「――あッ!あ、はッ!そこっ、おッ!!」
「グ――ち、いぃ……!」
部屋の角、そこだけが明るく室内を照らす硝子の牢から、喘ぎと汁が混じり合う音を扉の外の廊下にまで響かせるつもりだ、という風に。
この場に居る者――二人だけだが、宵闇すらも外から見つめている錯覚を覚えた――に何一つ隠す姿も無いと、一対の男女が互いの背へ両腕を回し、座りながら一つになっていた。
シャワーヘッドに繋がれたビニールの管が僅かに揺れる。合わせた肌が床を介して微細な揺れを伝え、動いたその頭の先から未だ流れる温水の帯が振り撒かれる。互いの身体が、また濡れる。
「アッ、はッ……!すご、いっ……これ、これっ……!」
「押し付け、てッ……!」
綺麗にした身体を、再び擦り付け。それ以上に引き締まる局部の感触に思わず声が漏れる。
男の脚は円い
もはやルージュの表情は何一つ隠されていない。身体が返す答えをそのまま表して、かつての万人に向けられる笑顔は乱れて独りの喜びを見せている。
洗い流した筈の汗が、再び加熱した身体を抑えようと浮き上がっている。お互いだった。お互いに綺麗にした身体を、二人で汚して溶かして、そして交ざり合う。
「ん、ふぅぅうッ!ンッ、ぁあッ!」
「――ッ!!」
放ち、締められる。互いに腕の間にある胴と胸を限界まで寄せ、硬さと柔らかさが擦れあって、それぞれがそれぞれの感触を教え合う。
それでも、お互いに欲望は収まらない。収められる鞘など全て棄てた。
身体だけが、未だ熱い。
「ァ、っは――!……ん、ふふっ。良かったですか?」
「違うな、”良い”だ。先程も、今も、そしてこれからもだ」
「ひ、ぁッ!……んぅ……まだ、お若いようで」
「それこそお互い様だな」
男の間近で微笑みを落とされ、そのまま突き出た唇がゆっくりと寄ってくる。
だが、口を犯すのは飽きた。ルージュが顔を近付けた所で首だけを回し、左頬を代わりに差し出してやる。しかしルージュは”それはそれで”とばかりに、今度は頬や首筋に吸い付いてきた。
その間に男が近くのシャワーヘッドに繋がるゴム管を横へ捻り、浴室に降り注いでいたままの雨を自分達にしっかりと向ける。熱い雨が、それ以上に熱い身体を濡らして温めていく。
意地悪。小さく耳元で呟かれ、ルージュが合わせた腰をゆっくりと離した。
「ふぁっ――あは、あんなに出したのに……」
「そちらもあれだけ垂れ流しておきながら、まだまだ余裕たっぷりだろう」
「そうですか?ふふっ、そうかもしれません、ね」
最初にベッドで身体を合わせた時は派手に体を震わせていた。しかしルージュも今の感覚に慣れてきたのか、顔を合わせて座る男を抱き締めての今し方では、二度
”身体は正直”だ。仮に仙人程の精神で理性を保っていても、薬が身体を別の肉体へと変貌させてしまっている。この薬は男の調薬したオリジナルであり、ルージュにしても効力に覚えはないようだった。
が、それも回数を重ねれば慣れたという事だろう。奥へ一差しするだけで瞬時に達していたルージュの身体は、先程よりも遥かに保つ様になっており、理性もトんでいない。
「あぁ……こぼれちゃいますね、もったいない」
そのまま立ち上がったルージュの内腿を白い濃液が流れ出す。それを両手で受け止め、あろうことか彼女は掬い上げて自らの口へと持っていき、全て飲んでいく。
男の作った毒は何もただの欲求の処理だけに使われるものでもない。性的感情・感覚は理性よりも命に近い事柄で、即ち本能や狂気、魔力といった分野に深い関わりがある。
本能に近しい感情の発露と発現、命同士の繋がり、生成と死滅。それらは言うならば、個人間における儀式的な側面がある。
故にそれを補助する為や、理性を狂気へ落とす為、より深く”命”に近付く為に、こういった薬品は数多く出回り、依存させる事で狂気の母体を増やし、
それ自体が生物的に抗い辛い行為である事を踏まえ、男は好んでそういった事はしない。しかし、手っ取り早く魔力を補完したり、魔術の素養のある者から吸い上げる際には有効な手段である事も知っている。
「ふん。そんなモノ、いくらでも代わりはあるだろうに」
「口説いてきた割にはドライで、激しさの割にはクールですねー。せっかく大事に飲んでるんですから、そこは男としては喉を鳴らして飛びかかる所ですよー?」
「見え見えの鋼線を敷いて何をほざくか。逆に萎えるというモノだ」
「そうには見えませんけどー?ふふっ」
「頭と身体を切り離す事には慣れている。お互い、な」
股より落ちる
強壮された男の精は確かに多くの魔力を宿してはいる。が、ルージュにとってはそれ程の価値がある様な量では無い筈だ。元々この女は自ら魔力を費やして何かをするという事を滅多に見せない。
ゆえに、精を飲み干すのはただの
食えないとわかっていて貪ると決めたのも、また自分だが。男もまた、立ち上がった。
「……そこの硝子に胸を付けろ。後ろからするぞ」
「はいはーい♪」
大したインターバルを設ける理由も無い。次を提示し、そして了承が交わされる。
ルージュが透明な硝子張りの壁面に自らの両胸を押し当て、脇下から余剰を覗かせる。両腕は同様に壁に添えた頭の左右につけ、腰だけをこちらへ向けて突き出してくる。
そこから右手を壁より離し、指を秘部にかける。尻ごと閉じ切っていない割れ目を大きく横へ引き、そしてその赤い視線を肩越しに男へと飛ばしながら、再び雌の顔を見せた。
「……シて……?」
「ああ」
提示と了承。身体を重ねるごとに少しずつ、この二つから言葉が抜け落ちていっている。
突き出た尻に未だ衰えを知らぬ肉棒を当てて擦る。早く挿れろという内の声を一時殺し、壁に張り付いたルージュの細い背中を、自らの身体で強く抑えて覆い尽くす。
硝子越しに、暗い室内を見る。真正面にあった姿見に、磔になったルージュの身体が映り込んでいた。
「――フッ!」
「ぁ、んゥゥ、うッ!!」
理性の滾りを力に込めて、奥まで貫く。先程はこれだけで身体の制御を手放していたルージュも、今ではせいぜい強く全体を締め上げ、腰から下を震わせる
まだ達していないのならば、そうしてやる。挿入から間を置かず、締りも無視して打ち付け始める。
僅かに垂れ下がった深紅が、自分を見ていた。
「あァッ、ンッンッ!ふ、ぁ、あッ!は、やい……ぃっ!」
「遅くするか」
「やっ、やッ、あッ、あ゛ッ」
ルージュの身体を抑え込んだ胸に伝わる振動は、抽送だけでなくルージュ自身のものも含まれている。
熱い硝子とサンドイッチにしながら、ただひたすらに荒々しく腰を振る。今更小手先の技術など、まるで興奮が止むことを知らない膣と棒にとってはもはや意味を成さないし、要らないものだ。
さらに早く、強く打ち込む。遅くする必要もない。吸い付く入口と奥、絡んで離したがらない襞の壁を、ただ蹂躙する。征服する。犯す。犯す。
上で余裕を見せても、下は身体を数回重ねるだけで限界に近いほど昂ってしまう。お互いだ。お互いに、身体だけが独立して貪り合っていた。
「あッ、ハッ、ぁ゛ッ――!これッ、ここ、ココッ!」
壁と男に圧し潰されながら後ろから犯されているルージュは、逃れようという意識を見せない。
むしろ、その形の良い臀部を腰に押し付け、自らの腰をくねらせてより良く感じられる場所を探っている。肉棒が挿されるタイミングで腰を突き出し、深くを自ら差し出している。
たまらなく、男を煽る行為だった。一瞬で限界寸前まで互いに追い詰められながら、一瞬たりとも止まること無く絶頂を目指す。それも自分自身の快楽、ただそれだけの為だった。
頭は冴えたまま、色を愉しむ。そこに我慢も躊躇も、必要な時は無い。
「
「お゛ッ――あ、ふぅァ、ぁあぁあッ!!」
暴発に近い、いや事実暴発と言えるほどに突発的な射精が始まる。せめて奥でと、直前に大きく前へストロークさせて最奥で欲望を放った。
ルージュも全身を震わせ、膣内を縮めて全身が固まる。どちらが先かもわからない。そんな事はどうでもいい。
ただただ、異性という名の
「ぁッ、あッ、あ゛ァッ!ん、ンンッ!!」
「……く、はぁ……はぁっ」
そのまま震える背中を胸板を張って押してやれば、ルージュの胸が壁に摺られて再び膣が縮む。それだけでイったらしい。どうせならと、性器を合わせたまま腰も尻を持ち上げ、揺らしてやる。
握られるよりも強く、しかし柔らかく絡んでくるルージュ自身に、精が産まれた瞬間吐き出された。
ああ。やはり、良い女だ。
「……三度、か。どうした、まだ慣れが足らんか?」
「ッハァーッ、ハァーッ。……もーっ、あんまりいじめないでくださいよ」
大きく吐息を漏らしてすぐ、再び微笑みを作って肩越しにルージュが顔が覗かせる。
その顔は既に、仮面の笑顔では無かった。その薄く口元を曲げて瞳を見せる笑いがまた別の仮面にしても、最もルージュが使っているだろう表情を削ぎ落としたというだけで十分な景色と言えよう。
それに、絶頂している時の顔は硝子の向こう側で丸見えだった。身体を何度か合わせ、ようやく少しなりとも素に近い顔を知った。そう、近いだけ。
これは一つの夢の中でしかない。故にどれだけ真に迫ろうと、それが
「あー、いたた。……んぅっ、ンッ、ンッ……」
「そんなモノを飲んで見せた所で、これ以上は興奮せんぞ」
「ほーんとわかってないですねー。わかってないですよー♪」
再び作り笑いをルージュが見せながら、股から落ちる精を口に運んでいく。
それ自体は十分にそそる景色ではあったが、二度目ともなれば飽きるし、そもそも誘惑などせずとも欲情は勝手に起ち上がる。それだけの薬を叩き込んだのだ。
故に、そんな無駄な事を何故ルージュが見せ続けるのかわからない。一晩だけのサービス精神、といった所か。
「あー、さすがに出てきませんね……面倒ですし、浸かって
「そうだな。そこで突っ込んで掻き出してやれば多少はマシだ。後ろからでいいか」
「……あのー、デリカシーとかムードとかわかります?」
「要るのか?」
「……私、ふかーく傷付きました。どうすればいいかわかります?」
「そろそろ激しいのも飽きたな。湯の中でゆっくり味わってみるか」
はぁー。わざとらしいルージュの大きな溜息が、浴場に響く。
どうにもルージュは、男に人らしい付き合い方を求めているらしい。確かにルージュは常に楽しみを求め、長く魔術の世界にいるには少々俗的な振る舞い方を好んでいる。いけ好かないあの笑みなど最たる例だ。
が、男にとってはそれはどうでもいい事だ。ルージュとの交合は確かに激しさに身を任せるだけの価値があるが、そこに浸り続けるつもりも無ければ、そもそもこの女にそれを最初から求めていない。
故に、肉体から理性を乖離させて臨んでいる。快楽は快楽、関係は関係だ。
「そんな事言う人、させてあげませんよー?」
「出来ると思うのか?術士としてはともかく、肉体の差は歴然だ」
「じゃ、やってみてくださいよー。……ゆっくりと、ね」
「ああ」
沸かしたばかりの広い円状の浴槽の湯にルージュが先に脚を入れ、男に背を向ける形で身体を丸める。
両脚は内へ閉じ、膝を立てて踵を引いている。その膝に胸を当て、両腕を膝の上を組んで固めている。少し斜めに身体を傾け、局部だけを隠しながらその柔らかさは隠さない。
なるほど、今度はそういう趣向か。男も浴槽の中へと入り、ルージュの真後ろで座り込む。
「……どれだけ固めようと、持ち上げれば隙だらけだな」
「ひゃんっ。……重いです?」
「知らん」
「軽いって言うトコです」
「興味がない」
未だ背を向けたまま身体を三角に詰めて座り続けるルージュを、男が下から持ち上げて自らの腰に乗せる。
ルージュはそれでも一切体勢を変えない。薄められた深紅と笑みだけを見せる。女を啼かせるだけなら尻を貫いてもいいが、男は膣の感触の方が好きだし、ルージュの内側の抵抗も未だ飽きは来ていない。
まぁ、後から一度ぐらいはしておくか。その程度に考え、自身の尖端で閉じたルージュの股座を探らせる。
胸の中でルージュが僅かに身動ぎするも、逃げも制止もしてこない。では、そうしよう。
「――さて、のぼせるまで何度、かな」
「……ふふっ、調子に乗ってますねー?今度は負けませんよー♪」
脚に隠された何度と挿れた感触を見つけ、そこへ先だけを沈ませる。
ルージュは妖しく笑い、脚で締め付けられたその内側へと自ら男を誘い込み、腰を下ろした。
◆ ◆ ◆
「まーだ、奥に残ってる感じがあるんですけどー?」
「散々求めたのはどっちだ。風呂だけで二、上がってさらに三。浴室で一晩を終わらせる気かと思ったぞ」
下腹部を直接左手で撫でながら、胸の膨らみによって閉じることが難しいバスローブの前を帯で締めることもせず、窓際の一人用のチェアーに腰掛けてルージュは酒を飲んでいる。
その酒は、男と共に交わしたあのワインだった。”そろそろ慣れましたし”と言いながら、常人なら一杯で前後不覚になる毒を再び喉へ、臓腑へと流し込んでいく。湯より上がって火照った肌は背中から腕だけを白のワッフル生地が隠し、隠すべき局部は男へ見せつけるようにそのまま。
情婦のような艶の付いた笑みでありながら、理性は崩していない。視線が男を射抜く。
「そんな事で終わるほど短くありませんよ。……どーですか、もー一杯?」
「……悪いが挑発には乗らん。身の程は弁えてるつもりだ、そんな勝負であれば負けでいい」
「えー、つまんないですねー。――ッ、あは、ァッ……キ、たぁ……♪」
ほれほれー、と言いながら残ったグラスを見せてくるのを男は断りで応じる。そんな事をせずとも、こちらの欲は未だ衰えを知らない。それだけの物と量であることは、調薬した本人として把握している。
が、ルージュは断られて余ったワインまで飲み干してみせた。常人なら一杯で堕ちている、しかしルージュは飲んだ量を合計すれば十にも届く程だ。人としてまともでいられる限界は既に過ぎ、表情も再び蕩け落ち始めた。
「ンッ、うぅ……あぁ、もう……おくから、ながれてっ……」
どこから水分を調達しているのかと思うほど、触られてもない秘部から湧く愛液に追いやられた精が椅子へ溢れ落ちてくる。
くたりと背を椅子の背へ傾けたルージュの姿を、外の遠い人工の小さな星の光が照らしている。流し目でこちらと目線を合わせてくる。誘われている。言葉にせずとも、明らかな事実。
そんな事は、百も承知の事だ。
「……窓だ、腰を突き出せ」
「ふふっ」
提示。それだけで動く。数歩離れ、男も待たずに体勢を取った。
今度は胸を付けず、腕だけを窓の壁へと付けながら、胴を平行にして尻を突き出している。背は覆われているが、垂れ落ちた乳が揺れ動いて性を誘う。視線が、合う。
疲れ知らずだ。悪い気分ではない。何度抱いても、気持ちも欲情も熱を失わず過熱し続ける。
腰を上げ、ゆっくりと一歩一歩ルージュへ近付く。まるで逃げない。犯されることを待ち、期待の瞳がこちらの足取りと、同じく隠していないこちらの性器を見つめている。
背から脚までを覆う白い生地をめくりあげ、知り尽くしていながら未だ求める肉裂へ尖端を当てる。
「――あぅ、ん……ン、ゥゥッ!?ンッ、く、あ゛んッ!!」
奥まで貫く様に力を入れ、しかしその手前で止める。一瞬膣が困惑したと感じた所で、最奥まで挿れた。
一瞬の緩急、それだけで再びルージュが絶頂を迎える。こんな技で相手を楽しませるつもりは無かった、だが自分の薬を飲んだばかりでこちらに耐え切れるというその思い上がりが気に食わなかった。
震えてこちらの動きを止めようとしてくる内側の抵抗を、存分に味わう。抜き差しは重く、たまに奥へ押し当てた状態で腰の重さを押し付ける。単純な動きではあったが、それですら十分に凶器だった。
「ぁ゛ッ、あぁあッ!すごッ、ぁんッ!!や――は、ふぅぅぁ゛ッ!!」
あらゆる物を知っているだろうルージュの身体も、薬を含めば別の世界に成る。
その喘ぎ声に嘘は、おそらく無いだろう。人以外の存在にすら効き得る毒なのだ、それを異常なまでに飲み干し、さらに注ぎ。ルージュの身体は、とっくに本人のモノでは無くなっている筈だ。
が、男のモノでもない。するつもりもない。
――それでいい。誰のものでもないそれを、好きに犯す。
「ぁ゛ッ、はッ、ぁ――ッ!……ンッ、うぁッ!あぁんッ!」
「――ッ!……ふっ、うッ、フッ」
硝子に見える伏せた赤い顔、一突きごとに跳ねて揺れる胸と尻、そして際限なく締め続ける内側。今更遠慮する必要もなく、精を吐き出し――そのまま奥を何度となく打ちつける。
それでも硬度は衰えない。衰える暇すら、この女の前では勿体無い。それを言葉ではなく行動で示せば、また大きく下の入口は閉じようと、しかし子宮だけは開いて男を迎えてくる。
全てを包み込みながら、しかし拒まれていると錯覚する力で肉棒が周囲から押し潰される。それも無視して、腰を振った。
何度絶頂しただろうか。こちらは二度目の本格的な射精を終えていたが、ルージュの身体はずっと細かい振動と大きな振動にのみ支配されており、もはやどこが頂なのか考えるだけ時間の無駄に思えた。
「……ぁ゛……ッハ、あぁ……んッ」
「言わんことではないな。あまり舐めてくれるなよ、傷付いたらどうする」
「いじめられたの、私でしょう?十人中十人言いますよ、アンケート取ります?」
「なるほど、ではそうするか」
再び軽口が返ってきた所で、ルージュの肩に手をかけて引いて、内股に両腕をかける。
しっかりと腕を内腿に回した状態で、細く柔らかな身体をそのまま持ち上げた。
「ひゃっ!……おおう、男らしいの、ですねぇ」
「今どの辺りに居を構えているのだったか」
「へ?あぁ、街の方なので、あっちかと」
「こっちだな」
男は顔をルージュの背から出し、夜景の中の方角をルージュに聞く。
聞いた方向へと、自分ごとルージュの身体を傾ける。その姿勢のまま、秘部に狙いを定めた。
「――あのー、”アンケート取る”って……」
「この状態であれば、十人ぐらいは覗きが居ても珍しくない。降りた後、存分に聞け」
「さッ、さすがにちょっとそれは――ぁぁアッ!!」
異論は認めず、そのまま挿れる。ルージュの長身の重さが、そのまま深くを貫く。
腿を腕で割れば、ほぼ真横にまで開かれた。繋がっている場所はもはや影ですら隠せていない。さすがにこれには堪えるのか、ルージュが顔を真赤にしてこちらへ首だけを向けている。
「そもそも、貴方はどれだけの人とこうしたのだ?」
「ひッ、ぁんッ!や、ちょ、ぅッ……!こんなときに、なにをっ……!」
「知的好奇心だが」
「ぅっ、フッ、うう゛ッ!ぁ、だめ、これ、ふかッ……ぁ!!」
「まぁ、何でもいいか。どうせ数えてないのだろう」
ルージュの
支えのない状態で男が全部をコントロールする以上、ルージュ側に耐える術は無かった。適度に言葉を投げかけながら、不意を打つように腰を上げ下げし、身体全体を揺らす。
深く咥え込んだまま揺らすだけでも十分な官能になっている。そこへ、こちらを覗けそうな高さのビルや高層住宅を一つ一つ、声に出しながら教えてやる。
それだけでイった。顔を伏せ、しかし膣だけは喜びに打ち震えていた。
「あァッ!はッ、あ゛んっ!ふかッ――あぁぁ゛ッ!!」
「――長くは保たんな、そろそろ出すぞ」
「あ゛ッ、ぁぁっ!わたッ、もうイってッ、ぇぇっ……!いまッ、だされ、ちゃ――ッ!!」
喜びにしか聞こえない抗議に制止する力など無い、それを思い知らせるために再び射精を始める。
案外効くものだな、などと白々しく考えながらも男は産み出した種を全てルージュへと送り込む。その熱にやられた様に、ルージュの身体が弧を描いて男の胸に全てを委ねてきた。
良い気分だった。肉体的にも、精神的にも、少しは珍しいと思える程度には満足していた。
贅沢を、楽しめた。
「ぁーッ!ん゛、ハァアッ!すご、ふかッ――ン゛ッ!」
一度の射精だけで、何度も身体を捩り振って乱れるルージュの姿を見れば、どこかへ失っていた何かを取り戻す感覚があった。
汚し、穢し、嬲り、吐き出し。およそ人と言うにはあまりにも本能的で堕落的な行いが、何よりも人間らしいことのように思えた。
なるほど、確かにこの機能を手放すのは少々勿体無いな。
感慨は、それだけだった。
「……はぁっ、あ゛ッ、ぁっ。……キツいです」
「”キツい”で済むならまだやれるな。次はベッドか、ソファーか、それとも部屋の扉か」
「…………あのー……ホントに、気を失うまでするんです?」
「当然だ。そうでなくてはお互いに終わりなどない」
少し腕を休ませたい、その程度の気持ちで次をするべくベッドへ、繋がったまま進んだ。
下ろしてほしいという無言の抗議の気持ちか、軽い肘打ちを当てられるも抱えた太腿を離すことはしない。かえって、ルージュの身体が揺れて性器同士が擦れ合う。それだけでまた、準備が整い始める。
体の限界まで、その部分は止まらない。ベッドの縁に辿り着き、ルージュをクッションにする様に前へと体を倒れ込ませる。深く刺さって喘ぎが聞こえた瞬間、再び獣欲の体現が最大に戻った。
「ん゛ぅッ。……はぁっ、あ」
「さて、と。ああ、そういえば前や後ろからは散々やったが、横からシていないな。横に倒れろ、そこに突っ込む」
「……サイテーですー。ケモノですー。オオカミですー」
「”バケモノ”でないだけ褒め言葉だな」
そのままもう一度、と思った所でまだやっていない姿勢を思いつく。そしてルージュの身体から離れ、ベッドの中央へ行くように手だけで指示した。
文句は口に出る、しかしそれでもルージュは指示には従う。結局、やるだけやりたいのは熱が未だ引いていないルージュにしても同じだ。反論で止まる程、身体は冷めていない。
中央にまでルージュが這っていき、そこで横に転がりこちらに身体を見せつけてきた。全身には汗が張り付き、湯を先程まで吸った髪もまた汗でまとまって胴や腰、シーツや脚に絡んでいる。
肩を傾けてバスローブから肌蹴させ、片方の袖を腕の半ばまで抜く。隠せない胸の膨らみが重力に従い、横へ流れた片側がシーツに触れて。
再び、妖しく笑いかけてくる。どうするんだ、どうするつもりなのかと。
期待、している。
「――あとどれだけ保つかな」
「ふふっ、何が、ですか?」
「言ったな」
あれだけ犯されておきながら、また余裕を取り戻したルージュからの挑発にあえて乗る。
薬を受けた感覚には慣れている。いかにルージュが強固な精神を持っていようと、いつまでも狂い乱れられる訳もない。
が、こちらも無限に精が出る訳でも無い。お互い、どこかで限界が来る筈だ。
「するぞ」
「ええ」
もはや、提示ですらない。ただの通告、返事。
それをきっかけに、横になったルージュが自ら浮かせた脚を受け取り、その間に腰を挿れる。
もはや、何も必要としていなかった。ただ、衝動に従った。
「あぁぁッ!ッン゛――ふぅ、ぅううっ!!」
側面を削る。削るように尖端で抉って、喘がせる。
角度を変えた事でルージュは敏感に反応を返し、再び新鮮な味を肉棒へ教えてくる。
もっとだ。もっと。この女を快楽で鳴かせる。その事が自分の快楽になる。
陰核を指で摘み、弾く。左の指の腹で潰しながら、肉棒をねじ込み続ける。
「あ゛――ッ、は、ァァ゛ッ!ン゛、ぁッ!?ぅ、ぁ、あッ――」
それだけで余裕は全て掻き消え、再びルージュが喘ぎながら膣内を何処よりもうねらせ男を乞いだす。
その声と表情、如実に感じる感触に僅かに口角を上げ、腰を振った。
◆ ◆ ◆
――どれだけの時間が経ったか、何度そうしたか解らない。
我武者羅に腰を振った。精を腹にぶち撒け、白い背に擦り付け、喉を犯し、尻も犯した。
ベッドもまた、まともであれば使い物にならないと言える程に汚し切った。既に濡れていない場所を探すの方が難しい。部屋の扉の前にも、白い水溜りが出来ている。
ソファーも、浴室も、脱衣場も、壁も。どこもかしこも、そんなものだった。
「あッ、あ゛ッ、はぁッ!ふ、ぁンッ!!」
それでも尚、腰を振っている。男は背に粘ついた感触と乾きつつある精を受け、腰の上に揺れ動くルージュを乗せていた。
男だけが寝ながら、ルージュは体を起こしながら股座に座り、そしてお互い繋がっている。
肉が打ち付けられ、揺れ、叩く音が鳴る。喘ぎと肉と水の音、ただそれだけが部屋の全て。
今は
猿でもこれ程酷くはないだろうという程、交わり続けた。本当に時間感覚がおかしくなるほど長く、そして濃い時間をまだ送り続けている。
「ぅ、ア、ぁ――ん゛ンぅうぅッ!!」
「くお、ォッ……!!」
ルージュの高く上がった臀部が、男のモノの根本に至るまで振り下ろされる。
重力を得た縦のストロークが最奥で弾け、合わせて絶頂を迎える。ルージュが天を向いて、身体を上下に揺さぶりながら腰が痙攣させた。
互いにタイミングを合わせる、という事を気にしてやっている訳ではない。ただ、やっている内に合わせたほうが気持ちが良い事に気付いたのと、疲れで堪えが効かなくなってきた事でそれぞれの間隔が短くなって、合わせやすくなっていた。
何十?何百?回数などもはやわからない、そして数える必要もなかった。
――それでも尚。この夜は続いている。気をやるには、まだ僅かに足りない。
こんな事もあろうかと、水分補給用に冷蔵庫にも多くの酒と飲み物を用意させておいた。その殆どは飲み干され、時にはさらに薬を入れて杯を交わした。狂気の沙汰だった。
「……ぁ、はぁぁっ……!んっ、ぅう……イイ、ですね、ぇ……」
「……ッ……」
目眩を覚える。ルージュが歓喜の吐息を漏らす、それだけでこちらは唆られる。
しかし精神的に限界が近かった。言葉を出す為の機能が壊れかけているのか、かつては飛び交っていた軽口の応酬も出来なくなっていた。ここでする、こうする、ああしろ。その程度だ。
色に狂っているとしか思えない痴態を男へ見せ続けていたルージュではあったが、未だに感想を口に出す程度の余裕は残っている。
正直、これほど保つとは思っていなかった。その点は完敗だった。
「――ンッ、ふぅ。……あれ、少し弱ってますね」
「……あたり、まえだ……」
上から抑えつけられ包まれたままの肉棒は、僅かな刺激で自動的に蘇り始める。
しかし、流石に精神的な疲弊が影響してきたか、その反り立つまでの時間は確実に間延びしてきている。それでも早いと言えるだけの猶予だったが、それまで通りの早さでない事はルージュと男がよく理解出来ている。
薬の
身体の興奮とは裏腹に、男の思考は一足早く負けと諦めを受け入れる。顔を上げ続けるのも億劫だとばかりに、首を横へ下ろして外を見る。夜景が、目に入る。
「……?……な、んだ……?」
違和感。その光景に対し、どこかが妙だと直感が告げて来る。
直感のまま、夜景の端々まで視線を巡らせる。しかし、其処に奇妙な所は見当たらない。
人工の星。下界の光。高層ビルとマンションの明かり。未だ眠らぬ事を知らせる、街の輝き――
――……
「――ッ!!何を、したッ!」
「遅いですねえ。あんまりにも遅いですよー」
ルージュは笑っていた。いや、笑い、微笑い、嗤い、嘲笑っている。
杏色の照明はルージュの背にのみ落ち、その表情に深い影を作り出していた。
「
「いえいえ、ちゃんと動いてますよ。ほら、あそこ。前より少し暗くなってます」
外の景色は
しかし、いくら濃密な時間を過ごしていたと言っても、行為の回数の割には明らかにその数は少ない。言われてようやく気付いた、その光の変化。言われるまで気付かないほどの、僅かな変化。
「すみませんねー、こういう機会なんて中々ありませんから。私もちょっと遊びたくなりまして♪」
「……遊び、だと……っ!」
「
その一言で、全てを悟る。魔術、それも自分が扱えるよりも遥かに高等なモノ。
馬鹿な。出来るのか。いや、しかし。この、女なら――
「……狙いはなんだ……私の、命か」
「そんなモノいりませんよー♪私が欲しいのは、こっちだけですよ」
膣が言葉に合わせて小さく収縮し、下半身の自由が一瞬奪われる。
異常事態だ。命に関わる程の異常、いや超常を受けている。しかし疲弊した身体は動かず、腰に乗って笑いかけてくる女一人の重さすらどうする事も出来ない。性だけが、蠢く。
こっち?性――精?男自身?馬鹿な、それこそ馬鹿な。
「そんな、それだけの為に、こんな馬鹿な術を使う道理が無いッ……!」
「いーや、大事な事ですよ。貴方レベルの魔術師の魔力など、そうは得られませんから」
血の気が引く。重大な思い違いと、身体の脱力感の正体を知る。
馬鹿な。これだけの魔術の行使など、男一人の魔力を吸い尽くしたとしてもプラスになど出来ない、出来る筈が無い。帳尻が、合わない。
「正確には”私と貴方レベルの”、ですね。なにせ、
そして、その最奥の真意が告げられる。息を呑んだ。
今、この部屋は空間的に隔絶されている。おそらくはルージュの使った魔術の効果か、外とは完全に異なった時間軸を――即ち、違う世界として動いている。
その中で、散々の性交によって魔力が散らされた。性臭と欲求で麻痺していた感覚を少し澄ます。
「だから言ったじゃないですか、”いいんですか”って。何度かヒント出したんですけどー?」
ヒント。ルージュの言葉。言われた言葉。
良いのか。まだ夜は長い。もったいない。そして――
全ての発言。贋の発言、その裏にある真意。その全てが、今になって繋がる。
「まぁ仕掛けた側ですが、此処の中では私も疲れますからねー。途中、貴方の
思えば、積極的にこちらの肉棒を掃除していた。ただのサービス精神にしては過剰な程に、綺麗に精を舐め取られ、そして自分の肉体に飛び散った精を舐め回し、飲み干していた。
顔に出された時に不機嫌そうな顔を見せた。飲ませた時に、微笑っていた。
全て、総て。この時、この行為、この部屋での全てが。だが、何時。何時から、だ。
――”
「……まさ、かッ……」
「
そして、最後の謎が解ける。一体いつ、こんな魔術を使ったのか。こんな大魔術を、男に感知される事なくどうやって準備して行使したのか。感覚を、張り巡らせる。
人の理を越えた事象だった。どんな触媒を使ったのか、常に襲撃を警戒していた筈の男の感知をすり抜けるほどに隠蔽されている。たった二人分の魔力――毒に等しい強壮剤に頼ったとはいえ――によって、たった数日でこの部屋を世界から切り離してみせた。
「”時計”がこの空間の核になってくれてますからねぇ。格が不足するようだったらもうちょっと魔力が要る所でしたが……いやぁ、疲れずに済んでよかったです♪」
「――……負けたよ。見事だ。やはり、勝てん」
「冷静さを保っていれば、多分気付けたと思いますよ?教訓ですねー♪……ンッ」
ルージュが身体を倒し、繋がったまま胸を男に押し当てて来る。喘ぎが、男を煽る。
精も、魔力も吸い尽くされる。完全に罠に嵌り、手遅れになって気付いた。これで殺されても文句は言えまい。
何より、罠にかけられながらも、ルージュの身体の熱と感触はあまりに甘美だった。
未だ、飽きが遠い。そう言いたげに、自らの分身だけが鎌首をもたげようとして、締め付けられた。
――……気持ちが、良い。これほど甘美な死が、あるだろうか。
「あっ、貴方にはまだまだ働いてもらいたいので、ミイラになるまでにはしませんよ?世の中、ムダな事なんてあんまり無いんですから」
「……しかし、”気絶するまでは貪る”、のだろう?」
「ええ♪貴方が言ったことです。貴方のせいです、おかげです。全部、貴方が選んだ事です」
精と汗と愛に塗れた身体が、
腕を腕で絡められ、指が重なる。脚を脚で固められる。顔が近付いてくる。
繋がったままのこの姿勢にも、覚えがある。自分がルージュを最初に組み敷いた、あの形だ。
「――フフッ。まだ、まだまだ……
何度と見た微笑み。眼尻の下がった深紅に、見つめられて。
上下の口は再び繋がり合って。そこで思考を手放し、腰の感覚に集中した。
――全てを食い尽くされ、意識を失くすまで。その一晩は、終わらなかった。
ルージュさん編でした。
随分と(下半身の)調子良さそうだねぇ……騙されたとも知らずに……
なお、こんな事をせずともルージュさんは時計を使えるように出来るので「単純にこっちの方が気持ちが良いから」というだけで仕掛けた感じです。
ヨシこれでいぶすたヒロイン(?)制覇したな!次はどいつだ!トキか、ラオウか!
流石にネタの煮詰まりが足らないのでIthはしばらく休むと思います。かきたくなったらかくね。
当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?
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蓮ちゃん
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ユーリヤさん
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真魚ちゃん
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蜜柑さん
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夢ちゃん