※この作品はR-18です。

Ith-Videoは観測する   作:灰の熊猫

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想定:「蓮・ハニートラップ」発生済。


女宿り(蓮)
*粗筋書き


(……まったく。わしに残業などさせよって、どいつもこいつも無能揃いが)

 

 薄い黒雲が夜空を覆い尽くし、薄い小雨が降り始めた車道を、一台の白い高級車が走っていく。

 しとしとフロントガラスを濡らし始めた雨をワイパーで払わせ、その一動作すらも疎いとばかりに運転する初老の男は眉間を絞った。

 男は自分が会社内で相応のポジションに居るという自負がある。しかしその役職こそが、今男が感じている苛立ちの原因になっていた。

 

(はぁ……こんな時期ぐらい楽をさせろと言うのに……)

 

 はぁ。今日の夕方から今にかけて、数える事も億劫になる程に吐かれた溜息が車内に混じる。

 最近になって、男が勤めて纏めている部門――経理部において、妙に仕事のミスが増えている。男の居る会社は市内でも大企業と言えるモノであり、経理部はその資金の運用と管理を任されている、謂わば生命線だ。

 その責任の大きさに対して、実の所男にとってこの仕事は難しい仕事では無い。何故なら、企業が大きいという事はそれだけ安定している、という事だからだ。

 繁忙期では気を張る必要があるが、その山場を超えればしばらくは毎日殆ど決まったルーティーンを守るだけ。細々した仕事は部下に任せて、最後に自分が書類に目を通せばいい、そういう毎日――の筈が、妙に部下から上がってくる陳情が多くなってきていた。

 

(何が『間違っている気がします』だ、馬鹿馬鹿しい。うちの会社に限ってそんな事がある訳無いだろうに、これだから若造は困る……)

 

 街のネオンサインを抜け、車輪は自分の戻るべき住宅街への道に乗って速度が緩んでいく。その一方で男の心は、水泡の様に次々と最近の事柄が思い返され、心が乱されていた。

 やれ書類が欠けている様な気(・)が(・)す(・)る(・)だとか、不自然に資金の増減がある気(・)が(・)す(・)る(・)だとか。大企業に於いて有り得ない、無能社員特有のつまらない誤認の報告。

 繁忙期の重要書類であればともかく、後回しにしていた些細な事案でいちいち手をかけさせられる程の徒労は無い。仕方なく自分が上に問い合わせれば、『そんな些細な事で手を煩わせるな』と苛立ち混じりに一蹴され、自分の評価が下がっただろう声色を聞かされる始末。

 怒りたいのはこちらだ。ミスなど起こるはずも無い事に余計な時間と手間をかけさせられ、部下からは『でも』『しかし』。最終的には一喝して黙らせたが、大声一つでそれまで積み重ねられたストレスが解消する訳も無い。

 

(……思い出すだけでも腹が立つ。酒でも呑んでさっさと寝るか……)

 

 この時期の男の毎日は適度に仕事をこなし、夜には余った金で街に遊びに出る、というのがいつもの流れだった。会社で渇いた体を潤わせる、酒と女という男の最大の道楽。

 しかし社内で時間が削られた今日は、遅めの夕食を外で食べて帰宅する事しか出来ない。苛立つ事があったせいで、その苛立ちを発散する事が出来なくなる。これ程の理不尽があろうか。

 今日は最早考えるだけ無駄だ。再び煮えそうになる思考を強引に打ち切り、ハンドルを切る。

 そしてようやく、唯一自分が安らぐ事の出来る自身の城(いえ)が見えてきた。

 

(――む? 誰か、いる?)

 

 しかしその時、ヘッドライトの先で家の扉近くの塀に寄り添う黒い影が見えた。

 車が家に近付くにつれ、その影の細部が明らかになっていく。小雨の中で傘も差さずに街灯の下で蹲り、膝を抱えたまま動かない人影。雨に遮られて見え辛いが、腕と膝に埋もれた側頭からは地面にも届く髪が伸びており、女である事は確かだった。

 自分の車が近付こうとも、その影は全く動こうとしない。そのまま車を車庫の前に付け、真っ白なライトで間近に直接その女を照らす。動かない。

 流石におかしい。そう思った男は傘を片手に、ヘッドライトを付けたまま車から降りて女へと近寄った。

 

「……おい、なんだお前。ここはわしの家だぞ、寝るなら自分の家でしろ」

 

 霧の様な薄い雨の中で、座り込む女に男は苛立ち混じりの声を投げかける。

 そこでようやく女は肩をぴくりと動かし、膝に埋めていた顔を上げて男へ向ける。だが、そこで男は面食らった。

 その顔が、それまで出会ってきた女の誰よりも整っていたからだ。

 

「――無いの」

「は?」

「家、無いの」

 

 そう言って、女がまるで重りを付けられた様にゆっくりと立ち上がる。

 雨水を吸って光る、艶のある二つ結びの黒髪。濃いベージュのキャミソールに白いカーディガンを羽織り、膝丈の黒いスカートを穿いたシンプルな服装。雨を吸った服は女の体に張り付き、胸から腰・腰から尻にかけて大きく曲線を描くそのスタイルを浮き出している。

 顔から体にかけてまで、全てが美女と断言出来るその女は、しかし今にも泣き出しそうな程の悲壮な表情を浮かべてこちらを見つめてくる。

 そして、女はこちらへ近付いてきて。

 

「……お願い。助けて、助けて下さいっ……」

 

 とさり。縋りつく様に、初老の男の胸へ弱々しく飛び込んだ。

 

  ◆  ◆  ◆

 

「――追われてる?」

 

 引き剥がそうとしても無言で縋り付き続ける女を振り払いきれず、仕方なく男が自身の家に招き入れ。タオルを貸して髪を拭かせた所で、ようやく黒髪の女は閉ざし続けていた口を開いた。

 

「借金が、あって……怖いヤクザの人達に、追われて。家まで、差し押さえられちゃって……」

「親は? その歳で身寄りも無し、という訳でもあるまいに」

「……もう、居ないの……居なく、なっちゃって。私もう、借金しか無くなっちゃった……」

「……なるほど。それはまぁ、キツい」

 

 黒髪の女――蓮はそう言って、ソファーに腰掛けたまま力無く項垂れる。

 悲惨な身内話を口重く打ち明け、男に縋るしかない――と(・)い(・)う(・)フ(・)リ(・)をしながら、蓮は哀しげな表情を見せたまま内心でほくそ笑んでいた。

 当然、蓮はたった今住む所を追われている真っ只中という訳では無い。両親が居ない事・ヤクザに借金がある事・屋敷が抑えられている事。それ自体は全て真実ではあったが、しかしその全てが繋がっているとは一言も言っていない。

 『両親が死んだ事によってその借金を背負い、家も奪われてヤクザにたった今追われている』――と、いう風に勘違いする様に、ほんのちょっと言い方を変えているだけだ。

 

(第一段階はクリア、ね。不審には思われてるでしょうけど、家に上げられる程度には話を聞いてくれる気にはなってくれてるし)

 

 蓮の目的は、邪神教団絡みによる唐館市の金回りの調査だ。

 邪神教団がいかに社会の裏で巧妙に隠れていようと、一つの勢力である以上資金はどうしても食う。生贄を集める為の人員・警察を始めとする反対組織への武装(そなえ)・魔術書の情報料や貴重な触媒。どんな人智を逸した組織であろうが、運用と運営には膨大な資金を必要とする。

 『雅日商事』の重役が魔術によって操作され、それにより会社その物が教団の資金源と化した事件があった。しかしそういったケースがたった一つで済むという訳も無い。

 よって蓮は、唐館市の中でも比較的大きめの会社の中から、不明瞭な金銭関係の噂が囁かれている一つを確かめるべく、男を通じて調査する気で一芝居打つ事にした。

 

「何故わしの家の前にいた。やり過ごすだけなら、街中のホテルに籠ればいいだろう」

(まぁ、当然の疑問でしょうね)

 

 蓮の”筋書き”を少しは信じてこそいるが、疑念の割合の方が大きいという表情と声色で男は蓮へ問いかける。

 実際男の指摘はその通りだ。単に借金取りを撒くだけであれば、人の多い街中に紛れて隠れた方がまだ楽だろう。こういった潜入の時に、素面(しらふ)の相手は手強い。

 バーで一人呑むだけの男であれば、酒に酔わせて判断力を奪えたかもしれない。しかし蓮が標的とした目の前の男は、女癖こそ悪いが原則として会員制のクラブにだけ通い、その中に潜入して接触するのは難しい。その為に、蓮はいっそ男の家へ直接訪れる事とした。

 だからこそ、蓮はある程度男の質問に対する応答のシミュレーションを事前に終えてやってきていた。

 

「最初はそう、してたんだけど。あいつら、凄い街に詳しくって……”弥武組”って名前の、大きいヤクザらしくて。もう街には隠れられそうに無かったの……」

「弥武組――あの図々しいヤクザどもか……!」

「し、知ってるの?」

「嫌と言うほど、な……! 暴力団の分際で、偉そうに幅を利かせる連中だ……!」

(……めっちゃ恨み買ってるわね、蜜柑さん……)

 

 蓮が弥武組の名前を出すと、男は表情を一瞬で苦々しい物に変える。

 蜜柑の手によって国内外・合法違法を問わずに金を稼ぎ、大量の資金とコネクションで各方面に圧力をかけている弥武組は、唐館市内においては知る人ぞ知る――それも主に後ろめたい事をしている連中に――暴力団だ。

 今回の調査にあたり、男の会社の上層部が各方面に影響力を持つ蜜柑・及び弥武組の事を疎んでいる事も蓮は知っていた。故に弥武組という既知の名前を出せば男は反応すると蓮は踏み、そして実際に目論見通りの答えが返ってきた。

 

「……話はわかった」

「! じゃ、じゃあ、お願いっ! 少しっ、少しの間でいいから匿って――」

「そういう訳にはいかん」

 

 男は腕を組み、蓮の話に納得したといった風に目を瞑る。その返答に蓮が飛びつくも、男はぴしゃりと蓮の言葉を遮った。

 男はこの時点で蓮の話を大半は信じていた。蓮の悲壮感と真実味に満ちた――大半は真実だし、言っている間に実際自分の境遇に辛くなっていた――演技に加え、”弥武組”という実在し存在が知られている名前を出した事で、その言葉には説得力があった。

 だが、逆にあ(・)り(・)す(・)ぎ(・)た(・)。

 

「奴らはヤクザのくせに妙に鼻が利く。お嬢さんが思う以上に、な。街中を離れたのは正解だが、かといってすぐにここも嗅ぎ付けられる。ハッキリ言うが、お嬢さんはどうあっても逃げられん」

(まぁ、蜜柑さんやカズくんが本気出せばそうなるでしょうね)

 

 全く忌々しい。男は毒吐く様に言葉を締めて、実際に弥武組という組織の事を誰よりも間近で把握している蓮は内心で同意する。

 弥武組は唐館市内に限定すれば、部分的には警察すら超える程の力を持つ組織だ。一般人(カタギ)には滅多に手出しはしないが、一度”やる”と決めた事であれば全く情けも容赦もせずに動く。

 故に知る人にとって弥武組とは単なる暴力団という枠組みを外れた、触るなキケン(アンタッチャブル)という扱いを受けている。そういう点を考えると、弥武組の名前を出すのは蓮としても苦肉の策だった。

 

「そ、そんなっ……! お願いしますっ、持ってるだけのお金はあげますから、どうか……!」

「わしはそもそも金に困っとらん。そもそも、借金を抱えとるお嬢さんが大した金が出せるんか?」

(ここまではほぼ台本通りだけど……やっぱ、素面(まとも)な相手は困るわね)

 

 男の拒絶に打ち拉がれた様に顔を伏せながら、蓮は全く別の事に頭を悩ませる。

 以前にも蓮は同様に男に取り入って諜報を行った事があった。だがその時の相手は独りで酒に溺れていた上、露骨に蓮を酔わせて襲うつもりで近寄ってきた男であり、さらに言えば後先を考える必要が無かった。

 目の前の男は判断力は正常で、最初から蓮を受け入れる必要も義理も無い。その上、常勤を求められる重役の一人である事が蓮にとってはこれ以上無い向かい風だった。

 

(はぁー……毒が使えれば話は簡単だったんだけど、ねぇ……)

 

 蓮の持つ毒操作能力(トキシキネシス)は、細かい調節が難しい。例えば、たった今目の前の男を毒で眠らせ、その間に情報を盗むだけなら極めて容易だ。

 しかし薄い効力の毒を使えば『女を家に上げてから唐突に意識を失った』と後になって不自然に思われてしまうし、かといって記憶を飛ばす程の毒は一般人には効力が強すぎて少なくとも二・三日程は眠らせてしまう。

 前回のケースでは記憶を飛ばしても構わない状況だったが、今回はあくまで”調査”であり、裏取りもされていない状態で一般人にあまり強い毒を使う訳にもいかない。

 そして大きな役職を持つ人間が数日も出勤せず、本人がそれを覚えていないという風になるのも明確に不自然だ。そうなっても足を付けさせるつもりは無いが、今後もこの男の会社を監視する事を考えれば警戒されるのは良くない。

 そうなると。”自然に”男を眠らせる手段は限られていた。

 

「な、なんでも……なんでも、しますからっ。ですから、一晩! 一晩でいいから、匿ってくださいっ……!」

「……ほう? な(・)ん(・)で(・)も(・)、とは?」

「っ……」

 

 蓮は必死に追いすがる様にして、”手段”を示唆する。蓮だけが持つ、毒の次に頼れる”手段”。

 予定通りに、しかしあくまでに渋々という風に苦い顔を浮かべながら、蓮は自身の服に手をかけた。

 

「わ、私の……カラダ、で……払います、から……だから、一晩だけ、でもっ……」

「……ふむ。ふむふむ、なるほどなるほど」

 

 羽織るカーディガンを脱ぎ捨て、濡れたキャミソールの裾をゆっくりとたくし上げる。

 恥ずかしげに躊躇っていると見えるように、自身の身体と肌を、腹と臍を、下着と両胸を順に男の前に晒していく。実際蓮としてもこの手の行為を完全に割り切っている訳では無く、実際にいくらか羞恥を覚えて顔を赤らめていた。

 鎖骨の辺りまで上げられたキャミソールから現れた、男の情欲を唆る黒いレースのブラに包まれている蓮の両胸に男の視線が突き刺さる。舐める様に腰から胸までを男に眺められ、蓮は思わず演技を忘れて肩を小さくした。

 

「お嬢さん。財布――というか、身分証明出来るモノは持っているかね」

「え? は、はい……ありますけど」

「一応見せてもらえんか」

(か(・)か(・)っ(・)た(・)!)

 

 その言葉に、蓮は困惑するフリをしながらスカートのポケットより財布を取り出す。男のその言葉は、蓮にとっては理想的とも言える返答だった。

 男は蓮の身体に対して、既に十分な興味を見せている。それ故に、次に警戒するのはこの余りに美味すぎる話に対して最大の懸念――美人局や他企業からのハニートラップだ。

 蓮の自分の持つ役職や金銭を狙ってやって来たという可能性。偶然にしては出来すぎなタイミングを考慮し、男はまず蓮の身元を特定しようとする。しかし、それこそが蓮の狙いだった。

 

「……ふむ。乃(・)木(・)蓮(・)さん、かね。……この名刺は?」

「私の勤めている会社の物、です」

(ま、偽造したモノだけどね)

 

 男が財布の中身を一つ一つ確認していく。その財布の中には数日はホテルに泊まる事が出来る程度に調整された現金と、偽造された免許証や名刺――年齢は背伸び程度に上げた――、数枚のクレジットカードなどを仕込んであった。

 普通に考えれば、男に取り入る目的の人間が自分の身元を全て明かすという事は無い。男としても相応のポストに居る以上、大体のライバル企業の事は頭に入れているし、身元が明らかな人間ならやりようによっては逆に脅し返す事も出来る。

 しかしそれは一般的な人間の思考であり、蓮の様に身分をいくらでもでっち上げる事の出来る人間までは想定出来ていない。男は蓮の財布の中身を全て確認し、それを一旦テーブルの上に置いた。

 

「……わしは疲れとってな。お嬢さんがわしを満足させてくれるんなら、一晩ぐらいは置いてやってもいいぞ」

「……わかり、ました……」

(よーしよし。ちょーっと身体ちらつかせるだけでコレなんだから、男なんてチョロいモンよねぇ)

 

 身分を表す財布を蓮から見て遠いテーブルの隅にずらし、暗に自分の意志が無ければ返さないと示しながら男は柔らかなソファーに背を埋めて蓮を見定める。

 見下す様な内心をおくびにも出さず、蓮は眉を落としてたくし上げた服を戻さないまま男へと近付いていく。こうなれば、後は男が満足するまで適当にお(・)相(・)手(・)をしてやればいい。

 あくまで切羽詰まって追い詰められただけの女を演じ、蓮は男の前に座り込んでベルトを外してやり、ズボンを下げた。

 

「――えっ」

「どうしたのかね」

「い、いや、何もっ」

 

 だが、ズボンを下ろし切る直前で蓮の手が止まる。その視線の先には、既にパンツを押し上げて浮き出ている男の膨らみがあった。

 まだ触れるまでも無く、勃ってもいないだろうその膨らみは、蓮が思うよりも遥かに大きかった。経験が然程多い訳では無い蓮でも、目の前の膨らみが平均的な男のモノよりも大きいという事はわかる。

 思わず蓮はこれからの予定や演技も忘れ、目を見開いていた。

 

「……見ているだけでは何も始まらんぞ、お嬢さん。やるならさっさとしてくれ」

「わ、わかってる、わよ!」

 

 思わず蓮はそれまで取り繕っていた口調も忘れ、慌てて男のパンツを中途半端に脱がしていたズボンごとずり下ろす。

 その下から現れた男の陰茎は、まだ勃っていないにも関わらず蓮の中指よりも遥かに長く、そして唇を合わせるよりも太い亀頭を持っている。その上で陰毛は色濃く生い茂り、鼻奥にまで突く様な汗と垢の臭いが蓮の眼前に漂ってきた。

 元から”女”を使う気ではあったが、想像を超える目の前の”男”を見せられ、一瞬蓮は尻込みする。しかし、今更怖気づいて引き下がるという選択肢など何処にも無い。

 やるしか、ない。覚悟を決めて、蓮は汚臭を放つ陰茎と股間に顔を近付け、唇で尖端に触れた。

 

「ん、ちゅっ……ぅ、え……ん、むっ……」

「随分とまぁ、控えめな。半端に焦らすのなら、さっさと出ていってもらうぞ」

「ちゃ、ちゃんとやるわよっ……んむっ、ん、んんっ、むぅっ……!」

 

 恐る恐る蓮が鈴口に小さく吸い付くも、あまりの臭さと味に軽くえずいてしまう。それを見た男は僅かに苛立ち、蓮を責める。

 ここまで準備しておいて、男の機嫌を損ねて追い出されるなど笑えない。意を決して蓮は男の亀頭にかぶりつき、自棄気味に強く吸い付き始めた。

 

「ちゅ、んっ、むうっ……んっ、んぅ、ううっ……」

「ふう……うむ、やれば出来るじゃないか。ほれ、もっと深く咥えて舐め回したまえ」

「んううっ……! んっ、ちゅっ、んむぅうっ」

 

 男は大股を開いてソファーに座り、自分の亀頭を咥える蓮を悠々と見下ろす。一方で蓮はそれまでの打算や余裕も忘れ、ただ眉間に皺を寄せながら男の肉棒を口内でしゃぶっていく。

 亀頭から雁首の根本へ、そこから茎部の半ばまで。一日分の汚れと汗が凝縮した様な肉棒の味に顔を顰めながら唇を窄めて舌を控えめに這わせていく。

 表面にこびり付いた多くの恥垢を舐め取る毎に、口内に広がる雄臭と汚臭に蓮の脳が揺らぐ。生理的な嫌悪感に吐き気を催すも、口や舌を止める事は許されていなかった。

 

「あー、いい、いいのう……まぁまぁ上手いじゃないか、わしのチンポは美味いか、ん?」

「っ……んぷ、んんっ……! はぁっ、れろっ、んくぅ……」

 

 男の嘲笑も無視し、蓮は自分の口から唾液を垂らし、口に含むだけでは届かない茎の根本や玉袋に至るまでを舐め回し濡らして、男の性器を隅々まで綺麗にしていく。

 涎と舌の温かさ、吸い付く唇の柔らかさ、そして何よりも目を見張る美貌の女が自ら自分への奉仕に勤しむ姿。それらを味わい続け、少しずつ男の興奮も高まっていく。

 そしてその興奮が、日頃のストレスで抑え込まれていた男の性欲の蓋を剥がしていく。興奮と性欲、それを持った男の行き着く先は一つしか無い。

 

「ん、んんっ……!? ぶあっ、はぁ……!」

「どうだ、わしのは。若造のとはモノが違うだろう」

(う、わ……ふ、太っ……)

 

 蓮が再度茎を咥え込んでしゃぶり直している内に、血が巡った肉棒が硬さと大きさを増す。

 口の中で肥大化していく肉棒を咥えきれず、思わず蓮は口を離してしまう。まだ真上を向き切っていないにも関わらず、男の肉棒は先程とは比でない程に膨らみ、既に蓮の顔の大きさにも近付いている。

 その上、一目で女慣れしているとわかる程に濃く黒ずんだ色と、傘の様に縁が大きく広がった雁首を持ったそれは、蓮がそれまで見てきた男の性器の何よりも凶悪な形をしていた。

 口を開いて呆けている蓮の顔を見て、初老の男はほくそ笑む。これまで男は何十人もの女と交わってきたが、初めて自分の分身を目の前にした大半の女はこうして言葉を失う。

 自身の分身に女が言葉を失い、見入って意識を囚われる姿。雄としての優越感と自尊心に浸れるこの瞬間を、男は何よりも好んでいた。

 

「ほれ、お嬢さん。まだまだ足らんぞ、はよう続きをせい」

「わ、わかってる、わよ……むっ、んぅむっ……はぁっ、ちゅ、んぷっ、む……!」

 

 目の前に掲げられた肉棒の大きさに気圧されていた蓮が、慌てて男の肉棒への奉仕を再開する。もはや蓮の頭に、何も知らない一般人を手玉に取ろう、という当初の思考は欠片も残っていなかった。

 男の機嫌を伺うように、言われるがままに大きく唇を開いて肉棒を口内に招き入れる。その状態でなるべく深くまで咥え込む様に頭を股間へ埋め、茎部の中間で唇を窄める。

 舐め取る毎に少しずつ男の悪臭に蓮の鼻と舌が慣れていき、肉棒へ這わせる舌と窄める唇の力が増していく。打算など忘れて肉棒を貪るその姿は、男を悦ばせようと従順になっている売女にしか見えなかった。

 

「んっ、んっんっ、んうぅ……はぁ、むぅ……ん……」

(臭いので、いっぱいで……頭、くらくらしちゃう……)

 

 頭を上下させながら唇で茎の中央から雁首にかけてまでを擦り上げ、届かない根本を右掌で柔らかく握り込む。味覚と嗅覚が半ば麻痺し、思考が鈍化していくにつれ蓮の奉仕への不快感は薄れていった。

 少しずつ、蓮の思考が塗り替えられていく。男をやり込めて眠らせるという当初の目的が、男を満足させる・悦んでもらうという手段その物にすり替わり始め、次第に蓮の身体も熱を帯び始める。

 頭・唇・舌・手。蓮が男に対して行う一挙動ごとに、太く大きい肉棒が脈打ち口内から溢れようと震え動く。男の”雄”を口と舌でこれ以上無く感じ続ける蓮は、無意識の内に口淫に深く耽り始めていた。

 

「はぁっ、ん、ちゅ、れろっ……ちゅむ、んぷ、れぇっ……」

「お嬢さんもノってきたかの。そんな美味そうにしゃぶられては、こちらも嬉しい限りよ」

(別に、そんなんじゃない、わよ……)

 

 男からかけられる言葉を聞き流しながら、蓮は肉棒に対し考えられ得るあらゆる手口で、男が悦ぶ様に緩急をつけた愛撫を捧げていく。

 肉棒の上部に手を添え撫でながら、舌を伸ばし茎の根本を下から上へとちろちろと舐め上げ、細かくキスをする。根本の辺りを舐め上げ終えれば、今度は陰嚢を軽く揉みながら再度亀頭にしゃぶりつき、雁首に唇を柔らかく引っ掛けながら裏筋を舌先で丹念に舐(ねぶ)る。

 男の肉棒全体が蓮の唾液と熱に染められ、蓮の五感が男の雄に染められていく。男は自分が何もせずとも与えられる無償の美女の奉仕に、蓮は濃厚な雄の大きさと味と感触に。

 互いが互いを身体で知っていく前戯の中で、ゆっくりと二人の心身は昂っていった。

 

「ぷあっ……す、すごっ……」

「はは、立派なモノだろう。わしの自慢のイチモツよ」

「……っ」

 

 熱心な奉仕を受け続けた男の肉棒が、最大まで膨らむ。その亀頭に蓮は窄めていた唇を押し上げられ、思わず口を離してしまった。

 太い。大きい。硬い。蓮の顔ほどの長さで反り返り、張り詰めて黒光りする剛直を目の前にして、蓮は瞬きも忘れる。ただ口に含むだけでも難しい、文字通り女泣かせな肉棒を前にして、蓮は返事を返せなかった。

 ――コレを、挿れられたら。蓮の頭に、少し先に訪れる不可避の光景が過ぎる。

 ごくりと息を呑む。絶対にそうしなければならないだろう、しかしこの巨根を受け入れた時の感覚が想像出来ない。未知への恐怖と、蓮自身も自覚出来ない程に小さな好奇心が心の奥で綯い交ぜとなった。

 

「中々良かったが、口はいい加減飽きたわ。わしの自慢も見せた事だし、今度はお嬢さんのその立派な胸が味わいたいんだが、のう?」

「……えっ、ええ。ちょっと、待って……」

 

 蓮の奉仕によって十分に勃起はしたものの、口淫の緩い刺激だけでは射精に足り得ない。さらなる刺激を求める男の要求を受け、蓮は意識を想像から今へと戻す。

 男の求めに反射的に応えた蓮は、一度男の股間から顔を引いて立ち上がる。そのまま胸上までたくし上げていたキャミソールを完全に脱ぎ、続けてブラの背中に回された太いホックに指をかけてホックをぷつぷつと外した。

 ゆさり。胸下からブラで持ち上げられていた蓮の両胸が、固定から逃れて自重で下へと揺れ落ちる。そこから両肩の紐から腕を抜き、蓮は自分の下着の一つを完全に取り払った。

 

「……ほーう。これはまた、壮観じゃのう。綺麗なピンク色をしとるが、見た目によらず遊んでおらんのか?」

「う、うっ……」

「良い、良いじゃあないかお嬢さん。その初心な顔も、新鮮で唆るわい」

 

 シミ一つ無い瑞々しい肌の上半身と、下着に支えられるまでも無く上向く蓮の巨乳が露わとなる。鮮やかな薄赤色に染まった乳輪と乳首に下卑た視線を受け、蓮は右腕で胸を隠した。

 が、腕だけでは隠し切れない程にふくよかな胸は抑えられた事で逆に強調され、右胸に至っては腕の端からちらりと乳輪が覗いて見えている。男心を揺さぶるその恥じらう仕草は、却って男の興奮を誘った。

 思えば、男はこれまで性に熟れたクラブの女と一夜を共にする事はよくあっても、これ程までに初心な女を抱いた事は無い。そう考えると、男は目の前の女が見た目よりもさらに魅力的な存在だと思えた。

 

「それだけ大きければ、わしのモノを挟むのも苦労せんな。ほれ、冷える前に早くそのデカ乳で温めてくれい」

「うっ……わ、わかった、わよっ……」

 

 気を良くした男はふんぞり返り、腕と脚を大きくソファーに広げて蓮を待つ。

 真っ直ぐ天井を向いた肉の柱に目を釘付けにされた蓮は、右手を下げて再び胸を男の前に晒し直し、屹立して待ち侘びている男の股間の前へ跪く。

 自身の予定より大きく外れ始めた筋書きのままに、蓮は自身の胸を両手で持ち上げて、自身の深い柔らかな谷間へと男の剛直を誘い入れた。

 




蓮ちゃんの すてみタックル!
蓮ちゃんは はんどうをうけた!

前回の章がクソ長すぎたので、今回はなるべくシンプルにヤります。

当小説でもっと見たいヒロインは誰ですか?

  • 蓮ちゃん
  • ユーリヤさん
  • 真魚ちゃん
  • 蜜柑さん
  • 夢ちゃん
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