※この作品はR-18です。

Ith-Videoは観測する   作:灰の熊猫

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想定:特に無し(同作者の小説とは限りなく類似の無関係)。


泡沫の跳兎(蓮・ユーリヤ・真魚)
*兎達の狩場


「――皆さん、今回もお忙しい中こうして顔を見せて頂き、誠に有難う御座います」

 

 暗闇に満ちた広いラウンジの中、唯一の光源が円状のステージに目映いスポットを当てている。

 その中央には真新しく光を吸い込む黒の礼服を着た青年が一人で正した姿勢を見せている。感情を顔に浮かべる事も無く、型に収まった挨拶をマイクに落とせば、ステージの左右から人当たりの良い声が拡声される。

 その慇懃な言葉に反し、その中身に意味も意思も見られない。これはただの形だ。”舞台”の開始と進行を告げる、ただそれだけの形骸。

 ステージから離れて明かりの当たらない部分からは、静寂を壊さない程度に様々な形で人の存在が浮かび上がっている。青年を無視して談笑する者、ただグラスを呷りその言葉を待つ者、既に始(・)め(・)ようと手を動かしている者――ここにいる大半は、青年の存在など真に瞳に映してはいない。

 構わない。自分は、ただ決まった言葉を告げるだけのモノだ。言うなれば時計より姿を見せる鳥の仕掛けに等しい存在。

 それが仕事だ。この様な場では、そんな事にも人を使って余りがある。

 

「今回のクルーズも、お楽しみ頂けた様で何よりで御座います。……さて、陸も近付いて参りました。明日の深夜二時頃に、この船は港へ到着します」

 

 スポットライトのベールが目を眩ませ、ラウンジの中で荒げた呼吸を抑えて潜んでいる方(・)々(・)の姿は見えない。だが、俄(にわか)に気配の中に意思の圧力が混じり始める。

 早くしろ。早く言え。早く告げろ。言葉にせずとも、周囲より感じる気配は自分を急かしている。わかっている。この場の誰もがわかっている、規定の進行。

 肌の粟立ちを無視し、努めて冷静に言葉を紡いでいく。この場の秩序を乱してはならない。いかに急かされようと、飾りの鳥は人の秩序を乱す事を許されていない。

 

「……その前に。クルーズの最後となりましたが、これまで付き合い頂いた皆様へ。我々から、心ながらのもてなしを用意させて頂きました」

 

 あくまで淡々と告げる。肝心の内容は最後の段落になるまで伏せる。その方が趣がある――この場のお客様の欲を煽り、”この次”に行われる催しを盛り上げるからだ。

 何十度とも口にした定型句に僅かばかりのイントネーションを付け加え、”最後”を強調する。クルーズの終わりと、この言葉の終わりが近い事を教える。

 周囲の気配がそれに応え、少しずつラウンジの静寂は乱れ始めようとしている。堰が切れる、その瞬間が近付いてくる。期待がその場の人間の体温を上げ、会場の空気に熱が混じり始める。

 この見せかけの式礼が齎す一時の静寂が、十分な溜(・)め(・)を成した。それを悟り、青年はこの挨拶の終幕を下ろすべく、一息吸った。

 

「これより一時の間、この場に居るスタッフとの”交流会”とします。……それでは皆様、存分にお楽しみ下さい……」

 

 マイクが切れる音が終わりを告げると同時に、ラウンジの天井に七色の妖光が淡く点り、その場の闇は近い者の顔のみが見える程度まで薄れる。

 スポットライトが消え、ラウンジに居る者達の影が代わりに際立つ。その中で潜んでいたのは、大別すれば二種類の人間のみだ。

 ブランド物の服を着込んだ者と、兎の頭飾りを付け面積の狭いレオタードを着る者。

 欲深い男と、欲を求める女。

 そして、捕食者と被食者だ。

 

  ◆  ◆  ◆

 

 そのアドレスと名刺を蓮が残していたのは、”念の為”としか説明出来ないだろう。

 平時の自分であれば、苛立ちのままに握り潰し、二度と見れない様に痕跡すら消し去った筈だ。

 だが、今の自分の身の上はそれを許さない。この身に降り掛かったまま離れようとしない借金を考えれば、収入に繋がり得るものを手元に残し、留めるのは自然な事だ。

 ――それが、いかに忌避すべき繋がりであろうと、だ。

 

「ふふ、かわいいねぇ……これまでずうっと、作った様に笑顔浮かべててさぁ。でも、最後になって。ようやく、素顔を見せてくれたね……?」

「う、くっ……」

 

 肩に男の腕が回っている。脂と汗の浮かんだ体が密着している。煙草と酒の臭いが混ざり合った、清潔さをおよそ考えていない口臭が自分の頬の傍から鼻孔を擽っている。

 生理的な反応により体を捩るも、席を立つ事は許されない。隠したい嫌悪感が顔にまで表れているが、それが却って隣の男の情のスパイスとなっている事を理解し、目を逸らす。

 男の口振りからしてここより前から、既に目を付けられていたらしい。それがわかったとしても、今の自分はこの男の手を拒む立場には無かった。

 

「そんな顔してていいのかなぁ?ココに出るって事は、お金、欲しいんでしょ?ちょっとの間、素直に付き合ってくれればちゃんと色付けるつもりだったんだけど、なぁ……」

「っ……ご、ごめんなさい、慣れてないもの、で……」

「ああ、やっぱり?妙に身持ち堅いから、そう思ってたんだよ。いやぁ、なんか嬉しいなぁ!」

「んっ――!」

 

 笑顔を見せると同時に、肩に回った手が動き、固い生地に覆われた右胸に無遠慮に潜り込む。

 唐突な動きに反射的に声が上がりそうになるのを、鼻先で抑える。逃げる事無く耐えようと選んだこちらの顔色を見て、男は焦る必要も無いと言う様に、添えた掌で右胸を全体的に撫でていく。

 激しさの無いソフトタッチが、羞恥を起こす。肩に回されて胸を弄(まさぐ)る男の右腕からは、抱き寄せた時の力が抜けていた。力に頼らずとも、もう手の内から逃げる事は無いだろうと確信したのだろう。

 屈辱的な事に、それはどうしようもないほど真実だった。

 

「おっきいねえ。……こんな所にしまってちゃ窮屈でしょ」

「や、やめッ――!」

 

 バニースーツの内側に差し込まれた掌は双丘の片側を存分に味わった後、蓮の胸元から引き抜かれたかと思えば胸を覆う布地の山なりとなった部分、頂点に指をかける。

 一切の躊躇も無く脱がしにかかる男に、たまらず声を出して抵抗してしまう。それに応えて指は止まるも、横の男は薄笑いを浮かべて蓮の顔を覗き込んでくる。

 

「やめていいの?」

「――ない、で、下さい……!!」

「ははっ、いい目だよ。そういう娘ほど、乱し甲斐がある」

 

 男は左手に金鍍金(めっき)のコインを指先で摘みながら、自身の顔と並べて蓮の視界に入れる。

 ただそれだけで、蓮は黙らざるを得ない。それが男の行為を許す為の免罪符とでも言うように、今その見かけだけ装った玩具の鋳貨は蓮の口を封じ、体をこの場へ縛り付ける。

 右胸が空気に触れる。この場の薄暗闇は、少し離れれば人々の輪郭しか捉える事が出来なくなる。だが、それでも周囲の視線が自身が見せる事を許した肌へと突き刺さるのを感じた。

 このソファーには傍の男と蓮しか座っていない。しかし横へと目を向ければ、腰掛けるソファーに直角に配置された二つのソファーがあり、そこには三人の男が居る。

 見られているのだ。言い寄られながらも男の手を払うことの出来ない姿を、悔しさを滲ませながらも赤らめる顔を、今し方男によって晒された胸を。見世物の様に、ただ見られている。見せている。

 これは、ゲームであり、ショーなのだ。

 

「ん、くっ、ぁっ……!」

「大して触らない内から固くなってるよ?見られるの、好きなんじゃない?」

「くぅっ……!誰がっ――」

「銀、一枚」

「――は、はい……っ。私は、見られるのが、好き、です……」

「うーん、恥じらうのはいいんだけど……もう少し色っぽい方が好みなんだよね。そういう訳で、これはナシで」

 

 乳首を指先で弾かれながら、男の言葉が責めてくる。じわじわと緩やかな毒のように虐める指先と言葉に反論しようとすれば、男は今度は銀の鋳貨を懐から取り出す。

 それだけで、意図が伝わる。仕方なく男の望む言葉を口から絞り出す。が、男の期待には程遠い蓮の演技は、文字通り掌の上にいる現状で通用する事も無い。

 銀の鋳貨は再び懐へと戻され、蓮のケ(・)ー(・)ス(・)へと入れられる事は無かった。僅かばかりの後悔と、それを塗り潰すほどの屈辱が蓮の顔を歪ませる。

 

「ははは、いい。いい顔だよ。なあに、夜は長いんだ。これから取り返せばいい、そうだろう?」

「……は、い……ッ」

 

 男の指先は露わになった右の柔肉をなぞりつつ、ねちねちと蓮の頂点だけを摘んで転がす。

 抑えきれる程度の僅かな官能のみを与える指に、焦りは無い。それはつまり、この男が長い時間を蓮と過ごすと決めているというメッセージでもある。

 両脇のソファーから一人の男が立ち、別の狩(・)場(・)を目指しに行く。この黒髪の女の見た目こそは極上だが、場馴れとは程遠いこの女が堕ちるまで待つ程では無い。そう判断する。

 何もこのラウンジで楽しむ事が出来る女は、蓮だけでは無い。どれだけの美女だろうと、この場では数歩歩けば代わりが見つかるだけの事であり、容姿だけなら此処では需要過多だ。

 既に色声の上がっているテーブルもある。股が固すぎる女はこちらの欲情の火に風を送らないが、緩すぎる女も考え物だ。何事も程々で良い。美女で、こちらの機嫌を損ねず、精を出すに足る。それがこの場の”程々”だ。

 

「あ、やぁっ!や、やめ……てえっ……!」

 

 席を立った男の足が止まり、隣のテーブルより上がる別の女の声へ視線を向ける。

 視線の先にはアッシュブロンドの長髪を頭を左右に振ることで乱しながらも、体だけは座ったままに男達の手を受け入れているロシア系の女がいた。その両脇には男が二人がかりで、両掌を女の両胸と太腿に張り付け、蠢かせている。

 肉付きの良い女の体を十分に堪能できる様に、既に両胸を覆うコルセットは力づくで下げられ、その谷間は男の手で際立てられる必要すら無い程に大きい。大腿から足先までを覆うタイツは、男の触る部分だけが大きく破られており、自然に食い込んだその様子が女の脚の柔らかさを示していた。

 

「あッ――だ、だめっ……!」

 

 席の前を通りかかった自分の視線に気付いたのか、その女はこちらへ顔を見合わせる。すぐに何を見られているのかを悟り、目を伏せて視線から逃れた。それでも、見せている痴態に変わりはない。

 惜しい。こんな事なら、最初から隣で張っていれば良かったか。先程まで見ていた黒髪の女よりも、自分の魅せ方を理解したそのロシア人の素振りは、自分の情欲を煽るには十分だった。

 だが、それは他の男も同じだ。既に両脇で存分に体に触れている男二人に加え、傍のソファーでは順番待ちの男がさらに三人、女へ熱い視線を送りながら自身の股先のモノを握っている。

 これは、長引くな。それだけ感じ、別の場所へと向かう。

 つくづく惜しい。あの黒髪の女も、娼婦は娼婦らしく振る舞っていれば回転率も早まるだろうに。恥は極上のスパイスだが、この場で歓迎されるメインディッシュは身体だ。それを理解出来ない者は、結局は稼げはしない。

 

(……いくら持っていたか)

 

 ふと、自身の手持ちを確認する。陸で使う物とは違う、この場で貸与されるチップ用の大型の財布を取り出す。

 この船上でしか使えない鋳貨の紛い物の数を確認する。レートは銀が一万、金が五万。自身は持ち合わせていないが、一回り大きく重い鋳貨はそのままケタが一つ上がる。それが”あくまで金銭のやり取りはしてない”という、この船の上での擬似的な相場だ。

 陸での表の付き合いとは異なる、裏側の顔を露わに出来る場。それがこの豪華客船(ギガヨット)だ。表向きはこの船を持つ社長による道楽用のツアーの真似事だが、実際に動く金は比較にならない。

 あくまで人の道理や最低限の法こそあるが、ここにタブーは無い。陸では出来ない、見せられない行為も大いに歓迎――というよりは、推奨されている節すらある。此処は表の付き合いに疲れた者達の一時の夢だ。

 己の欲望のままに振る舞い、表の立場も――あくまで見せかけだけだが――捨て去り、そして好きなだけ女に溺れる。ここでは自分たちを雁字搦めにするモノは何もなく、あるのは欲と金と女だけだ。

 

(これだけあれば、選ばなければ五人は食えるだろう)

 

 財布の中にある手持ちの数を確かにし、思ったよりは心許無い自身に少々渋面が浮かぶ。

 クルーズの最後、此処で不定期に行われている”交流会”は、極端に言えば陸のパブと変わらない。違いは女のレベルと、あらゆる行為(プレイ)が許されること、そして女側に選ぶ権利がある事だ。

 選ぶ権利と言っても、女に主体を許す訳では無い。男はチップと行為を提示し、それを女が受けたなら自身のテーブルに固定されたケースにそれを収めていく。あらゆる行為を無法にしない為の、唯一のルール。

 が、このルールは副次的に新たな決まりを生んだ。それが、男側の疑似競売(オークション)だ。

 

「――金二、銀三枚」

「金三で。済みませんね、余裕があるもので」

「……わかった。次で良い、だが食いすぎるなよ」

「わかってますよ、貴方の趣味は」

 

 未だ行為を始めていない女の前で、参加者同士がテーブルにチップを出し合う。

 その結果、痩身の優男が笑みを浮かべて恰幅の良い中年を下し、自身のテーブルのケースへと差し込んでいく。最後に付箋を中年に渡し、中年は千切った付箋を頭にコインを入れていく。

 順番の数と人数をわかりやすくする為の無言のマナーらしい。陸では女を一晩買うだけの金が、ただの前金代わりにチップとしてケースへ次々へと収まっていく。そこに女の介在する余地は無い。

 此処に居る男達は、自身の好んだ女を先に誰かに食われる事や、横入りをされる事を嫌うことも多い。故に、順番やプレイ人数の決定権にすら価値が生まれ、それはやがて一つのルールとなった。

 

「金二――が、合わせて五人。文句は、ありませんな?」

「……!くそう、猿どもが!儂の番までに壊すなよ……!」

「ハッハ、なんとでも言えや。じゃ、そこの。もうギンギンなんだ、ヤんぞ」

「ヒッ……!!あ、あのっ、あまり無理な事は……!」

「穴は上下に三つ、手は二つ。ピッタリじゃん」

「オレ後ろもらうわ」

「や――きゃああっ!!」

 

 遠くの席より、テーブルを動かし複数人が一人の女に殺到する場面が見える。

 ”席代”。参加者同士がチップを出し合い、順番と人数を決定する。複数人で犯すことを望む男は、容赦無く複数人でチップを合計して女の横の席を強奪しようとし、強く独占を望む男はそれを超える莫大なチップを見せる。

 この競り合いにおいて、最も得をするのは抱かれる女だ。男として上下を決めようとする意思と、金銭感覚を麻痺させる代替の鋳貨が、女の価値を身分不相応な程に高めていく。

 故に、女にほぼ拒否権は無いと言っていい。少しの間我慢すれば、莫大な金と引き換えになるチップが手に入る。それこそがこのチップが免罪符として通用する理由であり、秩序に対しては絶対的な正義として機能する。

 

「――そこのおじさん、おじさーん」

 

 遠くへ目を向けていると、この場に似つかわしくない幼げな声が横より飛んでくる。

 足を止めている自分へ向けた物だとわかり、そちらを向く。ソファーの中央には、二人の男に身体の隅々へ手を伸ばされながらも平然としている、明らかにこれまで見てきた女の中では最も若い――いや、幼いと言えるだろう少女がぽつんと座っていた。

 隣り合う男達と比べれば二回りも三回りも小さく感じられるその体は、最も小さなサイズだろうバニースーツすらも余らせて表面から浮いており、十分にくびれを持たない腰付きを見ても到底この場に居るべき者とは思えない。

 明らかに未成年だ。それも体だけが成熟して精神が発達していない青年期(マージナルマン)の少女でも無い、本来ならば受けるべき教育過程の只中にいるだろう、そんな年頃の。

 

「……私の事かね」

「ん、おじさんおじさん。ちょっと物足りないから、手伝って欲しい、んだけど」

「物足りない?」

 

 未発達の身体の次に意識を惹かせたのは、その少女の目だった。

 暗い。とてつもなく、暗い。眠たげに瞼を少し下ろし、この場そのものが未だ暗闇の中である事を踏まえても、その少女の目はなんら光を感じさせなかった。

 単なる瞳の光沢の話では無い。感情の色が見えないのだ。長く生きて世間を知り、自身の心を顔に出さない術を覚えた者達の様に、両眼には男に今なお身体を無遠慮に触られる不快感も、心だけは逃れようとする抵抗感も、何も顕れていない。

 欠落している。そう表現するのが正しい少女の面持ちは、服装以上に首から下とは乖離している。そう自分が考えている間にも、少女はなんでもないように言葉を続ける。

 

「誰だって、いっぱいの方がいいでしょ」

「話が見えないが」

「ん、じゃわかりやすく。おじさんも一緒にシない?」

「なに?」

 

 既に両脇にいる男達の手は破られた股先のタイツの穴から、少女の秘部を直接やんわりと按摩している。

 逆の手によって両胸の先端も摘まれ、少女はそれに対して顔を赤らめてこそいるが、表情はまるで変えていない。声色を含めたあまりの自然な有様は、不快感を上手く隠している様には到底見えない。

 その時、先程の少女の言葉がそのままリフレインする。”物足りない”。少女はそう言っている。

 

「ん、こんなナリだからあんまりコーフンしないかもだけど、なんでもするよ。即尺?シックスナイン?父娘(おやこ)ぷれー?あ、後ろに突っ込むのもイケるから、よろしく」

「…………」

 

 さらに合わない淫語がその口から次々に出てきて、そうされるのが当然と言わんばかりに少女はこちらを真っ直ぐに見つめている。言葉の意味がわかっていない――という風にも見えない。

 見れば少女の手はてらてらと光り、既に両隣の社会の窓より姿を見せている陰茎を握っている。

 ただ握っているだけでなく、茎全体を撫で回しては、亀頭を掌で包み、次に裏筋を小指で刺激する。的確に男のツボを抑えた手管によって、両隣の男のモノは既に膨張しきっている。

 全体を摩擦する内に動かしにくくなったのか、少女の両手の動きに僅かに遅れが見えてきた。

 

「ん、ちょっと待ってね。……んむっ、れぇっ、んうふっ。ぁ、はぁっ……ぁ」

 

 男達に一度制止を入れると、少女は両手を自分の顔の前に戻す。離れた瞬間掌から、僅かに糸が見えた。

 何をするのかと見ていれば、戻した右手の人差し指と中指を根本から口に含んだ。その状態で見せつける様に手を前後させ、たっぷりと唾液をつけてはまた口内に戻す。

 左手も同様にした後、今度は舌を外へと伸ばし、自身の顔を手へ近付けて舐め上げる。男の臭いがこびり付いただろう掌を、まるでキャンディを外側から溶かすように全体まで舌を行き渡らせてゆく。

 十分にふやけながらも、唾液が乗ったまま光る自分の掌を見つめ、少女は迷うことなくその近くに鼻を寄せ、わかる程に大きく呼吸する。それまでの無表情が、崩れる。

 しかしそれは嫌気に満ちたものではない。淫らに眼尻を落としながら、愛おしい家族を見る様な――いや、この子の親すら一生見ることは無いだろう。そんな毒婦のような顔が浮かんでいた。

 

「――っ」

「んっ、待たせちゃったね。また、シてあげるね?」

「お、おおっ……く、くそ、なんッ、つ、ぅっ……!」

「ああっ……!ちっさい指が、ァッ……!」

 

 少女の様子に見入られた両脇の男達は、既に秘部へと潜り込ませた手を止めていた。

 違う。止まっているのは自分も同じだ。足はこの場から離れることを拒み、目の前の雌を選べとばかりに自身の下半身はズボンの中で出番を待ち望んでいる。

 男達の股座を見る。少女の唾液と先走りにまみれ、鈍く光を返す肉棒は、細く小さな掌と指先が絡みつくごとに顕著に反応を見せている。

 尿道口の付近を、爪先が掻く。下手をすれば痛みも感じるだろう行為にも、男は天を仰ぐ。それは力加減が完全に痛みの手前、快楽の地点で留めている事を暗喩しており、ラウンジにいるどんな女よりも小さな指先に良いように転がされる屈辱を越え、甘受できる技術を持っている事を意味していた。

 それを見るだけで、心と股先が疼く。自分の趣味は、もっと成熟した女だ。だが、それを差し引いても良いと言えるだけの魅力――いや魔力を、自分は少女の内に見出している。

 

「ん、どう、かな。とりあえずお試しって事で、銀三枚からでいいよ」

「……いいだろう、楽しませてくれよ」

「ふふっ。よろしくね、おじさん」

「お兄さん、だ」

「そういう方がいいの?んー、”おにいちゃん”とか”にーにー”とかは?」

「……そこまでの媚びは要らん」

「ん」

 

 挙句の果てには自分から価格を提示してくる。それも行為の指定も無し、ということはチップ三枚で最後までしても良い、と取られても文句は言えない状態だ。

 だが、あえてそれに乗る。大した自信だ。報酬は出来高で良い、文句は言わない。まるでプロ女優の様な堂々とした姿勢と、男二人を実際に制しているその手管が気に入った。

 生意気だとも感じるが、それが事実かどうかはすぐにわかる。経費も格安だし、たまにはこういう趣向も悪くはないだろう。金を出す以上自分は客であり、目の前の少女は獲物である構図に変わりはない。

 そんな心を見透かした様に、少女は口端の片側だけを僅かに上げて微笑んでくる。

 

「……じゃあ、改めて。おにーさん、きもちよく、なろーね?」

 

 銀の鋳貨を三度ケースへ差し込み、付箋を入れる。これで望まぬ横入りは無い。

 そしてベルトを緩め、ズボンを下ろしながら少女の居るソファーへと近寄った。

 




オレ、気付いたんすよ 次誰書けばいいかってやつです
馬鹿なんで、時間かかったっすけどっ……書くためには、書けばいい
候補のヒロイン、全員をッ

当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?

  • 蓮ちゃん
  • ユーリヤさん
  • 真魚ちゃん
  • 蜜柑さん
  • 夢ちゃん
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