只の一晩を
「お久しぶりです、こうして顔を合わせるのは何時ぶりでしたかー♪」
「……四か、五だな」
「あら、週ですか、月ですか?」
「”年”だ。……相も変わらずか、貴方は」
あらあら。白々しく呟きながら、長いコートで首から足先までその身の大半を覆い隠した、蜂蜜を透かした色のストレートな髪をふわりと浮かせ、女が笑いかける。
曰く付き専門の”蒐集家”にして、魔術・占術に長けた妙齢の――しかし、その相貌は四年より前の記憶から何一つ変わっていなかった――美女。それが目の前の、ルージュという女だった。
「二人きりで出会うから、といっても随分と良い部屋ですねぇ。私としては、品物が受け取れれば何処でも構わないのですがー」
「
「中々ジョークが上手くなりましたねー、道端で貴方から強盗出来る人間がどれだけいると?」
先に部屋で待っていた男は、既に外套をハンガーにかけ終えてルームサービスを頼み、ワイン瓶と軽食を取りながらルージュの到着を待っていた。
唐館にある高級ホテル、その
数人のみが贅沢という夢の中に旅立つ様に設計された、この部屋の広さは住居一つに匹敵する程だ。広々としながらも、内装は一点の無駄も無く構成されている。
埃という侵入者すら排除された足の長いカーペット、片隅を大きく専有する広いベッド、一瞬として不自由を感じさせないキッチンや冷蔵庫などの家具設備、透明な壁の向こうに見える大型の多目的浴室。
ルージュもあちこちに目を巡らせては、自分に縁が薄い場所で珍しいのか、「あらあら」と呟きを何度も漏らしている。
「……”
「随分と慎重になったようで。昔そちらは、”どんな魔術師であろうと、ヒトはヒトだ”と零していた記憶がありますがー?」
「何年も前の話だ。私も、相当によく世間を知ったよ。……嫌でも、な」
右下腹部の古傷が、話と共に男の幻痛を呼び起こす。男は優れた魔術師であり、その力と狂気に溺れぬ理性を保ち続け、
が、世界は広い。
そして、今もなお生きている。生きて、この場に辿り着いた。
「それに、こんな匂いの強い物を道端で出せるものか。……嗅ぎ分けられれば、”狗”に襲われる。それだけならまだしも、”王”は御免だ」
「――へえ。それが、そうですか」
懐から掌大の円状のモノが、包帯にグルグルと巻かれて――帯の端まで血で文字を刻むことで
男は魔術師であり、そして世界の様々な場所を巡って
この包帯の中身もその一つであり、男が唐館市に寄ったのは蒐集家として幾度も連絡を取り合っているルージュに依頼された品を直接渡す為だ。
ただ、それだけの為に。その為だけに、最高峰の部屋を借りた。
ルージュが男より見て左側、テーブルに置いたモノを触れられる場所のソファーへ、入口近くからそのまま歩み寄ってきて腰掛ける。
……コートぐらい脱げばいいと思うのだが、それ程にこれを待ったという事だろう。
「ほほー、なるほどー。これは……開けても?」
「構わん。”目眩まし”の一つで、本体は今も眠ったままだ。駆動には魔力が足らんし、そもそもこのレベルの品のメンテナンスは私の範疇外だ」
「”
「貴方の前でコレクターを名乗れる者が居るか」
「結構いますよー♪駅前で歩けば、チラシとか配ってますしー」
「…………本当に変わっていないな」
ルージュはその掌に収まるミイラの様なモノを手に持ち、重さを確かめ、帯に書かれた文字を見渡す。
ふむふむ、成程、興味深いですね。あれこれと呟きながら、ルージュは男が持ってきたそれを少しずつ様々な
気付けばどこまでもわかりやすく笑いを浮かべて見せていたルージュの顔から、両の眼だけが真っ直ぐに戻り、手の内の正体を見つめ捉えている。
それこそが蒐集家の眼だった。自分の眼はこうにまではなれないと感じる程に、様々な知識と知恵、現実と虚実、真と贋。それら全てを見続ける事だけに、命を費やしてきた、そんな瞳。
気付けば包帯を全て取り外し、その中身のあちこちに触っている。ルージュの手の内に在るのは、ある一つのアンティークな懐中時計だった。
「成程。確かに本物です。流石、見事なものですねー」
「いくらか当てがあったからな。最も安全な所から当たった」
「危険手当は要りますか?」
「いらん。言われた通りのモノを、言われた通りに渡すだけだ」
「――ほうほう……これは……」
「……勝手に話を切り上げるな……」
『ド・マリニーの懐中時計』。この魔術品の名前。
この魔術品の”大本”は掛け時計であり、大時計だ。その効力は、”時を超える”という物。
時は現在・過去・未来、あらゆる場所に繋がる
しかし、この懐中時計にそれほどの効果はない。せいぜい、
「……ありがとうございますー♪おかげさまで、助かりますよ」
「いつから海外旅行に出かける趣味が出来たんだ。悪いがそれは片道だ、不法入国は後々面倒なことになるぞ」
「あら、随分とお優しい事を。数年で随分揉まれたようで」
「はぐらかすな。……そんなモノを、貴方が必要とする筈もあるまい」
ルージュは先程までの笑顔に戻り、開いた懐中時計の蓋を閉じて軽く包帯で包む。
テーブルに置いてこちらに顔を向けているが、その細まった笑顔からは何一つ真意が見えない。そも、ルージュはこれを必要とする事などありえない人間だ。
この魔術品は化物の集う”異界”でその力を初めて発揮する。現実との位相のズレと、満ちた魔力を引き金に、この懐中時計は非人為的に時を刻み始める。
そういった場所にこそ魔術品が落ちている――という事は、実はそれ程ない。果てた魔術師が落として、という事はあり得るが、それ以上に異界は化物の巣そのものであり、一の魔術品の代わりに九十九の怪生に追われる羽目になる。
”蒐集家”として手元に置いておきたかった、というには少々用途が
「まぁ、お客様に頼まれましてねー。かわいらしいお得意様で、しかもお金も十分に積んで頂きましたから。それなら少しばかりの手助けを、と」
「私が出会いかねない魔術師では無いだろうな、さすがに敵に塩を送るのは癪だぞ」
「ただの取引でそこまで話す義理はありませんが……まぁ、貴方であれば、お会いすることは無い、ですかねー?先のことに、わかる事などありませんがー♪」
「占術師がそれを言うか」
「だから、言うんですよ?」
「…………」
先程まで魔術品を確かめていた真剣さを全て内側へしまい、再び作られた笑顔で――一見自然だが、彼女の本性を知る者にはどこまでも”作られただけ”だ――ルージュは微笑みかけてくる。
そのくせ、自身の表側の職業を否定するような発言をしてくる。煙に巻く様な言い方だ。そしてそのくせ、おそらくは真実を語っている。
「おそらく会うことはない」。ルージュの笑顔からは真も偽も推し量ることは出来ない、しかし知る人柄だけで推察し、それが真実であると考える。
腹芸においてはこの女は男の知る中で最も長けている。故に読もうとするより、感じたままで判断する方が正答率は上がる。それが五分であれば、まだ良い方だ。
「……それで。金銭は確かに振り込みましたが。”言われた通り渡す”、でしたね?」
「ああ」
受け渡しは成された――いや、成される直前だ。未だ、取引は終わっていない。
男は懐中時計を渡す際、条件を二つ付けた。”直接こちらが指定する場所で受け渡しを行う”、そして”そこで一つこちらの提案を聞く”事。
本筋は既に振り込まれた金銭とこの懐中時計の受け渡しで終了している。故に、二つ目の条件という付属の事象が成される事で、二人の今回の取引は完全に済まされる。
「”提案”、でしたか。なんでしょうか?」
「危険手当は要らない、と言ったが。半分は嘘だ」
そもそも、男はそれほど金に困っている訳ではない。
懐中時計にしても、確かに手に入れるのにそれなりの苦労と浪費、命の危機はあったが、それは生き延びたことでもはやどうでもいいし、それに見合った報酬も確認済みだ。
だが、どうせなら。一つだけ、金で買えない買い物をしてみたい。
「単刀直入に言おう。そちらの一晩を貰いたい」
「――……」
「当然勘違いはしないだろうが、先んじて言っておく。求めるのは、ただの肉体関係だ。この一晩が終われば、私はそれを忘れよう」
目の前の女の笑顔が、止まる。笑顔のままだが、その笑みが振り撒く印象や気配が、僅かに翳った様な気がした。
しかし、嫌悪の反応は無い。腹芸に長けた向こうは、こちらが顔を隠した所で物事の真贋を見抜く如く嘘を看破するだろう。故に、何一つ嘘は使わない。
「折角こんな辺境の地まで来て、会う機会があったのだ。一度ぐらいはそこでしか得ることの出来ぬ思い出を作りたいというのは、我儘かな」
「……ほー、ほー。なるほどなるほど。どうやら、本当に変わったようで」
口説きながらも、肉欲を見せる訳ではない。性欲など、魔術を始めとした狂気に関わる内に関心を無くし、今では悟りに近い落ち着きが身に付いてしまった。
が、それでも自分は未だヒトだ。眠り、食べ、そして性を求める。それを捨てるのも否定するのも、ましてや恥じることなど無い。
だが、自慰をして吐き出すよりは。浮いた金で顔だけの女を買うよりは。
”男”を使い、見たことのない景色を見たい。
「よろしいんですか?私などで」
「構わん。というよりは、それは私の台詞だな」
「それこそ構いませんよー、知らない仲でもありませんし♪まぁ、こんな関係を迫られるとは思いませんでしたが。奥さんなどは居られないので?」
「繋がりなど
「成程」
快諾される。ほぼ悩むこと無く、世間話の一端という程度の軽さで。
肉体関係を強引に迫られながら、やはり笑顔は絶えていない。まるで変わることのない顔には、真実も虚実も見えず、しかしこちらだけが見透かされている。
恋愛沙汰など御免だ。そんな事よりは、魔術や神秘の未だ見えぬ顔の為にこの人生を使いたい。が、ただ一夜、夢を見るだけならば構うまい。
ルージュが先に席を立とうとするが、その細い手首を軽く掴んで引き止めた。
「その前に、乾杯といこうか。……懐中時計に、ではないな。どうするか」
「ふーむ。……では、そうですね。私達のこれから一晩に、で」
「悪くはないな。”これからに”では無い所が良い」
この様な稼業と世界に居るのだ。お互いにまともな未来などあり得ないし、求めてもいない。
故に、今夜。この一晩だけの為に、杯を交わす。
なんとも刹那的で、贅沢な杯だろうか。たまには、贅沢も良い。
「――我々のこれから、一晩へ」
「かんぱーい♪」
鈴鳴るように二人のグラス同士が小さく弾かれ、瓶より注いだワインを喉に流し込む。
ただ一晩の夢。目覚めれば、此処を発てばそれで終わり。その味をゆっくりと舌に染み込ませ、喉へと流し込んでいく。長い夜に熟成された味が、一時で飲まれる。
良い味だった。誰かと酒を飲むことなど、そうは無い事だった。故に、どんな酒よりも新鮮に感じられた。
「……ぷはー。うーん、なるほどなるほど。悪くありませんねー♪」
「そうやって飲むものでは無いと思うのだが」
ルージュは次から次へとグラスにワインを注いでは、ジュースの様に飲み干していく。味も雰囲気もへったくれもあったものではない。
多少、心配になった。無論ルージュであれば前後不覚になるほどに飲んでしまう、ということは無いだろう。そんな事をしでかす女ではない。
しかし、
「……はぁ。うーん、おいしいですねえ」
「ああ。肴は要――」
「はい?」
ワインを次々に飲んでいくが、それだけでは口が寂しい。自身の感じた事から、冷めてこそいるが味は良い、テーブル上の自分の食事を勧めようとする。
そこに怒りは無い。呆れも、まぁ大した物でも無い。
しかし、男に抱かれる前とは思えない有様だった。
「――……まぁいい。それで、どうする」
「どうする、とは?」
「そこで身体を清めてからか、腹ごなしを終えてからか。悪いが積もる話も無い、私はすぐに始めるつもりだ」
それならば、こちらも向こうの流儀に合わせる。
元より、思い出話に花を咲かせる様な人間でも無い。向こうは付き合ってくれるだろうが、向こうにとっては思い出話も一晩の関係も似たような物なのだ。
それならば、より良い時間を過ごす事を考える。より長く身体を合わせ、よく長く身体を味わう。性急と思われようと、気にする体面など無い。
ルージュはそんな要求にも顔色を変えない。ただ、笑顔のままだ。
「では、今からですね」
「は?」
その瞬間、ルージュの顔が近付き、視界全てが奪われる。
口付けをされていた。ワインの香りが、お互いの口の中で混ざり合う。舌が伸び、こちらからの反応をねだる様に口内をなぞり始める。
そう来るか。それならと、顔以外離れたままのルージュの腕を引いて引き寄せ、背に逆の腕を回して身体全体を抱きとめる。
深く、深く口付けをし続ける。ずっと上がっていた口角は見えないが、合わせていればどうでもいい。瞼は開かれ、吸い込まれそうな真紅の瞳が自分の瞳の色を吸い込み、染まっていた。
そして、そのままずっと。ルージュは男の唇に吸い付き、舌を絡め続ける。一分以上はそうしたのではないかと思った所で、流石に息が欲しくなり、男から口を離した。
「……随分と、せっかちだな」
「いやいや、貴方ほどでは♪それに、求められることなど最近そうはありませんからねー。それならば、良い女としては男を満足させるべきかと」
「”良い女”か、笑わせる」
ルージュの細い腕と手がこちらの首裏で合わさり、未だ顔は近いまま。
お互いの身体は密着しあい、服越しにルージュの柔らかな肢体が感じられる。それだけで、眠っていた男としての機能が活性し、僅かに室温が上がった錯覚を覚える。
ただ身体を合わせ、舌を合わせただけでそうなったのではない。
何が”良い女”だ、やはりこの女の嘘は表面だけではわからない。
「……開けるぞ」
「ええ、どうぞー?」
合わせた身体を少し離し、男がコートに触れやすい程度の距離でルージュは留まる。
上から順番に、締め合わされたルージュの外套のボタンを外していく。膨らんだ胸部に指がかかった時、疑念は確信に変わる。しかしそれも、手を止める理由にはならない。
合わせられた二つの厚手の生地が開かれ、その下は
「…………」
「あら、こういった服装はお好みではありませんか?」
「……服と言うのか、これは?」
それは、下着だった。いや、水着と言っても良いかもしれない。
本来着るべき、肌を覆い隠す布地はコートの下には無かった。胸部は紫を基調とした、僅かに曲線を描く三角形が光沢を放ち、その三つの頂点からは細い檸檬色の糸の様な繋がりが、胸の谷間の上から三角同士へ、背中へ、そして肩にかかっている。
首からはルージュの瞳より尚深く赤い宝石があしらった、金細工のネックレスが胸元へと伸び、服の代わりにその染みの無い肢体に一つの飾りを添えている。
何よりも、局部――股を覆い隠すのも、最低限の面積だけしか隠せていない様な逆三角形の下着だった。V字を描く腰のラインはほぼ表れ、紐だけで表裏を繋げて吊られている。
その上から、ベールの様に透明な薄紫の――いや、薄地の赤が光を透かせているだけかもしれない――細い腰巻きが付けられていた。しかしそれはただ脚の間までの幅しかなく、その下に着る
「――……まさか」
「ええ、
「……そうか」
再び、見通せぬ笑顔の仮面を被られながらそう言われる。
やはりこの女は”良い女”ではない。自分が相手取る魔術師や化物、それもどうあってもこちらの思い通りにならない手合の一つだ。
どういった占いをすれば、こんな状況を予測した上で、こんな格好のまま外を出歩けると言うのか。コートは厚地のものだったが、それでも肌寒い事に変わりはあるまいに。
しかしそれは、一つの事実を意味する。
そうでなければ、このような扇状的な姿で外に出ることなど有り得まい。この状況を予知した上で、最初から受け入れ、そして今自分の手の中にいる。
コートを開いたまま、肌を隠そうともしない。何年も、おそらくは
いくら性欲が薄い男でも、これだけされて黙ってはいられない。
「ベッドへ行くぞ」
「あら、強引。お気に召しませんでしたか?」
「逆だ。すぐに抱く、時間が惜しい」
「あらあら。そんなに焦ることもないでしょうに、夜は長いのですから」
「夜の長さなど知らん。目の前にそんなものを用意されて”待て”が出来るほど、私は人間が出来ていない」
「あらあら――んっ、ふ」
ソファーから立ち上がり、右手でルージュの右腕を引く。ルージュの背を自分の胸で受け、余った左腕を脇下から豊満な胸部へと回し、鷲掴んだ。
男の掌は荒く、そして強く胸の形を変える。紫の三角では到底覆い切れていない双丘の片割れを、下から持ち上げて柔らかさを確かめる。
そんな欲情だけの手付きで、隅のベッドへとエスコートしていく。男としては最低のリードだろう。胸を揉み込まれながらもルージュは素直に男の足取りに合わせ、歩いていく。
それが、この一晩の関係そのものを表している。
「んっ……ふふっ、どーですかー♪」
「良いな。やはり、良い。かつては犯してやりたいと思っていた」
「今は違うんですか?」
「ああ。”犯す”のではなく、”味わいたく”なった」
「同じではー?」
「違うな。全然違う」
軽口を叩き合い、ベッドの前へ到着する。
あえて両手を離し、男はルージュに視線を送る。この視線がどういうものか、何を求めているか。目の前の蒐集家の眼を試す。
ルージュは一目こちらを見た後にコートの袖から腕を抜く。ルージュの肌を覆う、唯一と言っていい衣服が床へ落ち、その布地の厚みで積み上がる。
次にベッドへ膝をかけ、四つん這いの姿勢になって中央へとゆっくり進んでいく。背後から男は、揺れる尻と両胸を見る。どうすればこの美貌とスタイルが共存し、それを何年も変わらず維持出来るのか。そんな場に合わない、あまりにズレた思考すら抱く。
いちいち興奮するまでも無い。それを一晩好きに出来るのは、自分だけなのだから。
「……さて。では、愛しあいますかー♪」
「愛などお互い柄でも無かろう。ただ、性器を合わせるだけだ」
「あー、そういう事言うとモテませんよー?占い師の言うことですよ、”ムードを大切にしない男はモテません”――はい、予知です♪」
「知らん。どうでもいい」
ベッドの中央より少し奥側、半分を過ぎた所でルージュが背をベッドで預け、鎖骨のあたりに両掌を乗せて身体を上へ向けながら、顔だけを男へ向ける。
格好・位置・晒した肌が、今から男に抱かれるという事を口より語っている。故に、余計な情に濡れた言葉はどちらもいらなかった。
一夜、ただお互いの身体を合わせ、明ければ再び元通り。この行為は、もともと”提案”――即ち、任意の行いに過ぎない。
身を売った訳でも、物品を盾に迫っている訳でもない。正直な所、別にルージュを抱けずとも男は良かった。その時はその時だ、ルージュとの関係に変わる事は無い。
だから、この行いは。ただの知り合い同士が一晩同じ夢を共有する、ただそれだけに過ぎない。
「私が抱いて、貴方が抱かれる。それだけだ」
「……やれやれ。直截なのも考えものですね」
「嘘で塗り固めた愛が欲しいなら、今からでも当方は用意するが?」
「うーん、珍しい物ですし興味はありますけどー……要りませんね、そんなの」
「だろうな。だから、これでいい」
上の服を全て脱ぎ、部屋の壁へ放る。もはやこの夜において、必要となることはない。
ルージュの手前、意図的に開けられたスペースまで膝をついて近寄り、胸の上に置かれただけの左手に男は自らの右手を絡め、指の間に指を差し込んで強く握る。
部屋のベッドの左側にルージュが、右側に男が居る。半々だ。これから肌をどれだけ合わせようと、部屋の半々に居る男と女が一つの繋がりだけで過ごす、ただそれだけの縮図は一晩変わることなどない。
それで良い。情愛の繋がりなど、お互い求めはしない。
だが、刺激があるからこそ命は生きる事が出来る。刺激の無い生など、植物となんら変わりはしない。それが互いに解っているから、こんな時間を過ごすのだ。
「あら。……”恋人”らしく振る舞うべきですか、一晩貰われちゃいましたし」
「好きにしろ。私が勝手に貰って、そっちが勝手に貰われるだけだ。どう過ごすかは、お互い自由にすればいい」
「ううん、枯れていますねえ。では、私が水をかけてあげましょー♪」
ルージュが体を起こして右手が伸び、男の左手を同じく指を絡めて掴む。
そして、隣の男に体を寄せ、押し倒しながらキスをした。
「ン、っふぅ……んっ、ふっ、んっ」
「……っふ……む……」
ソファーでのキスは、突発に情熱的だった。
ベッドでのキスは、緩慢で献身的だった。
裸の胸と一枚のみの胸を合わせながら、男はベッドとルージュの肢体に挟まれて、上からは唇が降って来る。最初のみ舌先を合わせ、あとはただ唇を合わせるだけの短いものを何度も、何度となく繰り返す。
親愛を示すキス。しかし、それも形だけだ。この一晩に、確かめる真偽はもはや無い。たとえそれが真だろうと偽だろうと、お互い興味は無い。
どうせなら楽しもう。その程度の意図だと推察する。
「――ん、はぁ。……それじゃあ一晩、私の体。貰ってくださいね♪」
口が僅かに離れ、再び見飽きたその仮面をルージュが被り。
また一つ、夢のキスをした。
いぶすたがお好き?結構、ではますます気になりますよ
さあさどうぞ、ニューヒロインです(いぶすたを開いてRougeへ移動する)
美人でしょう?んあぁ仰らないで。いいキャラでしょう、余裕のエロさだデザインが違いますよ
当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?
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蓮ちゃん
-
ユーリヤさん
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真魚ちゃん
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蜜柑さん
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夢ちゃん