※この作品はR-18です。

Ith-Videoは観測する   作:灰の熊猫

68 / 70
時点:Evening Survivor
想定:ススキノシェルター到達前。


浴びる程の(蓮:Sv)
*無法痴態


 ――溂幌(らっぽろ)市。街一つが異界化するという未曾有の大災害において、この地より安住の地は完全に消滅した。

 太陽の光と温かみは狂気に満ちた空気へ成り代わり、市内にいた生物の大半は化物へと変貌。ある日を境目に、この街の中では人こそが異物(マイノリティ)と化した。

 しかし、生き残った人間がゼロになった訳では無い。この”ススキノシェルター”は、溂幌市内で現存する数少ない生存者達の居住区であった。

 ……生憎、”安住の地”が何処にも無い事に変わりはなかったのだが。

 

「――ちょ、ちょっとっ!? いきなり何よアンタっ……きゃあっ!」

 

 大規模な異界化への対処という依頼を受け、蓮は溂幌市に踏み込んだ。しかし蓋を開けて見れば、この地の危険度は当初の予想・想定を遥かに超えていた。

 表を歩くだけで正気を削る程に濃密な瘴気、街全てが敵とばかりに襲い来る無数の異形達、そして内部からは脱出不能の強固な結界。そんな中で、蓮一人の能力や物資で真っ当に戦い続けるには無理があったのだろう。

 こ(・)う(・)なった細かな経緯は既に忘れたが、確かな事実はふたつ。この異界内での戦いの過程で、蓮はススキノシェルターの管理人に対して七千万円相当の負債を負ってしまった事。そして、その返済が終わるまではこの地で労働する義務が与えられた事。

 

「やっ……! このっ、やめなさいよっ! そんな盛らないで――ひぅっ」

 

 飲み水にすら困る今では高級ホテルに匹敵する価値を持つだろう、シェルター内にあるシャワー室。その一角から争う様な物音と、女の焦った声が響いてくる。

 管理人――”貴婦人”と呼ばれる彼女が蓮に与えた罰は、借金分の働きが終わるまでシェルター内で労働するという真っ当な処分。しかしそれと同時にこのシェルターの住民には、”可能な限り繁殖に励め”という倒錯しきった掟が敷かれている。

 即ち、性(・)交(・)の(・)義(・)務(・)。一時的とはいえこの地の住民となった今の蓮は、そんな掟に従う義務まで同時に負ってしまった。

 

「~~~っ! わかった、わかったから! 処理してあげれば、いいんでしょ……!?」

「ハァッ、ハァッ……おせぇよ……早く、早くシてくれぇ……」

 

 ガラス張りのシャワールームの中では、体を洗い流している最中だった蓮が、断り無く侵入してきた男に後ろから両腕を抑え込まれ、乱暴に壁際へ押し込まれていた。全裸の男は口端から涎をだらりと垂らし、一心不乱に全身を蓮の柔らかな肢体に擦り付けてくる。

 ”貴婦人”の魔力による影響か、ススキノシェルター内部には人間の性欲を過剰に促す空気が満ちている。今蓮を襲ってきた男も、それにより人間的な理性を奪われた”普通の住民”の一人だ。

 女が一人でシャワーを浴びようとする。そんな人として当たり前の事は、今この地にとっては性交(ろうどう)のきっかけを与えるだけだ。この場所の”普通”に未だ慣れていない己の迂闊さを、蓮は呪った。

 

「こっち、こっち向け……! 乳ぃ揉ませろ……!」

「ぅむッ!? んっ、くう、んぅ……ぐっ、ちゅ、むぅうん……づっ!」

 

 蓮が覚悟を決めて向き直れば、正気を失った男が蓮の唇に貪りつく。その勢いと情欲のまま、更に男は蓮の突き出ている無防備な豊乳を両手で鷲掴んだ。

 全裸の女、容姿も整った女、好きにしてもいい女。女、雌(おんな)、穴(おんな)。狂気的なまでに情欲に染まった男の知能は、既に蓮の体を味わう事しか考える事が出来ないでいる。

 痛い程に荒々しく胸を揉んでくる男に強い嫌悪感を抱きながらも、蓮は一刻も早くこの状況を終わらせるべく男の肉棒へ自分の手を伸ばした。

 

「っづ、ん、んぅふ……! はぁっ、んちゅ、じゅる……ちゅ、ちゅぅ、んむんっ」

「お、お、おっ……! あーイイ、イイ……」

 

 壁に押し潰されない様に左手で男の体を押し返しつつ、自分を求める乱暴な口に舌を差し出し、怒張しきった肉棒を右手で優しく握って撫で擦(さす)る。

 無限に込み上げる息苦しさと痛さと屈辱には耐えるしかない。そうしてやるだけ、男の力は快楽に満たされ僅かに弱まる。暴走した情欲の正体は飢餓の様なものであり、欲するモノを与えてやれば鎮まる。それを今の蓮は嫌でも理解していた。

 これは自分を守る為にやっているだけだ。ただの義務であり、避けられない事だ。男を悦ばせようと努める自身の卑しさにそう言い訳をしながら、蓮は男に無防備の身体を差し出し続ける。

 

「ぷは、ぁ……別に逃げないから、ちょっとは優しくしなさいよ……そしたらもっと、き、気持ち良く、シてあげるから……ッ」

「ハァハァ……もっと、もっと……」

 

 少しの満足か或いは息切れからか、男が強引な口付けをやめる。その隙に蓮も男を誘惑する様に、掌で亀頭を包み込む様にさすりつつ、逆に自分から身体を押し付けて耳元で囁きかけた。

 まるで売女だ。理性(じぶん)の内から来る当然の非難を噛み締めながら、蓮は動きの鈍った男に対してより積極的な奉仕へと移る。

 両胸を揉まれながらも左腕で男を自分から抱き寄せ、肉棒から出る先走りを右掌に塗って手淫のオイルとする。滑りを得た蓮の右手が、破裂寸前とばかりの肉棒を根本から扱き上げる。

 もっと、もっともっと。男の呻き声の様な譫言(うわごと)に応える様に、蓮の滑らかな右手が肉棒を往復する速さも上がっていく。この調子ならすぐにでも射精させて終わらせられるかもしれない、そう蓮が思い始めた所で。

 

「ハァハァッ、出してぇ、出してぇえぇ……! ちょっとしゃぶれ、やっ!」

「きゃあっ!? う、臭っ……!」

 

 奉仕されるがままだった男が急に蓮の両肩を掴み、強制的に跪かせた。そうして尻餅をついた蓮の眼前に、鼻奥を突く様な刺激臭を放つ肉棒が突き付けられる。

 鼻がひん曲がるかと思う程に不潔に熟成したそれに、思わず蓮は顔を背けてしまう。が、それに気を悪くした男は蓮の頭をバスケットボールの様に掴み、唇へ肉棒を力尽くでねじ込んだ。

 

「んぐむぅッ! っぐ、ん゛、げほ、ごほ――むぐ! ぐ……ん、んっ、んんッ……!」

「あー、あー……! コレだよコレ……! もっと舐めろよ、吸えよぉ……!」

 

 蓮の口に突き入れた肉棒を、がっちりと掴んで離さない蓮の頭を、行為に関係ない全身のあちこちを。熱に浮かされた男はろくに思考せず、無作為かつ乱雑に揺れ動かす事で快楽を得ていく。

 女であればなんでもいい、それが美女であればもっといい。とにかく自分の肥大した情欲を解消したい、吐き出したい、気持ち良くなりたい。さ(・)せ(・)ろ(・)。

 あらゆる道徳が消失し三文字まで削られた考えを、男は無抵抗に努めている蓮にぶつけていった。

 

「んむっ、ぐっ、むっうっ、んぅっ! じゅむ、ちゅ、うっ……ずぅ、ん、ぅ、んッ」

 

 天国の様な心地で男は気持ち良くなっていたが、蓮にとっては地獄の様な苦痛でしかない。口を犯され喉を圧され、窒息寸前で痛みと時間が長く延ばされる様な感覚の中で、必死で唇をすぼめ舌を肉棒に這わせる。

 早く解放して欲しい。早く楽になりたい。早く射精し(おわっ)て欲しい。余裕が削られていく内に蓮の思考も単純化していき、その唯一の手段として自然と口による奉仕がより強まっていく。

 極めて一方的な相互関係の一致により、二人の行為は段々と熱を上げて勢いを増していった。

 

「むっ、ちゅう、じゅるる、むぅんっ! ん、くぅ、んんっ! んぁ、ぁ、う、ふぅうん!」

「あぁ、あぁぁ……! あー、あー、あー……!」

 

 湧き出る唾液を舌で満遍なく肉棒に塗りたくり、自分の頭を乱暴に動かす手に合わせて自分も頭を前後させ、酸素を確保すべくむせかえる様な股間の臭いごと鼻で空気を吸う。

 どこまでも無抵抗に、理不尽な凌辱を受け入れ続ける。まともな人間の視点で見れば自分から望んで犯されていると見られそうな痴態と認識していながらも、口は止まらない。

 早く射精させなければいけない。早く終わらせなければいけない。何故なら、早くしなければいけないから。空気を奪われ続けて思考能力が低下する中、蓮は醜く呻く男の肉棒を強くしゃぶり上げていった。

 

「あー出る、出る出る、出るうぅっ――お゛ッ!」

「んんんッ!! ぐ、んぐっ、むぅんっ……んぐ、む、こく、こくっ……」

 

 時間感覚が失われそうに感じてきた頃合いで、男が唐突に限界を迎えて射精する。肉棒を咥える事だけに集中していた蓮は備える事も出来ず、急に喉へと吐き出される白濁を反射的に飲む事しか出来なかった。

 不随意にびくびくと絶頂に浸る男は、未だ蓮の頭を離そうとしない。自分の精液は全て飲み込めというオーダーか、あるいは快楽のあまり脳が焼かれて動けないでいるのか。どちらにせよ今の蓮に選択肢はなく、びくびくと痙攣するごとに流れ込んでくる精の塊を呑み込むしかない。

 多量の精の味と男の臭いを押し付けられ、吐き気がする。飲み水にも困っている今、この地の住民の多数が身体を洗う事も出来ずに汚臭にまみれている。それがこの場所における”普通”であり、気にする人間の方がおかしいのだろう。

 それを頭で分かっていても、今の蓮にはまだ”普通”を受け入れる事は出来なかった。

 

「――ッ、ぷはぁっ! はぁ、はぁ、んっ、ん……もうっ。乱暴すぎ、よっ……」

 

 こちらを掴む男の力が一瞬緩んだのを感じ取り、蓮は全力で頭を引いて強制的な口淫より逃れる。殆どは飲み込んだが、こびりついた一部の精液がその際に口より零れてしまった。

 全て飲めなければ気を悪くする男もいる。それを恐れた蓮が跪いたまま男の顔色を伺ったが、その瞳の焦点はまるで定まっておらず、自分の欲の捌け口である筈の蓮すら見ていない。

 どうやら本当に正気が無いらしい。この男は抑え切れぬ欲求と衝動のままに行動しただけで、元々蓮の事など眼中にすら無いのだろう。

 こんな下衆に自分から奉仕したのか。自由となった呼吸により蓮の思考と理性(プライド)が吹き返すも、そんな物は今この地において何の役にも立たない。

 

「んぷ……これだけ出せば少しは落ち着いたでしょ、それなら離れて――」

「……あぁあ? そんなん、ダメに決まってんだろ……!」

「――え? ちょ、ちょっと! 何でまた大きくしてんのよっ!?」

 

 その場を去ろうと蓮が立ち上がるも、男は再び蓮の腕を取ってそれを邪魔する。瞠目した蓮が視線を落とせば、そこにはつい先程自分の口で落ち着かせた筈の、未だ硬度を保ったままの肉棒があった。

 男の表情からは先程までの狂った焦燥は抜けている、しかし暴走した情欲はまるで収まっていなかった。ただ”雌(えもの)”としか認識していなかった対象が、”蓮(おんな)”に変わっただけ。

 美女が全裸で目の前にいるのだ、何を我慢する理由がある。限界の状態から中途半端に解消された男の知能は、むしろ更に女にとっての敵(ケダモノ)へと成り果てた。

 

「あぁたまんねえ、良い女だぁ……! でけえ、やわらけえっ……!」

「ひうんっ……! やっ、めっ……乳首は、だめ、なの……やんっ!」

 

 ただ乱雑に肉を捏ね回すだけだった手つきが、女を弄び愉しもうとするモノへと変わる。男は掌全体で柔らかさを堪能しながら、逆の手で蓮の乳首を摘んで擦る。

 苦痛だけの奉仕をさせられてきた今の蓮の身体に対し、それは相対的に快楽の呼び水となった。ただ痛いだけだった男の手は、まだ乱暴ながらも愛撫と呼べるものにはなり、ごつごつとした掌の触感が性感を刺激してくる。

 男の手つきが特段上手いという訳では決して無い。しかしそれでも蓮は今、確かに男の手で悦を感じ始めていた。

 

(くぅうぅ……! この場所、ホンットに厄介ねッ……!)

 

 その最たる理由は、ススキノシェルターという土地の魔力。男がこうして色狂いに堕ちた様に、この地に居る限り蓮にも魔力による影響は及ぶ。

 異能者である蓮は一定の精神耐性を持つが、閉じた結界内というアウェーで完全に耐えられる訳ではない。拙くとも愛撫と認識すれば肌が過敏に反応し、鼻に残る肉棒や精液の匂いを意識すれば臍の下が勝手に疼きだす。

 媚薬の様な科学的な物が原因であれば毒操作能力(トキシキネシス)でなんとか出来るというのに。理屈や意思をよそに昂り熱を帯び始めている自分の肢体が、蓮は恨めしくなった。

 

「なんだよ、お前もぐちゃぐちゃに濡らしてんじゃねえか……うお、アッツ。良い締まりしてんなぁ、俺の指がそんな気持ち良いのかぁ……?」

「あんっ! ……ーッ、ん、くっ、ふぅっ……! ふあ、んっ、んぅ……」

 

 胸や乳首を散々と触ってから、男は蓮の秘部へと右手を伸ばし、濡れた陰裂へいきなり中指を挿れる。いきなりの事でありながら、蓮の肉壺は男の指を呑み込む様にスムーズに受け入れ、食い付く様に膣内が窄まった。

 十分な愛撫もされた訳でもなく、むしろ屈辱的な奉仕を一方的にさせられただけ。そんな状況でありながら蓮の秘部からは十分な愛液が溢れ、触られる箇所からは甘い感覚が走り、肉壺を穿る指の感触で悶えてしまう。

 手早く一度射精させ、男の気が抜けた隙にこの場を離れる。そんな蓮の当初の目論見は、想像以上に暴走した男とそれに応えようとしている自分自身によって破綻しかけていた。

 

「~~~ッ! い、いいから、もういいから! やめなさいって……!」

「あぁ? 何言ってんだ、こんな股グズグズにしといて……”やめる”? 何をだよ、あぁ?」

「やっ、ああんっ! か、勘違いしないでよ……もう、余計な事はしなくていいから、って言ってるのよ」

 

 今度は全力で押し返そうと抵抗を見せる蓮に、男は苛立ち混じりに右手を蓮の股に押し付け、中指を根本まで深く沈ませる。こんなにも指(じぶん)を受け入れているくせに、今更何を抗っているのか。

 そんな事は蓮自身も本当に嫌と言う程分かっている。今更拒む事が出来る身の上でも状況でもない。だが、最(・)悪(・)の(・)事(・)態(・)を予防する事はまだ可能だ。その為に今すべき事は――

 

「――挿れて。中でも外でも、好きな所に出していいから。……早く、犯して」

 

 男を軽く押し返した蓮は自分からシャワー室の壁に手をつき、男に背を向けて下半身を突き出す。それは完全に男から犯されるのを望む、服従の姿勢であった。

 あまりに”雌”なその光景に、ごくりと男が唾を飲む。たった今自分はこの極上の女を独り占めし、好きに犯す事が出来る。シャワー室という個室において横から邪魔される余地はなく、女もまた自分を求めている。

 そうだ、つまらない前戯など最初から不要だったのだ。女も自分と同じく、ただセックスする事こそが望みなのだ。自分本意に結論付けた欲情は、男の思考を再び単純化させた。

 

「へ、へへっ。そういう事なら、遠慮せずヤラせてもらうぜ……オラ!」

「くぁんッ! ッ、う、んんっ……はぁ、あぁ……っ」

 

 蓮が求める通り、自分が望む通り。男は滾る肉棒を、愛液滴る肉壺へと一気に突き挿れた。その衝撃で思わず声を上げてしまった蓮は、左手で口元を抑えてそれ以上を防ごうとする。

 認めたくなかった。どんな外的な要因が絡んでいようが、こんな強姦同然の形で犯されて気持ち良くなりかけているなど、無様にも程がある。しかしどう言い訳しようが、今自分を犯してきている怒張を腟内(からだ)は受け容れ、男を悦ばせようと締め付けている自覚からは逃れられない。

 嫌悪感を常に訴え続ける蓮の心を裏切る様に、生殖行為という本懐を成している女の身体は充足感を確かに得ていた。

 

「あぁ、あー、あぁぁ……! 腰、止まらねぇ……さいっこぉ……!」

「くっ、ぅ、くうっ! ふっ、ふうっ、くう……あんっ! やっ、は、やぁ……!」

 

 ぐるぐると矛盾で苦しむ蓮の内心も知らず、男は蓮の背に被さる様な姿勢となってから腰を動かす。肉襞に包まれ締められる最上級の快楽のままに、蓮の肉壺を何度も力強く突き上げていく。

 男の体重と挿抜する力、そして抑えがたい自分自身の快楽。それにより蓮の声は左手の抑え(フィルター)越しに色付き始め、姿勢を保とうと壁へ伸ばしていた右腕は肘まで崩れる。大きく揺れ動いていた胸はガラスに平たく潰され、硬く凝った乳首はその表面を滑り甘い官能が走ってしまう。

 こんな事で気持ち良くなりたくない。こんな事で気持ち良くなってしまっている。声を上げたくない。それでも声が上がってしまう。他でもない自分の身体が心を躙り、心の方が身体に揺らがされる。

 ダメだ。揺らぐな、流されるな、染まるな。最後の一線を守る様に、蓮は快楽の走る自分の身体から意識を外し、ただこの現実(じかん)が過ぎ去るまで耐える事に集中し始めた。

 

「――んあっ! あぁ、あっ、やんっ! ひぁっ、あ、そこ、そこはだめぇ! そこ、弱っ、からぁ……あんっ!」

「はぁはぁ、締まる締まる……! もっと、もっと力入れろ、腰も振れ……!」

「うぅん、ふ、ああ、あッ! ひっ、ぁあっ、ああん! ひゃ、う、うぅっ!」

 

 我慢する事しか考えないという事は、それ以外を我慢しないという事。先程までは意識して抑えていた喘ぎ声は艶めかしくシャワー室に響き渡り、ぱんぱんと尻を打ち付ける肉音と共に淫猥な音楽を奏で始めた。

 秘部の内を擦り奥を突かれる事への原始的な快楽、男に強く求められる女としての喜び、プライベートスペースでも無い場所で行為に耽る背徳感。思考というブレーキを別の方へ回した結果、蓮の身体はいとも容易く現状より得られる快楽を受け止め、堕ちていく。

 男からの声に無意識で従い、挿抜に合わせて腰を揺らして肉棒を誘う。醜態と感じる心も忘れ、声を荒げて雄を貪り悦楽に浸る。

 溺れて、しまう。

 

「くぅっ、んっ、はぁんッ! だ、めッ! うあっ、はぁんっ! あっ、あぁ、あああッ!」

 

 一度受け入れてしまえば止まらなくなった。男に突かれる度に蓮の嬌声の熱量は上がり、快楽の電流が走れば背筋が大きく跳ねる。

 ほんの少し前まで口元を抑えていた左手は既に壁に戻され、右肘と共に姿勢が崩れない様に支えになっていた。手一つ分のフィルターを失った喘ぎ声はシャワー室の外まで響き、自分が今犯されている最中という事実を強く主張する。

 抵抗する気は完全に失せていた。自分が化物と渡り合う異能者である事など、とうに忘れている。今はただ男の欲望を受け止め、肉棒に突かれて悦ぶだけの雌でしかない。

 それで良いから。なんでもいいから、早く。乞い願いながら蓮は一方的に犯され続け――

 

「おあ、あ、あっ、射精(で)る……! 出る、出る出る出っ――っほ、おおぉっ……!」

「あッ、ああ、あああッ! やだ、これ、イッ――ぁああんッ!!」

 

 腟内(なか)に、射精(だ)されてしまう。男のスパートからそれを察し、蓮が反射的に拒絶の声を上げようとする。しかしそれよりも早く男は股座を一際強く叩き付け、ぐつぐつと煮立った精液を思う存分注ぎ込み始めた。

 膣内から奥までを貫く肉棒の硬さ、そこから脳天まで走る本能的快感、脈動と共にじわりと染み込み自らを染めようとする種汁の熱。その全てに支配された蓮は我も忘れ、仰け反りながら高らかに達してしまった。

 

「あぁー……はぁー……気持ち良い……チンコ持ってかれそ……」

「くぅんっ……! やぁ、揺すらっ、ないでぇ……! あっ、まだ、出てっ……」

 

 自身の絶頂で大きく一度、蓮の絶頂に合わせて二度、余韻で三度。男は間隔を空け、何度も蓮の胎へと射精を繰り返した。

 少しでも長くこの女を堪能する、この最高(いま)を引き伸ばす、もっと気持ち良くなる。どこまでも自分勝手に男は蓮の肉壺を貫いたまま、吐精で肉棒が弱ってしまう前に少しでも腰を動かす。

 それは最早気も力も抜けた緩慢な挿抜でしかなかったが、それでも今の蓮にとっては十分な刺激だった。精液をゆっくりと塗り付けてくる様な男の腰使いを、達した余韻の最中で受け止め、感じ続ける。絶頂により快楽の味を思い出した身体にとって、その屈辱(スパイス)は甘味に等しい。

 最悪(さいこう)だ。自身の理性と淫猥な魔力の狭間にある蓮の脳は、矛盾した感覚(おもい)を重ねて抱いた。

 

「あー……スッキリ、したぁ。……なんかもう疲れたな、帰って寝よ……」

「んっ。……はぁ、はぁ……はぁぁ。ホンット、やるだけやって……」

 

 最後まで射精を終えた男は、硬さを失った肉棒と共に急激に表情を萎えさせる。それまで蓮を貪っていた勢いはどこに行ったのか、それどころかお前とセックスしたせいで疲れたとばかりに大きな溜息を零す。

 用は済んだ、はい終わり。体力も気力も何もかも無くなったといった風に、肉棒を抜いた男は蓮の身体から手を離し、一人とぼとぼとシャワー室を後にした。

 急に襲ってきて、急に犯して、急に帰る。本当に、ろくでもない。急速に身体の熱が引いていく中で、ようやく蓮は人間としての常識的な思考を取り戻した。

 身体が汗でべたついて仕方ない。元々は体を洗いに来たというのに、男の体臭で余計に臭くなってしまった。股座から漏れ出る精液の感触が気色悪い。棄てられた様に一人取り残された蓮は、現状の最悪っぷりを少しずつ認識していく。

 ――本(・)当(・)の(・)最(・)悪(・)の事も、すっかり忘れて。

 

「へへっ、やっと終わりかよ……! 待ちくたびれたぜ……えぇと、蓮ちゃん? だったっけ?」

「え? ……あっ」

 

 先程までの男がシャワー室を出ていってすぐ、それとは全く別の男が入ってくる。その目は蓮の肢体だけを舐める様に睨め付け、当然の様に全裸で怒張しきった肉棒をそそり立てていた。

 当初の蓮が予防しようとした”最悪の事態”。早くしなければいけないから、そう自分から奉仕してまで行為に及んだ本来の理由。それは、入(・)れ(・)食(・)い(・)に(・)さ(・)れ(・)る(・)危険性からだった。

 今の蓮は掟に――求められた性交に従う義務がある。そんな女が男も通りかかるかもしれない場所(そと)で、好きに犯されていると知られれば。好きに犯しても良いのだと、そう知られたら。

 

「次は俺とヤってくれよ。へへ、安心しなって。俺はさっきのヤツよりずっとマトモだからなぁ……一緒に気持ち良くなろうぜ、ええ?」

「う、うぅぅ……!」

 

 まともと宣(のたま)いながら、下卑た顔付きを浮かべて男は蓮ににじり寄り、わざと肉棒を跳ねさせ自らの欲望を主張する。

 安住の地など、此処には無い。淫欲の檻とでも言うべきこのシェルターにおいて、女は女である限り男に犯される義務がある。それが何時であれ、何処であれど。

 蓮が避けようとしたのはこれだった。今いるシャワールームは四方を囲まれた半密室であり、ここから逃げるには出口を塞ぐ男が去ってくれる必要があった。しかし新しく別の人間が入って来たならば、再び出口は無くなる。

 だから、丁度今この時の様に。この周辺を誰か男が通りがかり、行為の音や声を聞いてそ(・)の(・)気(・)になってしまったなら。今の自分には犯される以外の選択肢が無い。このシャワー室に男が近寄る度に、その選択が迫られる。

 

「んじゃ、手始めにパイズリから頼むわ。ここんトコ、良い乳の女とヤってねえからよ。その立派なデカチチで搾り取ってくれや」

「……わかった……わよ……」

「シケた態度だなぁおい。さっきまではアンアン喜んであんなデケエ声上げてたくせに」

「うぐっ! ……ホントに、最悪だわ……」

 

 この事態を悪化に招いている自分の痴態を責められ、蓮の顔が苦く歪む。

 今この場から逃れるには、通行人が訪れるよりも先に欲情した男を満足させる必要がある。しかし通行人が来ない事を祈っているくせに、犯されながら外まで響く大声でよがり喘ぐなど、娼婦の客呼び以下の愚行だ。

 とにかく、早くしなければ。早くしなければ、また別の男が来る。別の男にも同じ様に奉仕させられ、犯されてしまう。この場で犯され続ける限り、この地のどんな男にでもその権利がある。

 だから早く、早く終わらせないと。

 

「……やりづらいから、少し屈んで」

「ほいほい。いやぁ壮観壮観、やっぱデカい乳は男のを挟む為にあんだよなぁ」

「~ッ、そういうの良いから、早く!」

 

 男の望みを叶えるべく、蓮は膝立ちとなり自分の両乳を寄せ上げる。柔らかく潰れて象られた谷間を眼下に見せつけられた男は、思わず舌なめずりする。

 そんな事は蓮にとってどうでもいい。ぐずぐずと無駄に時間を使えば、その間に別の男がやってくるかもしれないのだ。だから早く、早く。

 ――早く、犯(・)さ(・)れ(・)な(・)い(・)と(・)。

 

「ほれ。しっかりご奉仕してくれよ、蓮ちゃん?」

「わかってるわよ……ん、かたい……」

 

 脳を焼くノイズに気付く事もなく、蓮は自身の柔い谷間に男を包み込んだ。

 




地獄に放っとけ

Evening Survivor発売記念に、恥知らずにも久々に戻ってきました。
キリはいい感じですけど、一応もう一話だけ続ける予定です。
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