しかも本番は少なめという……。うーん、テキーラウルフの出来事を考えていたら行き詰まった。
ストーリーが本格的に動き始めるのは次話からです。お楽しみに。
ジャックハートがナミとの行為を終えておよそ1ヶ月。
ビビの妊娠がほぼ確定し、ハンコックとマーガレットにつわりが始まり、空の上にいるナミにも少しばかり変化が出てきた時期。
「肌寒ぃな」
「は、肌寒いどころの話じゃないと思うんですけど!?」
「気合いで我慢しろ。じゃねぇと中将になんてなれねぇぞ」
「ひぃぃい……っ!」
たしぎとジャックハートは”東の海”にある橋の上の国、激しく吹雪くテキーラウルフへと上陸していた。
「こ、ここってずっと橋を作り続けてるんですよね?」
「あぁ。しかしその作業人に罪人やらが多いせいか、ごく稀に凶悪な事件が起こるらしい」
たしぎが生唾を飲み込む。
果たして、自分はここにいてもいいのか。ジャックハートの隣に立つに相応しいのか。
そんなことを考えていた彼女の頭に、ジャックハートの大きな左手が乗った。
「てなわけで、だ。これからたしぎには俺流の極悪人の成敗方法を学んでもらう。目を閉じるなよ」
「……嫌な予感がするんですが」
「なに、多少血祭りが起こるだけだ。それほど珍しくはないだろ」
――十分珍しい、と言うか恐ろしいんですけど!?
今現在自分の頭を撫でている男、ジャックハートとたしぎの関係は、言わずもがな歪なものである。
海兵としての関係で言えば、完璧な上司と至らない部分が多い部下。
たしぎのミスはジャックハートがカバーしているが、その分たしぎが請け負う雑用も増える。
男女としての関係で言えば、絶対的な主とその愛を欲する愛人。
一度”正義”を脱ぐとその心と体の距離は縮まり、一人の女としての幸せを味わわせてもらえる。
「じゃあ、始めるか」
黒い革手袋を両手に嵌めるジャックハート。
眼前には海兵が来たということを知り、武装した数多の犯罪者たち。
「よく見ておけよ、たしぎ」
彼の姿が消える。
次の瞬間には数メートル先にいた犯罪者たちの塊から人が噴き出し、血を吐きながら吹き飛んでいた。
「いや、無理ですよ」
海兵としても男としてもある意味ストイックな日常を送っている彼が、笑みを浮かべながら犯罪者たちを屠っていく。
爪の間に入った血の処理が面倒、という理由で嵌められた手袋が、一人の男の顔を握りつぶした。
「それでも、やっぱりカッコイイんですよね……」
いつか彼が言っていた、一対多こそが本領を発揮できる場面。
まさに嵐。もし仮に自分が中将になれたとしても、強力な”悪魔の実”を食べたとしても、あそこまで理不尽な暴力にはなれないだろうと思ってしまう程の圧倒的な強さ。
そんな姿に心も体も反応してしまう辺り、末期だということは自覚している。
「たしぎ! 進むぞ!」
「はっ、はい!」
地面に倒れた屈強な男達の中央に一人立つ、返り血に塗れたジャックハート。
息切れ一つしないで歩き始めた彼の元へ駆け寄り、ハンカチで血を拭いていく。
「こんな汚ぇ血を一々拭く必要ねぇぞ?」
「そうはいきません! ……ジャックハートさんの、お身体ですから」
「直接かかってんのは顔ぐらいだがな。ま、ありがとよ」
「いえ。今私にできるのは、これぐらいしかありませんので」
まるで門番のようにジャックハートを待ち構えていた男たちは、彼の手により無力化されている。
その体を踏まないように上手く避けながら、白いコートに着いた血を拭っていく。
「そ、それにしてもジャックハートさん。良かったんですか?」
「何が?」
「……こ、殺しちゃって」
「あぁ、コイツらなら大丈夫だ。たまに俺みたいに襲撃してくる奴がいるから、その対策で雇われてる無法者ばっかだからな。”DEAD OR ALIVE”の犯罪者だらけだ」
「そこまでして、一体何を……」
「さあな。俺には関係ねぇことだ」
べっとりと血が着いた手袋を外し、たしぎの頬を撫でる。
先ほどまでは上司と部下だった関係が、男女のそれへと変わった。
「さてと。早くやることやって、船に戻るとするか」
「……はい」
近いうちにまた身体を重ねることを約束した2人は、どんどんとテキーラウルフの内部へと入っていく。
テキーラウルフの内部にある、簡素な宮殿。
しかし、簡素とはいえここにいるのは国のトップ達。ジャックハートが上陸した場所に湧いていたゴロツキたちなどはいるはずもなく、彼の目の前には汗を額に滲ませた小太りの男性が1人。
そもそも、先ほどジャックハートが息の根を止めた犯罪者達もこの国に合法的に雇われているわけではない。
つまり――
「いやぁ、困るっすよ。上陸する所をあんな無法地帯にされちゃ」
「……それは済まなかったな。なにせ、この国は広い。私の目が行き届かなかったことは謝罪しよう」
「まあ、安心してください。ちゃんと元通り、平和な海岸線にしときましたから。てか、俺ァ別に奴隷に橋作りさせてるからって、それだけでは咎めませんよ」
――国の誰も、ジャックハートの殺しについて言及出来ないのだ。
テキーラウルフの政府が橋作りに従事させるには勿体ない力を持つ極悪な犯罪者を傭兵のようにしていたのには、とある理由がある。
「革命軍の居場所さえ教えてくれりゃあ、問題ないっす」
「ッ!! ……それを、どこで……」
「いやいや。普通に有名っすよ。革命軍に目をつけられ、その対応に追われ、そして自分の力で決着をつけられない国だってことは」
「ぐっ……!」
自分達が橋を作らせるために連れてきている奴隷たち。
その解放を目指した革命軍がここ数日国内に侵入しており、ジャックハートの言葉通り、彼らを退けることは出来ていなかった。
「なので、俺があんた達の威厳を守ります」
「……何が、目的だ」
「別にそんな大した意味なんて無いっすよ。……ただ、国に恩を売って損はないかと思っただけで」
「……頼めるか」
「えぇ。奴らの処遇は俺の好きにしても?」
「あぁ」
奴隷を使って橋を作り続けようとするテキーラウルフと、奴隷の解放を目指す革命軍。
一般常識であれば、
しかし、この男は海軍において一味違った。
「では、今戦ってる戦力を引き上げてください。正直邪魔なんで」
「……分かった」
海軍大将クラスの地位、権威を、自分の好きなように振りかざす。
そして自分好みの利益を得ることが出来たら、その一部を海軍に還元する。
「行くぞたしぎ。仕事は早くしないとな」
「はっ!」
彼が連れているのは、線は細いが出るところはしっかりと出ている女性的な体型をした部下一人。
その部下に、一切の返り血を浴びせることなく50人程雇った賞金首を皆殺しにされたのだ。
「あぁ、それと」
たしぎの腰に手を回しながら宮殿を後にしようとしていたジャックハートが、不意に立ち止まり、振り返った。
「サカズキさんは、怒らせたら怖いっすよ?ま、海軍大将も当然だけどな」
ゾクリ、と背筋に冷たいものが這うのを感じた。
あのゴロツキ共が自分達が用意していたものだとバレているのか、はたまた
「そろそろ、奴隷使って国作りとかやめた方が身のためっすよ。いくら天竜人の命令だからって、もうちょいどうにかしないとマズいでしょ」
それだけ言い残して、ジャックハートは今度こそ宮殿を去った。
◇
「……妙に外が騒がしいわね」
「そうですね……。恐らく、テキーラウルフの戦力と私たち『革命軍』が戦闘している音だと思うんですけど、近いですね……」
テキーラウルフの領土内に立てた革命軍の拠点。
そこを目指して走り続けるサイに引かれる車の中で、ロビンは新たな革命軍の人間を迎え入れていた。
「それにしても助かったわ、コアラ。あなた達が来てくれなければ、今頃どうなっていたか」
「間に合ってよかったです。私たちもまさかこんなところにロビンさんが飛ばされてきているとは知りませんでしたから」
その人物こそ、革命軍幹部の一人、コアラだ。
比較的若い女性ではあるものの、幼少期の経験から魚人空手の師範代として、革命軍の肉弾戦の指南も行っている。
「安心してください、ロビンさん。貴女の身には何も無いよう、全力をもって――」
守ります、とコアラが続けようとした瞬間。車が大きく揺れ始めた。
「何っ、どうしたの!?」
「危ないわっ! 伏せて!」
革命軍幹部とは言え若いコアラがその突然の事態に狼狽し始めるのに対し、昔からかなりの修羅場をくぐってきたロビンが咄嗟の判断を下す。
揺れが激しくなり、車体全体が大きく跳ね始めたところで、大きな浮遊感が身体を襲った。
「あっ!」
「きゃっ!」
思わず目を閉じる二人。
身体が宙に浮く感覚が消えて目を開けると、そこには派手に横転し、原型を留めていない程に壊れた車。そして、首を落とされて血を流し、絶命しているサイと御者が倒れていた。
「っ、な、なんでこんな……!」
「なんでだろうなぁ。分かるか? たしぎ」
「はい。恐らく、革命軍が国に侵略してきたことが原因かと」
「っ! コアラッ!!」
コアラの心中を吐露するかのような呟きに返事をするものは、自分以外いないはず。
その事を理解しきっていたロビンは、すぐさま彼女に退避するように叫んだ。
「っとと。おいおい、あんま暴れないでくれよ。俺だって女性二人を小脇に抱えるのは楽じゃねぇんだぜ?」
再び頭上から聞こえる知らない男の声。
危険だと、本能がそう言っていた。
「おいおい。そんな人を殺しそうな眼で見つめないでくれよ」
「離しなさい!」
「やなこった。んじゃ、とりあえず今は不法入国の罪で逮捕だ」
「っ、離して! 他のみんなは!?」
「おねんねしてるぜ。もう二度と起きねぇが」
ジタバタと男の腕の中で暴れるロビンとコアラ。
体重が重いとは思いたくないが、女性二人が同時に暴れるエネルギーを全て受け止めながらも、その男は微動だにしない。
「自己紹介が遅れたな。海軍本部大将、ジョー・ジャックハートだ」
「そしてその部下の、海軍本部少尉のたしぎと言います。
「っ、ジャックハート……ッ!」
「ま、まさか……本当に、こんなところまで……!」
ジョー・ジャックハート。
その名を聞いてロビンとコアラが抱いた気持ちはほとんど同じもので、浮かべた表情も理由とモノは違えど、似通っていた。
コアラは、ロビンと自分がいるという情報が漏れ、そして部下を殺された不甲斐ない気持ちと嫌悪感からくる怒りを。
ロビンは、以前車の中で話していた会話の中で、まさか来るはずはないと信じたかった人物が来たことによる絶望を。
「おぉ、俺のことを知ってくれてんのか。なら話は早い」
「っ! やだ、離して!」
「おっと。そんなにケツ振って誘わなくたって、ロビンちゃんもコアラちゃんもたっぷりと愛してやるから安心しなって。おい、たしぎ」
「はい」
彼の合図に従うように、たしぎがジャックハートに抱えられているロビンの両手に海楼石の手錠をかけた。
そのままたしぎにまるで人質のように扱われながら立たされるロビン。
「さて、じゃあコアラちゃんも立とうか」
「……っ!」
「ほう。歯向かわず、臨戦態勢も取らないとはな」
「そんなことしても無駄でしょ」
「ケハハッ。賢いじゃねぇか」
空島でナミと相対した時と同じく、若いながらも出るところは出て、締まっているところはしっかりと細いコアラの身体を舐め回すように観察していく。
「じゃあくだらねぇ嘘は無しにして、だ。俺がここに来たのはニコ・ロビンを抱くため。コアラちゃんは幸運にもそこにもう一人追加されることになった美少女ってわけだ」
「くっ……!」
「で、まあお前らの態度次第じゃ逃してやらんこともねぇし……何より、革命軍本体を逃がしてやるよ」
「っ!? それを、どこで……!」
「……ほう。やっぱ来てたか、ドラゴン。まあここにあいつが来てるってことは重要なメンツがそれなりにいるってわけだ」
ハメられた、とコアラは心の中で仲間に詫びるとともに、目の前の男の不気味さを痛感していた。
今や相当の力をつけてきたと自負してもいい革命軍。しかしこの男は、その組織と敵対しているという事実を真正面から受け止めているのだ。
「まあ、怖くねぇな。幹部それぞれの戦力で見たらそこそこだが、勝てないほどじゃねぇ。ビッグ・マムんとこの方が数も力も強ぇだろうし、単体じゃ多分カイドウには負けてんだろ」
「っ、か、考えてることを……!」
「”見聞色”は鍛えといた方がいいぜ?」
そう言いながらコアラに近づいていくジャックハート。
「抱かれる覚悟はできたか?」
「……念のために聞かせて。もし、断れば?」
「海軍の全力をもって革命軍を叩き潰す。その後、メンバーの遺伝子が途切れるまで血縁者を殺す。油断してると、海が汚ねぇゴミで溢れちまうからな」
「そんな言い方……!」
「別にいいだろ? 俺ァこれでも平和はお前ら以上に守り、作ってきてる。世界に認められた合法的なやり方でな。お前らの自己満とはわけが違う」
海軍と革命軍。
根本の部分で考え方が異なる二つの組織の幹部と大将が分かり合うことは、無かった。
「薄々分かってんだろ? コアラちゃんが今ここで俺に見つかった時点で、革命軍は海軍に負けてんだ」
「っ……!」
「あとは、仲間の命を取るか、自分の貞操を取るか、だな。よく考えて、答えが出たら行動に移しな」
待っててやるよ、と俯向くコアラに言い放ったジャックハート。
ここで断ってしまえば、この男は自分とロビンを殺して、革命軍本体に甚大なダメージを与えるだろう。
ここで断らなければ、彼の言葉通り自分とロビン、そして革命軍という組織も存続する。
「っ、ダメよコアラ! その男に身体を許しては――」
「ダメですよ。男と女の二人だけの時間を邪魔しちゃ」
後ろで何かを叫ぼうとしていたロビンの口が、たしぎの手によって塞がれる。
今のコアラは、一人で決断しなければならない立場にある。
そして、この場である意味革命軍の存続、仲間の安全をかけた選択を迫られた彼女は、そちらを選ぶしかない。
「せっかく女の子が自分の意思で女に……いえ、違いますね」
意を決したコアラの表情を見て、たしぎが言葉を変える。
短い歩幅でジャックハートの元へと歩み寄ったコアラが、ジャックハートの首に両手を回し、目を閉じて唇を差し出した。
「ジャックハート様の雌になろうとしているんですから」
ジャックハートの鍛え上げられた腕に抱きしめられるコアラの華奢な体、互いの体で卑猥に潰れる胸。
少女の口内を蹂躙するように舌を絡ませ、着実に彼女への侵略を始める主人を見て、たしぎが歪な笑みを浮かべた。
◇ ◇
「あっ、お兄ちゃんだ!」
「ん。リリーか。どうしたんだ?」
「訓練終わったから遊ぼうと思ったの!」
「……悪い。俺はまだ訓練が終わってないんだ」
「そうなの?」
「悪いねぇリリーちゃん。ダレス准尉にはもっと強くなってもらわないと」
「あ、おつるさん。こんにちは!」
「えぇ、こんにちは」
海軍本部、マリンフォードにいくつもある訓練所。
兄を探すためマリンフォード中の訓練所を手当たり次第に探しながら奔走していたリリーは、ようやく兄と出会うことができた。
「お母さんはどうしたんだい?」
「お家に帰ったの。お兄ちゃんを探してきてって頼まれたんだ!」
「そうかい。偉いねぇ」
「えへへ〜」
上半身の衣服を邪魔だと感じているのか、上裸のダレスはその全身にびっしりと汗をかき、少し前まで父が就いていたのと同じ中将という地位にいるおつると特訓をしていた。
しかしその特訓も、リリーが来たことにより一時中断されることになる。
一般的な海軍本部中将とジャックハートの年齢は、親子のそれ程度に離れている。
「……孫がいたら、こんな感じなのかねぇ」
そのジャックハートの子どもは、そのほとんどが私生活では中将や大将にとって孫のように扱われている。
満面の笑みを浮かべるリリーと、そんな彼女の頭を微笑みながら撫でるおつる。
息を整え、汗を拭ったダレスが再びおつるの方を向いた。
「おつる中将。……続きを、いいですか?」
「あぁ、いいよ。ジャックハートの息子だからって容赦はしないからね」
「リリー。次で終わりだから少し待っててくれないか?」
「うん! 私、見てるね!」
訓練用の槍を構えるダレスと、訓練用の剣を構えるおつる。
拭ったとはいえ火照る体から噴き出すような汗をかいているダレスと向かい合うおつるは、汗ひとつかいていないどころか息ひとつ乱していなかった。
「どうしたんだい? あの程度じゃ、父親に並ぶなんて夢のまた夢だよ」
「分かっています。……では」
ダレスの姿が一瞬にして消える。
ジャックハートが使っている六式の中でも最も得意と言ってもいいうちの一つである”剃”
体はできていないがその分軽いダレスの剃は、速度だけで言えばかなりのものだった。
「あまい」
「くっ……!」
「殺気が漏れすぎだね。それじゃあ、まだまだだ。海軍将校にはなれやしないよ」
「自分が未熟なのは分かっています。だから今こうして、胸を借りているんですっ!」
おつるへの背後からの強襲は、刃に防がれて体に通ることはなく。
それどころか、振り返ったおつるに切り払われるように振るわれ、ダレスの軽い体が宙に飛ばされる。
「それは、愚策です。はぁっ!」
ダレスが翳した左手から、まるで飛ばされてきた後を辿るかのようにおつるに向かって伸びていく連続的な爆発。
美女と一緒に風呂に入ったり、自分の身体で自由に抱きたいという思いだけで能力者になっていない父とは違い、その父からの贈り物である”ボムボムの実”を食べたダレス。
その能力は体表に留まらず、体表に触れたものにも及ぶ。
「”鎖状爆撃”!」
連なる鎖のように、まさしく連鎖して繋がっていく。
ダレスがあえて自らの身体には不釣り合いなほどにぶかぶかな上着を選んでいるのは、皮膚を直接通る空気を少しでも多くするためだ。
「はっ!」
進んでいた爆撃がいよいよおつるに触れるまで迫っていた時。
ダレスが爆撃を操作し、おつるの視界を奪うほどに大きなものを発生させる。
「これでっ!」
「あぁ、終わりだね」
「がぁっ!」
もちろんそれを発生させたのは目くらましのため。
いくらおつるとダレスの間に圧倒的な力の差があったとしても、流石に”悪魔の実”の攻撃を直撃させるわけにはいかない。
これは海兵同士の訓練で死人を出さないために作られたルールであり、もちろんこの訓練でも適用される。
「体と能力の使い方はマシになってきても、”覇気”が絶望的に下手だね。これじゃ、20年あっても今のジャックハートに瞬殺されるよ」
「はぁ、はぁ……! やはり、”覇気”ですか」
「あぁ。一度、落ち着いた時に本格的な訓練を始めた方がいいかもしれないね。ジャックハートも、三種の”覇気”全てを海軍入隊する前から使いこなすことはできていたからね」
「……父さんやおつるさん、他の中将クラスの方達の強さを痛感します」
「生まれた環境、潜り抜けてきた死線、やってきたことの密度が違うから当然だよ」
しかしそのダレスの奇襲も実らず。
熟練の”見聞色の覇気”によって先読みされたのか、腹部に痛烈な突きを浴びて彼の体が数メートル吹き飛び、訓練が終わった。
「厳しくしてくれって言ったのはそっちだからね。これからも容赦はしないよ」
「ご指導ご鞭撻、ありがとうございました!」
「……ちゃんと体のケアはしとくんだよ」
訓練が終わり、おつるはそそくさと訓練所を後にした。
「大丈夫? お兄ちゃん」
「あぁ。父さんは凄いな。あんなに強い人よりも、さらに上の地位に……」
「……はっ! わ、私もお兄ちゃんやパパには負けないよっ!?」
「楽しみだな。……でも、このままいけばリリーは俺の直属の部下になるんじゃないか?」
「え。お兄ちゃんが上司って、なんかヤダ」
「なっ……!」
腹違いとはいえ、半分は海軍最強の男の遺伝子と血を受け継いだ、血の繋がった妹であるリリー。
実の妹に上司になってほしくないと言われ、かなりのショックを受けた。
「だって、私がお兄ちゃんの隊に入っちゃったら、絶対に贔屓してるって言われるでしょ?」
「……あ、あぁ。そうだな」
「だからね、早く私も強くなって、お兄ちゃんやパパみたいに強くなるんだ!」
フンスっ、と音が出るほどに強く鼻息を鳴らすリリー。
ただ妹に嫌われてしまったのかと不安になった兄に対し、一人の海兵として立派な志を抱いていた妹。
「……負けないぞ」
「ほえ? 何が?」
首を傾げながら間抜けな顔をしている妹に、心の中で密かにライバル心を抱いた兄であった。
「そろそろ戻ろうか。ヒナ母さんも戻っているんだろ?」
「うん。ママはパパと行っちゃったけど、ヒナお母さんと遊んでもらう約束してるんだー!」
「それはいいが、ちゃんとお手伝いもしなきゃだめだぞ?」
「分かってるよ。これでも、長女だもん!」
ジャックハートが7歳の時に孕ませた女が産んだダレスと、ジャックハートが8歳の時にカリファが17歳にして産まれたリリー。
そこから不特定多数の女性や、今ジャックハートが保有している女から産まれた数多くの兄弟姉妹の長男と長女は、自然と頼れる存在になっていた。
「いいなぁお兄ちゃん。パパからプレゼントもらうなんて」
「いいことばかりじゃないぞ? 泳げなくなるし、何より加減が難しい」
「ふーん。泳げなくなるのはヤダなー」
海兵になっているとはいえ、まだまだ遊び盛りなリリー。
8歳という年齢で一生泳げなくなってしまう決断は、まだできなかった。
「あ、でも、”メラメラの実”っていうのは食べてみたいかも」
「そんなオヤツ感覚で食べるなよ!?」
実家への帰り際、とんでもないことを口にした妹に思わず驚嘆し、ツッコんでしまう。
天然のものでは世界に100種しかない”悪魔の実”。食べれば凶悪な能力をその身に宿してしまうのだ。
「それにリリー、お前知ってるのか? 前の”メラメラの実”の能力者」
「うんっ! 戦争で死んじゃった人で、”火拳のエース”って人でしょ?」
「そうだ。なんでも、あのゴールド・ロジャーの実の息子で、白ひげの船員でもあったそうだ」
「ほへ〜。なんか強そうだね〜。でも、私達のお父さんも強いもんね!」
「……あぁ、そうだな」
一等兵であるリリーと、准尉のダレス。
もちろん上の地位にいる海兵との繋がりがより強いのはダレスであり、その分彼は自分の父の海軍内での評価は耳にタコができるほどには聞いていた。
「リリー」
「うん? どったの?」
「……父さんはな、強いどころでは済まないほどの強さらしい」
「どういうこと?」
今は知らなくてもいい、とリリーの頭を撫でる。
ダレス自身が昇進してきた理由として挙げられるのが、市民の安全確保や避難誘導など、戦闘ではない部分で大きな活躍をしてきたからだ。
もちろんその間に父譲りの身体能力を生かして戦闘を行ったこともあるが、だからこそ分かる、父の凄さがある。
「海軍屈指の……いや、世界屈指の戦闘の達人だそうだ」
「ほえ〜。パパ凄い!」
「……あぁ。見習わないとな」
常日頃から先輩に、女好き、戦闘狂、人殺しを躊躇わない、といった部分は父を見習うな、と口うるさく言われているダレス。
しかし、海兵としての強さだけは父だけを見習うことにしていた。
そんなことを話しながら歩いていると、いつの間にか家の前まで来ていた。
「たっだいまー!」
「ただいま」
勢いよくリリーが玄関の扉を開け、その後にダレスが続いて入るいつもの光景。
「おかえりなさい、二人とも」
「ただいま、ヒナ母さん」
「ただいま! ……あ、起こしちゃだめだよね」
「そうしてくれると助かるわ。スピカもみんなも、今お昼寝を始めたところなの」
玄関を開けて家の中に入ると、寝顔を浮かべる赤ん坊を抱きかかえながら歩いているヒナがいた。
彼女の話を聞くに、他の弟や妹達も寝始めているという。
「うーん……。どうしよ」
「どうかした? この子達を起こさないようにするんだったら、何でもしていいけど?」
「スピカの寝顔見たら遊ぶ気無くなっちゃった」
「ふふっ、そう。じゃあ、リリーもお昼寝する?」
「……ううん! お庭でお兄ちゃんと訓練する! パパみたいに強くなるの!」
そう言うや否や、強引に兄の手を掴んで庭へと駆け出していくリリー。
ダレスも最初こそ驚いた顔をしていたが、父のように強くなると宣言したリリーを見て、自ずと走り始めた。
「……みんながジャックハート様の背中を追って成長していくなんて、ヒナ感激」
自身が愛する人への想いを馳せながら、ヒナは取り掛かろうとしていた家事に取り組み始めた。
◇ ◇ ◇
「あっ! んっ、や、ヤダ……! こんな、の……んぅうあぁっ! お、おかひくなっちゃうよぉ!」
「コアラ……!」
「気持ち良さそうでしょ? ジャックハートさんとのセックスは、すごいですよ?」
「ケハハハハ! おかしくなるって言ってるがよぉ……さっきから膣肉しまって愛液だだ漏れだぜ、コアラちゃん」
「きもちいいのぉ! す、すごすぎて、あっ、んひぁっ!」
しんしんと雪が降りしきるテキーラウルフの橋の上で、ジャックハートは条件を呑んだコアラとの性交に臨んでいた。
ジャックハートはただ下に履いていたものを下ろしただけだが、コアラはその身に何もつけていなかった。
「どうすんだよコアラちゃん。俺とのセックスを気に入ってくれたのは嬉しいが、燃え上がって服投げ捨てたのはお前の自己責任だぜ?」
「んぅっ、あぁんっ! はっ、あんっ、あ、い……イク、イクうぅぅぅううっ!」
「……こりゃ戻る気なんてなさそうだな。まあ、そりゃそうか。革命軍幹部が海軍本部大将にぶち犯されて、全裸のまま膣内精液塗れでこの寒い中船に戻るなんて、みっともなさすぎるだろ。ケハハァッ!」
寒さから身を守るために体を動かすのか、それともこの男に殺されないために腰を振るのか。
本人以外には全く、その理由は分からなかった。
「だがそれも、堕ちちまったんなら仕方ねぇ。俺が飼ってやるよ、コアラちゃん」
「はひぃいっ!」
「……まあ、お前が手に入ろうが入るまいが、革命軍を潰すことは世界政府の上層部の意向で決まってんだわ。コアラちゃんの初々しいセックスが気持ちよくて、つい言い忘れちまったぜ。悪いな」
「……へ?」
「ケハハ! やっぱ演技だったか。残念だったな。コアラちゃんを抱けば見逃してやるってのは、ジョー・ジャックハート個人としての言葉だ。海軍本部大将としての言葉は、世の中そんなに甘くねぇ、ってとこだな」
「……あ、アハ、アハハハッ!」
「ん? 壊れちまったか?」
服もプライドも処女も捨てたコアラが守ろうとしていたもの。
それはもちろん、革命軍という組織とそこに属している仲間たち。
その全てを自分の体一つで守ることができると思っていた彼女に告げられたのは、冷酷すぎる言葉だった。
「まあそれはどうでもいいとして、だ。俺もそろそろ出そうだわ」
「……えっ? い、イヤ! やだ、やめてよぉ! んっ、はぁあっ!」
「ケハハハッ! 喘ぎながら否定されても、説得力がねぇよ!」
「ああぁぁぁああっ!」
「コアラッ!?」
どくどくとジャックハートの鈴口から絶え間なくコアラの再奥に注がれていく精液。
本人の意思、言葉とは裏腹に嬉しそうにジャックハートからの愛を受け入れていた淫裂から、愛液と精液の混合液が溢れる。
「……チッ、失神したか」
絶頂を迎えたのか、はたまたどうしようもない現実から逃れようとしたのか、ジャックハートにとってどうでもいいことだが、使っていた女の意識を刈り取ってしまったことは事実。
「さて、お前の番だぜ。ロビンちゃん」
だが幸いなことに、ここにはもう一人新しい女がいる。
名器に凍死されても後味が悪いためコアラの身体を白いコートでくるみ、たしぎへと引き渡す。
それと入れ違いになるように、海楼石の錠を外したニコ・ロビンを目の前に立たせる。
「攻撃はしてもいいが、その瞬間にコアラちゃんと”麦わらの一味”の命は保証しねぇ。一味の命をナミちゃんは大事にしたが、お前はどうする?」
「っ! あなた、ナミを……!」
「おぉ。すっかり俺にメロメロになっちまったみてぇだぜ。さすがにこんなとこでナミちゃんの時みたいに五日間も滞在する気はねぇから、やるなら一発だな。それで、見逃してやろう」
「……話には聞いていたけど、本当にゲスな男ね。こんな状況でなければ、近寄りたくもないわ」
「あんま萎えること言うなよ。つい、たしぎの手が滑るかも知れねぇぞ?」
ロビンが振り向くと、そこには刀を抜いたたしぎがコアラの首筋に刃を当てていた。
返答次第ではいつでも実行できる、という意思の表れだということは、聡明なロビンは考えなくても分かることだった。
「さっきも言っただろ? 俺はただ、お前という美女と一発ヤリてぇだけだって。それが終われば命も狙わねぇし、ちゃんと返してやるさ」
「……本当ね」
「当たり前だ。今ここにいるのは一人の女と男。海軍と海賊なんて肩書きはねぇ」
「……なら、気持ち良く抱いてくれないかしら」
「ケハハ。いいぜロビンちゃん。短い時間だが、たっぷりと愛し合おう」
仲間を、自分を、そしてコアラと革命軍を救うために、ロビンも女を捨てることを決心した。
「あっ……!」
「ん? なんだ、えらく頬が赤いじゃねぇか。俺とコアラちゃんのセックス見て興奮したか?」
「……えぇ。その、あまりにも男らしくて、見惚れてしまったの」
「そうかそうか。そんなに気になるなら先に奉仕してくれよ。あぁ、後その前に」
「きゃあっ!」
近づいてきたロビンのコートを剥ぐ。
シャボンディ諸島から飛ばされてきた時の服のままなのか、この寒いテキーラウルフには合わない黒いノースリーブが現れ、それすらも破り捨てる。
「綺麗な体を隠さないでくれよ、ロビンちゃん」
「あなたのたくましい体も見たいわ」
「お安い御用」
ロビンからそう言われ、上半身をまとっていた衣服を脱ぎ捨てるジャックハート。
今まで幾度となく死線をくぐり抜けてきたロビンから見ても異常なほどの体に、思わず息を呑んだ。
「さ、ロビンちゃん。おいで」
「えぇ」
互いに身に纏うものは何もない。
そんな状態で、互いの体に暖を求めるかのように縮まった二人の距離は、あっという間に無くなった。
「……んむ、んちゅう……」
ジャックハートの両腕に抱きしめられる中、彼の両頬に両手を添えたロビンが、彼の顔を引き寄せるようにして唇を強引に重ねた。
ジャックハートさんのプロフィールを適当に決めました。
身長 203cm(5話の時よりも伸びた)
体重 121kg
誕生日 11月18日(ジャック=11、ハー=8でト=10を足して18より)
好きなもの 女、殺し、休息
的な感じですね。なんと投稿日が誕生日という……狙ったわけじゃないです。
もし皆さんが他に気になるプロフィールとかがあれば、要望があれば活動報告に質問板のようなものを作りますので、どしどし聞いてください!
コメント、評価などお待ちしております!
今後の本番シーンについて、主にどんな内容が良い?
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主要キャラの一部を濃く
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主要キャラメインで大人数を書く
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作者好みのキャラで濃く
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現在対象キャラ全員
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このキャラを!(感想に書いてください)