっと俗で、難関にして名門と言われる私立校の教師としてはあるまじき、私利私欲に満ちた理由だ。
即ち――。
「……先生、気持ちはわかりますけど、流石に50分間に7回は怪しまれると思います。少し抑えていただけませんか? 先生だけがいなくなるのであれば別に構いませんけど、私達まで彼女から引き剥がされかねません。
私、嫌ですよ。彼女と違うクラスになるのは」
「むぅ……だが、彼女を行き来させる事で、教室内の空気全体に彼女の芳醇な香りが広がるだろう? その恩恵は、お前のような教室の端に座る生徒であれば余程に受けているんじゃないか?」
「それはまぁ……そうですけど」
彼女から醸し出されている、豊潤にして芳醇な匂いを嗅ぎたいがための行為。教師という立場上、教室の後方に座る彼女においそれと会いに行けないからこそ、自らの前に呼び出してその匂いを堪能するという、欲に塗れた愚行でしかない。
平良木真奈美。
理事長の推薦という異例もさることながら、家格や身分のない生徒にして、学年主席の成績を修めての入学という、入学から数週間が経った今もなお良くも悪くも目立っている少女。
普段のおどおどした態度や煮え切らない言動は外部ならいざ知らず、お嬢様たちにはとても新鮮なもので、基本的に気の強い娘たちばかりを相手にしてきた教師陣も中々に扱いに困っているという。
語気を強めるとすぐに怯えてしまうので、その知識や勉学態度に友好を高めたいと思う者達も、中々にそのとっかかりを掴めずにいるのだ。
お嬢様たちの両親界隈に対しても影響力を持つ理事長の推薦、というのも蹈鞴を踏ませる要因となっている。
「それにしても……うーん……」
「先生、そのチョーク平良木さんが使用した物ですよね。ティッシュに包んで、どこへ持って行く気ですか? まだまだ長そうに見えますが」
「……半分。それで手を打て」
「わかりました」
もっとも、知識や勉学態度のみを求めて彼女に近づこうとしている者など、一握りもいないのであるが。
お嬢様や教師陣が平良木真奈美に近づきたい理由。
それは偏に、彼女の特異体質にある。
「ぁふ……んん~っ」
「彼女の直接触ったモノだ……あぁ、素晴らしい」
彼女、平良木真奈美はその体臭に素晴らしいまでの香りを持っている。
一部情報提供者によれば毎日シャワーも浴びているし、体臭のケアも万全に行っているとのことだが、それを突き抜けて薫る絶品料理にも勝る匂いは、すでに学校中の人間全員を魅了したと言っても過言ではないだろう。
彼女が歩けば空気が香り、彼女が触れば香りが付着する。未だ噂の域を出ない話ではあるが、彼女の髪もまたこの世の物とは思えない程の美味を誇り、病み付きになってしまった生徒が彼女と同室の生徒から髪を分けてもらっている、などという眉唾話もある程だ。
お嬢様たちとて、幾つ星のついた最高級料理、と言われるものは幾度となく食している。
だが、そんなものは取るに足らない――最高級料理を’そんなもの’と扱き下ろすくらいには、彼女の香りが極上すぎるのだ。
皆どうにかして彼女と接触しようと爛爛と目を光らせていて、それがまた彼女を怯えさせる結果となっているのだが、隠そうとするものは少数だった。
「それでは、次体育なので……。いいですか、先生。教室に誰もいなくなるからといって、平良木さんの席でヘンな事はしないでくださいね?」
「す、するわけがないだろう! ほら、早く行け!」
何よりその香りは、本能における2つ――食欲と性欲を、大いに刺激するのだから。
「じゃあ、2人組を作ってくださいね」
悪魔の声である。
体育の授業――特に運動が苦手、という事はないのだが、お互いにお互いを高め合う、という校風である性質上か、何かと2人組で行う授業が多い傾向にある気がする。入学してから数週間と経った現在であるが、その校風はひしひしと俺に牙を向いていた。
前にも言ったように、現学年は俺が入ったせいで奇数になってしまった学年。
つまるところ、2人組を作る、しかも適当に、馬の合う者同士となると――、
「……あ」
当然、あぶれるのは俺になるわけである。
周りの生徒たちはキョロキョロと他のグループを睨むようにしていて、あれには多分「あなたが行きなさいよ」だとか「可哀想だと思わないの?」みたいな、そういった同情兼自分は関わり合いになりたくないと言う拒絶が含まれているのだろう。
辛い。
こんな時奈央が傍にいてくれたら、とは思うが、生憎と別クラス。
来てくれる道理もない。
「えーっと、じゃあ平良木さんは先生と――」
「いえ、先生。私達の所で受け入れます」
見兼ねた教師が禁断の「先生と一緒にやりましょうか」を取り出そうとしたが、ギリギリの所で鶴の一声……もとい、助け舟が出された。「先生とやりましょうか」は、つまりクラス中の見世物になる事と同義である。本当に助かった。
しかし誰だろう、そう声のした方へ顔を向けると、そこにあったのはつとめて冷たい瞳が2対。
「むぅ……じゃあ平良木さん。
「あ……は、はい。よろしくお願いします……」
「……」
返事は無い。
確か伍橋さんはクラス委員のはずだ。だから、こうして名乗り出てくれたのだと思う。
頭が下がる思いで本当に頭を下げたが、しかしやはり嫌々であったのだろう、伍橋さんも葛西さんも、眉をしかめて俺を見下していた。
六月には体育祭のあるこの時期であるが、だからと体育祭の練習を行うワケではない。
そもそも体育祭の練習は行われない。普段の力で競り合って勝つ事が重要で、体育祭のためだけに鍛えた力では意味が無いとは教師の談だ。
だから今日は普通に、マット運動である。
「そこ、寝転がってくれる?」
「へ……え?」
「寝転がって、って言ったの。貴女の番だから。ほら、早く」
「は、はい!」
準備運動を終え、少しながら上の空であった事が仇に出た。
2人が行っていた事はおろか、今から自分が何をやるかまでわからない。
「……もうちょっと、こっち」
「ひゃっ、あっ、はい!」
ズリズリっ、と、葛西さんに左足を掴まれて引っ張られる。確かにマット運動は身体の位置によっては危険にも繋がるので、それを危惧しての事だろう。
それで、何をすれば良いのだろうと周りを見渡すが、どうやら終わっていないのは俺だけのようで、周囲の全員が全員、俺をじっと見つめていた。3人なのだから、当たり前ではある。
「……はぁ」
伍橋さんが溜息を吐く。うう、本当に申し訳ない。
とりあえず寝転がった状態で行うマット運動で、最も可能性のありそうな物を選択する。
「い、行きます!」
即ち跳ね起き。中でもネックスプリングと呼ばれる、頭の横に手を付けて、足の勢いと一緒に跳ね起きるアレだ。特に難度の高くないコレであれば、中学生でやるのも頷ける。
危険防止のために周りに声を掛けたつもりだったのだが、何分静まり返っていた体育館故に、広く響いてしまった。
羞恥に若干の焦りを覚えながらも、ひょいと跳ね起きてみせる。
ど、どうだろう?
「……」
「……」
シーン……と静まり返った教室。
やってしまったのだろうか。いや、これはもう、確信というか。
「……あの」
「……マット運動なら密着できると思ったのに……」
「えと……」
伍橋さんが何やら呟いたが、上手く聞き取れなかった。
葛西さんも俺の方なんか欠片も見ていないし、周りの生徒も俺ではなくマットを見つめているように見える。なんだろう、もしかしてマットにバネが仕込んであったとか、そんなことを思われているんじゃ……確かに俺、見た目は運動出来なそうってよく言われていたし……。
「はいはーい、次は側転ですよー。ロングマット出してくださいねー」
と、教師がパンパンと手を叩いて注意を引いてくれた。
小さく会釈をすると、教師はニコニコしながら俺の方へと寄ってきて、
「平良木さん、完璧でしたっ。ご褒美にこのマットは先生が片付けてあげますよー」
俺の手を握りながら、そう言ってくれた。
……好感度が爆上がりである。あの教師は俺を連行した3人ではないし、ほわほわした雰囲気はこの学校において中々得難い物で、前から興味はあったんだよな……。
「ちょっと、いい加減にしてくれる?」
「は、はい! すみません! 私も片づけします!!」
その怒気を孕んだ声色に、反射的に肩を震わせてしまった。
そうだった。ここはお嬢様学校。自ら怠惰を受け入れることなど、言語道断。
教師の手からマットを奪い、1人で体育館倉庫へと運んでいく。女子中学生の身には中々重いのだが、これも体育の一環である。そんな事より怒られる方が怖い。
その後体育館倉庫内でも、マットの順番を間違えたらしく怒られかけるのだが、それはまた別のお話である。
「あぁ……そんなつもりじゃなかったのに……」
足早に体育館倉庫かけていく彼女を見て、そう呟く。
脇腹をつんつんと葛西に突かれているが、そんなことは気にならない程に心の中が罪悪感でいっぱいだ。
元凶である陸奥先生を睨んでも、先生は吹けない口笛を吹くばかり。
折角勇気を出して彼女と同じ班になれたというのに、空回ってばかりだ。
「苦手意識持たれたかな」
「うっ」
葛西の言う言葉が突き刺さる。
クラス委員として彼女と仲良くしたい……という気持ちは嘘ではないし、勤勉で可愛らしい彼女と友達になりたいとい想いにも偽りはない。ないのだが、それが全てではない。
何を隠そう私も彼女の色香に誘われた者の1人であり、なんとかして彼女と密着、あわよくばその肌を舐めてみたいなぁと思っている所存である。
彼女の香りはあまりにも心地良い。
隣にいるだけで膝がガクガクと震え、溢れ出る唾液は素早く呑み込まねば垂れてきてしまう程で、下腹部にカツカツと熱を持たせる魔性の香り。
彼女を寝転がらせた葛西の采配には思わずガッツポーズをしかける所だった。彼女が体育着という露出度の高い薄着で寝転がったマット。そんなもの絶対に良い匂いがするに決まっている。
だというのに、この教師は……。
「ぶーぶー、平良木さんが予想以上の身体能力を見せて固まっちゃった空気を解いてあげたんですから、あれくらいのご褒美は許してくださいよー」
「よく言いますね。ご褒美に片付けてあげる、なんて恩を着せようとしていた癖に」
「む」
彼女の匂いが染み付いたマットを隠して、後でこっそり自分だけで楽しもうとしたのだろう。ちゃっかり手まで握って、要注意人物リストに加えなければいけない。
まぁ、固まってしまったと言う所は確かにそうなのだが。
あわよくば手取り足取り、身体を密着させて太腿や素足を持って手助けをしようと思っていたのに、平良木さんはするりと成功してしまった。その機会を狙っていたのは私だけではなかったらしく、皆が皆呆気にとられて固まってしまったのだ。
恐らく彼女の中で、陸奥先生は変な空気の所を助けてくれた先生、という不味いポジションに収まっていることだろう。
この欲望に忠実な教師の事だ。もし、万が一にも平良木さんがこの教師に個別相談などを持ちかけようものなら、その身を縛りあげてどこか教室に監禁されて嗜好品として飼われかねない。それだけはなんとしてでも阻止しなければ。
「クミ、戻ってきなよ。妄想に浸り過ぎ」
「あ……ありがとう、葛西。そうね、授業中だものね」
「うん。ついでに言うと、ここ学校だから。抑えてよ。私まで変態だと思われるし」
自分だって平良木さんの使用したマットを凝視していた癖に、よく言う。
もっとも、私に八つ当たりをしてくるというのは、自身の言動が彼女を怖がらせてしまった事に処理しきれない感情が渦巻いている証拠でもある。家同士の付き合いで幼馴染である葛西だが、こうした行動原理は幼い頃から変わっていない。
「も、戻りました……あの」
「何?」
「ひぅっ、ご、ごめんなさい! なんでもないです!!」
ほら、また私の背中をつついてくる。
ん、流石にくすぐったい……背文字? 二人……ああ!
「所で、平良木さん」
「ぅ、えと、はい、なんでしょうか……?」
「六月の体育祭の二人三脚……私と組まない?」
「た、ただいま……」
「おかえり、真奈美。早速こっちきてくれる?」
「ぁ、うん……でも、汗すごいよ?」
「それがいいんじゃない」
6限目に体育の授業が入っていたはずの真奈美を近くに抱き寄せて、まずはその匂いを堪能する。別のクラスとはいえ、いや、別のクラスだからこそ真奈美の時間割は私がしっかり把握していて、だから今日は早めに寮に帰ってきたのだ。
汗まみれの真奈美がシャワーを浴びる前に、そのカラダを舐めまわす為に。
「うぅ……」
「はぁ……ん、う、ふぅ……ぇへろ……」
予想通り服の中で蒸れに蒸れた汗の匂いは格別で、汗の味は天にも昇る程だった。
汗の煮詰まる乳房の下や裏側、谷間へと念入りに舌を這わせていく。
未だに毛が生えた事が無いというつるつるの腋。汗腺の一つ一つを舐めしゃぶり、吸いつくし、真奈美がくすぐったさにビクンビクンと身体を震わせてもなお、極上の汁を貪る。
真奈美を裏返し、背中も忘れない。ブラジャーのラインに沿って残った汗を、そのまま一文字に下を這わせて舐め救う。背筋のへこみ、そしてお尻の溝。
さらに、さらにその先――、
「だ、だめ! 奈央、待って、ごめんなさい!」
「はっ……」
ソコに舌を這わせようとして、真奈美の切羽詰まったその声にようやく我を取り戻した。
――真奈美って、ナカも美味しいんだ……。
「うぅ……」
「……ねぇ」
「な、なぁに……? なんで迫ってくるンッ!?」
真奈美を押し倒す。咄嗟に胸と股を隠す真奈美の手を掴んで広げる。
元よりの汗と、私の唾液によってヌラヌラと光る真奈美の肢体。その中でひときわ目立つ、丸い膨らみの先についた小さなイチゴ。
それを視界に収めつつ、まずはキスで口を塞いだ。
「真奈美……唾液が美味しいのは知っていたけれど……お尻のナカまで美味しいなんて……」
「ひゃぅぅう!? ちょ、ちょっと奈央、ゆ、指! んぶぅ……」
真奈美はそこまで身長の高い子ではない。だから、こうして私が手を伸ばすだけで、十二分に真奈美のお尻の穴にまで指が届くのだ。
届いてしまえば勿論やることは1つ。
「んむっ、んん!? んっふぅ……っはっ、ちょ、ま」
「んちゅ……じゅるじゅる……んぐ」
中指を彼女のお尻の穴へと侵入させていく。その粘液を手繰り寄せて、中指が終われば人差し指でと、一本一本にその甘美なる粘液を絡み付かせていく。
汗が極上の塩味なら、キスはフルーティであっさりとした味。先程一瞬触れたお尻の中は、ジューシーだけど油の少ない、とろけるようなお肉を彷彿とさせるソレだった。
「ぁあ……なおぉ……」
とうとう顔を蕩けさせて私に抱き着いてくる真奈美。彼女の舌を歯で甘噛みし、ゆっくりとひっぱりだす。瞳を潤ませて舌を突きだす真奈美。突き出させているのは他ならぬ私だが、その表情があまりにも誘っているようで、思わず舌を離してしまった。
はぁ、はぁと呼吸の荒い真奈美のその吐息さえも甘美で心地良く、しかしそれを無視して顔の上部へと口を近づける。
「ぇあ……」
「えっ!? え、奈央、え!?」
ゆっくりと舌を伸ばす……その先は、上気した頬でも何本だって食べられる髪でもなく――瞳。
少々涙の出始めているその瞳に、しかし閉じることの無い胆力に敬意を表しながらも、ひたりと舌を張り付けた。
「ん……ぁは……」
「奈央、の舌……ザラザラ……してるよ……」
恐らく相当に混乱しているのだろう、自らの眼球の実況を始めた真奈美のその言葉に更なる倒錯を覚えながらも、その黒白の球体の表面を舐め擦って行く。
あぁ、美味しい。なんて甘美なのだろう。世界で最も美味しい飴というものが創られたとしても、真奈美の眼球には遠く及ばないだろう。
「……っはぁ……」
「はぁ……はぁ……ひゅぬっ!?」
眼球と舌の長い永いベーゼを終える。
落ち着きかけた真奈美のお尻から指をつぷ、と抜き放ち、顔の前へと持ってくる。
ぬらりぬらりと光る8指。両の親指を除いた8本の指は、根元から爪と肉の間までみっちりと真奈美の粘液で満たされていた。
それを、指に渡してなるものかと、しかし1本1本丁寧に舐めしゃぶって行く。
胃が早くそれを寄越せとうるさく吼えるが、まだ舌が楽しみ終わっていない。
真奈美の腹に馬乗りになって、涙目の真奈美に見られながら甘美を貪る私。
そうして8指の全てを舐め終わり、飲み込んだ時に、ようやく私は自身の行った事を理解した。
サァッと冷や汗が背中を駆け抜ける。青くなっていく唇を感じながら、ゆっくり、ゆっくりと今もなお下敷きにしている彼女を見れば。
「ひ……」
「あっ……」
そこには、完全に怯えた様子で私を恐怖する、瞳からぽろぽろと涙を零す真奈美がいた。
バッと立ち上がり、後退る。すぐに部屋の壁に背中が当たるが、さらにさらにと押し付ける。
謝らなければ。謝らなければ、き、嫌われてしまう――、それだけは!
「だ、大丈夫。ちょ、と、びっくりしたけど……その、び、びっくりしただけ……だから! 涙なんか流して、ご、ごめんね! 大丈夫だから……」
だが、私が謝るよりも先に、真奈美が謝ってしまった。
意味が解らないその謝罪。だって、悪いのは完全に私なのに。
「……なら、今度は直接、舌いれていい?」
だが、私の舌はあまりにも愚かだった。謝罪をしたいのに、ううん、言い訳もしたいし、何より贖罪をしたいのに、私の意志を無視して口と舌は勝手に動く。
「い、入れるって……その」
「お尻に。ねぇ、いいでしょ?」
「ぅ……う、うん。わ、……かった」
そして無理矢理に勝ち取った言葉に、心から喜んでしまっている私が、一番愚かなのだ。
シャワー浴びてくるね、という言葉と共に足早に浴室へ駆けて行った真奈美を見送り、浴室のドアが完全に閉まった事を確認してから――私は、ずりずりと壁を伝って力を抜いた。
「……あやまるって、どうやるんだっけ……」
昨日は出来ていたのに。
その日はどう頭を捻っても、やり方が浮かんでくることは無かった。
「ふぅ……」
奈央の唾液を心惜しく思いながらも、しっかりと身体を洗っていく。
美少女に全身を舐められ、尻の穴に指を入れられて、瞳を舐められる。
役得以外のなんだというのだろうか。とはいえ、流石にお尻や瞳の方は初体験で、驚愕に涙が出てしまったが……要らない心配をかけてないといいのだけど。
日を追うごとに奈央の行為はエスカレートしてきていて、今はまだ彼女が服を脱ぎ棄てるという事は無いものの、今日の行為を省みるにレズレズにゃんにゃんできる日もそう遠くは無いのかもしれないと思い始めている。
レズというのは情事の際に何をするのだろうと思っていたが、実戦で勉強するというのはまさにこういう事なのだろう。奈央がレズビアンだった事は、俺にとっての幸いだ。もっとも、俺は練習台であって本命は他にいるのだろうが。
しかし、奈央には本当に感謝の念しかない。
今日の体育の授業中、伍橋さんや葛西さんに「二人三脚のペアを組んであげてもいいよ」的な事を言われたのだが、明らかに幼馴染らしい2人の仲を引き裂いてまでペアを組みたいと言えるほど俺は豪胆ではない。だが、理由も無く断れるほど俺はコミュニケーション能力を持っていなかった。
昨日の夜に奈央がその話を持ちかけてくれたのは、こういう風に聞かれる事を見越しての事だったのだろう。もう奈央と組んでいるから、といったら、2人とも大人しく引き下がってくれた。
授業後や放課後も似たような内容でペアを持ちかけられたが、奈央のおかげで全て乗り越える事が出来た。
どれほど頭がいいのだろうと戦慄した面もあるが、それ以上に敬意と、そして本命を切ってまで俺と組むと言ってくれた事が余りにも嬉しかった。
その事実に気付いた時、思わず涙を零してしまう程には嬉しかったのだ。
「……よし」
先程、最後に言われた舌を入れてもいいか、という言葉。
勿論断るはずがない。
目の中をお湯で洗いながら、その時へと思いを馳せる。
それはさぞかし、倒錯的で甘美な時間なのだろう。愛の矛先が俺ではなくとも、勝手に愛を感じさせてもらおうじゃないか。
やっぱりここは、まだ
ノクターンの方ではこれのさらに行き過ぎたカニバを書いていたりします。
なお、眼球舐めは目に雑菌が入って非常に危険です。創作物の中だけにしましょう。