想定:明加入前。
*無考不見
「――はやく、急がないとっ……!」
霜月学園。血と死と腐臭で染まり切った”異界”と化した校舎内を独り、少女が走る。
少女――北神楽来澄は、つい先程まで化物に凌辱されて殺される直前であったが、辛うじて生を繋いでいた。クラスメイトも教師も、全てが化物かその餌に成った。それでも尚、奇跡的に来澄は独り生き残っていた。
しかし、生き残るだけではダメだ。この学園から脱出しなければ、生還しなければ、何の意味もない。死体だらけの校舎内で化物どもから隠れ続けた所で、近い内に野垂れ死ぬ。
だから早くこの学校から逃げなければならない――その現状を来澄は正しく理解しながら、しかし学園の外へではなく中を駆けていた。
(ホントに、ホントにホントに
理由は二つ。理屈は分からないが、今学園の玄関や窓は全て閉ざされている。バットで殴ろうと銃で撃ち抜こうと、割れて空いた窓があろうと。外へと繋がる脱出口の全て、ナニカに塞がれて通れない。
現状、脱出不能。その事実に来澄は然程混乱や恐慌はしなかった。そもそも人間が化物に変わる様な不可思議な空間で犯され続けていたのだ、今更そんな事で焦りはしない――内心ではその危険性に焦ってはいるのだが、一周してすんなりと受け入れている自分がいる。
しかし理由の二つ目には焦っていた。それは先程確認した動画――”Ith-Video”という正体不明のサイトから見せられた、未来の光景。未だ起きていない、しかし起きるかもしれない、真偽不明の映像。
「ネクタイの色からして多分、二年の教室のハズ……! ああもう、二階もメチャクチャ……教室の扉、どれ……!?」
廊下から廊下、教室から教室、扉の先に行き止まり。迷路アトラクションだってこんな事はしないだろう、捻れ狂った校内の構造に苛立ちながらも、来澄は二階を捜索していく。
アップロード時刻は数分後の未来。その動画内には名も知らない、しかし同じ学校の制服を着た女生徒が未だ生存しながらも、不意を打たれて犯されるという景色が映されていた。
それはまだ不確定ながらも、このまま行けば確かな現実となるらしいと聞いた。にわかには信じがたいが、いずれにせよ自分と同じ生存者がいる可能性があるなら放っておく理由は無い。
「――っ、物音!」
何かの物音。動く音、ぶつかる音、倒れる音。ほんの僅かだが来澄の耳に届いた、その方向へ足を向ける。
何の手がかりもないこの状況で頼れる物など無い。見た動画の真偽は、今から確かめれば良い。ただ、行動しなければ事態が悪い方へ転がり落ちる事だけは確か。
何とか変える。この現状を、その未来を。それだけが今の来澄の指針で、それしか出来ない。
(ここ!)
教室のドアを開ける。瞬間、先程見た動画の通り、異形が女生徒に殴りかかろうとしている光景が目に入る。
全く同じ光景。同じ未来。同じ末路。それを変える一声を発する。
「「――危ないッ!!」」
え。
それと全く同時に、
「なん――ぐあっ!?」
女生徒の悲鳴が上がる。来澄の頭に鈍痛が走る。同時に、一体、何が。来澄の頭は痛み、考える事が出来ない。
考えていなかった。ここに至るまでの間、
考えてもいなかった。未来は変える事が出来ると思っていた。事実、未来は変わった。
考えられなかった――自分が変えた未来が、
◆ ◆ ◆
「――く、ううっ……一体、何が……」
霜月学園内、かつて2-Aの教室と呼ばれていた場所。この場所で化物と相対していた女生徒――久我明は、後頭部の脈打つ様な痛みによって、強制的に起こされた。
記憶を思い返し、現状を把握する――不覚を取った。化物との殺し合いの最中気を逸らし、背後から頭部を殴打され気絶。何者かが背に全身で被さっており、自分はうつ伏せのまま拘束中。
結論・負けている。頭部から出血はしていない、しかし思考が遅い。後頭部の痛みと軽度の脳震盪、四肢は地につけられ背の重みもあり反撃は不能。これらの事実を遅れて判断している時点で、とっくに死に体だ。
(……先程の、生徒は?)
自分は負けた、即ち死んだ。武術家として自分にそう判定し――形勢を逆転させたいならば生き残り、その上で仕切り直す機会が訪れてから考えるべきだ――、別に考えを回す。
自分が殴られるすぐ直前、教室へ駆け込んできた少女。推定、自分とクラスメイト以外の生存者。急に現れた彼女が更なる新手に殴られたという想定外を事を見て、動揺した明は不覚を許した。
それは自らの不覚でしかない。しかし最悪、彼女は自分があの時下手に声を上げたせいで不意打ちを受けた可能性がある。それは単なる不覚を超えた、過ちとすら言えよう。彼女が無事かどうかを確かめる義務が、自分には――
「――ぅあ、あぁっ……やだ、もうやだっ、もうやめてよぉ……うっ、ぐ……」
「……え?」
消え入りそうな弱々しい声が聞こえる。顔を上げ、そちらを見る。
自分が最後に見た少女は、着たままの服を引き千切られて襲いかかられていた――さっきまで自分が守っていた筈の、自分のクラスメイト達に。
「あなた達、何をしてッ――ぐう!?」
思わず跳ね起きようとし、しかし自分の背に乗っている男に頭を掴まれ床に叩きつけられる――背後の為に確認しようがないが、掌の感触と筋力は女性の物ではない――。歯を食いしばり、状況を再確認する。
名も知らない彼女――来澄は、仰向けのまま二人の男子生徒に拘束されていた。一人は両手首を握って床に磔とし、一人は来澄のシャツを中央から裂いて上半身を露出させられている。
二人とも、正気ではない。状況や倫理に反する蛮行は当然の事として、目の焦点がまるで合っていない。制御もなく半開きになった口から、ぼたぼたと唾液の塊を落としている。
あれはもう自分が知るクラスメイトではない、今まで戦ってきた
(なんて膂力……姿勢が悪い、返せない)
明は怒りを心に抱きながらも、思考はあくまで戦闘時の様に冷やして回す。男からの抑え込もうとする力と重さは明確に自分を上回っており、伏せた今の体勢から起き上がる事はまず無理だ。
結論。明は身動き一つ取れないまま、自分のクラスメイトが来澄を襲う所を傍観する事しか許されていなかった。
「離して、はなしてっ……やあっ! やだ、乱暴しないで……ふあっ!? や、今のは違っ……」
視線の先で来澄は今、別の男に頭上で手首を抑え込まれながら、マウントポジションを取られている。握っていたスマートフォンや銃器は教室の隅に捨てられており、
上半身のシャツは下着ごと剥ぎ取られた。整った形の両胸は完全にはだけ、男が欲情のまま鷲掴みにして揉みしだいてくる。嫌悪感と共に、体の外から植え付けられた様な妙な感覚がぞくぞくと再来してくる。
薬でも打たれたとしか思えない、過敏で異様な快感。ただ胸を乱暴に触られているだけなのに、それを受け入れ震える身体。抵抗感と反抗心を上から塗り潰す様な踏み躙る様な、自分の奥底から来るナニカ。
そう、再来だ。来澄にとっては、つい先程まで出来事の再来。体育館でクラスメイトと共に襲われ、抑えつけられ、抵抗する事も出来ない。無力を噛み締めながら――
「ああっ、やだ、やだやだっ……! こんな、こんなのでっ、またぁっ――ひゃ、あぁっ!」
あられもない
ちゅぱちゅぱ、あぐあぐ、ちゅうちゅう。何も知らぬ赤子にまで退行した様に、男は来澄の胸を
気持ち良く、なりかけている。男に襲われる事に、一方的な凌辱に、暴力に対する屈服に。この異界の魔性が、来澄をまた堕とそうとしている。
性欲のまま犯され、性感に抵抗出来ず、性交に溺れる。この
(くそっ)
何も出来ない。仮にもクラスメイトである男達の蛮行を、明は離れて見るしか出来ない。
こんな事の為に戦っていたのか。明らかに自分と同じく正気を持っている少女は、自分が守り続けてきたクラスメイトに襲われて犯されようとしている。ただ手の届く範囲の火の粉を払っていただけではあるが、その末路がこれでは意味が無い。救いようがない。
なんとか考えなければ。自分一人だけなら悠長に再起の機会を待っていられるが、このまま黙って事態を見過ごして、目の前の少女を見捨てる事までは流石に出来ない。
何の為に鍛えた身体だ、戦う為にだろう。戦え、戦――
「ガアッ!」
「ぎっ!? ぐ……いきなり、何を……!」
考えている最中に、まだ何もしていないのに、明の頭部を背後の男が殴る。
体を起こして馬乗りになった男が、続いて明の背や腕を乱雑に殴り始めた。
(……こんな事に、なんの狙いが……っ)
殴られる、殴られる。男が殴る明の部位は、てんでバラバラだ。殺すつもりなら頭部をひたすら殴ればいい、抵抗する芽を潰すなら手足だけを殴れば良い。
後頭部、上腕、肩甲骨、中背部。今後ろの男は、わざわざ壊しにくい部位まで殴ってきている。あるいは狙いなど何もつけず、苛立ちをぶつけているだけか。急所を殴られない限りは耐えられるが、負傷が蓄積する以上形勢は段々と悪くなる。
まさしく”乱暴”。急所を殴らず満足してくれるのは有り難いが、一体どういうつもりなのか。
「ギ、ギギッ……ヒヒ、ヒイッ」
「え」
背に指を立てられる。掴まれる。何を?
びりりと、布が裂ける音。背の肌が開く感覚。
――服。
「――な、あっ!?」
限界まで振り向く。明の視線の先には、やはり男。が、男と視線は交錯しない。
瞳孔は大きく揺れ動き、口からは涎を垂らしている。正気ではない、正気がない。
同じだ。つい目の前にいる男達と同じ――女を犯そうとする、ケダモノの様相。
「ま、待ちなさ――」
「ガアッ! アアッ!」
「ぎっ……! く、うう……!」
なんとか身体を翻そうとするも、反抗的な動きに気を悪くしたのか、男が指を曲げ明の背中を引っ掻いてくる。
制服は完全に裂かれた。爪により引っ掻かれた背中は軽く出血し、ブラのベルトも巻き込まれて壊れている。あるいは服をこうして剥ぐ為に、削れた知性で妙な暴行をしていたのかもしれない。
その真偽はどちらでもいい。今重要なのは、明には一切反撃が出来ないという事実。反して男からは好きなだけ――
「ヒヒ、ヒヒヒッ……ヘ、ヘッ」
「きゃあっ! や、やめろ――がっ、ぐう! く、そっ……!」
下卑た笑みで男は裂かれたシャツ、外れたブラジャーを順に剥ぎ取り、明の素肌を露わにしていく。隙を突こうと腕や肘を振り上げようとすれば、反射的に男の拳や爪が振るわれる。
狙いの半端な男の暴力は致命的にはならない。しかし何度も何度も無防備でやられ続けていれば、殴られた背や腕の部分が痺れて上手く動かなくなってくる。意思に関わらず、体が動かない。動けない。
反抗した瞬間に鞭で叩かれる囚人の様に、明の自由は挫かれていく。この時点で明は、先程の自分の結論を再度思い出してしまった。
自分は、とっくに負けている。死に体だ。
「ハァァ……やわ、らけぇ……あぁ、アァァ……!」
「ひっ!? 何処を触って――うぁ、はっ……く、んっ……!?」
明の抵抗が明確に弱まった瞬間を見計った様に、男が再度明に覆い被さり、胸と床の隙間へ強引に掌を滑り込ませる。柔肌を覆っていた下着は既に放り投げられ、その手を遮る物は何も無い。
それまで床で潰れて広がっていた程の豊満な明の両胸が、掌いっぱいに掴まれる。掌から溢れ零れる程の乳房を、下から上まで揉みしだいていく。
男の欲望のままに、獣の本能のままに、化物の狂気のままに。明はそれを感じながら何も出来ず、ただ己の肢体を自由にされ続けるだけ。
「う、ぁ、ああ……!? な、なんですか、この――ひゃんっ」
上ずった声。やけに高く、聞き覚えの無い声。胸を揉まれた明の喉から、知らない声が上がる。
自分の声だ。知らない感覚と共に、甘い声が出る。胸に指を立てられ、掴まれ、揉まれ。積み重なった疲労や痛苦とは異なる何かが蝕み、自分の身体から時折力が抜けそうになる。
自分の感覚だ。自分が胸を揉まれ、身体を抑えられ、自由を奪われ――”女”を感じさせられている。
「く、うっ!? なんで、こんな、私は……ん! はっ、やっ、んう……」
揉まれる。揉み回される。背後から押し潰され、男の全身で抱かれながら、両手で自分の胸全体を好き放題揉みくちゃにされる。男の欲望が、どこまでも直截にぶつけられる。
それを受ける。受け入れる。明の乳房が揉まれ、柔乳を弄ばれ、乳首が擦れる――擦れた事を自覚する程、いつの間にか乳首が立っている。自覚するより先に、身体が先走っている。
なんで、どうして。こんな事、あるわけが無い。なんで自分はこんな事で――気持ち良く、なっている?
「あぁ、ああ……い、いや、やめて、下さい……! こんな、こんなっ……ぁ、うぁ……」
声が上がる。知らない声だ。まるで子供が大人に許しを乞う様な、弱々しい声。
自分の声だ。胸を揉まれるだけで気持ち良くされているという現実が受け止められず、行為を受け入れられず、男を止められず。力が抜け始めた身体は抵抗も出来ず、何の意味も無い弱音を自分は零している。
なんだこれは、なんだこのザマは。先程まで化物と
明はそれを認められない。この現実を受け入れられない。こんな死地の中で、こんな乱暴を受けて、場所も選ばず気持ち良くなっている。そんなバカな事があるか、そんなバカな――
「あ、ふ、あぁっ」
しかし狂った現実が、明の認識を容易く踏み躙った。バカな事で、馬鹿みたいな声が漏れる。
胸を掴んだ男の掌が、円を描く様に動いて捏ね回してくる。乱雑で力に任せた手つきと刺激で、身体の内側から弱い電流が走る。快感が走り、甘声が鼻から抜ける様に漏れる。
腰に硬い感触がある。男のモノがズボンと明のパンツ越しに――スカートが捲れ上がっている事にも今気付いた――、ぐりぐりと押し付けられている。興奮と欲情を無言でアピールし、明の未来を示唆している。
犯される。抵抗出来ない、どうにもならない。戦いにもならずに、このまま、自分は、犯される。
――イヤだ。
「いやっ、嫌です……! どうしてこんなっ、あぁ、ダメ、もう揉まないでくだッ……ひぃ、あ、あ!」
駄目だ。ただの駄々だ。何の意味もなく、何の抑止にもならないまま、明の身体が男の好きにされる。
されるがまま、なすがまま。鍛錬した力も技も何もかも無為で、闘争による命の取り合いも無い。素肌を触られ、性を意識させられ、男に”女”と思い知らされる。そうなる。たった今、そうなっている。
駄目だ、だめだだめだ、嫌だ、イヤだイヤだ。無力な懇願ばかりが、頭を埋め尽くす。自分はこんなに弱い人間だったのか、生理的な拒絶とそんな自己嫌悪ばかりが心を廻る。
事実、明は正しい。明の心身は間違っていない。おかしいのは、この
「やだぁ、やだぁ! お願いやめてっ――あっ、んんっ……! ひぁんっ、あぅうっ……」
「ダメ、どうしてっ……こんな事が、気持ち良いわけ――あぅっ、ふぅんっ……! ちが、今のは、違いますっ……!」
この場の誰もが知る由も無い事として、瘴気には重度の精神汚染の効力がある。霜月学園のそれは、この異界の主の性質を反映しているのか、性的本能を過度に増幅するモノだった。
即ち、性欲に突き動かされて快楽を得ようとする、人間性の変質。少しでも正気を蝕まれて足を踏み外せば、瘴気が人から
正気を蝕まれるとは、つまり平常心を乱す事。自分自身の制御が出来なくなる事。詰まる所、
「あ、ああっ、やぁ……! だめ、今、感じすぎちゃうっ――あんっ! んん、あっ、はぁ、ひぅう……」
来澄が甘く呻く。半裸に剥かれ、二人がかりで捕まえられ、胸を味わわれ。その全てが、ついさっきまでの事を否応なく思い出させてくる。
体育館で化物に抑えつけられながら、一方的に犯された事。最悪の初体験にして、臨死の状況。死ぬまで続くかと思われた凌辱。その中で感じてしまった、暴力的な快楽。
忘れられる訳も無い、体の底から震える恐怖と非現実感。やっとの事で抜け出してきた地獄が、また繰り返される。来澄は感度が上げられ悦んでいる今の自身に、むしろ絶望を覚えていた。
また。またなのか。あの地獄から抜け出せたのはただの夢で、こちらが本当の現実なのか。もう、イヤだ。
「く、ううっ……んッ!? なぁ、だめっ……なんで、乳首だけ、こんな、ぁっ……ひゃぅんっ」
明が甘く鳴く。服を裂かれ、男に覆い被さられ、胸を揉みしだかれ。いやに乳首が尖っている事に気付いたか、男は右手の指先で明の乳首を強く抓ってきた。
触られる事が気持ち良い。乳首を痛い程に摘まれ、痛みを超える快感が走る。明の知る
こんな事があっていいのか。敗北し、暴行されながら、屈辱の中で臥しながら。それを自分の身体は気持ち良いなどとほざいている。こんな
自分の身体の制御が出来なくなるという最初の経験。狂気の中より生まれた快感という名の
「――ッ、ダメ、やめてぇ! 下、脱がさないで! ……見ないでぇ……っ」
胸をしゃぶるのに飽きたのか、来澄を襲う男の手が唐突にスカートへと伸び、最早常人では有り得ない程の力で掴んで裂き割る。下から顕れたショーツもすぐ、乱暴に引っ剥がされた。
そして、来澄の秘部が空気に晒される。両手を拘束され、胸を自由にされ、犯される事を覚悟して。そんな状況でありながら、来澄の陰唇からはとろりとした水気が滲み出ていた。
それは来澄が男からの辱めにより、悦びを覚えている事へのこれ以上無い証左。つい先程まで犯されてきた男の精液は体育館でなるべく掻き出してきた、よって来澄の中から溢れる水気は愛液でしか有り得ない。
男を待ってしまっている。受け入れようと構えている。不本意でしかない己自身の有様に、来澄は涙すら浮かべていた。
「やっ、あぁんっ……! はっ、離して、下さい……や、硬いのが当たって――これっ……!?」
抵抗の意思と気力が削がれてきた明も同様の目に合っていた。乱暴にショーツをずり下げられ、後ろの男もまた己のズボンを下げ、勃った肉棒を尻肉へと押し当ててくる。
これから犯す、犯したいという意思表明。初めて知った、初めての感触。そしてこれから奪われるだろう、己の”初めて”。全身を外気に晒される羞恥と醜態、しかし瘴気に侵され始めた心は意に依らず高鳴っている。
嘘だ、嫌だ、駄目だ。一度崩れた心の天秤から、明の心に本来有り得ない弱気が満ち始める。瘴気による性欲の助長が、有り得ない反応を身体に覚えさせている。
犯される、犯される、挿れられる、挿れられる。それに抵抗しようと身を捩る――
「んっ……あっ、あぁ……こん、な……大きいのが、私を……」
肉棒の感触を確かめる。抵抗の表明は、そのまま男に媚びる態度となってしまう。
どれだけ嫌でも理解してしまった。自分は女で、相手は男だ。殴り合いでの力量差などとは次元の異なる、種としての違い。種、即ち精をどちらが持ち、どちらが受け取るのか。知識でしか覚えていない事を、身体が実感し始める。犯し、犯される。
瘴気が正気を蝕み、絶望の気分が本能の高揚を際立てる。股間が、疼く。
「……犯さないで、くださいっ……お願いします、お願い、します……」
もうそれは自分、”久我明”の言葉ではなかった。生理的嫌悪感から来る、反射的な台詞。全ての女が共通して抱くであろう、本能的な懇願。
犯されたくない。こんな事で初体験なんて嫌だ。犯されたくなんてない。こんな、そんな、
「やだあ、やだあ! あし、開けないでっ! だめ、だめだめだめ――う゛、んぅう……っ!!」
明のすぐ近く、すぐ目の前。来澄が、男の肉棒をたった今強引に捩じ込まれていた。
涙を流し、口で拒み、手足を暴れさせ――その全てが無駄となり、無視される。服を剥がれ、あられもない姿を晒され、股を開かされ。そうして来澄は犯され始めた。
根本まで繋がっている。股座と股間が、性器と性器が重なり合って。まるで別の世界を見る様な、しかし同じ世界を明は見ている。どこまでも、なにもかも、おなじ。
「あ、あっ! 脚、引っ張られ……あ、あぁぁ……」
背にいる男が腰を上げ、明の両脚を掴む。股を開かせる。秘部が
空気が冷たい。肉棒が添えられる。熱い。思考が単純化し、どこかで現状を諦めている明は、隙を突いて手足を動かすという最後のチャンスを無意識に逃した。
今の明には考えられなかった。ただ一人の”女”は、望まぬ男からの
「やめて、やめっ――あ」
ソレ。男。肉棒。自分に、股間が、性器に。
嫌。イヤだ、いやだ、やめて。明の頭が、絶望の一色に染まる。
負けた。好きにされる。なにも、できない。
”負け”という事実、その本当の意味を明が理解する一歩前で。
「ッ――ん゛、っぐ、うぁぁっ……!」
目の前の来澄と同じく。学園にいる数多の犠牲者と同様。
かつて自分が守っていた男により、明はついに犯された。
ED:
二次創作の自由だから可能な掟破りの話、「そもそも話が始まらない」です。
二人に教えてやる……未来は誰の手にもない! 俺達、皆の