※この作品はR-18です。

Ith-Videoは観測する   作:灰の熊猫

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*恢恢、繰糸

  ◆  ◆  ◆

 

 そこは、一つの地獄だった。様々な感想を包括し、それが男達の抱いた単語だ。

 参加してきた女にとっては、この”狩場”は間違いなく地獄だ。自らがチップを払い認めた行為のみ許す、という体裁があるとはいえ、このルールは有名無実・見せかけの障子(かべ)でしかない。

 何故なら、このラウンジには任意で来た者しか居ない。つまり金を求めてやってきた娼婦のみが集まっており、余程アブノーマルなプレイでなければ通る土壌が揃っている。

 そのせいか、開催される毎にルールは無言の下になっていった。最初は全てが先払いだった行為のチップは、報酬の上乗せの常態化で後から全払いも多く見られるように変化する。

 結果、『どんな嫌がられても、上からさらに札束(チップ)で殴れば良い』と雰囲気は変遷した。

 しかし臨時の従業員を次のクルーズでも抱くには、逃げられてもいけない。”そこまでされるとは思わなかった”と二度と船に来なくなるのは、金を積んでも止められない。

 つまりこのゲームにおいて最も肝要なのは、『積んだ金で女の行為の限界を上手く見極める』事なのだ。

 ――しかし。

 

「ひ、ぃ、ああんッ!あッあッ、あはァッ!い、イイッ、よぉっ……!ねっ、びゅーびゅーって、出してぇ……!」

「……ッ、おッ、おッ、おッおッ!!」

「あぁあッ!しきゅー、つぶして、るッ!こわれ、ちゃうッ!こわしてッ、こわしてェッ!」

 

 この場に不釣合いな程に年若い少女は、この場にどこまでも釣り合った存在だった。

 何を要求されても飲み込む。言われた言葉を二つ返事で快諾する。自分から行為を提案し、必要なチップの枚数すら聞いてこない事もある。

 今は体力自慢を謳った男に対し、両腿を抱え込まれて小さな身体を持ち上げられ、その上で小さな肉裂を押し拡げられていた。これも少女の提案からのものだった。その上、通路側に立つ事で近寄る人々に犯される様子をライブしている。

 少女は平時は無表情であるくせに、男根を咥えている時は表情を緩ませ、光無い笑顔で悦んだ。下腹部から次々に誰のものともわからない程混ざった精子を漏らし、行為の激しさによっては合わせて潮も噴き出していた。

 

「イクッ、イっちゃうッ!また、イクのッ!おじさんのでッ、おなか、あッ!きもちいいとこ、つぶされてッ!あッ、でちゃうッ!出ちゃう、だしちゃう、よぉッ!」

「く、あッ――ずっと、イってる、みたいなくせにッ……ガキッ……!」

「もっと、もっとぉ!ゆらしてっ、つぶしてっ、おちんちんッ!ンッ、ハッ――あああッ!!」

 

 道行く人が、必ずそれを見る。射精を終えて別の獲物を探しに来た男が、目を見開く。

 小柄な重み全てで男根を咥え込み、膣が許容出来る何倍もの精が次々に零れ落ちる。女としての尊厳を全て蹂躙されているのに、声に悲壮さは聞こえない。その口は受けた快楽を歌う様に言葉を紡いで止まらない。

 イっている。何度もイっている。その姿を見られて、さらにイっている。明らかに自分自身の浅ましさを見せつけるために、犯されている。

 痙攣と収縮を繰り返す狭い膣は、挿れているだけでも男根を拘束する様に動きを阻む。それでいて浅い子宮を小突く事は拒まない。言動よりも技術よりも、身体が雄を受ける事に慣れ切っている。

 小さな身体に無理矢理に娼婦の内側だけを押し込めて詰めた様な、あまりに肉欲に素直な真魚の秘部に喰い付かれた男根は、度重なる刺激でもはや限界だった。

 

「くそッ、射精(だ)すぞッ!!」

「あはッ――あ、ん゛んぅンンッ!!」

 

 最も深くを狙い、男は背を反らしながら雄芯(おしべ)を押し込む。雌芯(めしべ)がそれを迎え、花弁が震えて果肉が全体を打ち震わせる。

 そして種子が吐き出された。飛ばす勢いで放たれた種子は、余すことなく雌の芯へ打ち込まれ、栄養を注ぐ様に流れ込んでは繋がった球根から余りがぼとぼとと床へと落ち、死んでいく。

 それでも良かった。たとえ大半がその雌の膣内(なか)に居られないとわかっていても、それでもあまりにもこの小さな華は魅惑的で、蠱惑的で、魔性だった。それが、さらに種を煽った。

 持ち上げた体が痙攣を続ける。壊れているのではないかと一瞬不安になる程、少女はよがっている。よがり狂っている。

 それでいて、この場で囲む男達の誰よりも冷静だった。壊(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)が(・)、(・)平(・)常(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

「ァッ、はぁ……っ、あはっ、はっ。……おもらし、しちゃった、みたい。ふふっ……」

「……ぐ……ッ」

 

 奥から湧き出た愛液が内側の精液を洗い流し、男のモノから脚までを濡らしていく。

 すぐに外気に熱を奪われようと、少女と男の確かな繋がりそのものを示す証拠だった。自ら犯され、悦んで、今なお悦んでいる。”おもらし”と言いながら、それが排尿で無い事は明白だ。

 少女もまたそれをわかりきっている。その上で、言っている。全てはただ、男を愉しませる為の一連の手管だった。

 表情も、口も、小さな胸も、幼い腰も、熟した蜜壺も。身体全ても、精神(こころ)全ても。

 全てが、雄(おとこ)の為に使われていた。

 

「ぅ――ふぅー……んッ。わたしの勝ち、だねっ……ぴーす」

「……そっちは何度もイってるのに、こっちが一回だけ、ってのはアンフェアじゃないか」

「なにいってんの。だからいったじゃん、”ナニしてもいい”って」

「……それ、キミも含んでたの?」

「あたりまえじゃん」

 

 負けたよ。そう呟いて獣性を吐き切った男が、真魚の身体を床へ下ろす。

 真魚は絶頂の余韻で脚を震わせ、ふらつきながらその場で立つのもままならないと身体で表現している。深呼吸をしながら、元居たソファーに戻って身体全部を沈ませた。

 真魚を解放した男は、素直に自らの手持ちから追加のチップをケースへ収めていく。

 

「見事なモノだな。これまで見た事が無いが、キミは何回目かね」

「んっ?……あぁー、うん。初参加、だよ。こういうのも、たまにはアリだよね」

「…………恐ろしいな」

 

 横からサービスと言った風に、順番待ちだった”お兄さん”がグラスを寄せてきた。

 酒の匂いはしない。わざわざジュースを持ってきたのだろうか、思った以上に気遣いの出来るクチらしい。酒気を混入させていると疑るにしても、元々そんな判別は出来ないし、構わない。迷いなく喉に流し込む。

 澄んだ林檎の甘味が広がる。酒では無い。真魚としてはこういう場でも無いと呑めない味も一度は飲んでみたかったが、人の親切にケチをつけるのは流石にこの後の熱(セックス)に水を差してしまう。水気は欲しいが、身体を冷やしたい訳ではない。

 自らの喘ぎで涸れる寸前の喉の表面に、一気に林檎のよく冷やされた味が染み込んでいった。

 

「……ねえ、やっぱ追加(オプション)で金三は重すぎない……?」

「受けたのおじさんじゃーん。みんな、きいてたよね?”絶対ヘバらせてやる、負けたら三枚でも四枚でも出してやらぁ”、ってさー」

「そうですな。やれやれ、小さくなったのはモノだけじゃなく器もかな?」

「体力自慢が聞いて呆れる。端金に拘れば、沽券に関わるぞ」

「関わるのは股間だろ、ハハハ!!」

 

 既に真魚はこ(・)ち(・)ら(・)側(・)だった。ただ蹂躙されるだけでなく、男を貪る為に、周囲に溶け込んだ。

 周囲から咎められ、一人笑われる立場に追い込まれた男は素直に自らの発言の対価を支払い、真魚のテーブルから逃げていった。この場において、金払いの悪い事と行為の見極めが下手な事は、何よりも立場を貶める。

 社会から隔絶したこの空間において、男は金と言葉を、女は性と駆引のみを武器に持ち込み、振るう事が出来る。

 それを理解しているかどうかが、喰う側と喰われる側という立場の、真の差異だった。

 

「次は私だが……休憩は要る、か?」

「なにそれ、用語?……じゃないよね。とーぜん、まだヤるよ。やっとちょーし出てきたんだから、イケるとこまでイきたいし」

「…………そうか」

 

 男から見てあれだけ乱れ狂っていたとは思えない程、真魚は既に落ち着いていた。

 都合の良い幻とすら思えた。どれだけ犯しても、何をさせても悦び、少しすれば元通り。

 その少女の身体が熱と汗と性の臭いを纏って火照ったままでなければ、まだ一度もこの場で犯されていないのでは無いかと思うほど――いや、そう仮定したとしても、真魚は泰然としすぎている。

 

「で、どーするの?まずおクチ、次に前?後ろ?あ、ムネでこすられるの、すき?」

「…………はぁ。どちらでもいける、と言ったな」

「ん。はい、うぇーるかーむ」

 

 挙げ句待ちかねたのはこちらと言わんばかりに、性に塗(まみ)れた体でしなだれかかっては次の相談をしてくる。どこからでも犯してと、何も持たない細く小さな両腕をこちらに伸ばして誘ってくる。

 そんな少女の泣き喚く姿を、誰もが見たかった。プライドを賭けて、誰もが一人で制圧しようと挑戦し、その全てが次々に追加のチップという形で精算されていった。

 もはやこの少女は同格の存在だ。そ(・)う(・)勘(・)違(・)い(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。故に、こちらの武器を切る。

 

「……そこのお二方、一緒にいけますか」

「む?ああ、別にイケッけどよ」

「一緒――まぁ、問題は無いですが」

 

 長く待機していた男二人を手招きする。気性の悪そうな若造。丁寧な物腰の青年。

 前者はこの場ではよく知られた獣だった。人の皮を被りながら、精力と金のままに女を食い荒らし、感謝(ついか)も見せずに次々に別の女の身体を味わっていく、有名なハイエナ。

 やりたい事を試すには丁度良いだろう。反応を見るべく、直球に話を切り出す。

 

「そっちは口に突っ込め。青年は前を使っていい、私は後ろにブチこむ」

「えー、口かよー。ま、別にいいケド。後で別の女使うか」

「……ほう。良いのですか?」

「構わない」

「へえ。それでは、遠慮無く頂きますよ」

 

 未だこちらを平然と見つめる真魚の目の前で、努めて冷静にプレイを提案する。

 三本同時。未熟であれば噛まれる危険もあるが、この少女であれば技術的には問題は無いだろう。問題は、肉体的な所にある。

 少女はあまりに小さい。並以上の大きさであれば子宮を殴って僅かに余る様な小さな内側(なか)であり、大人であれば誰でも持ち上げられる程に重さも肉も持ち合わせていない。

 そんな娘が穴という穴を全て潰され、蹂躙されて。まともさを持ち合わせていれば、正気も保っていられない蛮行だ。トラウマすら刻んでしまいかねない行為は、本来タブーのラインの上で請けられる事も無い。

 だからこそ言った。男の肉欲には残弾があるが、欲望は底無しだと。それを知らせる。思い知らせ、その上でこの少女の肉体から心までの全てを味わい尽くす。

 

「ん、んー……どーしよう、かな」

 

 小さく少女が迷いを見せた。少なくとも、自分は初めて見た明らかな間だった。

 そこが分水嶺か。それとも限界を僅かに超えただけなのか。口、手、蜜壷。三点までは出来たが、それが限界だったのだろうか。考えを張り巡らせ、少女の胸の内を推察する。

 表情は変わっていない。なんでもない事の様に、それこそ宿題に悩む程度の、そんな顔。

 

「無理かね」

「いや、そーじゃなくってね。……ほら、これ、みて」

 

 そう言うと、少女はこちらに背を向けて腹這いになってソファーへと倒れる。

 そして尻を持ち上げ、ずれ切った股部の布地に右手を引っ掛け、精液が漏れ出す秘部を見せつけてきた。

 

「ほら。アソコがみえるようにズラすと、後ろがみえないでしょ?それで……」

「ッ」

「ね。おしり、みせると、前がちぢんじゃう」

 

 犯せとでも言わんばかりに突き出した尻を指で弄り、自らが着ている服の状態を示す。

 今度は後ろの穴を見せる様に、布地の位置をずらす。後ろ側を晒すと、代わりに秘部に布地が寄った。それでも完全に隠せている訳ではなく、床には数滴の混濁液が布地越しに雨漏りして落ちてくる。

 淫靡だった。少女はただ淡々と、それこそ服について説明しているだけに過ぎない。それだけで、少女は男達を魅惑してくる。

 いや、違う。これこそが行為だった。性交に及ぶ前から、触れる事すらせずに。男根には少しずつ血が巡り、頭には獣性が混じり始める。明らかに故意的な、前戯だった。

 

「だからね。挿れてる時、こすれて萎えちゃう。……きいてる?」

「……聞いてる、とも」

「このクソガキ、トンデモねえッ……」

 

 三人で息を呑む。未だ抱いた事の無い手合だった。これだけ幼く、それでいながら手慣れた魅せ方。明らかに男と、行為と、経験と。そして、自らの雌を深く理解して扱う少女。

 そんな男達に真魚は背を向けながらも、顔と目だけを流して向けて表情を見てくる。

 見られていた。見ているのはこちらなのに、覗き込まれていた。

 

「だから、どうしようかな、って……ンッ、ふ。――あッ、イイこと思いついた」

 

 真剣に自分が犯される為にどうするか、それも男達の心配をし続ける真魚。

 布地の様子を見せる為に股間に当てた手を、陰核に添えながら考えている。自らを慰め、秘部の熱を保つ為に身体を震わせ、アイデアが降りてくるのを待つ。

 閃いた、という真魚の声にも男達は気が向かない。理性的に思案しながらも、手付きは色に狂っている。少女でありながら、オンナである。そのギャップが、男の熱を燻らせ続けている。

 

「すみませーん、あのー、黒服さんか執事さーん」

「……なんでしょうか」

 

 その時、近くを巡回している”執事”――開幕の挨拶をした、現場における最高責任者――の姿をした男を真魚が呼び止める。

 この場において十人ほど配備されている内のガードマン、抑止力、レッドカード。それが黒服と、それをまとめる執事という存在だ。女側が男に暴行に等しい行為を受けた時に動く仕事を持つ。

 故に真魚が呼び止めた時、男達は緊張した。ただでさえ幼い娘に乱暴をしてきた以上、呼び止められるだけに足る理由すらある。此処にあらゆるハラスメントを正す法こそ無いが、金で嫌悪を抑えきれなくなった女達にも、一本だけハッキリとした逃げ道は用意されているのだ。

 ――これまでのチップ全てを船側へ返却する事で、この場から確実に逃げるルール。

 まずい、終わる。真魚以外全員の思考が、このゲームにおける”最悪”を考えた。

 

「ハサミ、ありませんかー」

「ありますが」

「ここ、きってください」

「……宜しいのですか?その意味が――」

「ん、わかってるわかってる。オ(・)ー(・)ル(・)フ(・)リ(・)ー(・)、でしょ」

「――……わかりました。少々お待ちを」

 

 そんな男の心配を余所に、真魚は上げた尻を振って股間の布地の頂点を指差す。

 鋏で截(き)る。それは確かに、この場の暗黙の一つに存在する概念だ。

 なんでもない事だが、女側が提案出来るオプションの一つであり、その効力は防(・)げ(・)な(・)く(・)な(・)る(・)という物、ただ一つ。女からしたら本来自傷に等しい、しかし男を喜ばせられる行為だった。

 布地があるから、守りたい所だけを手で抑えて男を制する事が出来る。制した所で代わりにどこかしら犯される事に違いは無いが、布地が残っていれば二つの穴を同時に挿される心配は格段に下がる。

 それを、真魚は棄てに来た。金を得る為のオプションでもなんでも無い、自身の意志で。

 

「ねー、はやくー」

「……動かさないで下さい。手元が狂います」

「あ、ごめん。……ぁはっ」

 

 執事すらも誘惑する様に、小ぶりな尻が僅かに揺れて股の精を振り落とす。

 その動きが制されて少しして、一つの金属音がその席の周囲のみに響き渡る。

 刃が離れる。二つの分かたれた刃が布地を挟み、間にあるモノを易々と断ち切っていた。

 脚を長く見せるためのV字が、中央で途切れてひらりと宙に浮く。もはや、服としての最低限の体裁すら失われた。着ていながら、截(き)られて、着ていなかった。

 その事に――真魚は哂(わら)った。

 

「ねえ、むねも、お願いしていーい?まんなか、きっちゃうの。乳首見せちゃうの」

「……良いのですか?」

「なにが?」

「…………はい、わかりました」

 

 続けて胸を張り、腹の上に下ろしていた胸部の布地も再び両手でずり上げる。

 それでも少女の上から覗き込めば丸見えだった。元々余っていた布地を、わざとらしく胸から少し離して切りやすいように持っている。男達は執事と真魚とのやり取りを、ただ息を呑んで見続けていた。

 一切オプション料金のチップが男達の内から出ない事に疑念を持ちながらも、本人が望んでいる以上執事は対応する。山を隠すための双円の中央を、頂点からそこだけ裂いて刃を下ろす。

 最後には、隠すべき所を何も隠せていない、服から成り下がったモノを着た少女だけが残った。

 

「んっ、ありがと、です。がんばってねー」

「……はい」

 

 用は済んだとばかりに真魚が執事を送る。その状態でいいのかと、僅かに執事が表情に心配の色を浮かばせるが、真魚の色を持たない両の瞳が揺れていない事を確認した。

 執事が去っていく。このテーブルから、最後の抑止力が消える。

 もはやこの場に、真魚を犯す事の支障は残されていなかった。

 

「――キて?」

 

 ソファーに腰掛け、柔らかく両脚を真横へ広げる。あまりに暗い瞳は、視えない誘蛾灯だ。

 垂れ落ちる布地は秘部の上にただ乗っている。見えないままに、真魚が両手の指をその下に潜らせ、隠されたその肉の弁を横へ大きく引っ張る。

 布地の下から沈んだ座部に、白い液状の卵が静かに音を立てて漏れ落ちた。

 

「も、もう待てないッ……!!」

「あッ、ハ――ぅんんンゥッ!!」

 

 一人目の青年が、飛び掛かった。誘われるままに秘部へと意識を吸われ、布地を上へと払う。

 布地が落ち切り再び隠れるより先、真魚が自ら割り拡げた肉の壺へと自らの芯を打ち込んだ。

 

「ッハ、ハァ!!くッ、せまッ……」

「あはッ、はは、ぁンッ!おくッ、いきなり……!イイッ、よォ……!」

 

 他の男の目も忘れて腰を振り出す。ソファーと男の胸板に押し潰されながら、真魚は鼻先からの吐息で男の胸を熱くなぞって、腰を振られた時に舌先で男の片側の胸の中心点を突く。

 腰を引いた時に離れる男の身体を求めて、真魚は両腕を胴に回す。動くのは、お互いの腰だけになった。それがたまらない。そう思い、真魚は直ぐ様身体の熱を高く上げ、合わせた肌でそれを証明した。

 

「オイ、コラ!オレ等もさせろ!一人だけ腰振ってんじゃねえ!」

「っか、ア――す、すまない、つい……ついッ」

「……一旦抑えろ。腰を止めろ」

「ぁ、ぁっ……やめ、ないで、ぇっ……」

 

 豹変した青年の両肩を、後ろから若者と壮年の掌が鷲掴む。それでも、腰は意識の外だった。

 腰ごと抑えられて、ようやく青年の抽送が止まる。それでも、真魚は腰を浮かせてようやく入れられた一物を亀頭の根本で締め上げ、一時でも離れることを拒み続けている。

 座部と青年の体で真魚を覆ってしまえば、身体は事実一人のモノでしか無い。それでは意味が無い。

 

「とりあえず体勢変えろ、ここで寝ろや。おい、ソファーちょいどけろ、どかせッ」

「……それが一番良いか」

「ええ、ここで寝るの――うッく、イヤなんだが……」

「や、ァッ――やっ、ぬくのやッ。かかえてぇ……?」

 

 若者がソファーを動かし、床にスペースを作る。そこがお前の居場所だ、地べたが似合っている。真魚がそう実際に言われた様な気がして、思わず体を抱き締めようとする。自分を抱こうとした腕は、青年を引き寄せて肌と性器を擦り合わせた。

 深く深くで誰かと繋がり合った小さな体を抱えられ、床にゆっくりと青年が背をつき、繋がったままの真魚もそれに従って青年の身体に寝そべる。より深くに芯が刺さり、青年の首筋を吐息と涎で撫でる。

 まだだ。これじゃ足りない。これだけじゃ、ない。

 

「……こちらから挿れるぞ。後ろから挿れられた拍子に口の中で大事故――は、そちらも勘弁だろう」

「うへ、萎える事言うんじゃねェや、コッワ。いいから挿れろや」

「ああ。……挿れるぞ」

「いれてっ、いれてッ。ここ、ココッ――オ゛ッ、ぉっ、ふ、ぁあんっ……!!」

 

 待ち切れなくなり、真魚が自分から尻を割り広げる。秘部の感触が抜け落ちるのが嫌で、思わず膣が強く締まる。下の青年が、気持ち良さそうに声を漏らしている。

 違う。あなたじゃない。わたしの方が、もっともっときもちがいい。はやく、イキたかった。イっていた。行きたかった。

 ノイズが走る。しかし、不快じゃない。

 ――近付いている。ノイズが、その正体が、身体へ近付いてくる。

 後ろからゆっくりと挿入される熱棒と共に、脳の上までが震えた。やがて収まったモノが、奥で止まった。

 しかしそれでも、収まっていない。男根の根本も、自分の震えも、騒ぎ立てるノイズも。

 なにかがたりない。もっと、もっと。あと、すこしなのに。あとすこしで、いけるのに。

 下腹部が雄芯で拡げられ、腸を直接熱棒で焼かれ、しかしまだどこかが寂しい。

 腹から下の熱に体を反らせ、しかし締め続ける。震える両手を床に付いた先に、雄々しい男根があった。

 

「もういいだろが!オラ、口開けろ、噛むなよっ!」

「んむぐ、ッフ!ん、んぅ、ふっ、ふぁ、ぉ゛ぅ゛っ――」

 

 十分に近付いた瞬間に、先走りと他の女の汁でまみれたその汚(おいし)いモノが口内へ叩き込まれる。小さな口を、目一杯に開いて迎える。あ、ぁっ。大きい、雄々きい、美味(おお)きいっ。

 悦んだ。喜んで、歓んだ。喘ぎも締められ塞がれた。それでも、悦びの聲(こえ)を見せた。

 身体全体が痙攣し、自分でも小さいと思っている体が熱の中心へ向かい縮まる。

 泣いた。防衛本能だ。ただの機能による涙だ。潤んだ瞳から弾き出されただけのものだった。

 う(・)れ(・)し(・)く(・)て(・)、(・)な(・)い(・)た(・)。

 

「――っ、い、イカン、キツ、すぎッ……る……!」

「ぐうう……!まさか、ここまで咥えるかッ……!」

「あぁ゛っ、クソ。こいつ、これでまだ舐めてきや、がるっ」

 

 ココロの役割は終わっていた。ここまで来たらもう、つまらない駆け引きも要らない。

 カラダだけが、自分の全てだった。カラダは裏切らないから。嘘をつかないから。誰一人として、自分一人だって。ぜんぶ、騙せないから。

 受け容れて、締める。絞り出そうと、蠢く。味わおうと、舐め回す。

 わたしは最初からこうだった。ずっとこうだ。あ(・)の(・)時(・)から、あの、トキ、の――

 

「あはッ、ア゛ッ!ちゅっ、ん゛ッ、ン゛――んぅッ!むっ、んむっ!!」

「おッ、おッ!う、動けん、のにッ……!」

「チ、ィ……!擦るだけでも、か……!」

「イイ、ぞ、ッ……!オラ、もっと頭振れ、舐めろ、飲めッ!」

 

 激しさが増す。自分と相手の、カラダだけが加速する。

 ほら、やっぱり。ココロはやっぱり、カンタンに裏切った。思考の外で、男達は腰を振り、カラダを震わせて善がっている。

 前から犯される。きもちがいい。後ろを穿(ほじく)られる。きもちがいい。喉奥を貫かれる。きもちがいい。良い、いいっ、イイッ。ココロ(きもち)が、イイ。

 

「――あっ……ァ、ハッ……ン゛」

 

 ――ノイズが、しっかりと形を成した。頭に今まで過っていた、薄れていた幻影。

 暗く閉鎖された部屋。雄の臭いで黴の生えたベッドとシーツ。拘束。夜。朝の無い、夜。

 記憶。地獄の記憶。屈辱の記憶。破滅の記憶。そして、甘美な記(・)録(・)。

 そして何よりも――思い出したかった、あのトキの感覚(きもち)。

 

「ぁ゛、ッハ!んぐっ、ふっ、ぅ゛ッ!ぁはっ、ん゛――ぢゅうぅうっ」

「あああ!くそ、くそっ!こんなの、こんなっ、知らなッ……!」

「ぐ……う……ッ、ふッ、ふッ」

「ヤッベ、出そ……いいか、どーせクチだし。さっさと終わらせっか、ァッ!」

「んむ゛ンッ!!――ッフ、ん゛ぅっ」

 

 吸う。飲む。吸い取る。飲み干す。そのつもりで、はやく、それをだしてほしくて。

 深淵もかくやという瞳が、漆黒の内側でどこまでも深い原初の欲求に染まっている。

 散々に殴られ、回され、歪められた。少女は死よりも、壊れる事を選び――深淵が産まれた。

 全ての光を映さない。そうしなければ、生を保てなかったから。自分の意志が何よりも邪魔だった。それはただ男からの乱暴を増長させるだけだと、行為で教え込まされたから。

 あ(・)の(・)場(・)所(・)に(・)、(・)行(・)き(・)た(・)い(・)。そう想うように、おぼえさせられた、から。

 

「あーイイ、イイぞッ。出すぞ、飲めや!有り難く飲め、よッ!!」

「ッ――ぅ゛うんぅぅっ!!」

 

 熱が迸る。狭い口の中一杯に、オトコがオトコを示してくる。

 その味だけでカラダが小さく痙攣した。イった。味だけでイった。

 カンタンだった。イくのも、合わせるのも、何度も何度も何度もやらされて。ココロを捨てた事で、カラダにオトコの全てが刻印(インストール)された。

 飲む。小さな口で、感謝を示す。舐めて、煽って、吸って、絞って。茎から亀頭、裏側、尿道の中に残る最後の一滴まで、全て全て。自分のための食事であり、暗い部屋での娯楽(へんか)だった。

 お(・)残(・)し(・)は罪だった。それもまた、覚えさせられた機能(プログラム)だった。

 カラダからココロまで、その全て。カラダの、ココロの、わたしの。何もかも。

 オトコ達が、創り上げた。オトコ達のための、道具だ。

 

「……ふー、っし。……良かったぜ、クソガキ」

「あ、ぁあ……っ。ん、んーっ」

「ぐッ!?……く、アフターまでカンペキかよ。どんだけスケベなんだてめぇ」

「うん、んぅっ。すけべっ、わたし、すけべなの――ォッ!?」

 

 口から抜かれ落ちるより先に、赤黒い肉傘へキスをする。上の口も、下の口も。どうせ、どちらもやる事は同じだ。だからこのキスも、ふつうのキスだ。

 罵る言葉とは裏腹に、若者は満足そうだった。雑に行為を任せたが、求めていた通り――いや、それ以上に吸い付いて離そうとしなかった少女に、軽蔑と賛辞を砕いて身体へと振らせた。

 それもうれしかった。だから言葉に応じた、しかし下から突き上げられて言葉がまた嬌声に成り下がった。さらに、突き上げられる。

 

「くおッ、お!まずい、もう、ぅっ……!」

「ぬ、う゛、う……!く、おッ、おッ」

「あっ、あッ、あ゛ッ!イイッ、イイのッ!もっと、うらっ、ごりごりして、ぇえッ!」

 

 若者が口に挿れたモノが離れた事を受け、雄芯と熱棒が一層激しく動き始める。

 最高だった。イってもイっても、終わりが無かった。浅い絶頂が繰り返される事で、カラダ全部がやがて深くへと堕ちていく。

 小さな体は背だけを反らし、自由となった肩から上を振り回す。汗と、汁と、濃厚なメスの臭いが辺り一面へと振り撒かれる。

 それこそオトコの欲する水だった。どこまでも行為(オトコ)を熱くさせる、獣の燃料だ。

 

「いっしょに、いっしょにッ!あ゛ッ!あハァッ!どっちも、おかされ、てるッ――イイッ!イイのッ!もっとしてッ、ね゛、えッ!もッと、ぉ゛ッ、と――ぁ゛あンッ!!」

「っが、ァ、あ、あ、アッ」

「う――ぐ……くっ、フゥッ!」

 

 体の内側、表と裏。どちらも抉られる。同時に抉られる。交互に抉られる。

 散々に精液を流し込まされ、満たされる様に。自分の中の孔を、満たしたいから。

 どろどろとした熱が、突かれて跳ね回る度に胸の内側に流し溢れて、たまらなくなる。

 こうされたかった。こうされていた。こうしたいから、ここにきた。

 どうでもよかった。誰も彼も、自分も、ココロも、カラダも。

 ぜんぶ、ぜんぶ。こ(・)れ(・)以(・)外(・)、(・)ど(・)う(・)で(・)も(・)い(・)い(・)。

 

「ア゛ッ――ハ、ぅううんッ!もっと、ォ――ッ!!ン、ふぅぅうっ!!」

「ず、ずっと、締り続け――あ、ダ、メ、だ……!」

「……ぐ、うううッ……!」

 

 こんな狭い孔を犯しておきながら、何を今更我慢するのか。カラダから消えた筈の冷静さが、どこか遠くで上から自らを犯すオトコ達を見下し、そして自分自身すら見下している。

 射精したいなら出せばいい。射精させたいなら、出させればいい。悦びのペースが、一瞬上げる。ちかちかと明転し続ける脳裏が、完全に白に染まるまで。何もかも、消え去るまで。

 消えた思考はもはや制止を知らなかった。イく感覚が止まらない。カラダは天井知らずに感度を上げる。口は最低限の呼吸をするだけの為に、唾液を垂らして男の顔と首を濡らしていく。

 またイく。次にイく。イった。性欲の奴隷が、深く深くに堕ちていく。

 それは、男達にしても同じだった。

 

「――ァ……っか、あああぁぁッ!!」

「射精(だ)――す……ッ……!!」

 

 下腹部だけでどこまでも強く抱きしめ続ける真魚の締め付けに、我慢という概念が消える。

 ただ雌を犯せればそれでいい。真魚の思考が複写(ペースト)された様に、男達の理性も弾け飛ぶ。

 受け入れた。もはや、待ち侘びた。最高の瞬間だ。

 

「あ゛ッ――……ぁ、あァッ――ッ!!」

 

 色に狂った、その艶(いろ)声を天に咆え立てて。感じるモノが、全て失せる。

 天国だった。一転して、地獄になる。しかし地獄が一つ脈動すれば、また天国に行ける。

 意識の無い天国。意識の在る地獄。熱を奥で呑めば、再び天国へと飛んでいく。

 最も深い絶頂により、真魚の意識は此処ではない場所へと瞬時に弾かれては、自らの性感によって繋ぎ戻され。

 その往路を、何度も何度も、繰り返す。

 

「……ぁッ!あ、あ……ぁはっ……!あはッ、フッ……ん゛ッ」

「くうう……!あっ、あっ」

「はなッ、せ……!」

 

 意識がようやく戻るが、余韻もまた最高だった。思わず再び両の腹が蠢く。

 精を出した直後で弱まる二本が、再び狭さに虐められる。また吐き出される。あつい。

 体が震えた、しかしイけはしない。天へと登れる一時のボーナスタイムは、終わっている。

 しかしそれでも求めるカラダは、勝手に二本を小さく締めて震えていた。

 

「……ん、ふうッ。……よ、かった、あ……っ」

「こ、これだけ、やって……第一声が、それですかっ……く、おっ」

「……信じられん娘だ」

 

 脱力し、自分の涎と男の汗でコーティングされた胸板に体を休ませる。

 汗を舐め取れば、男のフェロモンと自分以外のモノを吸った涎の臭さが口内を満たす。反射的に体が疼いて、ぴくりと雄芯と肉棒を締めてしまう。しかしもはや、出すモノは残っていなかった。

 下の口で味わえないなら、上の口がある。目の前の胸板に舌を這わせ、乳首の周りの産毛を舐め、吸う。こちらにとっては大したモノでも無いが、それだけでまだ収まっている雄芯が動くのが良い。

 

「……あッ……ンッ、すっごい、でてる……」

「そりゃ、あれだけ、シてたらね……」

「見誤ったか……これほどとは」

 

 しばらく余韻に浸っていれば、完全に力を出し尽くした二本が精を垂らして抜け落ちる。

 二つの入り口を柔らかく擦られるだけでも喘ぎが漏れる。敏感になっているのは、男達だけではない。さすがに疲れて体が呼吸を絶えなく求めているが、未だ真魚の二つの孔は細かく身震いを見せている。

 内側から零れ落ちる感覚が、股を濡らして一瞬で消える熱が、自分の秘部をなぞる。アフターで穏やかに余韻に浸れるのは、やはり大事だ。さすがに意識を落とせば、楽しむ所ではない。

 ずっと自分の体重を支え続けた青年の体に、真魚は余さず精だらけの幼い胸と肢体を擦り付ける。まるでペットが擦り付け、言葉もなく愛を示すようだ。そんな感想が見る者達に浮かぶも、それにしては余りに光景は淫らに過ぎた。

 

「……あぁー……ンッ、ふ。……ちょっと、つかれた」

「……”ちょっと”ですか」

「良くわかった。お前は子供ではなく、女(おとな)だ」

「ん?いまさら、何いってるの?こんなトコにオトナ以外いるとおもうのー?」

「…………それも、そうだな」

 

 ふくしのだいがく?に通ってるんですけどー。真魚が背へと飛ばしてくるそんな妄言に壮年は付き合わず、淡々と自らの財布からチップを取り出す。そこから、一回り大きい銀の鋳貨が二枚取り出された。

 重銀のチップ――銀より一桁価値が大きい――が、あちこちへ精が飛び散ってチップすらも汚く変えている、真魚のテーブルのケースへと二度収められる。おや、と真魚が小首を傾げた。

 

「いいの?おこづかいには、ちょっとおおくない?」

「構わん、こちらから提案した行為だ。行為には、信用と確かな価値が要る」

「ふーん。まぁ、なんでもいいや」

「それに、オトナなのだろう?それなら、構うまい」

「……そだねー。そーだった」

 

 てへ。そんな幻聴すら聞こえる程に白々しく、真魚は自らの頭をこつんと小突く。

 誰かが最後の一口を飲まずに置いていったグラスを、小さな手が伸びて口へと持っていく。

 酒。オトナの味。流した途端酷く鼻裏を突き、口を刺激し、喉を焼いていく。さすがに少し、苦悶の呟きが漏れた。

 水分補給には不向きだなぁ。ひとつ学習し、素直にお冷をピッチャーで置いてもらう事を考える。次に黒服の人が通りかかった時でいいかと、一先ず失った水分については後回しにした。

 

「――さて、と。ンッ、ふぅっ。……もっと、ほしい、なぁ……?」

 

 片膝を立て、ソファーに座る。肉裂から漏れ出す精を掌で受け止め、それを口元へ運ぶ。

 音を立てて啜り、その姿を待っていた男達、通路で足を止める男へと見せつける。

 もう一度、行きたい。その欲の為に、偽りの無い真実(すがた)を、魅せつける。

 ここに、幼子(コドモ)など居ない。居るわけが無かった。

 

  ◆  ◆  ◆

 

  ◇  ◇  ◇

 

「――終了時間です。皆様、”交流会”お疲れ様でした」

 

 ラウンジには既に男の姿は無い。全ての客は、此処から居なくなっている。執事がチェックの代わりに出口にて挨拶で見送り終えていた。

 中央のステージから、執事は拡声した言葉だけを飛ばす。返事は必要無い。どうせ、今此処にあるのは疲れ切り気絶した女達の肢体、ケースの内で横に積まれたチップ、そして充満した性の香りだけだ。

 故に、多くの言葉は必要としない。どうせ自分が言わずとも、目が覚めた時に静まり返ったラウンジを見れば誰もが終止を悟る。一言だけ、形だけの労いを飛ばして執事はステージを降りる。

 

「……はぁ……。やれやれ、もう少し加減を頂きたいものです」

 

 今夜も、地獄だった。男達にとっては酒池肉林の夢の具現だが、それを身を犠牲にして付き合わされる女達と、後始末するスタッフにとっては地獄そのものでしかない。

 少し歩けば、腰だけを震わせて気絶する女、蕩けた顔のまま暗い瞳を開いて意識を落とす女――欲望に汚れ、汚された者ばかり。集団レイプの現場と何が違うか、わからない。

 美人を組み伏せて嬲る事に躍起になり、その結果がこれだ。裸の美女に目をやっても――最初こそ流石に煽られるものはあったが――、興奮どころか虚しさしか浮かばない。

 再び、溜息が漏れる。今日も同じだ。誰も、自ら部屋へ戻ることは出来ない。ここで寝たまま、陸の到着までを過ごすだけ――

 

「……っふー。あ、執事さーん。おかわりー」

 

 ――のハズが、軽い声が執事にかかる。女の声。涸れながらも、幼さを残した声。

 振り向けば、そこから一際強い臭いが漂い鼻につく。目の前にはあらゆる汁が床・机・長椅子・チップケースに飛び散り、流され忘れた便所の様に汚れ散らされている。

 その最奥、ソファーの真ん中。胸も秘部もタイツも殆どが破れ落ち、髪から足先まで全てが果てて乾いた欲望を塗りたくられ、しかし眼だけは白に染まっていない。

 そんな少女が、そこにいた。

 

「お冷、もうなくなっちゃって。途中、こぼれちゃったから」

 

 間違いなく、今回において最年少の従業員の少女だった。提出された書類に二十歳と悪びれもなく書き、ルビに”ちょめちょめさい”と添えたとんでもない変わり種。

 交流会の最中にも、一度自分に手助け(オプション)を求め、自ら衣服を裂いたのは覚えている。

 未だ幼さを色濃く残した娘が、精液で染められ汁気を吸い取った、汚臭を放つソファーに悠々と座って、中身のないグラスを持って腕を上げている。

 

「……意識が、あったのですね……」

「ん、さすがにさっきまで寝てたよ。疲れちゃったし」

 

 そんな事を言いながらも眉一つ動かさず、少女はピッチャーを傾け、僅かに残った中身を全てグラスに流し込んでいく。

 一瞬、そこで目を疑った。少女が注ぐグラスには、白い塊が混入していた。凝(・)固(・)し(・)た(・)精(・)だ。それに一切の嫌悪を顔へ浮かべる事もなく、ぐびりと喉で音を立てて飲み込んだ。

 

「……それ、は?」

「ん。”おみずちょうだい”っておねだりしたら、ピッチャーに射精(だ)されちゃって。まぁ最終的にはメンドーだからおくちに直接だして、って流れにしたんだけど……あー、でもさすがにせーえきカクテルはキいたね、まだくらくらする」

「…………」

 

 呆然とする。自分が何度か巡回した時も、凄まじい犯され方をしていた。が、それらの行為を受けていながら、今では平然となんでもないかのように、淫行の感想を述べ続けている。

 浮いていた。平然と精液入りの温い水を飲み干し、肌の表面で乾き切った精を虫の様に手で払い、無表情で世間話のように蹂躙された事を呟きながら、表情には虚無を湛える。

 ”交流会”直後に意識のある女も何人かは記憶に残っている。しかし、そのどれもから浮いていた。

 ヒ(・)ト(・)と(・)は(・)思(・)え(・)な(・)い(・)ほどだった。錯覚が、言葉と身体の制御を失わせた。

 

「ねー、きーてるー?お水、ほしいなぁ。……あ、トイレいってくるからこのテーブルに置いといて、ね?」

「……わかり、ました」

 

 平然と、すたすたと。いや、足取りは震えているし、時折転びそうにもなっている。

 それでも真魚は何事も無かったかのように立ち上がり、花摘みへ向かっていった。誰もが正気を失った暗闇を独り、歩いていく。誰もが苦しみを癒す為に一時眠っているにも関わらず、自分だけは違うとばかりに。

 離れた小さな身体が、薄暗闇のベールの向こう側の夜色に消える。外は明け方が近いが、この場所に朝も太陽も無い。少し先は、未だ夜だ。

 

「――……ふふっ、ふっ。たのし、かったぁ……」

 

 無邪気な独笑が、遠い其処から聴こえた気がした。

 




三人娘のバニックス編でした。
総文章は五話分のボリューム・疲れは三倍界王拳です。や、やっぱカラダにムリがあるみてえだッ
しかしその分、やりたい放題できました。それぞれが堕ち切るかどうかは、想像の余地です。
でも真魚ちゃんだけはほぼ平常運転。伊達にSAN値0(あの世)は見てないよ。

もはやここで予告しても書きたいものが浮かんだらそっちを優先しちゃうので、次のしっかりとした予定はありません。いつもの。
「それ本当に面白いか?」みたいなアイデアはいくつかありますが、三人娘はもうハラァいっぱい書いちゃったので次どうするか  ……なやめる!

当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?

  • 蓮ちゃん
  • ユーリヤさん
  • 真魚ちゃん
  • 蜜柑さん
  • 夢ちゃん
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