※この作品はR-18です。

Ith-Videoは観測する   作:灰の熊猫

17 / 70
想定:「蜜柑・パイズリ」発生済。


絡む黒茨(蜜柑・蓮)
いざなう蜜


「こちらが、今回の分となります」

「……ふむ……?」

 

 弥武組の応接室、その中に漂う煙草の渋い煙が天井の空調機に少しずつ吸い込まれては香りだけをその場に残して循環している。

 ブラインドが下ろされ外界と切り離されたその空間の中心では、男と女がテーブルを挟んで向かい合っている。一人はこの応接室を持つ弥武組、その主である蜜柑。もう片方には、大規模な倉庫街を所有している西田興行の社長、西田友蔵。

 西田は長ソファーに深く腰を掛けながら、火の付いた黒巻の煙草を片手に蜜柑が出したそ(・)れ(・)を見下ろす様に眺めている。

 一人用のソファーから蜜柑は腰を上げ、応接間の中央にあるガラス張りのテーブルへ置いたトランクケースを開き、その中にある物を西田へ見せていた。

 

「今回は、少々少ないように見えるのだが?」

「……大変申し訳ありません。こちらの落ち度です」

 

 トランクに隙間無く敷き詰められた、大量の札束。圧倒的な大金を前にしても西田は表情一つ歪める事無く、むしろい(・)つ(・)も(・)よ(・)り(・)少(・)な(・)い(・)その札束の量をトランクの内側面から覗く僅かな銀色から把握する。

 先日発生したある事件の最中、西田の保有していた倉庫街は炎上した。それは現代で言う所の”不祥事や失言により大量の批判が殺到した”という様な比喩的な害では無く、文字通り全てが炎に巻かれて焼け落ちた、言葉通りのものだ。

 その総被害額は六十億円と、西田にとっては未曾有の大災害に等しいそれらの責任を、蜜柑は背負った。その炎上事件に、弥武組が絡んでいた為だ。

 とは言っても、その実情の中に弥武組の関与は殆ど無い。倉庫街で行われていた大量の銃火器の密輸、それの対処に弥武組は知己(ちき)の掃除屋(スイーパー)を向かわせた、という関係でしかない。

 

「まぁ、いいだろう。私と蜜柑さんの仲だからな、少しは多目に見ようじゃないか」

「……有難う御座います」

 

 本来ならば倉庫街を直接壊滅させた掃除屋に責任を負わせるべきだったが、そこに蜜柑は割り込みそれらの責任を肩代わりする旨を西田へ告げてきた。

 一組織が払うにはあまりに膨大なその借金を、今も蜜柑はどこからかき集めてきたのか次々に返済を続けている。それだけの金の出処が何処かは気になるが、相手の職種を考えれば下手に首を突っ込むべきでは無いし、何より受け取った金はどれも問題の無いものばかりだった。

 一時は予想外の大損害に酷く憤慨したものの、少しずつ潤う懐は西田に余裕を取り戻させ、今では安定した支払いを止めずにいる蜜柑に対し悪感情は無かった。が――

 

「――まぁ、しかし。少しは”誠意”を見せるのが、大人という物だと思うがね」

「…………」

 

 そう言い西田は蜜柑の顔を薄く睨み付けた。その眼光を受けた蜜柑は、ぴくりと眉を動かすものの表情は平静を保ち続けている。

 西田はその意図を敢えて口にせず、姿勢だけを取り続ける。そこには怒気こそ混ざっていないが、言葉にしない事でこちらの”要求”を際立たせ、ただ蜜柑の対応だけを待つ。

 蜜柑は目を伏せ、ただ小さく息を一つ吐いた。

 

「……わかりました。準備致します」

 

 そう言って蜜柑は自らのブラウスのボタンに指をかけ、それを上から一つ一つゆっくりと外しだした。

 西田と蜜柑との間で密かに交わされた約束事。それは、倉庫街の支払いを待ってやる代わりに蜜柑の体を好きにさせろ、というものだった。

 これまで西田が見てきた女性の中でも蜜柑は一際端正・艶麗な容姿を持つ。そんな女が、態々(わざわざ)自身よりも下の立場に舞い込んできたのだ。その幸運を、西田は己の色欲を満たす為に活用した。

 とは言っても、蜜柑も所帯を持つ身の上であり、他の男と肉体関係を持つのは避けたかった。その為、”本番無し”という条件で西田からの要求を受け、こうして顔を合わせる度にその欲求を発散させていた。

 

「今日は期待しているよ、蜜柑さんの”誠意”に」

「…………」

「おや、まさか気持ちを示すのに”何時も通り”、という寂しい事は無いだろうね?」

 

 蜜柑がブラウスのボタンを全て外し終えるより先に、西田が言葉を釘にして蜜柑へと飛ばす。手を止めた蜜柑は、その真意を聞き返すまでもなくすぐに理解した。

 前々より西田は蜜柑とそういった行為をするに当たり、暗に”その先”を求める時があった。その度に蜜柑は約束の内容を持ち出したり、或いは手法を変えてもう一度情欲を発散させたりと、あの手この手で西田からの要求を退けてきた。

 が、暗な言い方とはいえ今回は最初から行為を求めてきた。それなりの期間顔を突き合わせてきたが、西田が行為の前からこの様な物言いをしてくるのは初めての事だった。

 それはこの時に至るまで金銭のやり取りに関して蜜柑が一切の隙を見せなかったという証でもあり、返済が僅かに少なかった今が最大の好機だ、そう西田が考えているだろう事に他ならない。

 

「……そうですね。少々、お待ち下さい」

「む……」

 

 そう言って蜜柑はブラウスのボタンを留め直し始めた。西田は自分の意志が伝わらなかったかと不満を顔に表すも、蜜柑は唇に人差し指を当てて西田へ妖しげに視線を送った。

 その蜜柑の仕草の妖艶さに、西田は思わず不平を閉じた口の中で留めてしまう。やがて蜜柑は一度は晒した肌と桃色の下着を全て隠し終え、席を立ち上がり応接間の外へと出ていった。

 逃げられた、とは西田は思ってはいない。蜜柑が口約束とはいえ、自身との関係を悪くする様な事をするとはまず思えない。恐らくは、何らかの代替案を持って帰ってくる事だろう。

 

(そうはいかん)

 

 だが、西田としては他のどんな案でも受け入れるつもりは無い。今回を逃せば、恐らく二度と蜜柑は隙を見せはしまい。機会がたった一度ならば、なんとしてでも蜜柑の体を味わって帰らなければならない。

 蜜柑が自身へ借りを作ったその日から、あの華奢で小柄ながらも女性的な肉付きを持つ体を自由にする事を、西田はずっと待ち望んでいたのだ。これまではその直前に避けられて寸止めの様な気分をずっと味わっていたが、今回ばかりはそうもいくまい。

 先程目にしたブラウスの下に覗いた背丈に見合わぬ膨らみと、応接間から見送る際に見た腰付きを思い出すだけで西田は昂りを覚え始める。あの体を、好きにする。金を積んでも得られぬものを組み伏せるその瞬間を考え、口元は抑えようもなく歪んでいった。

 

「お待たせしました」

「ふむ。遅かった――な?」

 

 どの様に組み伏せるかという卑しい想像が西田の頭を巡り始めた所で、応接間の扉が開き蜜柑が戻ってくる。

 聞くつもりこそ無かったが、一体蜜柑が何を持ってきたのかと西田がそこへ目を向ければ、蜜柑の手には西田が想像した金品や何らかの書類などは無く、予想外のものが代わりにそこにあった。

 

「……そちらは確か、例の掃除屋、だったか?」

「ええ。ほら蓮、頭下げなさい」

「……っ、その節は、大変失礼を……」

 

 蜜柑の横には、両手を体の前で組んで肩を縮ませている、長い黒髪のツーテールを持つ女が立っていた。

 西田もよく知るその女は、蜜柑との関係が始まった切っ掛けである、街を炎上させた掃除屋本人――確か名前は野曽木蓮といったか――であった。

 唐館市の裏の界隈では「怪しげな事件に首を突っ込みまくり、警察とも単身対等に渡り合う」と良くも悪くも有名な女だったが、話に聞いたような強気な様は今はなりを潜め、西田に対し頭を下げている。

 この女に個人的に思う所は無くは無いが、西田はその感情を一時心の中へ抑える。この女に依って齎された損害を直接言葉の刃に変える事よりも、ずっと重要な事が今はある。

 

「……それで、蜜柑さん。その女を連れてきて、どういうつもりだね?今更”この子を差し上げますので”などと言われても、それを呑む気はわしには無いよ」

 

 瞼をすっと鋭く抑え、西田は蜜柑を射抜く。ここに至って身代わりを使い、借金や関係を反故にしようと言うのならばいかに蜜柑と言えど許すつもりは無かった。

 確かに問題の大元は目の前にいる掃除屋にこそあったが、その責任の所在を追求する際に手を上げたのは蜜柑本人だ。その関係が成立した段階で、西田と蜜柑との間に契約は交わされた。

 表立って契約書という形に残せない関係だろうと、契約は契約だ。信用と履行を何よりも重んじる裏社会で、そこから逃れる事は許されない。

 既に責任から一度外れた蓮を持ってきた所で、なんら代わりになどなりはしない。聡明な蜜柑とは思えないその愚行を前にし、西田は失望と怒気を隠そうともせずに静かに責め立てた。

 

「ええ。こちらとしてもそんなつもりは一切ありません」

「……む?」

 

 その語気をひらりと躱すように、蜜柑は西田の言葉をごくあっさりと否定する。

 こちらの言葉を受けて急いで撤回した、という様子は蜜柑の顔色にも言葉にも無い。最初からそのつもりは無いと無言で悠然と語る蜜柑を見て、西田は訝しんだ。

 責任を押し付けるつもりで無いなら、何故この場に蓮を呼んだのか。その理由に思考を巡らせるも、答えは出ない。

 

「一度こちらから言い出した事、支払いはこれからもさせて頂きます。その点はご安心を」

「……では……?」

「先程”誠意”、と仰ったでしょう?」

 

 意志が変わっていない事を示す様に蜜柑は契約の継続を眉一つ動かさず言い放つ。

 ならば尚更蓮をこの場所へ連れてきた事の意味がわからない。その疑念が西田の顔にまで出た所で、蜜柑が西田の口より出た言葉を繰り返し口にした。

 

「……ね、ねえ、蜜柑さん……ほ、本当に……?」

「身から出た錆でしょう、しっかりしなさい。……そんなに踏ん切りが付かないなら、私が――」

「わ、わかってる!わかってるから、それは勘弁して!」

 

 蓮が蜜柑に小声で耳打ちするも、静かな室内で目の前にいる分その言葉の内容は明瞭に西田にも聞こえてくる。

 目を泳がせながら遠慮がちな声で蓮が話しかけるも、それを蜜柑が諌める様な調子で返す。その言葉が言い切られるより先に、蓮は焦り話を打ち切った。

 その言葉の内容を聞いても、西田からは目の前の二人、というより蜜柑が何を考えているかが想像つかない。何をするつもりだろうか、そう考えていた矢先。

 

「……んっ……」

 

 蓮が唐突に自身の胴に巻き付いているコルセットに手を伸ばし、胸下の結び目を解き始める。

 顔を羞恥に染めながらも蓮は次に背部のホックへと両手を伸ばし、服ごと胴を締め上げているコルセットを外していく。

 西田が突然の事に目を開いていると、蜜柑もまたブラウスに手をかけ、ボタンを外していく。薄く笑いながら先程よりも緩慢に肌を晒していくその姿は、まるでストリップショーの様な艶やかさを持っていた。

 蓮はコルセットを外し終えて床へ落とすと、続いて自身のシャツを開き始める。その内側から表れる豊かな乳房とそれを飾る黒いレースのブラジャーが西田の目を引く。

 そうして蓮と蜜柑は同時に前を開き終えると、肩から抜いて上着を床へとはらりと脱ぎ捨てる。蓮は自身の隠し切れない胸の膨らみを少しでも目線から逃すべく、上体を両腕を体の前で交差させ、西田から目を逸らす。

 その一方で蜜柑は肌を一切隠そうともせず、むしろ見せつけるように胸を張り微笑を投げかけてくる。蓮よりも頭ひとつ以上背丈の小さい蜜柑から来る色気に、思わず西田は言葉を失い見入ってしまう。

 

「しかし”誠意”を示すには、私一人では不十分かと思いまして。……それなら、この子と一緒に、というのはどうでしょう」

「な……」

「元はと言えば、この子の引き起こした事。ならばこの子も、西田さんに”誠意”を見せるべきかと」

 

 肌を晒しているにも関わらず普段通りの変わらぬ語調で、蜜柑が提案してくる。

 想定外の事に西田は答えを返せない。蜜柑の持ってくるだろうあらゆる条件を呑まないつもりでいた筈なのに、その提案を否定する言葉が浮かんでこなかった。

 蓮もまた、西田の目にした女の中では整った容姿を持つ女だ。すらりと伸びた体、両腕で隠し切れない程に主張する両胸、余計な贅肉など一切付いていない腰。こうして隠すものが無くなった今見直してみると、蜜柑にも決して見劣りしない程の物を持っている。

 その蓮の顔を見れば、いかにもこういった場に慣れている蜜柑と違い、耳まで真っ赤に染め上げながら顔を横へ向けている。見た目にそぐわぬ少女の様なその仕草が、西田の目を釘付けにする。

 

「”誠意”を持って、二人で西田さんを満足させて差し上げます。……いかがでしょうか」

 

 そう言いながら蜜柑は両腕を組み、自身の胸を少し持ち上げる。両腕に乗って尚零れ落ちそうな程に大きな胸が、下着越しに小さく形を変えて両胸の間の陰を濃くする。

 明らかに平均を超えた蓮の胸よりもさらに大きさをハッキリと見せる蜜柑の胸へ、西田の目線が自然と動いてしまう。目線の上では蜜柑がそんな内心を見透かした様な微笑みを見せているが、それすらも気にならないほどに目の前の光景は魅惑的だった。

 右を見ても左を見ても美女の体が、なんら惜しげもなく晒されている。ただ見ているだけにも関わらず、一度は怒気により霧散していた自身の昂りが前以上に体の奥底から湧き上がり、ズボンを押し上げ始めた。

 ごくり、と唾が無意識に西田の喉を下っていく。

 

「お気に召したようで何よりです。それでは、お楽しみ下さい」

 

 そんな西田の様子を答えとして、蜜柑と蓮が西田のいるソファーへとゆっくりと歩いてくる。

 あまりに甘美なその光景を目に、西田は答えを言葉に出せぬまま蜜柑達の体を見続けた。

 




実はいぶすたで一番好きなのは蜜柑さんです(唐突な自分語り)

5月より抱えていたネタの一つを色々脳内でこねくり回し終えたので勢い任せにリリースします。

当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?

  • 蓮ちゃん
  • ユーリヤさん
  • 真魚ちゃん
  • 蜜柑さん
  • 夢ちゃん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。