しかし、なかなかこの話も会心の出来という自信があります。
二年後の新世界編や、さらにそれからのお話のための伏線回みたいなもんです。
「んじゃ、俺は別件があるから」
「そんな……!」
「永遠に帰ってこねぇわけじゃねぇ。たしぎ、頼むぞ」
「分かりました!」
フーシャ村から出港して数時間。
空島”ウェザリア”にいる通報をくれた老人と電伝虫での連絡を繰り返し、無事に”ウェザリア”があるであろう空域の真下に来ることができたジャックハート。
甲板の上から空を見上げるも、そこには晴れ渡った空といくつかの雲しか見つからない。
「ねぇダーリン。ホントに空島なんてあるの?」
「さぁな。だが、行ってみる価値はある。十分行ける距離だしな」
高度1万m上空にあるかもしれない陸地に向かって、生身で飛んでいける人間が果たしているのか。
もしいたとしてもそれは、死に物狂いで”月歩”を続けることができればの話。
目の前にいる規格外の男のように、十分行ける距離などと言う者は、誰もいない。
「じゃ、行ってくるわ」
トンッ、と軽く甲板を蹴り飛び上がる。
勢いそのまま”月歩”の速度を上げ、”剃刀”で一瞬にして高度を上げていく。
「果てしねぇな。1万mだっけか? ……もうちょいスピード上げるか」
ぐんぐんと速度をあげる度に、高度も上がる。
少し肌寒くなってきた辺りで、やたらと黒く分厚い雲を見つけた。
「あん? ……これか?」
何やら他の雲とは違う、質感を感じられる雲。
それを上から覗き込めるように、さらに高く高く昇っていく。
「ビンゴ。ジジイだらけだな」
上から見下ろすと、分厚いその雲の上には小さな集落のようなものがあり、住人だと思われる老人たちが数人歩いていた。
「よっ、と」
空島にある大地に降り立つジャックハート。
数週間前と同じく青海人が飛んできたということもあり、”ウェザリア”の住民がジャックハートに好奇の目を向けた。
その中で一人、突如して現れた青海からやってきた青年に一切の疑問も持たずに近づく老人がいた。
「遅いぞ海軍ッ! ワシらがあの凶悪な犯罪者に殺されたらどうするつもりじゃ!」
「不安な気持ちにさせてしまい、申し訳ございません。何しろ空島は上空1万mにありますので、見つけづらく……」
「言い訳など聞いておらんっ! さっさと捕まえろ!」
──このクソジジイぶっ殺してからなら最高に気持ちいいんだろうな。ま、後始末がめんどいからしねぇけど。
ジャックハートに言い寄ってきたこの老人こそ、ここ”ウェザリア”に”麦わらの一味”の内の一人が飛んできたと通報してきた張本人である。
身長が2m近いジャックハートの肩にも満たない背丈で見上げながら叫んでいるということもあり、いささか迫力には欠けていた。
「おやおやおやおや、これはこれはこれは。また青海から若者が飛んできたのかの」
「はっ! 海軍本部所属、ジョー・ジャックハートと言います。ここに”麦わらの一味”の航海士である、”泥棒猫”のナミが逃げ込んだとの通報があったため、私がここに来ました」
「ほ、ほォ〜……。海賊が、のぉ……」
「よろしければ何か情報をいただきたいのですが」
「しかし……」
──こっちのジジイは何か知ってんな。
通報した老人とジャックハートのやり取りが気になったのか、”ウェザリア”の他の住人がぞろぞろと二人の元へと集まりだす。
その中の一人が、ナミという名前を聞いた瞬間に明らかに反応を変えた。
「相手は懸賞金”1600万ベリー”の極悪人です。見た目の可愛らしさに騙されてはいけません。盗み、暴行、王女の拉致、世界政府への宣戦布告、その他様々な海賊行為が確認されております」
「ほれみろハレダス! やっぱりただの犯罪者じゃったろうが!」
「な、ナミちゃんがそんなことをしてたとは知らなんだ……」
「ハレダスさん、でしたか。ナミについて何か知っていることが?」
ジャックハートのその問いに、ハレダスの表情が曇る。
「ちなみにですが、もし彼女を意図的に匿っているようなことがあれば、匿っている人も罪に問われますのでご注意を」
「……そ、そう言えば、図書館辺りに若い女が逃げ込んでいたようないなかったような……」
「分かりました。それでは皆さん、自宅に隠れていてください。私が捕獲するまでは外出も控えてください」
ジャックハートがそう告げると、ハレダスや通報した老人は移動を開始して各々家へと向かった。
ハレダスや他の住民の少し申し訳なさそうな顔から察するに、うまくここの生活に馴染みかけていたのだろう。
「さて、あのハレダスとかいうジジイの言う通りの場所にいんのかねぇ」
辺りを見渡しながら”見聞色の覇気”でさらに見えないところまで細かく探る。
生命力がそれほど強くない老人たちが建物内に入った中で、一つだけ強く感じる生命力がとある建物の中に一つ。
「これで確定だな」
”剃”で一瞬にしてその建物の前に移動。
ハレダスの言葉通り、図書館の中にその生命力は感じられた。
『本当に凄いわね、ウェザリアの技術……。この技術とウソップの開発があれば……』
「危機感もなく、まあ何とも呑気な海賊だこと。空島だから捕まらないとでも思ってんのかね」
図書館の中から聞こえる一人の女の声。
まさかこんなところに海軍が来るとは思ってないのだろう、警戒心が一切感じられない声色で独り言をつぶやいている。
「さてと、そんじゃあ身なりを整えて、と」
これからお目当ての相手に会うのだ。多少なりとも身なりには気を使う。
緩んでズレていたネクタイを整え、髪を整えて図書館の扉を開ける。
「あっ! ねぇハレダスさ……っ、誰よアンタ!」
「ようナミちゃん。会いたかったぜ」
「っ、海軍がこんなところに何の用……って、決まってるわね」
「あぁその通り。君がここにいるという通報があってね。俺が捕まえに来たのさ」
ハレダスに何かを教えてもらう予定だったのか、扉が開いた瞬間に彼の名前を呼びながら笑顔で振り向いたナミの表情が、一瞬にして目尻を吊り上げるような睨むものへと変わる。
「そう睨むなよ。別に、殺すわけじゃねぇ」
「……なら、ここから出て行って」
「そりゃあ無理だ。っと、そういやナミちゃんの質問に答えてなかったな」
そう言って、ジャックハートは満面の笑みで言い放つ。
「改めて俺のことを。海軍本部
”麦わらの一味”の航海士、ナミが絶望する、自己紹介を。
◇
「おォ〜……。よかったのかい、サカズキ。ジャックハート君にはあんな雑な通達で」
「構わんじゃろう。奴も、趣味以外の仕事での分別はしっかりとしちょる。大幅な業務の変更は本部に帰ってきてから直接言うが、今は肩書きが変わるとだけ思うちょれ、と言うただけじゃ」
「……とは言え、これで18歳での海軍本部大将っすか。また最年少記録更新っすね」
「わっしらの半分以下の年齢であれだけ強いとねぇ……。さすがに上からも下からも昇格を勧められたら、答えないと」
海軍本部、部屋の主が前元帥のセンゴクから現在の元帥であるサカズキへと変わったこの部屋には、”赤犬”、”青雉”、”黄猿”の三人がいた。
「ジャックハート君の次の任務はどうするつもりだい?」
「なに、休暇じゃ。休ませる」
「あらら、意外っすね」
「そもそも働きすぎじゃけぇの。ひと月ほど自由に過ごせる期間を作っても誰も文句は言わん」
「そう言えば彼、ここ一年ほどマリンフォードの家にはほぼ帰れていないって言ってたねぇ……」
三人の話題は、先ほど
そんな彼へのサカズキなりのささやかなプレゼントが、久しぶりの長期休暇だった。
「本人は船旅の途中でも女遊びをしてストレスを溜めないようにしとるようじゃが、肉体はそうは言っちょらん。まだまだ成長期の奴を過労死させるわけにはいかんけぇの。ここらで自由に使える時間があってもえぇじゃろう」
「……そっすね。長期間、自分で自由に鍛えられる時間にもするでしょ、ジャックハートなら」
ジャックハートは何も女遊びばかりしているわけではない。
もちろん訓練に使っている時間も多く、そしてその質は海軍の中でもズバ抜けて高い、鍛え上げられた自分の肉体をさらにいじめ抜く方法を見つけ、短時間で極限へと追い込んでいるのだ。
「ジャックハート君はもう、体をあれ以上作る必要はないからねぇ……。後進のためにも、新しい技でも開発してもらいたいよォ……」
「六式と覇気全部組み合わせた技とか作りそうっすね」
「そんなもんなら奴がもう作っとる……っ、誰じゃ。入れ」
そんな元三大将の集まりの中聞こえてくるノックの音。
集まりと言っても重要な会話ではなく世間話程度だったため、サカズキが入室の許可を出した。
「失礼します」
「ダレス准尉、か。どうした」
「サカズキ元帥。一つお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「……なんじゃ、言うてみい」
海軍トップとして部下に威厳のある接し方をするサカズキと、茶を飲みリラックスした様子のクザンとボルサリーノ。
そんな中で、ダレスが口を開いた。
「今回の昇進の件についてです」
「父親の昇進とは一切関係ない、ジョー・ダレス准尉。ワシらはお前の力を認め、准尉という地位まで昇進させた。それだけじゃ」
「しかし、いいのでしょうか。まだ9歳の自分が准尉となり、年上の方達を部下に持つなど……」
「安心せい。海軍はこれから完全な実力主義になる。ジャックハートの息子と言えど、それだけで昇進はさせん。昇進はお前自身の力だ、ジョー・ダレス准尉」
「っ、ありがとうございますッ!!」
サカズキ、クザン、ボルサリーノの三人の前に現れたこの少年。
齢9歳にして海軍本部准尉となるほどの逸材の彼。
本名を、ジョー・ダレス。
ジョー・ジャックハートを実の父に持つ、ジョー・リリーの腹違いの兄にあたる。
「ダレス准尉、”悪魔の実”の修行は進んでるかい?」
「はいっ! 修行に付き合ってくれる上司の方たちのおかげで、順調に進んでいます」
「そうかい。ちゃんと扱ってあげなよォ……。その”ボムボムの実”は、実質君のお父さんが取ってきたようなものだからねぇ……」
ダレスが8歳、ジャックハートが17歳の時のこと。
当時海軍の支部で最前線戦力として働いていたダレスの本部所属が決まった際にジャックハートから昇進祝いとして渡された”悪魔の実”こそが、”ボムボムの実”だったのだ。
元の能力者がアラバスタ周辺をパトロールしていたジャックハートに殺され、そこから数日経ってたまたま外でのプレイを楽しんでいたジャックハートの目の前に、突如として生えたのだ。
「ジョー・リリー一等兵も時期に昇進する。……あぁそれと、また妹が増えたそうだ。生まれた方もじゃが、宿す方もな」
「父さん……」
「いやぁ、ダレス准尉はジャックハートみたいにはならなさそうっすね」
「当然。海軍があんな奴の集団になるわけにはいかん。一人で十分じゃ」
父と女性との間にまたもや妹が生まれ、そして父がまた誰か女性を懐妊させたという報告。
すでに耳にタコができるほど聞き飽きたそれを聞き、ダレスは頭を抱えた。
「だが、極度の女好きとはいえその実力が折り紙付きなのもまた事実……! 父を超える働きを期待しているぞ、ダレス准尉」
「っ、はっ! ジョー・ダレス! 父に負けぬよう、これからも精一杯邁進していきます!」
「あぁ」
「失礼しました!」
大きな声で完璧な敬礼をし、ダレスは部屋から去った。
少年の背を見届けたサカズキは、机の引き出しから紙の束でできた書類を取り出した。
「若い子への指導が上手くなってないかい、サカズキ」
「なんか、物腰柔らかくなってないっすか?」
「喧しい。ジョー・ダレス准尉、ジョー・リリー一等兵、ジョー・スウェットリー二等兵、ジョー・アルカナ、ジョー・ハルディ、ジョー・ノルディアが新兵か」
「……どれもみんな、ジャックハート君の子供たちだねェ」
「センゴクが言ったことは間違いない。ジャックハートこそが次世代の最強。そして、その下を支え、担うのがこやつらの使命じゃ」
その書類には、今までジャックハートが孕ませた女性と、その間にできた子の名前が全て記されている。
子供全員が命令したわけでもなく全てジャックハートの背中を追いかけるように海兵への道を突き進む理由は分からないが、将来有望な戦力が増える事にサカズキは心の中で先ほどの言葉通り期待を抱いていた。
「……フッ」
「うわぁ」
「お〜サカズキぃ。今海兵がやっちゃいけない極悪人の顔をしてたよぉ」
「……何、面白い事を考えたんじゃ」
──ジャックハートに新世界に行く機会を多くし、無限に沸く海賊どもを殺させる。その時に死んだ”能力者”の”悪魔の実”を回収させてジャックハートの子に食べさせれば、それこそ面白い事が起きるかもしれんのう。
サカズキが考える”ジャックハートの遺伝子”を誇る究極の強さと”悪魔の実”の能力。
それらを掛け合わせた海兵たちが現れれば、きっとさらなる兵力の強化になるに違いない。
「……わしはセンゴクのように咎めたりはせん。思う存分暴れまわれ、ジャックハート……!」
元帥の椅子に腰掛け、窓に向かって独り言をこぼすサカズキ。
その当の本人は、誰に言われるでもなくいつでも好き勝手に暴れまわっていた。
◇ ◇
「あ、あんたがジョー・ジャックハートッ!? それに、今大将って……中将じゃなかったの!?」
「そりゃ今朝までの話さ。軍艦に戻って
自身の武器である”天候棒”を構え、ジャックハートに敵対する意思を示すナミ。
そんな彼女の敵対心をあざ笑うかのように、ジャックハートは自然体で彼女の前に立ち続ける。
「座って中でお茶でもしようぜ、ナミちゃん。……あっ、図書館って確か喋っちゃいけねぇんだっけ?」
「来ないで! 動いたら攻撃するわよ!」
「してみな、意味ねぇから。俺に傷つけようとするなら、んーそうだな。懸賞金を後100倍ぐらいにしてもらわねぇと」
「舐めないでくれる?」
「そりゃこっちのセリフさ。大人しく俺と楽しくお茶をするだけ。それだけで、見逃してやることも多々あるってだけだ」
互いに距離は一切詰めない。
片方は、次元が違う実力者相手に間合いを図るため。もう片方は、将来性奴隷として従順になってもらうべく、スタートが肝心だと思っているため。
「それって、どういう……」
「シャボンディ諸島、サウザンド・サニー号、”冥王”、ココヤシ村、みかん畑……あぁ後は、”頂上戦争”と”麦わら”も、か?」
「っ、あん、た……それをどこで……!」
「大将だぜ? 知ろうと思えば、大体のことは知れるのさ」
ナミの表情が、一瞬青ざめたものへと変わる。
どれもこれも”麦わらの一味”の再集結や自分の過去にとって大事なキーワードばかり。
その全てが、目の前の男の口から発せられた。
「で、どうする。ココヤシ村の人間に手を出すつもりはねぇが、その気になりゃあのクソジジイ殺して船もぶっ壊す。もちろん、ナミちゃんたちの船長もな」
「……やめては、くれないのよね」
「ナミちゃん次第さ。俺ぁ、美女を侍らせて楽しい時間を過ごすのが大好きなのさ」
「ッ! どうせ犯すんでしょ、私も! 他の捕まえた女海賊みたいに!」
「……さぁ、どうかな。少なくとも俺の記憶じゃ、女の方からセックスしてくれって言ってきた記憶しかねぇがな」
海軍でのあまりの仕事の速さに顔は知られていないことが多いジャックハート。
しかし、その悪名は世界中の女性中心に広まっている。
「ビビちゃんもそうだったんだぜ? 最初はナミちゃんみたいにツンツンしてて、最後にはビビちゃんの方から頼んできたんだ」
「嘘言わないで! ビビがそんなこと言うはずないでしょ!」
「ホントだっての。人の恋路を嘘と決めつけて欲しくはないな」
かつて仲間として旅をし、今はアラバスタの王女としての役割を全うしているビビ。
彼女と目の前のジャックハートの結婚報道は新聞にも載っていたため、ナミの記憶にも新しい。
「にしても期待外れだぜ」
「あら、私の身体が気にいらないなら帰っていいわよ?」
「違ぇよ。お前の身体も顔もどストライクだが、アホだからな」
「……どういうこと?」
これでも”麦わらの一味”の航海士として、仲間の命を預かり旅をしてきた、司令塔のような存在としてのプライドはある。
同じ一味のルフィやゾロよりは一般常識には自信があった彼女だが、アホと言われて少し頭にきた。
「指名手配書には”DEAD OR ALIVE”と書かれてんのは知ってんだろ? つまり、てめぇをここで殺して海軍に持ってってもいいって訳だ」
「っ、いや……!」
「だったら生きる道を選ぶか。どうする、船や故郷の住人を取るか、自分の貞操を取るか」
とどのつまり、ナミはジャックハートがここに来た時点で詰んでいたのだ。
上空1万mのここで生身で戦っても勝てるわけがなく。
かと言って仲間や大事な村のみんなを売るわけにもいかない。
ナミ自身がジャックハートに差し出せる何かは、自分自身の身体しか無かった。
「……抱いて」
「あん?」
「抱いてって言ってんのよ!」
「俺ぁ、そんなクソ生意気な性奴隷は抱きたくねぇな。ビビちゃんの方がよっぽど優しくて癒される。アラバスタに行くついでにシャボンディ諸島にでも寄ってストレス発散でもするとしようか」
「ッ! …………ねぇ」
意を決したナミの決断も彼には届かない。
ただ見た目が良くて抱き心地がいい性奴隷なら、ジャックハートならばいくらでも捕まえることが出来る。
彼が求めているのは、その中でも特出して欲求を駆り立てられる、お気に入りになる性奴隷。
「どしたよナミちゃん。諦めて死ぬ気にでもなったか?」
「ううん。……ジャックハート、様?」
「おぉ、いきなり素直になったじゃねぇの」
声色を変え、急にジャックハートの左腕に自身の両腕を絡ませに来たナミ。
ぎゅっと彼の腕を抱きしめ、その大きく豊かに育った胸を押し付ける。
「私で良ければ、ジャックハート様の性奴隷にしてくれないかしら」
「今のままなら却下だな。俺はどっかに逃げるかもしれねぇ猫ちゃんより、従順な犬、もしくは家畜みてぇな豚の方が好みだ」
だがそれでも一切の油断は見せず、ジャックハートもナミの退路を断つ。
確実に”麦わらの一味”に戻ることなく、自分の元に留まる。
そう言わせてから、彼の調教は始まるのだ。
「……お願い。ホントに、それだけはお願い、許して……!」
「何がだよ。返答次第によっちゃ、分かってんだろうな」
「分かってる! でもお願い! 私がいなきゃ、みんな新世界を乗り越えていけないの!」
「それを海兵の俺が聞く通りはねぇな。何の交換条件にもなりゃしねぇ」
そのあまりの隙の無さにナミが折れた。
抱きついた彼の腕から離れ、彼の前に移動して何とか許しを請うために頭を下げる。
この時点で、ジャックハートに軍配が上がってしまったのである。
「まあでも、俺も鬼じゃねぇ。
「えっ……?」
「五日間、さっき言った従順な犬になるんならここは何もかも見逃してやるよ。さっき俺が言ったヤツらには手は出さねぇ」
「ホント!?」
「あぁ。ナミちゃんが誠意を見せてくれれば、だが。俺の要求を全て飲む完全な雌犬になれば、だ」
「うっ……。それでも、五日間か……」
そしてナミは、悪魔の囁きに心が傾いてしまった。
「なに、たった五日さ。五日間俺と楽しく過ごせばいいだけ。それでナミちゃんの命も、大事な人達の命も助かり、俺には見逃してもらえる。俺はナミちゃんと楽しく過ごせる。良い条件だと思うぜ?」
「……ホントにその期間アンタの相手すれば、ルフィ達にもココヤシ村のみんなにも手は出さないのね?」
「もちろん。ナミちゃんの命も保証しよう」
自身が身体を1週間差し出すことで助かるものの多さ、重大さ。
貞操と守るものを天秤にかけ、ナミは決断した。
「分かったわ。……ベッドに、行きましょう」
「おいおい、まだナミちゃん自身の口から聞いてねぇぞ。ちゃんと、俺を楽しませるように言ってくれなきゃ分かんねぇわ」
「……そうね。大将にこれだけで何もかも助けてもらえるんですもの。私も、覚悟が足りなかったわ」
「今の立場を忘れるなよ。俺が主で、お前は雌犬。そのことを良く理解して発言しな」
仲間の命のため、故郷の恩人たちのため、船のため、そして、自分自身の命のため。
ナミは、自分の身体を売ることを決めたのだ。
「お願いします、ジャックハート様。この私を、ジャックハート様の性奴隷にしてください……!」
「合格。だが、まだちょっと反抗心が見えるな。俺は楽しく、気持ち良くナミちゃんと遊びてぇんだ。萎えるようなことした瞬間、今の約束は全てなかったことにするからな」
「っ、じょ、冗談よジャックハート様。あなたみたいな人の性奴隷になれるなんて、私幸せよ?」
「ケハハハ。その調子だ。せいぜい俺を楽しませる演技を続けな」
「演技だなんて、そんな……!」
先ほどと同じく、その豊かな胸の谷間にジャックハートの左腕を挟み込むナミ。
そんな彼女を見て、ジャックハートはニヤリと笑う。
「安心しなよ。俺は、一度捕まえると決めた奴は絶対に逃さねぇから」
「きゃっ!」
ジャックハートがナミの背中と膝裏に腕を回し、彼女の軽い体を持ち上げる。
いわゆるお姫様抱っこだが、ジャックハートにとって女性一人程度の体重などあってないようなものだった。
「ナミちゃんさ、ここに来てどこに住んでんの?」
「えっと、空いてる家が一軒あって、そこに住まわせてもらってるけど……」
「そう。ならこの五日間はそこから出ること禁止。全ての予定をキャンセルして、俺との短い同棲生活としようや」
ジャックハートはナミの心を見透かしていた。
女好きのジャックハートがナミを五日自由にできる権利を無残に捨てるはずはない。ヤッた後で仲間たちを殺されてしまうかもしれないが、あの契約を持ち出された時点で、ナミは頷くしかなかった。
そして、彼女は五日間という長いようで短いような時間なら、我慢して耐え忍ぶことができるはずだ。
そう考えていると”見聞色”で彼女の心を見透かし、またナミ自身もそう考えていた。
「ジャックハート様を独り占めできるなんて、嬉しいわ」
「そうか? 海軍の基地に来ればいくらでもハメてやるぜ? さっきも言ったけどナミちゃんはどストライクだからな。今すぐにでも持って帰りたいぐらだ」
「ありがと」
「俺の子を身籠って欲しいぐらいには、な」
「あら残念。この五日間は排卵の予定はないの」
「……ケハハッ! そうかそうか、そりゃあ確かに残念だ」
笑いをこらえていたジャックハートだが、我慢できずについ吹き出してしまった。
この男に一度抱かれて元通りの生活を送れた者など、良くも悪くも誰一人としていない。
そのことを知らずに腕の中の美女は未だ少しだけ強気な振る舞いをしているのだ。
「ナミちゃん家どれだ?」
「あれよ。あの一番大きいやつ」
「ほうほう。……あ、でだナミちゃん。子どもはデキねぇって言ってたけど、もしデキたら俺が名前考えてもいいか?」
「……いいわよ」
「俺たちの子にぴったりのいい名前を考えてやるからよ」
──つってももう考えてんだけどな。いやぁ、
排卵日でなくても強制的に卵子を出させることができるジャックハートにとって、ナミの排卵の周期は関係ない。
もう、彼女は逃げられないのだ。
「ここか?」
「えぇ」
「そんじゃあ、今から五日間。たっぷり楽しもうぜ、ナミちゃん」
抱きかかえられたまま、ジャックハートの腕の中で身動きを取れない、ではなく取らないナミ。
今更足掻いても無駄だろうと思い、ジャックハートのいいなりになることに決心がついたのだろう。
彼女も少し気づいたのかも知れない。
「俺たちのこの、愛の巣で」
彼女……否、彼女たちにはもう、逃げ道はないことを。
なぜジャックハートさんがナミにあんな提案をしたのか。
なぜナミの要求をすんなりと飲み込んだのか。
その理由は、新世界編が始まってからのお楽しみです……フフフ……。
一つ言えるのは、ジャックハートはただエロいだけの人ではなく、クズ成分もそれなりに入っているということです。
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作者好みのキャラで濃く
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