※この作品はR-18です。

マテリアルズRebirth R-18   作:てんぞー

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Null

 家に帰ってくると時間は既に零時を大きく過ぎた後だった。ユーノもユーノで結構溜まっていたらしく適当なお店で飲んでいたらお互いにひたすら不毛な愚痴合戦へと突入、そして気づいたらこんな時間になってしまった。少し反省するべきかもしれない。だが無限書庫も自分の想像を超えた領域らしい、ユーノが愚痴る内容にはどっかのB級映画にでもありそうな内容が語られていた。正直地獄の様な資料整理が無限書庫の業務だとは思っていたが、あそこまでスリリングな職場だとは思いもしなかった―――なるべくなら就職したくないところだと思う。というか絶対ない。支援型魔導師ならアリなんじゃないのか、何て誘いは受けたけど全力で否定する。その選択肢だけは絶対に靡かないぞ、と。ともあれ、そうやって不満を吐き出しきったりしたらかなりいい時間になってしまった。ベルカ自治領まで送ってもらうことになってしまったが、そこからは一人で帰ってこれた。ようやく一人で問題なく移動できるようになったのは大きい。一気に行動範囲と自由が広がった感じだ。

 

「鍵を開けて、っと」

 

 扉を自力であけるだけの力はない。いや、正確にはハンドルを握って、それを握り続けるだけの握力がない。だからここは素直にズルをする。誰かが起きているのであれば開けてもらう様にしているが、一人の場合は魔法で扉を開ける。この若干楽をして、ズルをして、そんな感覚があるのでなるべくなら自分の手で開けたいのだが。そんな苦悩は放っておいて、なるべく音を立てない様に扉を魔法で開ける。

 

「ただいま」

 

 静かな声でそう告げる。まぁ、流石に遅いので誰も起きてはいないし、管理局で働いていた時の様に夜遅くまで起きてもらって待っている意味はない。明日も明日でまた馬鹿な事をやって盛大に暴れるのだから早めに寝て、そして元気になって迎えてもらうと非常に助かる。その為の今の生活でもあるのだし。自分ももう二十歳だ。ミッドチルダでも、ベルカでも、どちらの基準でも十分に大人として通じる年齢。相応の責任が求められる年齢だが、やはり、

 

「ぁー……若干辛いなぁ」

 

 車椅子を何とか玄関へと持ってくると、そのままリビングへと持って行く。ホイール部分と床が少し汚れてしまっているが、それはまた明日どうにかしよう。今夜は無理だ。車椅子をそのまま冷蔵庫へと進ませ、魔法による物体の遠隔操作術式を起動させる。冷蔵庫を開き、コップを取り出し、そこから牛乳を取り出してコップに注ぎ、戻す。大分酒を飲んできてしまったなぁ、と思いつつも、このまま自分一人だとキツイなぁ、と思う。

 

 もうチョイ歳を取った人に色々と相談したい。なるべく”そういう風”に振舞ってはいるが、二十歳なんて本当に大人と言える人物たちからすれば子供の様なものだ。いや、若造と言った方が正しいのだろう。この家一番の年長者としてやるべき事、負うべき責任はある。それから目をそらしてはいけないと己に言い聞かせている―――何せ、問題は何一つとして解決されていないのだから。だから楽をしてはいけない。自分の道は相変わらず茨の道だ。そうであることに一切変化はないのだから。だからちょちょいとゲンヤあたりと相談できたりしたらいいのだろうが、今は……いや、もうしばらくはナカジマ家に連絡を入れるだけの勇気が自分にはない。まだ確実にティアナは己を恨んでいるだろうし。

 

 そう思うと色々と気が滅入る。

 

「どうしようかなぁ……」

 

 まぁ、一つずつ片づけられるかどうかも解らない体だ。とりあえずはどうにかできそうな問題からどうにかしなくてはならない―――つまりナルの情操教育というか、教育だ。あぁ、あんな美人に慕われているのは男としては実にうれしい。男冥利に尽きるというものだ。だがナルは精神的には大人かもしれないが、経験が不足しているから一番子供とも言えるのだ。非常にアンバランスだ。その状態ではどういうリアクションを取ろうにも取れない。―――こう、子供に手を出すような感覚だ。思いは解るし本気だって理解できるがその先がない。思いの強さが理解できている分何もできないから辛い。生殺しって状態だ。

 

 ……本格的に風俗にでも行くか……!

 

 この感じを解消するにはそれしかない。男だし仕方ないよね。すっきりすればたぶんこの今のわだかまりもある程度解消できるはずだ。そう納得しておく。そう納得しておかないとやってらんない。何故我が家には問題児しか集まらないんだ。……こう、もう少し普通の恋愛とかをしてみたかった。普通に出会いがあって、デートしたりして仲良くなって……。いや、もうそこらへん諦めろって言うのは解っているのだ。我が家の連中、異様に愛が重い。風俗も多分無理だろうなぁ。

 

「止めよう、うん。考えるだけで虚しくなるわぁ……」

 

 もう普通の生活がありえないことぐらいは理解している。それはもうどうにもならない事実なのだ。もう、たぶんそういう星の下に生まれてしまっているのだ。だから普通に暮らす事に関しては完全に諦めている。コップの中の牛乳を飲み干し、それをシンクに置く。水をその中に貯めて置いて、それから体を軽く伸ばす。窓の外を見れば完全に外は暗く、街灯以外の明かりは見当たらない。上で寝ている連中を起こさないためにも部屋の電気は切っているし、辺りを照らすのは月明かりだけだ。牛乳を飲み干してから月明かりが差し込んでくるリビングへと移動し、ソファの横へと移動する。短い距離であれば歩けるのはリハビリでもう理解してる。車椅子から降りて、もっと柔らかいソファへと座り込む。テレビをつける事はしないがただぼぉっと、月明かりが差し込んでくる裏庭へと通じる窓を見る。

 

「……ふぅ」

 

 一人になると頭の中をぐるぐるといろんな考えが駆け巡る。やらなきゃいけない事、やってはいけない事、やってしまった事。だから一人でいるのは寂しい。何時も嫌な考えばかりが先行してしまうからだ。嘱託魔導師時代が実に懐かしい。あの頃は常に一人だったのに、怯える事はなかった。ただ好き勝手やって、好き勝手生きて、好き勝手失敗した……あの頃の自分と今の自分を比べて、自分はどう変わったのだろうか。強くなったのか? それとも弱くなったのだろうか。いや……あの頃の自分はまだ子供だったんだろう。自分一人しか守らないでいいから。責任を負う必要もない、気楽な身だった。だがあの娘達を拾ってしまって、あの娘達と暮らす様になって、自分は少しずつ変わった。責任の言葉の意味を理解する様になって、それがどれだけ重いものか理解する様になって、そしてその存在がどれだけ尊いのかを理解できるようになった。少しずつ、少しずつ社会がどういう風に出来上がっているのか、誰かの命を戦う事以外で繋ぎ止める事がどれだけ大変なのか、そういう事を理解できた。

 

 たぶん、こういう苦い経験やら楽しい経験を経て……段々と大人になるのだろう。ずいぶんと面倒な話だ。だけどその面倒を楽しんでいるのもまた事実だ。世の中のお父さんの苦労が大分わかってくるようになってきて、自分の両親に少しだけ申し訳なさが出てくる。自分の両親も同じようなことを考えて俺を育ててくれていたのだろう、と。家を飛び出してしまった事、まだ謝ってなかった。……いや、家を飛び出してから家に帰った事はそもそもあったか。思い出せない。両親の顔の詳細な姿を思い出せない。ベーオウルフを壊してしまった事も全く伝えていない。……こう考えるとずいぶんと親不孝な男だな、自分は。そう気づき、そして溜息を吐く。駄目だ。もう完全に思考が守られる側から守る側へと変わっている。昔みたいに誰かの迷惑を考えずに好き勝手やる事は無理かもしれない。……少なくとも、近況をなんらかの方法で両親へ伝えなくてはならない。今までそれどころではなかったが……まあ、やっと余裕が出てきたのだ。子供の義務を果たしておくのは悪い事ではないはずだ。

 

「……」

 

 寝ようと、そう思ってソファから立ち上がろうとするが、止める。まだ眠くはない。それになんか考えている内に直ぐに寝る気はなくなってきた。もうちょいここで夜更かしをする気になってきた。ただレヴィ辺りは物凄い音に敏感だ。テレビでもつければすぐさま起きるに違いない。そう思うととくにできる事もないし、

 

「また、酒でも飲むか」

 

 やっぱり酔いたい気分だった。べつだん酒が好きなわけでも酒に強いわけでもない。ただ酔いたい、それだけだった。だからそれを口に出したところで、返答が帰って来るとは全く思いもしなかった。

 

「―――あまり飲みすぎるのは褒められた事ではないな」

 

 振り返ればグラスとボトルを握ったリインフォース・ナルの姿がそこにはあった。此方の姿を見て、苦笑する様に微笑んでいる。あぁ、この子は男をダメにするタイプの女なんだろうなぁ、と用意周到なその姿を見て思う。たぶん、世話を一方的にして、出来る事全部やって、片付けて、そして男を堕落させてしまうタイプの女。溺れるのであれば一番楽な部類だと思う―――こっちに振り向かせることができれば。

 

「じゃあなんで持ってくるんだよ」

 

「飲むんだろ?」

 

 そう言ってナルが横に座り、グラスを渡してくる。それを膝の上に乗せて支え、琥珀色の液体を注いで貰う。グラスの半分も注いでもらうと止めてもらい、そして酒を口の中へと運ぶ。結構キツイやつを持って来たな、と味を確かめてからどれを持って来たのかを把握する。まあ、別にどれを持って来たのかは構いはしない。それよりも問題なのは彼女がこの時間まで起きていた事だ。ノースリーブの様なセーターを着ている彼女を見て、

 

「もしかして待ってたのか?」

 

「あぁ、どうしてもお前の顔が見たかったし……話したい事もある」

 

「……そうか……だけどちょっと距離近くない?」

 

「そうでもないぞ?」

 

 ピタリ、とナルが真横にくっ付いている。いや、それだけじゃなくてこっちに寄り掛かる様になっている。それもこっちに負担にならない程度で。少しだけ発言とその行動に違和感を覚える。ナルは確かに与える事に対しては積極的だが―――求める事に関してはそこまでもない。精々一緒にいられればいい、程度だ。だからこうやって自分からやってきて積極的にスキンシップを計ろうとするのはするのは珍しいかもしれない。……たぶん、自分が家にいない間に余計な事をした娘が四人ほどいる―――というか確定であの四人娘の仕業だ。また勝手な事をやって、何て事を思うが、その勝手な事は相手を思いやる行動だ。……少なくともナルを思っての行動のはずだ。

 

「イスト」

 

「……」

 

 ナルが名を呼んでくる。だがそれに応えず、寄り掛かるナルのぬくもりを感じる。

 

「どうやら私は自分で思っていたよりも幼稚だったらしい」

 

 そう言った。ナルは……デバイスだ。人間ではない。女として振舞うという事は”女として演技”をするという事だ。それは経験が無ければ学ぶ間はただの演技であり、そしてそうあろうと思い込んでいるだけだ。だから、

 

「愛するとは、思っていたよりも難しいものなのだな。一方的に誰かを愛する、それだけでは駄目らしい。それでは独善的で、そして一人満足で自慰行動と何ら変わりはない、と。……迷惑をかけていたようで本当に済まない。私は……お前には負担をもうかけたくはないんだ。あり方を与えられ、生きる場所を与えられ、そしてなんでもない普通の存在として扱ってくれるお前に迷惑をかけたくないんだ」

 

 純粋。ただただ純粋にそう思っている。だがそれを判断するための経験がないから、悪い事をしてしまった、とその内容を理解していってくれている。まあ、これも一つの学習だ。それはいいのだが……理解されたという事はそれで何か悲しい。こう、少女がポルノを覚えて一つ大人になっちゃったとか、そんな感じだ。それに理解されたら理解されたで別の問題が出てくる。

 

 ―――改めてどう接するのか。

 

 今までのナルは異性としては認識できるが、性的な事をする相手としては見れなかった。だが今はどうなんだ。四人娘が要らない知恵を増やしてくれたのでオーケイな状況へと入ってきている。……逆に追い詰められてきたような気がする。あの娘の最終目標を知っているだけに、若干困ったものでもある。そんな事を思いつつあると、横でナルがボトルから直接酒を飲む様子があった。

 

「おま、ちょっ」

 

 流石に止めようかと思った。デバイスが酔うかどうかはわからないが、そのお酒は若干高級品なのでそうやって飲むのは少し勿体なさすぎる。だから止めようとした次の瞬間、ナルがこっちを向き、そして抱きついて―――唇を重ねてきた。

 

「んぐ!?」

 

「ん……」

 

 勢いよく唇を押し付けると、舌で此方の唇をこじ開けて、そして更に強く唇を押し付ける。あまりの驚きに自分の手からグラスが落ちるのにも気づかず、口の中へと流される液体をのどに詰まらせない様に飲む。飲み終わる頃には自分の体がソファでナルに押し倒されるような格好になっている事に気づく。少しごほごほ、と無理やり酒を飲まされたことにむせながらも、驚きとともにナルを見る。

 

「お前……何やってんだよ!」

 

「解らないのか? 欲しいんだ」

 

 そう言って此方を押し倒したナルはぴったりと体を此方に押し付けてくる。服の上からでもハッキリと浮かび上がるボディライン、かなり凄いものだと知っていて我慢してきたそれが自分の体に思いっきり押し当てられている。内心凄まじく動揺するが、それを極力表情には見せない。

 

「欲しいって―――」

 

「お前が、欲しいんだ。気づいてしまえば簡単な話だったんだ。教えてもらえれば解ってしまう事だ。初めは気を使ってくれるのが嬉しかった。次は触れ合って感じる温もりが心地よかった。そして―――」

 

 そう言ってナルは顔を胸に寄せてくる。此方の心臓の鼓動の音を聞こうとするように、完全に体を此方に預けて、そして目を閉じながら言う。

 

「―――ユニゾンの時、感じた。お前の思い。私の事を思いやってくれて、心の底から心配してくれていた……それが嬉しくて、それに答えたくて、それに報いたくて……それで私は私にあげられる全てを捧げたかった。でもそれだけじゃダメらしい。シュテルが教えてくれた。”簡単に全てを捧げる様な安い女になるな”と」

 

 そして、顔を上げるナルに向かって言う。

 

「言われたから求めるのか?」

 

「いや、気づいたから求めるのだ―――今は捧げたいぐらいにお前を求めているんだ。体が、心が」

 

 なんとなく……こんな風になるのではないかなぁ、と思いもしなかったわけではない。……男女の間に純粋な友情があり得るのか、という質問と一緒だ。答えは難しい。どっかで”何らかの関係”というものでお互い線引きされてしまうのだ。血の繋がっていない相手とは必然的にそうなる。だから……娘共の変化具合を見ていればこんな事もあるんじゃないかと思っていたが、

 

「酔っている?」

 

「お前の存在になら」

 

 そう言っているナルの頬は少しだけだが…………赤い。酔っている訳がない。彼女だって女性だ。こういう行為へと及ぶ意味が解っていて恥ずかしがっているのだろう。だから体を動かして、此方へと顔を寄せてくる彼女の唇に自分から唇を合わせる。短い、合わせるだけのキス。それでもそれはナルを驚かすには十分すぎる行動だった。此方が取った行動に軽く驚いているようだった。

 

「俺だって男だぜ。目の前で美女が誘惑してきているんだったら喜んで飛び込むさ」

 

「……いいのか、私で? お前の親友を殺したんだぞ?」

 

 這うように近づき、そして顔が目の前にやってくる。片手をナルの腰に回して、そしてもう片手でナルの頬に触れる。可愛いやつだと思う。可哀想な奴だと思う。そして―――俺は救われない薄情な奴だと思う。普通に好きだ。彼女がティーダを殺した事実があったとしても、この子に俺自身、惹かれているという事実は否定のしようもない。最低な話だ。ティアナにどう説明すればいいんだ。でも、そういう理由付けは終わってからの仕事だ。そんな事よりも、

 

「人生惚れたやつが負けらしい」

 

「なら、負けたのは私だな」

 

 唇を再び重ねる。最初みたいに突然でもなく、先ほどの様に強引にでもなく、ゆっくり、重ねる。確かめるように唇を重ねて、そして体を寄せ合う。互いの体温を感じ合う様に体に触れながら触れる口を開く。合図をする必要も別になく、触れるだけのキスがもっと濃厚な、貪る様なものへと変わる。舌を伸ばして相手の舌と絡め、互いに唾液を与え、そして飲む。本やらビデオやらでは確認した事はあるが、実際にここまでやるのは初めてだ。予想以上に近くに感じるナルの匂いと味と、そして体温に先ほどから心臓の音がうるさく鳴り響いている気がする。

 

「……酒の味がする」

 

「お前もな」

 

「嘘だ」

 

「ホントだ」

 

「ならもう一度確かめてくれ」

 

「あいよ」

 

 再び舌を絡めあう。吐息を、唾液を、想いを交換する様に強く、激しく求めあう様にキスを交わす。初めてのディープキスをしたばかりだというのに、まるで本能に刻まれているかのようにその動きは出来ていた。あぁ、結局はこうなってしまうんだな、と自分の意志の脆弱さに嫌になりながらもナルと絡める舌の感触を楽しみ、顔を離す。ゆらりと口から口へと唾液の線が出来上がる程度には互いの舌を絡めていた様だ。

 

「で、どうだった?」

 

「お前の味がした」

 

「そうか、それはいいな」

 

 そう言ってナルは此方の背中に手を回し、抱きしめてくる。顔を此方の肩に埋めるような姿勢で一度止めると、耳元に口を寄せてくるのが気配で解る。吐息が直接耳にかかって来るような距離だ。そんな距離でナルは少しだけ息を荒げてながらも、ゆっくりと語りかけてくる。

 

「……足りないんだ。これだけでは足りないんだ。欲しい。求める気持ちがこんなにも、切ない……」

 

 背中にナルの爪が軽く突き立つ。その痛みを心地よく思いながらじゃあ―――。

 

「どうするんだ?」

 

 消え入りそうな程小さな声でナルが答える。

 

「……私に言わせるな……馬鹿ぁ」

 

 

                           ◆

 

 

 自分のベッドの上に、仰向けに倒れているリインフォース・ナルの姿がある。そして彼女に覆いかぶさるようにしているのは自分だ。先ほどまでリビングでやっていた光景、それが丁度逆転したような様子になっている。だが先ほどと今のこれでは意味が大きく変わる。だから本番を前に自分もナルも動きを止めている。ただ無言で、このポーズに入ってから無言で互いを眺めている―――いざとなると予想以上に緊張するものだが、……男としてこっちがリードすべきだろう。いや、したい。触れたい。だから、

 

「触るぞ」

 

「あ、……はい」

 

 しおらしくなったナルの体に服の上から触れる。まずは、と自分の知識を漁りながらナルの胸に触れる。

 

「んっ」

 

 ナルが触れられるのと同時に軽く声を漏らすが、それを無視する。リードすると決めた以上、男の矜持として退く事は許されない。ナルの胸をまずは片手で軽くつかんでみる。相変わらず握力の無い手だが、それでも指はあっさりと服の形を変え、そしてその下のブラジャーをも歪ませ、その下の感触を得る。柔らかい感触だ。男では決してありえない、女性のみのボディパーツ。その柔らかさは軽い感動ものだった。指がセーターの柔らかい感触を感じながら指を沈める様子に軽く感慨を得る。これが、女性なんだなぁ、と。

 

「い、イスト」

 

 ナルが切なそうな表情で此方を見ながら名を呼んだ。解ってる、と短く答える。ナルの服に手をかけるとそれをめくり、服の下に隠れている下着を露出させる。ナルにしては少々大胆とも取れる黒のレース調のブラジャーだった。それに手をかける前に、手が止まる。下着を見せつけるようにナルがめくられた服の裾を掴み、頬を赤くしながらも此方に視線を向ける。

 

「そ、その……下着も大事だと言われたんだが……どうだ?」

 

「お前の方が可愛い」

 

「そ、そんな事を―――ひやっ」

 

 普段の凛としたナルの姿はそこには全くなかった。デバイスでも敵でもなく、ただ女としてのナルの姿があった。普段とは全く違うその姿、魅せているギャップに心が躍る。嗜虐心が疼いてくる。今まで何度も苦労させられた相手が、こうやって目の前で自分に屈服している様子が見れるんだ。これでそそられないのであればソイツは不能だ。迷うことなくナルのブラジャーを掴み、そしてそれをズラす。胸がその為に一度弾み、そしてナルの双丘が隠されることなく晒されていた。両手に余るほどの大きさの胸。だがそれよりも目を引くのは、そこについている傷だった。心臓を貫かれたように出来ている傷は、

 

「そ、その……つけて貰ったんだし……消したくなくて」

 

「可愛すぎるんだよお前」

 

「んっ!」

 

 手でナルの胸を掴み、そして口を顔へと寄せてキスをする。再び貪る様なキスをしながらも、手は直に触れるナルの胸の感触と形を楽しむ。手の平を動かし、指に少しだけ力を加えれば面白い様に胸は形を変えて指を受け止める。力を込めればまるで肉の中に沈む込む様に指が入り、キスの合間にナルの口から喘ぎ声が漏れはじめる。初めての事だから加減も作法も解らないが、その反応を見ているに間違った事はしていないようだ。だからナルのその声を更に堪能したく、空いている左手を下へと持って行き。それをスカートの下に通す。

 

「ひぅっ! し、下は……!」

 

 ナルの声が聞こえるが、それを無視してナルの下着に触れる。それは既に濡れていた。キスの合間にその顔を見れば恥ずかしさで前よりも頬が紅潮しているのが明らかに解る。だから黙らせるために更に深く口を寄せて、そして下着越しに秘部に触れてゆく。黙らせるように貪るキス、その合間から漏れるナルの喘ぎ声が更に情欲を掻き立てる。

 

「んっ、は、ぁ、ふぁ、んぁ」

 

 自分の手の中で、自分よりも明確に強いって存在が何もできずにそのまま言いなりになっている状況に酷く興奮する。あのナルが、普段は凛としているナルがこれだけで蕩ける様な表情を見せて、何も抵抗も出来ずに感じているのだ。ヤバイと解っていても状況に溺れそうだった。いや、唇を重ね合せる度にそういう理性が溶けてゆくのが解る。たぶん、これが女の味と言うやつだ。覚えてしまったら抜け出せない。そういう―――愛。

 

「はぁ、はぁ、ぁん!」

 

 大分濡れてきた下着の下に手を入れて、直接秘部に触れる。ぬちゃり、と湿った音を立てながらあっさりと指を受け入れる。そのまま滑らせるように手を動かすと、それに反応するかのようにナルの体がビクリ、と動く。その反応が面白いので更に指を動かし、その反応を確かめてゆく。触る箇所によって反応が変わってくるのを確かめ、そして陰核を軽く弄る。

 

「ぁ―――!!」

 

 ナルがいきなり背中を大きく逸らしながら体を震わせる。わなわなと震えながら息を求めるその光景を見てようやくナルが絶頂を迎えた事に気づいて、手の動きを止める。ゆっくりとベッドへと倒れ込むナルの乱れた姿を見る。

 

「は、初めて絶頂というのを迎えた……」

 

「満足したか?」

 

「そんな意地悪を言わないでくれ」

 

 ナルがスカートへと手を伸ばし、それを脱ぎ、セーターとブラジャーも外す。そして、最後に残った下着も外し、完全な裸身を此方へと晒していた。恥ずかしそうにはにかみ、此方へと向けて姿を隠さず手を伸ばしていた。

 

「あぁ、意地悪しないでくれ。足りないんだ。足りないんだ……誰よりも、何よりも、お前が―――貴方が欲しいんです。私を貴方で満たしてください。ユニゾンではなく、触れ合える形として、貴方の愛で私を溶かしてください」

 

 それを聞かされて我慢ができる程の理性は残されていない。気が付いたら服を脱いでいた。既に逸物はナルの姿の前に反応して反り返っている。もはや遠慮する余裕も理性も残っていない。ナルの腰を抑えると、逸物をナルの膣口に当て、

 

「んあぁっ!」

 

 一気に挿入する。逸物が完全に体の中へと入っている姿を見て、ナルが息を零しながら笑みを浮かべ、

 

「は、入って。あぁ、入ったぁ」

 

 蕩ける様な声でそう言う。腿からは処女膜が破られ、破瓜した証として赤い血が滴っている。それを見て少しだけ理性を取り戻す。だがそれでも余裕なんて欠片もない。初の体験に息を荒げているのは自分も同じだ。何より初めて経験するナルの中は暖かく、そして逸物を動いてもいないのに締め付けてくる。まるで感じている快感をそのまま感じさせようとしてくるようにその中は蠢いて射精感を込み上がらせてくる。

 

「ナル……!」

 

「動いて、お願いだから遠慮なんて―――」

 

 それ以上言葉を聞く必要はない。いや、聞けなかった。それ以上聞ける前に腰を引いて、そして再び深くナルの中へと叩き込んでいた。彼女の体がビクンと震え、そして大きく跳ねる。口は息を求めるように大きく開き、そしてだらしなく嬌声を零していた。

 

「あんっ、ぁ、あん、はぁ、あっ」

 

 その声があまりにも可愛らしく、そして淫靡で、残された最後の理性を全て溶かしきる。残されたのは本能だけで、ただの獣の様に快楽を求めて腰を引いて、突きこむ。その度にビクンビクンと胸を大きく揺らしながら跳ね、膣が締め付けてくる。ヒダが逃がさない様に絡みついて快感を送り込んでくる。

 

「お、奥に、奥に当たってっあ、当たってぇ!」

 

 子宮口を逸物の先端でノックする様に叩き込む。全く運動していなかったはずなのにこれだけの力がどこから湧いてくるかもわからない。だが考えれる事はただ相手の体を求める事のみ。ナルが更に密着を求めて足を腰の裏に回して体を寄せてくる。だから前のめりに倒れて、ナルの口に舌をいれ、上と下で激しく彼女の体を、唾液を、そして心を求める。今、この瞬間だけは何もかも忘れてただただその肉体に、愛欲に溺れる。それ以外の思考は一切忘れて、ただただ自分と彼女だけの世界に溺れてゆく。

 

「もっと、もっとぉ、もっとぉ!」

 

「欲しいならたっぷり孕ませてやるよ!」

 

 込み上げてくる感覚に限界が近い事を悟る。更にペースを上げる。腰を叩きつける音が部屋の中に響き、そして彼女の嬌声が脳を染め上げる。抜く事なんて考えられず、欲望の赴くままに最奥に突きこんだところで射精感を一気に解放する。

 

「あぁ、あはぁ―――!」

 

 同時にナルが大きく絶頂を迎えながら此方に抱きついてくる。全力で抱きしめてくる彼女の体を抱きしめ返し、ナルの子宮に全てを注ぎ込んで行く。抱きしめる体が荒く息を吐きながら小刻みに震える。最奥へと放たれた物を感じ取る様にナルは目を閉じ、そして唇を求めてくる。舌を絡めあい、想いに応えて、そしてゆっくりと口を離す。

 

「―――愛しています」

 

「知ってるよ」

 

「じゃあ……もっと私を満たしてください、私の愛しい人」

 

「任せろ」

 

 ―――夜はまだ終わらない。

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