「思えば、女を
「それ、明日のお仕事に差し支えとかは無いのかしら」
「お嬢さんは知らんだろうが、わしの勤務態度に文句を言える様な人間はそうおらんのだよ。ま、忙しくしなければならん時は弁えるがな」
男が部屋の照明を抑えた状態で点け、弱々しい灯で寝室の暗闇をぼんやりと払う。部屋の見た目は蓮が思うよりは質素で、しかし高級住宅として十分な内装を持っていた。
床には薄く茶の光沢を持つ毛先の長いカーペットが端から端まで広げて敷かれており、蓮の足裏から感じる柔らかく滑らかな毛先は床の冷たさの一切を遮っている。
正面に見える壁は、全面がガラス戸で出来ていた。戸の両端にはそれを隠す為だろう、天井から床にまで届く程に縦に長過ぎる濃灰色のカーテンが、それぞれ半ば辺りが帯を二つ使う事で纏められている。
そしてその窓際付近には、一人で使うには広過ぎるだろう黒色のダブルベッドが座していた。その色調は”黒っぽい”という程度では無く、言葉通り”真っ黒”に染まりきっている。
「立派なベッドね」
「睡眠は特に金をかけるべき所だからな。ま、お嬢さんじゃあ二度と味わえん感触かもしれないからの、今晩ぐらいは堪能するといい」
(余計なお世話よ)
蓮からの素直な感想に、男は皮肉で返す。もはや慣れてしまった男からの嫌味に小さく心で反論しながらも、蓮は部屋奥のベッドの全体に目を通した。
木のベッドフレームは汚れ一つ見えない程に黒の塗色が成され、床との間にはセンチ単位の隙間も無い、畳んだ布団も入れられるだろう収納棚が複数差し込まれている。
それに加えて、マットレスとその上に広がる布団もまたフレームにこそ劣るものの濃い黒で染められている。例外として、手繰り寄せる為か布団の手元に当たる部分だけが真っ白の羽毛をあしらわれているのみ。
寛ぐ場としては余りに重厚に過ぎる、黒染めの寝具。単純とすら言える明るみの無い色彩は、それが家具店では扱われない
「ふむ、少し肌寒いが……まぁ、お嬢さんがすぐに温めてくれるだろうから良いか」
「……私は湯たんぽか何かかしら?」
「男にとってはこれ以上無い暖房だとも。お嬢さんのそのカラダは、さぞわしのを受け入れようとアツアツに蕩けとるだろうしなぁ」
(っ……好き勝手言ってられるのも、今の内よっ……!)
蓮の身体を右腕で抱いた男は、その胸に掌と指を沈めながらゆっくりとベッドへ連れて行く。蓮はその間にも寝室全体に視線をやるも、この寝室の中には然程特別な物は見当たらなかった。
豪奢な姿見、部屋の壁に広がるクローゼットの扉、背の高い照明スタンドとその傍にある小テーブルと一人用のソファー。ホテルに似せた様な内装は、かかっているだろう金額を除けばどれも一般的な範疇を超えてはいない。
あくまでここは寝る為だけの部屋だ。そう判断するのと同じくして、男と蓮はベッドの前に辿り着いた。
「さぁて、と。ほれお嬢さん、来なさい」
「……ええ」
男がベッドの上に登り、掛け布団を大きく除けてスペースを作る。黒い布団の内から現れた真っ白なシーツは、そのまま情事の為に空けられたステージだった。
男はシーツの上で仰向けに寝転び、蓮もそれに次いでベッドの上へ上がる。そのまま蓮は男の太腿の辺りへ跨り、どの様な行為を求められても動揺しない様に心構えをして前に身体を傾ける。
寝転がる男の間近まで蓮は身体を近付け、顔を見合わせる。互いに吐息が混じり合う程の距離で、二人は熱っぽい視線で無言で見つめ合う。
――そして見つめ合ったまま、何も無く時間だけが過ぎた。
「――……あの、おじ様? 何か言ってくれないと、困るのだけれど」
「何を言ってるのかね、お嬢さん。困ってるのはこちらの方だよ、わしが言った事を忘れたのか?」
「……?」
意図が解らない沈黙に耐え切れず、蓮が口を開く。しかし男は呆れ混じりに、蓮と同じ言葉を返した。
目の前の男が言った事。寝室に来てから・或いは来る直前。蓮はその”言った事”を思い出そうとするも、その殆どがセクハラ紛いの事ばかりでろくに心当たりが無い。
やれやれ。そう小さく呟いた男は、蓮へ答えを提示した。
「『わしは疲れとってな、お嬢さんが満足させてくれ』。さっきまでは前戯だったから細かく指示してやったが、ここまで来たらヤる事など一つだろう? なら、
「――ッ!?」
さも当然と言いたげに、男は眼前の蓮に”要求はしない”という唯一の要求を告げる。その言葉に思わず蓮は大きく目を見開き、困惑と共にその辱めの意図を知った。
ここまで蓮は、あくまで男からの命令に渋々従っていた形で行為に及んでいた。しかし今、男はこう蓮へ告げているのだ。『自発的に考えて腰と尻を振り、満足させてみせろ』、と。
男との行為はこれまで一貫して、蓮側からの奉仕を受け取るだけだった。その延長と言えば確かに正しいが、一切の命令も無く男を悦ばせる事だけを考えろというその命令は、蓮に最も自由と屈辱を与える物だった。
「一応言っておくが、わしは焦らされるのは好みじゃないぞ。このまま無駄に時間を使うと言うなら、お嬢さんにもう用は無くなるが……どうするかね?」
「~~っ! わ、わかった、わよ……!」
「わかればよろしい。じゃあ精々頑張って、わしを愉しませてくれたまえ」
言う事は全て終えたとばかりに、男は両手を頭上で組んで枕代わりとし、即ち自分からの行動を放棄する形を取ってみせる。
完全に、蓮に手も口も出す気は無い。いっそ清々しいとすら思えるやる気の無さに、蓮は毒づきそうになる所をギリギリの所で留める。しかしこれは、チャンスでもあった。
男が蓮に行為を完全に委ねるというのは、自分が思う通り・考える通りに情事を進められるという事だ。男は余裕を持って恥辱を与えようとしての事だろうが、これまでの様に想定外で屈辱的な行為を要求される事は無く、主導権も完全にこちらにある。
そうだ、最初からそのつもりで此処に来たんだ。男を意のままに犯し、満足させ、眠るまで疲弊させる。此処に乗り込むまで考えていた台本通り、そうすればいいだけの話だ。
そう考え直せば、蓮の心には恥辱どころか余裕すら出てきた。
「……じゃあ、気持ち良くシてあげるわね?」
「うむ」
蓮はすぐにでも抱き着けそうな距離から上体を起こし、男の股座から伸びている太い肉棒の中央を軽く抑え込む様に自身の秘部をそっと乗せる。
すぐに挿れてはやらない。焦らすのが好みじゃ無いと言うなら、存分に気持ち良く焦らしてやる。散々これまで見下され続けた意趣返しとして、寝転がっている男へ今度は蓮の方からにやついた嘲笑いを向けてやった。
「――んっ。……はっ、ん……ん、う……」
僅かに湿り気を持つ秘部の裂目を、はち切れそうになっている肉棒に押し付ける。そのまま蓮は僅かに腰と尻へ力を込め、肉茎に対してセンチ単位で微細に擦り付け始めた。
蓮の重みがそっくりそのまま、秘唇を支点に茎部を押さえて摩擦となる。巨根の中央だけをほぼ抑え込むだけに等しい、しかしそれでいて確かに雌から染み出した熱と蜜が男を撫でていく。
押し付け、擦り付け、滑らせ。素股によって蓮の秘部から徐々に漏れ出す愛液が、少しずつ肉棒の全体を塗りたくっていく。それに蓮が少しの快楽を得始めて来た中で――
「……焦らされるのは嫌いだと言ったハズなんだがな。直ぐにでも挿れるモンだと思っとったが……なんだ、そんなにわしのモノを挿れるのが怖いのか?」
「!? ……そっ、そんなワケ、ないでしょっ!」
男はその刺激で悦ぶどころか、むしろ冷ややかな目で蓮を睨んできた。
心底がっかりしたと言いたげな失望の視線に、蓮は慌てて腰を止める。先程の言葉通りの、しかし想像以上の前戯の拒絶によって、男からの期待と興味が冷えていくのを蓮は感じ取った。
男からすれば、それは当たり前とすら言える事だった。これまで十分に手や口による奉仕を愉しんだ男にとって、今更この様な児戯に等しい刺激など、快楽どころか不満のみが募るだけだ。
「なら、さっさと挿れたまえ。全く、命令されなければ満足に腰も振れんのか」
「……ッ、言われなくても、シてあげるわよっ……!」
聞き分けの無い無能な部下を、或いは奴隷を躾ける如き声色で男は蓮を侮蔑してみせる。寝室に入る前の期待が完全に損なわれる、そうなるよりも早く蓮は慌てて尻を浮かして男の怒張を手に取った。
自分の手で握るには余りある巨根を、真上へ向ける。太く、硬く、熱く。触れている指先からすら伝わる、強調された象徴。
ごくり。唾を大きく呑み込み、蓮はその切先を自身の秘部に添えた。
「んっ、んんっ――あっ、は、ふうぅっ……!?」
蓮が腰を、ゆっくりと降ろし始める。半端に潤っただけの秘唇を、明確にサイズの合っていない肉棒の亀頭が割り開き、埋め込まれていく。
痛みは不思議と無かった。しかし尖端の雁首を収めた時点で、蓮は肉棒から来る圧迫感と熱、そして滑りが不足している摩擦感に悩ましく声を漏らす。
腰を下ろしきれない。早く挿れなければならない、しかしこれ以上挿れてはならないという相反する二つの心が下腹部で混じり合う。
広がりきった傘の様な亀頭と、刃の様に鋭い雁首。そこにさらに、これまで文字通り散々に味わわされてきた肉の杭を、胎の内にまで埋め込まれれば。恐怖に近い、しかしそれとは少し違う感情が渦巻く。
やらなければ。腰を下ろし、
「ッ、あ、は、ぁああっ……! だ、め、これ、おっき……いっ……!」
「っ……くく、どうしたお嬢さん、脚が震えとるぞ?」
少しずつ、少しずつ腰を下げていく。自分の内側に熱の杭が突き刺さる、いや自分から突き刺して迎え入れていく感覚に、蓮は声をすぐに抑え切れなくなった。
肉棒の根本に至るまで、まだ半分は余っているだろう半端な高さ。その地点で蓮は腰を留め、震えて崩れそうになる両脚の代わりに両手をベッドに付けていた。
自分という胎の裏側を強引に抉じ開けられる太さと長さは、それまで蓮が経験してきた中でも類を見ないモノだった。口での奉仕で解っていた筈だった、しかし実際にその身で味わえば全く別種の理解が脳を揺さぶる。
拡げられている。圧されている。刺さっている。内側から届く全ての情報が、蓮の身体と声を震わせてしまっていた。
「ほれお嬢さん、まだ半分ぐらいしか
「う、あ、んんっ……! あっ、や、ムリッ、これ、むりぃっ……!」
「”無理”という割には、ちゃんと腰を下ろしとるじゃないか。ほれ、頑張れ頑張れ」
「ひ、あ、ぁっ……」
震える脚が崩れない様に、蓮は自身の抵抗感に対して目を瞑って腰を下ろしていく。しかしその腰は肉棒を奥に咥えていく毎に動きを鈍くし、男はそれを煽る様に肉棒の表面を脈打たせた。
それでも、それでも下ろす。弱々しい声を漏らしながら、自分から肉棒を受け入れて――そして、ついに腰の動きは途中で留まってしまった。
自分の内の殆どを満たされている、そう感じながらも蓮の尻は男の股座に届いていなかった。既に最奥に男の尖端が触れて届いている、その状態でも男の肉棒の根本は余っている。
無理だ。これ以上入らない。そう蓮の心は限界を告げていたが、半端な高さで浮かされたままの尻と脚は今にも楽になりたいとばかりに震えを大きくし、身体の方もまた現状の限界を叫び始めていた。
耐えられない。脚を崩したい。腰を下ろしてしまいたい。
「あッ――ひあぁんッ!?」
「おっ……!?」
その瞬間、蓮の両脚が一瞬だけ力を抜いてしまい、僅かに尻を浮かせていた身体の均衡が崩れて。ずん、と蓮の胎の奥を強く圧し潰す様に、男の肉棒が完全に突き刺さった。
蓮の思考が完全に停まる。呼吸も忘れながらぱくぱくと口が開き、瞳が何も無い虚空を見て、子宮を潰す雄の感触のみが身体を支配する。
これは、ダメだ。ダメに、なってしまう。その考えを最後に、蓮の頭が真っ白に染まった。
「あッ、あ、あッ――ひぃんッ!! ……はっ、あぁあぁッ……!」
「お、うっ……!? おいおい、挿れただけでイくかね、普通……!」
腰を下ろしただけ。ただ男を受け入れた、ただそれだけで蓮は天を仰ぎ、その巨乳を跳ね上げて絶頂に至っていた。
自分自身の体重で潰された子宮が一気に亀頭を吸い上げる。肉壷全体がうねり、受け入れた肉茎を無数の襞を絡ませながら絞める。そうしながらだらだらと愛液を一気に最奥から漏らす蓮の姿は、言い訳のしようが無い程に深く悦に浸ったものだった。
「――ッ……はぁっ、はぁっ、あっ、う、うぅ……」
「全く、エロいお嬢さんだとは思っとったが、こうもだらしないとは。こんなザマでは、これまでさぞ男に食い物にされてきたんだろう、ええ?」
「や、あんっ! だめ、うごかしちゃ、だめぇっ……!」
「っ……少し身動ぎしただけだろうに。ま、こうもチョロい穴なら大歓迎ではあるが」
蓮が未だに埋め込まれた肉棒の大きさに目を白黒させている時に、男が僅かに腰を揺らす。突き上げた訳でも無く、ただ一度ぴくりと動いただけ。それだけで蓮は喘ぎ反応してしまう。
気付けば蓮は結合部を見せつける様に股を開いたまま、背を逸らして後ろに手を付いていた。そうしなければ、子宮が潰れてしまう。そんな自衛の為に取った無意識の姿勢は、そのまま男へ自身の痴態の全てを晒していた。
肉棒を隙間無く締め付けている秘唇からは愛液が絶え間なく溢れ出し、下半身が快楽で痙攣する度に上まで震えが伝わり豊かな乳が揺れる。絶頂により蠢く肉壷も相俟って、男もまた声色に表さないまでも相当な悦楽を与えられていた。
「ほれ、さっさと腰を振らんか。このままじゃいつまで経っても終わらんぞ」
「はっ、はっ、はっ……わ、かってる、わよぉっ……あっ、んぅうっ……!」
ようやく全身の痙攣が収まってきた所で、蓮は腰を下ろし切った状態から身体を動かし始める。
腰が下りたとはいえ、蓮の身体はその巨根を完全に受け容れられた訳では無い。蓮は腰だけを前に突き出し後ろ手を付いた状態で必死に動かそうとするも、震えるばかりの下半身は前後に少し揺れる事しか出来ず、それだけで蓮は耐え難い内側の圧迫感を受けてしまう。
「あっ、あ、あぁんっ……! だめ、ここ、弱い、のにっ……ひ、ぅうっ……!」
「ははは、弱い所を自分から擦り付けて気持ち良くなってるとは。カラダは正直とは、まさにこの事だなぁ」
その度に、蓮は鋭い雁首に膣襞をめくられる様に擦られて声を乱す。全身を反らしている事で、腰を動かす度に蓮の肉壷の天井に強く尖端が当てられてしまっていた。
まるで身体の奥を熱い爪で掻かれている様だ。もはや喘ぎ声を抑える事は無理と理解した蓮は、いっそ自分が感じる感覚を可能な限り冷静に、しかし色に染まりつつある思考で自覚していく。
溢れ出した愛液が肉棒を濡らし、自分の内側を割く杭への抵抗を減らしている。反抗を棄てて、自分自身を捧げて擦り付けている。
その事実に、よがり声を抑える事も出来ず、快楽のまま腰をへこへこと動かし始めている。そんな自分を、心身が完全に把握してしまった。
「……あぁんっ! はぁ、あ、あぁあっ……! き、もちっ――んんっ!」
『気持ち良い』。その言葉だけは吐いてはいけないと、蓮は口を噤んだ。
それでも身体は今にも後ろへ倒れそうに反らされ、前後する腰の動きは愛液を得て少しずつ幅を広げている。胸の奥が快楽で弾み、それを受けて巨乳が跳ねて波打つ。雄を咥えて悦ぶ自身の恥部が丸見えになっていると分かっていても、広げている股を戻せない。
男の巨根を受け入れるには、そうするしか無かった。身体を斜めへ倒し、腕だけで支えて、突き刺さった肉棒を膣のなるべく浅い位置で擦る。しかし、それはそっくりそのまま蓮の弱い部分をより差し出す事でもあった。
前戯の指先が届く、慣らされやすい膣の上方。そこが太く熱された肉茎が押し上げる様に擦られ、同時に雄だけが届く奥部を雁首で削られていく。
ダメだ、だめだ、だめ、だ。蓮の内側のなけなしの理性が叫んでも、腰は既に自分の思考から離れて動き、男の股に柔らかな尻肉を押し付けていた。
「く、ふっ……! いいのう、いいぞぉお嬢さん……!」
「んん、んは、はぁっ、んっ! やぁ、ふといの、ナカ、だめなのっ、にいっ……!」
「そんな雌面で喜んで腰振りながらじゃ、全然説得力が無いのう」
「してないっ、してないぃっ……! ひっ、んんっ! だめ、き、もちっ、い゛――ん゛っ!」
鋭敏になり続ける感覚が蓮の腰をが浮かし、尻の動きが前後から上下に徐々に変化していく。ただ前後に押し付けていただけの尻肉が、時と共に静けさな部屋の暗がりでぺたぺたと音を鳴らす歓楽の楽器と成り果てていく。
言ってしまえば終わりの言葉が口から衝いて出そうになるのを、必死で留める。しかし、蓮が腰を動かす毎に流れ込んで来る悦楽は、その虚勢を剥がして心の堤防に穴を空けていく。
――あれ、何を言ったらダメなんだっけ。何で、言ったらダメなんだっけ。腰を動かす事だけに、意識が沈んでいく。自分の内側を抉る大きな熱が、蓮の中の”何か”を忘れさせていった。
「あ、あ、あっ! はぁっ、んんっ、ふうっ! いっ、イ――や、やぁ、やあっ……!」
「はは、お嬢さん、何か言いたげだなぁ。ほれ、変に声を抑えてもいい事無いぞ?」
「や、やぁ、あぁんっ! だめ、だめだめ、だめ――」
「……ほれ!」
「あ゛ッ――」
あられもない姿勢で腰を振る速度を早めていながら、蓮が必死で特定の言葉を抑えている事に男は気付いていた。もはや口でしか抵抗出来ていない目の前の女が滑稽で仕方ない。
しかし、意固地に最後の一線だけは中々越えない。そこで男は、ここに来て一度だけ自身の腰を上へ跳ね上げてやった。
「――イクッ、イくぅうッ! ひあっ、あぁあぁんッ!!」
「おほっ、締まる締まるっ……!」
その一突きが蓮の最奥を再び穿ち、最も恐れていたその衝撃で蓮の意識は吹き飛ばされる。それと同時に、これまで最も蓮が言いたくなかった叫びが口を衝いて出てしまった。
それに合わせて一気に緊縮する蓮の膣が、収めている肉棒全体を絞め上げる。先程味わったモノよりももっと深くに達しただろうその身体が、雄と精を望んで吸い付く。
イった。イかされた。イって、しまった。ちかちかと点滅する脳内と、痙攣を止められない全身は、蓮が男の肉棒に屈した事をこれ以上無く証明していた。
既の所で射精を堪えた男は、喉を全て晒す程に大きく仰け反っている蓮の艶姿を眺めた。
「あッ、あ、はぁあんっ……! スゴッ、いっ、のぉっ……」
「いやぁ、気持ち良かったぞお嬢さん。お嬢さんは
「はぁ、あ……きもち、よかっ、た――ぁ、あっ……!?」
半端に途切れた意識の中で蓮は何も考えられず、男の質問に反射的に返答してしまう。
それは男の言葉をそのまま復唱しただけの、しかし紛れもない本心からの言葉。蓮は言い終わってから直後に自分の放った言葉の意味を考え、そして絶望した。
気持ち良かった。自分から肉棒を迎え入れ、喜んで尻を振り、快楽に溺れて我を失った。それも、男が満足するよりも前に二度も絶頂した上、最後には自分から男に屈したと宣言してしまった。
それを理解した瞬間に蓮は虚勢と共に力の全てを失い、腕を崩して後ろのベッドへ倒れ込んだ。
「あ、あぁっ、あぁぁっ……! はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「はっはっは、気持ち良くなれて良かったなぁお嬢さん。まぁ、わしはまだ出してすらないが」
蓮が仰向けとなり、秘部から肉棒がすっぽ抜ける。股を大きく開いたまま、膣口を開いて愛液をベッドに漏らしている。美貌を台無しにする猥りがましい姿を晒す蓮を、男は笑い飛ばした。
全身から力が抜けた蓮が、なんとか頭だけを起こして男を見ようとする。しかしそこから見えるのは、自分が散々に啼かされた、雄々しい肉棒が未だに真上へ直立している景色だけだった。
自分は一人で勝手に動いて絶頂し、男は主導権を渡した上で余裕を保っている。あまりに惨めな現実が、そこにあった。
「ほれほれ、どうしたお嬢さん。寝るにはまだ早いぞ、まだわしは満足しとらんのだからな」
「う、ぐ、ううっ……」
「別にいいだろう、もう。さっきみたいによがりながら喜んで腰を振ってれば、わしもお嬢さんも気持ち良くなって良い事尽くめじゃないか。ぼけっとしてないで、さっさと挿れ直したまえ」
そう言いながら男はびくびくと肉棒を動かし、倒れ込んだままの蓮を誘う。
自分の愛液で濡れててらてらと光る、受け容れきれなかった巨根。それが、再びこちらを待っている。
未だに肉棒の感触が残っている自身の下腹部が疼く。また、あれを挿れなければならない。あれを挿れて、射精させて、中で呑み込まなければならない。
しなければならない。だから、する。だから、だから。
何故か同じ言葉が巡る脳裏に違和感を感じながらも、蓮は震える身体をのろのろと起こした。
「……い、れる、わよっ――ん、んんっ……!」
再び男の股座に跨って腰を浮かせ、先程と同様に降ろして男の肉棒を受け入れようとする。しかし最初と違うのは、既に自分の身体が男の巨根を知っているという事だ。
十分に愛液で満ちた蜜壺が、肉棒により押し拡げられていく。広がった亀頭も、肉茎の太さも、肉柱の長さも。その全てを知っている秘部は、前と違ってあまりにもあっさりと巨根を受け入れていく。
太く、硬く、長い。それまで異物でしかなかったそれを、蓮の身体はもはや悦んで咥え込んでいった。
「くぅ、んっ……ん、ふぅうっ……! んはぁっ、はぁ、はぁ……」
「今度はちゃんとスムーズに挿れられたじゃないか、偉い偉い」
そうして今度は前の半分にも満たない時間で、蓮は自身の最奥にまで男の肉棒を迎え入れた。先程の体勢を厭い、今度は身体を前に傾けて――つまり、男の顔に向き合う様にベッドに手を付けて繋がっている。
熱に浮かされ蓮の全身に浮かんだ汗が、ぽたぽたと滴になって男の上体に落ちていく。垂れた両乳と、自分ですら自覚出来る程に歪んだ顔が男の眼前に晒されている。男の瞳に、今の自分が映ってしまっている。
「あっ、はぁぁっ……! だめ、腰、動いちゃ、あぁっ……! あっ、あんっ!」
「っ、ようやく、素直になってきたのっ……うっ……!」
今の自分の顔を見られたくなくて、上体をさらに沈ませる。しかしそれは、寝転がる男に縋り付く様に抱き着いて、胸を押し当てながら腰を動かしているという形にしかなっていなかった。
一度雄からの快楽を知り、雌の火が点いた身体が情動のまま動き始める。勃った乳首を擦りながら自分の柔乳を男の胸板で潰し、男の耳元で激しく甘く喘ぎながら尻を叩き付ける様に腰を振る。
一切の躊躇を捨てて自分から快楽を受け入れ始めた蓮は、男の反応が変わった事を自分の蜜壺の内側で感じ取る。この角度だ。こう動けば、気持ち良く出来る。気持ち良い。
「いいっ、イイのっ! あ、あ、あぁんっ! 奥、ごつごつって、されて、えっ!」
「くおっ、おっ……! イイぞっ、そのままもっと、もっとケツを振れっ……!」
「はぁ、あんっ! きもちいいっ、そこ、きもちいい、のぉっ! ふあ、ああんっ!」
男の好む挿抜を完全に見定めて腰を使い始めた蓮へ、男はその背を両腕で抱き締めて離さない様にする。
この行為に及んで初めて見せた、男からの要求。『このまま続けろ』、その意思に従いつつ蓮は自身の快楽の為に尻を男の股へ打ち付け、肉棒を膣の全体で貪り、柔らかな肢体を摺り合わせる。
全身で男を愉しみ、雄を悦ばせる。一心不乱に
「っ、動く、ぞっ、お嬢さんっ――お、おっ!」
「ああんッ! それ、それイイ、イイのッ! もっと、もっと突いて、犯してぇっ!」
「……っ! く、う、うっ!」
「んあぁんッ!」
蓮から一方的に与えられる快楽についに耐え切れなくなった男は、欲望のまま自分から腰を動かし始めた。蓮が尻を下ろす重みで反発するベッドのスプリングを使い、蓮の最奥を突き上げる。
独りよがりに動くのとは根本的に異なる快楽の衝撃に、蓮の蜜壺と声はより反応を大きくする。自分の中の雌が叫ぶまま、蓮は突き上がる肉棒とタイミングを合わせて腰を振り、より深く・より強く自分の膣に肉棒を受け入れる。
苦しい程に拡げられて、痛い程に奥を穿たれる。その全てが、気持ち良い。何もかもを忘れ、蓮は自分が抱いている雄を享受して歓喜の声を上げていった。
「ほれ、ほれっ! どうだ、気持ち良いか、お嬢さんっ!」
「ああ、あんっ! イイッ、きもちいいのぉっ!
快楽の坩堝に呑まれる中で、蓮は無意識の内に封じ込めていた本音を発露させてしまった。
男が欲しかった。目にしたその時から心を奪われていた、この巨根に犯されたかった。しゃぶり回す事への抵抗より、この剛直を悦ばせる事に夢中になっていた。
雄が欲しかった。気持ち良くなりたくて腰を下ろし、自分から弱い部分を差し出し、自分だけでは届き得ない最奥を突かれ、全てを忘れられる雌の快楽に溺れたかった。
”抑えが利かなくなってきている”、そう以前に感じた事があった。それは真実その通りであり、蓮は抑え切れない情欲のまま、調査という大義名分を使って男に犯されに来ていただけだった。
「あっ、あっ、あッ! だめっ、イクッ、イく、いくぅっ! もう、イっちゃ、んぅうッ!」
「お、ああっ……! いかん、こっちも、そろそろ……!」
「
「うおっ……!?」
完全に自分の肉欲を自覚した蓮は、快感に呑まれて男に寄り縋り、快楽を求めて肉壷をうねらせ、悦楽を欲して欲して精を強請っていった。
自分の内側を掻き回す肉棒が奥から愛液を汲み上げ、叩き付ける尻がぐちゃぐちゃと水音を鳴らす。体液が散って混じり合う感覚に酔いながら、蓮は自分の為に男の射精を求め続ける。
叫喚とすら言える程の耳元の嬌声と、短くなっていく膣の収縮の間隔に、男もまた追い詰められていく。雌が求めるままに
少しでも永く、この雌穴を味わいたい。ただそれだけの思いで射精を留めようとするが、蓮はそんな男の思考など露程も考えず只管に腰の動きを速めていった。
「だめぇっ、イくぅっ、イクッイクッ! ふあっ、あッ、あ゛――あぁあぁあッ!!」
「う、くっ――!?」
そして蓮は、四肢で男の身体を固める様に強く掻き抱きながら、深い絶頂へと至った。
降り切った子宮口が亀頭を捉え、柔らかかった肉襞が一斉に肉棒へ絡みながら縮み上がる。咥え込んだ部分から精を搾り取ろうと波打つ膣で、咥え込んだ巨根を存分に味わいながら雌として果てる。
愛液を潮の様に噴き出しながら、蓮は自分の全てを焦がす白い雷に浸っていった。
「ダメだ、
「あぁあッ!? でてるっ、ナカッ、あ゛ッ――またイクッ、イッ、くぅ……んぅうッ……!!」
蓮に全身と肉棒を締め付けられた男も、蓮の絶頂から遅れて腰を跳ねさせ精を吐き出した。
絶頂の最中にさらに奥を突く尖端が、蓮の子宮口を抉じ開けながら精を浴びせていく。それにより再度蓮の思考は再び頂きへと跳ね飛ばされ、最果てから下りる事を許されなかった。
互いに抱き合いながら、互いで絶頂し合う。淫欲に染め上がった意識の中で、愛液と精液を互いの身体に染み込ませていく。
時間も忘れる様な長く深い歓喜の極致を経て、ようやく二人の痙攣は終わった。
「はぁーっ、はぁーっ……ナカ、出ちゃう……」
「ふぅー……随分搾られてしまったわ、良かったぞお嬢さん……」
全身から汗を吹き出しながら、蓮は男に身を預けて脱力し、胎に吐き出された白濁を愛液と共に結合部から漏らす。男もまた蓮の柔らかな全身と膣の感触を感じながら、幸福の余韻に浸っていた。
思わぬ拾い物をしたモノだ。顔も身体も味も申し分無し、生で中出しまで許す女。弥武組という厄が付いていなければ、
とはいえ、無料でこれだけの女を抱けた事を考えれば贅沢は言えまい。そう思いながら男はのしかかっている蓮の身体を退けようと両肩に手を当て――
「……む? なんだお嬢さん、もう十分だ、降りてくれたまえ」
「――……」
男が力を入れると同時に、蓮は男に抱き着く力を強めた。
離そうとする分だけ、離れようとしない。そんな蓮の反応を怪訝に思っていると、蓮は腰を左右に捻る様にくねらせ始めた。
「ん、あっ……! おじ様は、もう、満足なの、っ……?」
「……く、くくっ。それはむしろ、わしがお嬢さんに聞く事じゃあないのかね」
射精直後で感性を増している肉棒へ、蓮の身体は訴えかける。『まだ足りない』、『もっと欲しい』。口では男の意思の有無を問いながらも、身体は明け透けに続きを求めていた。
僅かに取り戻した蓮の理性は、それが合理的な事だと判断していた。蓮はこの家に一晩しか留まれず、その間に男の居る会社のデータを抜き取る必要がある。
それを考慮すると、男を疲労によって深く眠らせた上で、この二階のどこかにあるだろう仕事部屋のパソコンに接触する必要がある。何をされても朝まで完全に目が覚めない程度の疲労を負うのが理想だ。
どうせ痴態は散々に晒した。それなら、一度も二度も同じだ。
どうせ一晩限りの関係だ。それなら、何度でも同じだ。
どうせ、
「ま、お嬢さん次第かの。精々わしのモノにねだるといいわ、大きくして下さい、犯して下さい、ナカに出して下さい、となぁ?」
快楽を齎す淫らな腰使いに誘われながらも、男は自ら動きたくなる欲求を抑えて蓮を煽る。
自分の意思などもはや関係無く、この女は確実に犯されたがっている。それなら自分から動くまでも無く、ただ傍観していればこちらは勝手に気持ち良くなれる。
蓮が男の身体から上体を持ち上げる。熱を宿して潤んだ瞳が、男を見下ろした。
「――お願い……もっと、シたいの……もっと、ナカ、気持ち良くして……?」
情欲に浮かされた表情で、蓮が男を見つめる。
そのまま蓮はもう一度身体を倒し、男へ自分から唇を重ねた。
◆ ◆ ◆
(……また、やっちゃったわ……)
それから暫くした深夜、蓮は余す所無く男と自分の体液で塗れた身体を起こし、数える事すら放棄する程に先程まで何度も交わっていた男の腕の中から離れた。
腕より蓮が抜け出しても気付かない程に、男は完全に眠りこけている。その事自体は目論見通りであり、これから朝まで蓮はこの家を探り放題となったのは喜ばしい事だ。
しかし、完全に冷静となった今考え直すと、性交による疲労だけで眠らせる必要は無かったのだ。男は一度目の性交を終えた時点で十分満足に至っており、その時点で軽度の入眠用の薬毒をゆっくりと吸わせれば自然と今と同じ状況を作り出せた。
その考えに至らなかったのは、完全にシチュエーションに酔ってしまっていたからだった。
『あぁあッ! イイッ、イイのぉッ! もっと、もっとシてッ、おくッ、突いてぇッ!』
『イくッ、イク、のぉッ! おっきくて太いので、イかせてぇッ! あ、はぁあぁんッ!!』
『あーッ! あッ、ああ、あ゛ッ! ナカッ、なかだし、シてぇッ! あ、はッ、~~~ッ!!』
目を瞑れば、先程までの乱れに乱れた自分の痴態を鮮明に思い出してしまう。
行きずりの男と一回限りの情交、類を見ない巨根に奉仕させられる被虐的な感覚、自分から好きなだけ快楽を貪れる相手。その全てが綯い交ぜになった快楽に酔って、判断力は途中から完全に消えていた。
腰を振ってイき、膣奥を突かれてイき、精液を出されてイき。男の肉棒の全てで、自分の動きの全てでイき続けて。悦楽と淫欲に耽溺して、あらゆる体位で雄を愉しみ続けた。
(……あぁぁ、もぉぉ……! 思い出す度に恥ずかしくなるっ……! 何よ、”もっとシて”って、もうっ……!)
ベッド近くに置いてあるティッシュ箱から大量の薄紙を抜き取り、注がれた精液を膣に力を入れて絞り出し、それら全てを拭き取っていく。
二度と関係を持たないだろう相手ならば、どんな醜態でも晒して良い。どれだけ快楽に溺れても良い。
(……はぁぁ……とにかく、さっさと用事は済ませちゃいましょ……)
未だに膣奥に残る精液の感触の残滓に気を重くしながらも、蓮は裸のまま寝室を出て、二階の間取りを確認し始めた。どうせ見る人間も居ないと、蓮は堂々と全裸で家の中を歩き回る。
足音を気にする必要も無く歩けば、すぐに男が仕事用に使っているだろう部屋は見つかった。書斎の中で、大型の机の上に乗っている大型モニターとパソコン。蓮はつかつかとパソコンの電源を点け、そしてすぐに踵を返す。
そのまま蓮は一階へ降り、真っ直ぐ脱衣所へと向かった。
(えーと、この辺に……あ、あったあった)
脱衣所の扉を開く。洗濯機に放り込んだ蓮の服は、既に洗濯と乾燥を終えていた。
しかし蓮の目的は自分の衣類などでは無く、脱衣所の隅に置いてある
(最近のメモリは小型で助かるわねぇ、ホント)
指先で摘める、数センチ程度のUSBメモリ。事前に自分の
パッドを挟んで一緒に仕込んでおけば、少なくとも男にはバレない物の隠し方。隠せる大きさも形状も限界があるにせよ、小型・高性能化が進んだUSBメモリであれば支障は無かった。
拾ったメモリを持って、蓮は再び階段を登って二階の仕事部屋へ戻る。既に起動を済ませ、モニターにパスワード入力画面を浮かばせているパソコンにメモリを差せば、内蔵しているソフト通りにパスワードはあっさりと破られ、デスクトップ画面が映る。
「よしよし、結構整理されてるじゃない。楽で助かるわ」
そのまま蓮は目ぼしいファイルを片っ端からメモリ内へとコピーしていき、並行して自分のパソコンからいつでも情報を確認出来る様に
横着して会社内のサーバーでデータを管理・完結させないからこういう目に遭うのよ。それまで散々に男のモノに鳴かされ続けた恨みも込め、そう呟きながら蓮は悪い笑顔を浮かべる。
そんな事を考えていると、蓮は未だに自分の最奥に留まって出てこない精の塊を自覚してしまった。
(……っ、もう、どんだけ出してんのよ……出させたのは私、なんだけど……)
思わず秘部から白い雫が漏れ落ちそうになるのを、蓮は下腹部に両手を当てて既の所で堪える。連想して自身の醜態を思い返して顔を赤くしている内に、メモリは作業を全て終了させた。
蓮はその場で思考を打ち切ってパソコンからメモリを抜き取り、電源を落として仕事部屋を後にする。そして再び一階の脱衣所に戻って、洗濯機の扉を開けて既に乾燥が済んでいるブラジャーの内側にメモリを仕舞い直した。
この場で服を着て出ていく事は容易だが、もしもそんな事をすれば深夜に家の中を物色して一人出ていった、と男に疑われる形となる。よって蓮は、男が目覚めるまではこの家に留まらなければいけない。
男が目覚めるまで、男のベッドの、腕の中で。
「……いや、何考えてんのよ。もうただ寝るだけでしょ」
男の寝室へと戻りながら、蓮は再び自分の思考が妙な方向にずれるのを感じる。
流石にもう変な事をする必要は無い。怪しまれない様に朝まで男の傍で眠って、男が起きたら服を着て礼の一つでも言い、真っ直ぐ家を出ていけばそれで終わりだ。
これからの展望を確定させながら、蓮が寝室の扉を開ける。自身と男が撒き散らした、濃厚な情交の臭いが鼻を突いた。
「っ……」
これほどか。これほど性の臭いが充満する程まで、自分から腰を振って交わっていたのか。
形として示された自分のこれまでの痴態に蓮は顔を顰めながら、ベッドに戻り全裸の男が待つ布団の中へと入り込む。
布団の中はさらに濃厚な臭気が蒸し風呂の様に満ちていた。男か蓮か、汗か精液か愛液か。そのどれともわからない、そのどれでもある混濁が滲んで染み付いているシーツと熱気を、全身の肌が感じてしまう。
行為の最中では興奮を煽るだけだったそれも、欲が引いた今では不快なだけの粘り気でしかない。むしろ布団の中にいる方が身体を冷やすのでは無いか、そう思える程に布団の中はぐちゃぐちゃに濡れていた。
(……これはしょうがない、わよね……)
朝まではこの布団の中に居なければならない、しかし布団に入るだけでは身体を冷やしてしまう。
そうなると、暖を取れる手段は一つ。蓮は寝入ったままの男へ寄り添い、脇腹に抱き着いた。
少しでも温もりを求めようと、蓮は男の太腿へ絡める様に自身の脚を乗せて重ねる。横に伸ばされた男の腕を枕代わりとし、自身の腕と柔乳を男の胴に密着させる。
そうしても深く寝入った男は軽く身動ぎをするだけで、眠りから覚める事は無い。思い通りに疲れさせた事を喜ぶべきか、それともそれだけ乱れてしまったしまった自分を恥じるべきか。二つの感情が揺れる途中で、蓮は思考を放棄した。
もう、寝よう。疲れているのは自分も同じだ。抱き枕としては不愉快極まりない男の身体に縋り付き、僅かな暖を取りながら蓮は瞼を閉じる。
「……ん、ぅっ……」
硬い胸板、太い腕と脚、そして何度も重ねた熱。
男の感触を受けた蓮は、疼く秘部を無意識に男の身体に擦り付けつつ、眠りに落ちた。
蓮ちゃんハニートラップ編でした。
前回の章がボリュームデカすぎたので、今度は素直に蓮ちゃん単独でスタンダードな話に仕上げました。実家の様な安心感。
ハニートラップに味を占めて好き放題ヤっちゃう痴女さん……絶対一度ヤったらズルズルと何度も繰り返すと思うんすよ蓮ちゃん……
あとアンケート君が「やだやだ蓮ちゃんもっと見たい(バタバタ)」としか機能しなくなってるので、章の度にリセットする投票形式にします。
しかしその結果の通りに作者が書くワケではなく、あくまでその時点での読者の傾向を確認するだけの物なので、あんまり期待はしないで下さい。つーか蓮ちゃんが見たいのは作者も同じです。つか全員見たいです。
次話で見たいヒロインは誰ですか?
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蓮ちゃんワンモア
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ユーリヤさんくれ
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真魚ちゃんでしょ
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蜜柑さんとか良くない?
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ルージュさんという大穴