キスがあります。そして王道です。王道に乗っても難しいです。恐ろしい子。
これは一体、どういうことなんだ。
夏休み、日中の気温は37度にもなるこの地域。クーラーがきいているかと思われるここ星河家には重大な問題が生じていた。
取り付けから10数年は経とうかという空調システムが丁度壊れてしまった。まだ昨日の出来事である。
今年はどこの家でも空調システムが故障している。…確かに家のシステム改変などのおかげで、一斉に家の建て替えを行った時代があった。そのせいだろう、星河家のようにいきなり空調にガタがきたっておかしくはない。
そんなこんなで、猫の手も借りたい電気屋が星河家を訪問するのはあと三日ほど先である。
「あつい…」
うだるような暑さ。空調が壊れているから尚更蒸す室内。ここ星河家のある一室には、只今二人の少年がぐでっと潰れていた。
世間は夏休み、コダマ小学校も例外に漏れず、ようやく夏休みが始まった。ただこんな思いをするなら学校に行っていた方がまだマシである。そうスバルは思った。
特にやることもなく、スバルの部屋にこもり切りだったスバルとソロ。いつもならミソラがあついあついと喚いていた頃だろうが、今日は少しだけ違った。彼女は新しいドラマの打ち合わせをするとのことで、暑いさなかに外へ飛び出して行ったのだ。夜はその流れで何か食べてくるらしい。
私もスバルくんやソロくんみたいにお家でごろごろしたいよ、だなんて苦笑しながら言うミソラに手を振っていたスバルだったが、今となっては「やることがあるっていいな」だなんてことも思い始める。
そういえば今日、母さんと父さんもいないんだっけ。なんでも知り合いの結婚式だとか。明日の昼までの留守番を頼まれている。
こんなに暇だと、いっそもうどうでも良くなってくる。だがそう言うわけにはいかず、結局手つかずの宿題だって途中でやめた。
「ロック〜…って、ロックまでいないの?はあ…つまんないや」
てっきり彼の携帯端末で昼寝をしているのかと思われたスバルの相棒・ウォーロックでさえも今日は何処かへ旅している。ウイルスバスティングだろうか。こうなるとよほどのことがない限り、ウォーロックは戻ってこないだろう。
「…ソロ、僕らだけになったし…アイスでも食べる?」
「…ふん、勝手にしろ…というかキサマの部屋は一体全体何なんだ、暑すぎる」
「ま、まぁまぁ…家全体の空調が故障したんだよ、だから修理まであと三日我慢しなきゃ。さ、アイスアイス!」
暑さを避けるようにフローリング部分に胡座をかいているソロを残してスバルはリビングへと走る。恐らく冷凍庫にはキンキンに冷えたレモンシャーベットに棒アイスがあったはずだ。
冷蔵庫の前に滑り込み、キンキンに冷えた取っ手をガラリと引く。その瞬間にぶあっと広がった冷気を心行くまで堪能し、その中からお目当てのアイスを二本ひっ掴む。…昔懐かしいあずきバーと、レモンシャーベットだった。そして残る片手で冷凍庫を閉めると、また自室へと走る。
「ソロ、あずきバーとレモンシャーベットのどっちがいい?」
駆け寄ってアイスを見せると、彼はぼそっと「レモン」と言った。適当にとってきたスプーンと共に彼に渡すと、ソロはいささか気の抜けた顔でシャーベットの蓋を開けはじめた。スプーンを使ってしょりしょりと、器用に端っこを削っていく。
スバルはあずきバーの個包装を破り、口に咥えようとした。だがまだソロの準備が整っていない。…そっと隣に移動して、彼の準備を見つめた。
器用だと思ったのだが案外下手くそなのかもしれない、彼は。何度かシャーベットを掬うもその途中で近くの削った山に落とすのだ。うまくいかなくて首を傾げる彼から何故か目が離せない。うっすらと汗をかき、紅潮した頬が綺麗だと思ってしまう。…男相手だ、何を考えているんだ僕は。そう思っても、目が離せないことは離せないのだ。…スバルのアイスも暑さでとろけ始める。だがそんなことには気づかず、彼はぼうとソロを見つめている。
「…やっと取れた …おい、キサマの…溶けているぞ」
「え?あ、あぁ…うん」
どれだけ時が過ぎたかよくわからなかったが、確かにスバルのあずきバーは雫が垂れそうになっていた。ソロも口にいれたことだし、とスバルはアイスを舐めとる。不思議なことに、その間もソロから目が離せない。
シャーベットがまだよくわかっていないのか何故かシャーベット全体をサクサクと削ってしまった彼は、一口掬っては口に放り込んでいた。その癖咀嚼はゆっくりで、スプーンを口から離すと少しだけ嬉しそうな顔をする。
可愛い、な。
(…やっぱり僕は変だ!なんで彼を...)
見とれてしまう。暑いからとあの長袖は脱いで、タンクトップ部分とズボンだけで過ごしている彼の項が見える。そんなことをいえば自分だって、あの長袖は脱いでシャツに着替えているのだが。
ぽたり
今度こそ、スバルのアイスが溶け落ちてしまった。粘着質な雫が下ろしていた手に落ちて跳ね返り、肌を汚す。
あ、やっちゃった。そう思って自身の手の雫を舐めとると、それをソロがじっと見ていることに気づいた。そして、あろうことか…
ぱくん
「ソ、ソソソソロ!?」
「ひゃんら」
「な、なにしてっ」
そう、あろうことかスバルのあずきバーにソロが食いついたのだ。
「…溶ける」
「あ、あ…りがとう」
スバルの慌てように口を離したソロは、自分のしたことに気づいて少しだけ難しい顔をした。心なしか頬が赤い気がするのは何故だろう。
ち ょ っ と ま て
何でソロが赤い顔をしなくちゃいけないんだ!そして僕も!きっとまた溶けて落ちるって思って咄嗟にしてくれたんだろう!そ、それにしてもなんで!?ソロって僕のこと普通に嫌いじゃないの!?それなのに僕のアイス舐めた上に、ほ、ほっぺまで赤いだなんて!
モヤモヤは収まらない。それに、ソロの少しだけ赤い顔が頭の中に浮かぶ。…ソロはもう自分のシャーベットに夢中になっていたのだが。
「…お、い 何をしている!」
「…」
ソロは迫る影にも気づかずに、一心にアイスをすくっていた。そこにいきなり衝撃がきたとしたらたまったもんじゃない。
「あ、おいキサマ!俺のアイスが落ちたぞ、早くど、け……」
ソロは言葉を失う。というか喋る言葉を失った。一瞬前にみたのは、熱に浮かされたこの部屋の住人で。
ひどく、飢えた目をしていたのだ。冷静そうな、それでいてぼうと何かの熱に侵された…そんな目だ。ソロにはよくわからない“情欲”の火が、はっきりと灯っていたのだ。
「……っ、ん、…!」
呼吸を奪われる苦しさに、ソロは零れたアイスもそのままにスバルの胸板を叩く。少年の胸板は薄く、すんなり離れると思っていたのが間違いだった。…ソロは床に倒されていて、その上に覆いかぶさる彼もまた、ソロと同じ男の性であった。それに、相手は地球のヒーロー。知らぬうちについた筋肉もあり、スバルをいくら押そうともビクともしなかった。
…このままでは呼吸ができない、と思ったソロは強行手段に出る。スバルの顎をがっと掴み、無理矢理横を向かせた。
「ぐぇっ!」
「は、ぁ…っ な、何をいきなり…!」
「え、あ…うそ、僕…」
キミに、キスしちゃったの。
そう自分を指差してあたふたするスバルにソロは張り手をした。ばちん!といい音が響く。
「いっ!!…そ、ソロ〜…ごめんってば」
「ゆ、許さん!クソ…あり得ん、星河スバルと…ッ!」
さも悔しそうに唇をゴシゴシと擦るソロを見て、スバルは黙る。そしてソロの腕をそっと掴んで引き離した。
「ダメだよ、ソロ…キズついちゃうでしょ?」
「はっ!?」
明らかに動揺するソロ。普段ならこんな姿を見ることはできない。そう、今はなんだかヘンなのだ。
だってほら、またソロのほっぺは赤くなっているし。いつもなら冷静沈着で孤高の一匹狼なのに、こんなに慌てふためいている。そして、そんな彼を可愛いと思ってしまう、キスまでしてしまった自分がいるのだ。
「暑いから、今日が暑いから」
暑いのが、全部悪いんだ。
スバルはまた、ゆっくりソロに近づいていく。今度のソロは少しだけ怯えた顔で、でも少し期待したような…そんな、あり得ない目線をしながらも動かなかった。時が止まったかのようだった。
「…ん、…」
そう。今日は暑いから。暑いから、絶対にあり得ない二人で絶対にあり得ないことをしているんだ。
今日が暑いから、暑いからいけないんだ。
そう、ソロも思っているのかもしれない。
END
ぶげぇ…もうやだ…
☆クソ話注意です↓
ぶっちゃけソロって犯すシーンは浮かぶんですよね、でもあの子そのシーンになるまで長そう…って思うんです。だって強いんだもん。それに喘ぐキャラでもないのでね、描写は難しいですね。あの子強いから捕まえるまでにすごい苦労しそうなんです。絶対に。
申し訳ありませんでした!