※この作品はR-18です。

ハナの17歳   作:アラカタ

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人間の鼻

 トモの家で豚さんを触らせてもらってから、1週間ほど経ったように思う。

 

 チャイムが鳴り、国語の授業が始まった。

 わたしはボンヤリと外を眺めながら、授業は上の空だった。

 豚さんまた触りたいなぁ……

 そんなことを考えていたときだった。

 

 「ミサチさん、ちゃんと聞いていましたか」

 

 「は、はい! えと、なんだっけ……」

 

 そんな惚けたことを言うと、クラスメイトはケラケラと笑う。

 

 「主人公は何を笑われていたのですか?」

 

 「あ、はい!」と言いながら、あわてて開いていた教科書に目を通す。そして、それらしい箇所を読んだ。

 

 「えっと、ゼ・ン・チ・ナ・イ・グ、は……大きな鼻を人々に笑われ、陰口を言われてしました」

 

 「……まぁいいでしょう」

 

 そう言って、先生は私に座っていいよう促した。

 危なかった……と胸をなでおろす。

 横を見ると、トモが「やれやれ」というように呆れた顔をしている。

 

 その時の授業で使われていた題材は、芥川龍之介の【鼻】で、鼻にコンプレックスがある主人公が、なんとか小さくできないかと模索する物語だ。

 医者のススメで、なんとか小さくする方法を知るも、今度は小さい鼻も笑われるようになり、最後は大きな鼻に戻ってしまう。

 

 何とも変な話だと思った。

 鼻なんて息ができればそれでいいじゃない。

 女の子は目のがよっぽど大事だし、痩せていれば顔もスッキリして見えると思う。

 

 そうやって考える中で、わたしはあることに思い至る。

 それは豚さんの鼻だった。

 あの鼻が人間についていたらどうなるんだろう……

 

 考えてみて、ようやく【鼻】の主人公の気持ちがわかった。

 あの鼻が人についていたら、マヌケもいいところだと思う。

 何より……そう、鼻の穴が丸見えだ!

 自分の中でそう合点がいって、わたしは国語の勉強も悪くないものだと思った。

 そして、豚さんの鼻を見たときの変な気持ち。

 モヤモヤした気持ちはそういうところから来たのだと納得する。

 

 

 

       *

 

 

 帰宅したわたしは、飲み物を入れてテレビの前のソファに陣取る。

 お菓子を片手に、テレビのバラエティの再放送に興じるのだ。

 テレビの中では芸人やタレントが体を張ったリアクション芸をしていて、馬鹿らしいながらも見ている私は笑ってしまう。

 お菓子をボリボリ食べながら、たまにジュースを口に運ぶ。これが幸せというものだ。

 そうしていると、中学生の妹が帰ってきてリビングにやってくる。

 

 「またクッチャネして……お姉ちゃん豚になるよ」

 

 「ならないよー。わたしは食べてもつかないタイプだからー」

 

 そう言ってわたしはお腹をポンポンして見せる。

 妹はトモみたいに、やれやれと言う顔をして「もう豚になっちゃえ!」と言ってリビングから出ていく。

 

 豚になんてなるもんか。

 そう思ってテレビに向き変えると、そこには豚さんのようになった人間の姿があった。

 ──鼻フック。

 鼻に針のようなものを引っかけて、上に引っ張ることで変な顔にする芸だ。

 

 「うわぁ……」

 

 わたしは思わずその光景に声をあげる。

 鼻を吊り上げられて、まるで豚のように……

 そう考えてやっぱり思う。

 豚さんの鼻はちょっと無いなぁと。

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