※この作品はR-18です。

花より団子より彼女。   作:劇鼠らてこ

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シリアス成分はどっか行った。
前振りは広く取った方が罪悪感成分は増すので……
あとお久しぶりです。


『顔貸してくれない?』『アンバランス』『ひゃっふぁ』『おっほ』

 

 あの日からなんか奈央が余所余所しい。

 

 あの日というのはもちろんあの大浴場の日の事で、まぁ、その、割とエロースな体験をした自覚はあるのだが、でもいつもやってることじゃないかな? とか思ったりしないでもない。

 逆上せて寝かされた後、どういうわけか二人は平謝り。

 

 たかだか30分程度の入浴で逆上せる俺がどうかしているのであって、決して二人のせいではないと思うんだけどなぁ。

 

 今朝も俺が早くに目覚めて勉強をしていると、いつの間にか息を殺して登校していてしまったし、昨日の夜も会話がめっきりなかった。というか、エロースな事をしてこなかった。

 非常に残念である。

 俺からしてみれば毎日奈央ほどの美少女と登校を共にし(まぁ寮から学校程度の距離なのでお察しだが)、夜は乳繰り合い、二人で疲れ切って眠ると言うまさに理想の――学校内での事を除けば――日々を送っていたわけで。

 どうにかして仲直りをしたい所存である。

 

 そんなワケで、俺はどうにか勇気を振り絞った。

 

「あ! あ、あの……」

 

「……何?」

 

「い、いえ! なんでも、ない……です」

 

 無理だった。

 コミュ障は声を掛けようとしただけでも勲章もの。だのに用事を持ちかけるなんてできっこない。

 事態解決のためにしなくてはいけない事は思いついたのだが、どうしても声を掛けられなかった。あ、いや、かけることは出来ても用を言い出せなかった。

 

 ……誰か、話しかけてくれないかなー。

 

 そんな事を思っている時だった。

 ふと、身体に影が差したな――と、次の瞬間。

 

 ダン! と、俺の顔の真横……側頭、耳ギリギリの辺りに掌底が叩き込まれたのは。

 

「……ねぇ、アナタが平良木真奈美? ちょっと顔貸してくれない?」

 

 その腕の持ち主は、ずいと俺に顔を近づけ、俺の顎をクイと上げ。

 この学校における極少数の内の1人たる証――金に染めた髪とギラギラ光るイヤリングを見せつけながら、そう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……」

 

「……」

 

 連れてこられたのは古い教室。

 古いと言うのは単なる比喩表現で、正確に言えばしばらく使われていない、使われる予定が向こう2か月ほど入っていない教室、という方が正しいだろうか。

 そんな場所に連れてこられた俺は、腕を組んでしきりに時間を気にしている女の子――この学校では限りなく少ないギャル――にどうにかこうにか話しかけようと、昼休みとはいえそろそろ帰りたいなーという旨を伝えようと悪戦苦闘していた。

 

 結果は実っていないが。

 

「っふぅ……」

 

 大きなため息を吐くギャル子ちゃん(仮称)。

 相当気が立っているのか、俺をここに連れてきた時から時間が経つにつれてどんどん眉間の皺が寄って行っている。

 怖い。

 

「ねえ」

 

「ぁ、はい、は、と、え……な、なんでしょうか」

 

 ところで、このギャル子ちゃん、口調は然程ギャルじゃない。

 だからこうやって唐突に話しかけられると一瞬普通に反応してしまって、その後で自分の命知らずに気が付いて結局ドモるのだ。

 いざとなれば、中学生くらい……とは思うけれど。

 

「……やりづら。あー……えーっと、平良木真奈美。いくつか頼みごとあるんだけど、いい?」

 

 ガリガリと頭を掻いてから、一応言葉を選びつつ、といった様子でギャル子ちゃんは問うてきた。頼みごとの内容も聞かぬうちに頷くのは危険な気もするが、断った方が危険度は高そうなので、

 

「わ、わかり、ました……」

 

「……」

 

 そう答えると、むっすー……とさらに不機嫌になるギャル子ちゃん。

 経験上わかるぞ。

 これは怒っている。

 

「……あのさぁ、さっきから思ってたんだけど、何? なんでそんな従順なワケ? もっと普通……抵抗するもんじゃない? あぁ、もう。クラクラするしイライラするなぁ……」

 

「ごめなっ、ごめんなさい……」

 

「あー、いや、うん。ゴメン、今のはアタシが悪かったかも。無理矢理連れてきたワケだし。てゆか、そろそろ限界。密室に二人きりとか、唾とまんないし」

 

 ギャル子ちゃんはこれまた唐突に謝ってきたかと思えば、ぶつぶつと何かを呟きながらフラフラと迫ってくる。いや、来た。もう目の前にいる。

 背後には使われていない机。こんな狭所で、しかも机や椅子の多い場所でサイドロールなんて出来るはずもない。

 万事休すか。

 

「ちょっと、俯いてないで」

 

「ぅ」

 

 先と同じように、顎に長い指を当てられてクイと持ち上げられる。

 まるでワインの色を見るかのように指を波立たせ、そのまま俺の唇を奪った。

 

 ?

 

「――!?」

 

「んん~♪ ぷはっ、ほら、暴れない。あぁ、噂は本当だったみたいね……これは、止まらない……!」

 

 カツッと足を払われる。

 仰向けに倒れる俺。

 そのまま行けば後ろの机、ひいては椅子の背もたれに後頭部をぶつける事必至なのだが、ふわっ……という浮遊感のあと背中に強い力を感じた。どうやらギャル子ちゃんが抱きすくめて受け止めてくれたらしい。払ったのもギャル子ちゃんなので、受け止めてくれたも何もないのだが。

 

「っすぅ……んへぇぁ……」

 

「んむっ、んぐ……んん……」

 

 奈央にこそ届かないものの、長い舌が俺の咥内を蹂躙する。キャンディーを舐め抉るように歯や歯茎を舐め、舌を吸出し、びちゃびちゃと唇を舐めしゃぶる。

 後頭部から頭頂部の間には左手、左上深顎の辺りに右手が置かれていて、がっちりと顔全体をホールドされているために抜け出す事は不可能。

 為されるがままに、その荒々しいキスを受け入れる。

 

「っじゅるるる……っはぁ、はんむぶ……」

 

「ん……ぐん……んん」

 

 まるで肉食獣が仕留めた獲物を貪り喰うかのように。

 その、咀嚼染みたキスは五分ほど続いた。

 

 仰向けの姿勢は案外キツかったが、奈央の探り探りなソレとは違う、キスというものにそれなりの経験があるのだろう舌遣いはそれだけで気持ちよく、姿勢の事など気にしなくなっていた。

 

「っぷはぁ……はぁ……あぁー……ヤバ、ハマるコレ……」

 

「はっ、はっ……はっ、はっ……」

 

 息切れである。

 先程言った五分という時間、ほぼ息継ぎ無しでのキスは流石に肺がキツイ。

 

 しかしながら、目の前の肉食獣ちゃんはそんな事関係ないとばかりに目をぎらつかせている。

 

「はぁ……へぉむ……」

 

 ぞぞぞっと頬を舐め上げられる。眼球スレスレをギャル子ちゃんの犬歯が通って行き、本当に咀嚼されているかのような錯覚を覚える。

 頬を通り、鼻頭、眉間、左眉を丹念に舐め取って行くピンク色。

 その表面のつぶつぶまでもが鮮明に視えて、知らずの内にゴクりと唾を飲み込んだ。

 

「あ……うぁ……」

 

 今度は耳。

 左耳がじゅばじゅばと水音を立ててしゃぶられている。

 多少の甘噛みと、鼓膜に届くんじゃないかと思う程深く突き刺さる舌。

 水音と擦過音がダイレクトに響き、脳に齧り付かれているような気分になった。

 

「ねぇ」

 

「あふぃ……? んぶっ!?」

 

 耳元で囁かれたその声に意識を向けた瞬間、半開きになっていた口に指が突っ込まれた。先程まで顎を擦っていた手。それが、咥内を、主に舌を絞り上げるように弄ぶ。

 

「ダメだから」

 

「ぇぁ、んれうぁ……」

 

「唾。勝手に飲むとか、ダメだから。次キスする時まで溜めておいてよね」

 

 言葉と共にいっそう激しくなる手。

 口の中の異物に唾液が総動員して湧き出てくる。

 飲み込みたい衝動に駆られるが、どうにか我慢して喉だけを鳴らす。

 

 ところで、現在ギャル子ちゃんは俺の頭をがっつりホールドする体勢にある。

 

 だから、眼前には大きな大きなおっぱいがあるのだ。

 奈央も俺も普通サイズだから、全く経験した事の無いその巨峰が俺の眼前ドアップで存在している。

 発汗しているようで、それは妖しくテラテラと光り輝き、舌を掴まれていなければ舌を伸ばしていただろうほどに魅力的だった。

 生殺しである。

 

「はい、左耳終わり。……なんで涙目なワケ?」

 

 生殺しされているからです。

 しかし舌を掴まれたままでは何も言えない。

 せいぜいぁぇぁぇと言葉にならない音を発するだけだ。

 

「……あー、もしかして……怖かった、とか? え、っていうかもしかしないでも、こういうの初めてだったりすんの? マジか、そうだよね……でもそうだよ、あの堅物一城が相部屋の子襲うとか出来るはずないし……あちゃー、しくったかなコレ……」

 

 俺の舌を掴んだままぶつぶつと呟き始めるギャル子ちゃん。

 その間も親指が舌の表面をザラザラと撫で、それがもどかしいくすぐったさのような快感のような何かを生んでいるのだが、こちらからはどうしようもない。

 

「……でも、この溜めたのはもったいないし……うん、仕方ない仕方ない。っしょっと」

 

「んぅ!?」

 

 唐突に抱き起される。

 当然半開きだった口の端からだらーっとよだれが垂れ始める――前に、口を塞がれた。

 また、あの肉食獣のようなキスだ。

 

 俺の口と彼女の口の端から彼女の指が抜き取られ、完全に密閉された口と口の間の空間に、重力に逆らえなかった唾液がでろりと落ちて行く。

 ギャル子ちゃんは舌こそ使えど、もう吸い込むようにして俺の咥内の唾液や空気を飲み込んでいった。

 

 今度はギャル子ちゃんが下になって、しかし赤子を抱くような姿勢で持ち上げられて、それはそれで割と体勢的にキツイんだな、なんて考える。

 状況に慣れたとは言い難いが、少なくとも驚きは消えた故の余裕だ。

 

 やがて全てを飲み干したギャル子ちゃんは俺を降ろし、

 

「ごめん! 我慢できなかった! っていうかもっとヤってると思ってたっていうか、もっと慣れてるとか勝手に思い込んでて……あぁ! 言い訳とからしくない。ダサすぎ。そうじゃなくて……あー……」

 

 思いっきり頭を下げた。

 ぶつぶつ独り言というか自問自答をするのは癖なのか、頭を下げながらもずっと喋っている。

 ……おや、この子……。

 可愛いのでは? 俺、素直な子は好きなんだよな。

 

「あのえと……だい、だいじょ、ぶ……ですから……その」

 

 しかし相手を慰めるにもどもってしまうのがコミュ障の真骨頂。

 辛かった姿勢を伸ばすにも堂々とやるわけにはいかず、小刻みに身体を揺らしながら痙攣する形で伸ばさなければならない。そんな図太い神経持ってないのだ。

 

「……いや、ちょっとアタシがアタシを許せないわ。頼みごととかどうでもよくなったし。あ、でも一つ。ちょっと、放課後でいいからアタシの部屋来てよ。E-008。一城にはアタシに呼ばれたって言えばいいし」

 

「あ! あぁ、あ、あの……」

 

「わ、大声出せるじゃん。びっくりした」

 

「ご、ごめんなさ」

 

「あぁ、いい。謝らなくていいから。そういうのちょっとウザい。で、何?」

 

「ごめ、あ、いえ、あ……その、お、お名前を……」

 

 やっぱ怖い子だった。

 ウザいかー……ストレートに言われると、わかっていたことだけど……ぐさぁ。

 

「は? ……あぁ、そうか……学校一の秀才って聞いてたけど、そっち方面は無知なんだ。ふーん。アンバランス。ま、いいや。アタシの名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの、匕首(あいぐち)秋華(しゅうか)さんに、放課後部屋に来ないか、って誘われて……』

 

『別に私に許可取る必要ないと思うけど』

 

 学校内でのみ使えるチャットツールでの、奈央とのやり取りの全文である。

 この余所余所しさがわかるだろうか。俺はつらい。凄くつらい。

 

 が、とりあえずその辛さを胸にしまい込む。

 一応、襲われた形とはいえ(キスだけだが)、新しくできた友達に部屋に呼ばれたのだ。

 あ、友達は言い過ぎたかな。調子乗り過ぎたかな。

 知り合いに部屋に呼ばれたのだ。

 この学校に入って以来、初めての事である。

 

「E-008……ここ、だよね?」

 

 誰もいない、虚空に向かって問いかける。

 どうしよう。違う部屋だったら。

 怪訝な目を向けられたら。

 

 ……待て、ここ本当にE-008か?

 これ、この部屋番号って実は映画館の椅子みたいにその横の部屋の番号を示しているとか……そう、寮自体一学年2棟あるんだ、A,Bが3年、C,Dが2年、E,Fが1年というように。本当に俺が聞いたのはEだったか? エフ……じゃなかった、よな? F棟の008号室じゃないよな?

 

「なにしてんの?」

 

「ひゃっふぁ!?」

 

「ぷっ、何その声。ま、いいや。入って入って」

 

 顔が赤熱する。

 俯いたまま、招かれるままに部屋に入る。

 

 殺風景な部屋だった。

 必要最低限の物と、段ボールがいくつか置いてあるだけ。

 ここも相部屋だろうから当然の如くある2つのベッドも、どちらも似たような感じ。ギャルかと思ったら意表を突いてぬいぐるみ沢山! ということも、男物ばっかり! ということもない、至って普通の女の子の部屋だ。

 

 同じ部屋の子はまだ帰って来ていないのか、姿は見えなかった。

 

「まぁ、座ってよ。ここに」

 

「え」

 

 ここ……って、貴女が胡坐をかいているその上にですか。

 是非!!

 

「お、すんなり座るじゃん。その従順なトコあんま好きじゃないけど、今は許す」

 

「う……」

 

 そしていつぞやのお婆さんと同じように俺の髪に顔を埋めるギャル子ちゃん……もとい、秋華ちゃん。とてもくすぐったいです。

 うわ、首元はむはむしないで! 快感よりくすぐったさが勝るから!!

 

「……ほんっと、美味しい。何食べたらこうなったの?」

 

「へぁ……にゃにがれふか……」

 

「うーん、聞いてた通り本人は知らないのか。ま、知らないならいいや。ってワケで、ほれ、連れて来たよ」

 

「うぇ……」

 

 秋華ちゃんが声を掛けた方を吊られて向く。

 そこには春の木洩れ日(もう夕日だが)の降り注ぐ窓と白いレース、緑色のカーテンがあるだけ。

 どこに――?

 

「よ、っと。でかした」

 

 トン、と。

 目の前に足が落ちてきた。

 綺麗な脚。

 

「ちょっと、危ないからそこ降りるのやめてよ。っていうか、でかしたって何様なワケ? レート万越えのトコを掻い潜ってきたことへの感謝はないワケ?」

 

「あぁ、ごめんて。怒らないでよ。ウチとシュカの仲じゃん? このガッコただでさえウチらみたいなの少ないんだから、仲良くしてこーよ」

 

 降りてきたのは、やっぱりギャルだった。

 こちらは金髪ではなく明るい茶髪。オレンジがかっているくらいの色味。

 もう一度上を見れば、どうやらオサレカーテンの一部だと思っていた膨らみはハンモックであるようで、そこから降りてきたらしい。

 

「で、この子が件の。……へー、確かに良い匂いするねー。どれ」

 

()っ!?」

 

 ぷちっと音を立てて髪の毛が数本千切られた。

 抜かれたわけではなく、瞬時に指に巻き付けて引き千切られたと言う方が正しいだろう。

 

「あ!」

 

「これが3()もする髪の毛か。はーむ。……おっほ」

 

 舌を伸ばして髪の毛を巻き取る様にして食べるギャル子ちゃん2。

 目を丸くして、ちょっと異質な感じの驚き声を上げた。

 

「痛くなかった? ……ちょっと目を瞑ってて欲しいんだけど」

 

 さすさすと先程髪を抜かれた部分を擦ってくれる秋華ちゃん。

 そして何やら不穏な事を言いながら、立ち上がった。

 言われた通り目を瞑る。

 

「ん? なに、シュカちゃん。待って、話し合おう? なんで拳握ってるの? ウチなんかした? ちょ、ちょっとまって暴力ダメ、ヤンキーとギャルは違うって散々話し合ったじゃん? あイタっ! スネ! 脛痛い!!」

 

 ……南無。

 でも、なんだかギャル子ちゃん2とは仲良くなれそう、かも?

 

 






ギャグ方向には走りましたが、シリアスやめるワケじゃないんで。
というか基本方針シリアスなんで、よろしくお願いします。
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