その時には前書きに記載するので、目を通していただけると助かります。
14年前。
「おいジャックハートォっ! 酒だぁ、酒がねぇぞテメェッ!」
「ふ、ふふ……。ねぇジャックハート。お願いよ、買ってきてくれない? 私のおクスリも足りなくなってきたの」
「分かったから金よこせよ。ないと買えないだろ」
「おぉ、そりゃそうだなっ! そら、今日の観客どもから集めた金だ! 使っていいのは50万ベリーまでだからな!」
「うん」
新世界後半にある島、ラスム島。
治安が悪く島の大半がスラムで構成されているそこに立っている、不似合いなほどに豪勢な城のような屋敷。
そここそが、ジャックハートの生まれた家であるジョージ家だ。
真っ赤な顔で子供に怒鳴る父親と、時折焦点が合わなくなる目をその子供に向ける母親。
この光景が、この家の当たり前だった。
「いいかジャックハートッ! いつも通りバレんじゃねぇぞ! アルルは表向きはシスターで通ってんだ。俺も、ただ賭け金や入場料がやや高い闘技場のオーナーってだけ。政府に目ぇつけられんのはめんどいからな」
「んぇ、はぅ……あぁ……。そ、そうよぉ、ジャックハート。言いつけを守れない悪い子には、お仕置きしちゃうかもしれないから」
「分かってる。じゃあ、行ってくる」
「おう、気ぃつけろよ。俺もアルルも、ちょいと恨みの一つでも買ってるかもしれねぇ。憂さ晴らしにお前に殴りかかってくる奴がいるかもしれねぇがな!」
ジョッキを持ちながら赤い顔で豪快に笑う父、ディヴェッドを横目で見ながら、ジャックハートは金を握りしめてリビングを後にした。
大きなドアを閉めると、そこから聞こえるのは二人の愛しあう声。
この屋敷から酒やクスリが安価で手に入る場所までは子どもの脚力ではどうやっても片道30分はかかる。
「バカみたいに盛ってやんの。猿みてぇ」
十数年後の自分に聞かせてやりたいような一言を呟きながら、これまた大きな玄関の戸を開け、門を開けて外へと出る。
門番は雇っているがボディガードのような存在は雇っていない。
「あんなこと言ってたけど、もう恨み買ってるの知らねぇのか」
そのためもちろん、先ほどディヴェッドが言っていたことは、現実に起きている。
「おい」
「情報通りだな。毎週、一番デカイ対戦があった日にはガキがここを通るってのは」
「なあクソガキ。この前部下をやったことは怒りはしねぇ。今持ってるその金を寄こしてくれるだけでいいんだ」
屋敷を出てから数分。
スラムに差し掛かったところでいつも曲がる角をいつも通りに曲がったところ、短剣や銃を持った屈強な男が4人ほど、ジャックハートのことを待ち構えていた。
「やだ。いい年こいて子どもから金巻き上げないと生きていけねぇクズどもに渡す金なんてねぇよ」
「こいつっ!」
「……おい、ガキだから痛い目にあわねぇ、なんて思ってんじゃねぇだろうな」
「先週もあんたらの部下みてぇなのが襲ってきただろ。思ってねぇよそんなこと。悔しかったら力づくで奪ってみろ。
「このガキィ……っ! やっちまえっ!」
握りしめた50万ベリーの束。
それは男たちにもはっきりと見えているだろうが、今真っ先に狙われているのはジャックハート本人。
5歳程度の子どもにそこまで言われて、黙っていられないのだ。
「死ねやクソガキがっ!」
放たれる弾丸。
銃声が響き渡るが、誰一人としてこの路地裏を覗きに来ることも、辺りが喧騒に包まれることもない。
このスラムでは、銃や剣を使った殺し合いなど日常茶飯事であり、自分が被害者にならない限り誰も興味を示さないのだ。
「よっ」
「チッ! おい、やっぱこのガキ。噂通りだ」
「この年で"覇気"使いか。こりゃ、こいつとっ捕まえて売り捌いたら中々の値段になりそうだな」
「何のんきに調子乗ってんだよ、おっさん」
「ぐっ!?」
ジャックハートの小さな手から放たれる、年齢とは不釣り合いなほどに強力な突き。
小さな身体を生かして一瞬のうちに男たちのうち一人の懐へと潜り込んだジャックハートは、"武装色"をまとった黒い拳を、突き上げるようにして飛び上がったのだ。
「子ども一人に手こずってるような奴らに捕まるわけねぇだろ。じゃ」
「テメ、逃げんなっ!」
「追えっ!」
「ぶっ殺して金巻き上げろ!」
一人が沈められたと言うこともあり、逃げるジャックハートを鬼の形相で追いかけ始める男たち。
だがしかし、近い将来に海軍本部大将になる少年の身体能力というのは、まだ小さい時から凄まじかった。
「ダッセェなぁ。子ども一人見失うなんて」
見事に無傷のまま3人を撒き、目的の場所までたどり着いたのだ。
「おっちゃん。いつもの」
「ん? ……おぉ、ジョージさんとこの坊ちゃんか。いやぁ、あそこの二人も親失格だねぇ。こんなとこにまだ5歳の君を、酒とドラッグのために走らせるなんて」
「別にいいよ。そんな危なくもないし。それよりおっちゃんさ、いつもここで買ってるんだからいつも通りちょっとマケてよ」
「いいよぉ。君にはいつもお世話になってるからね。将来のために大事に取っとくんだよ」
「うん」
ジャックハートが喋っているこの人物こそ、ディヴェッドとアルルシェフに酒とクスリを頼まれてからジャックハートがよく世話になっている闇商人だ。
まともに治安が整備されていないここでは、それこそ安全もまともな暮らしも、娯楽もない。
そんな生活に一筋の光のように一瞬の"楽"を与えてくれるものを、この男は比較的安く提供しているのだ。
「なんでおっちゃんはこんなとこで商売してんだ?」
「ここは法があってないようなもの。ヤベェもんを作って隠すには最適なのさ。実験台も、金を払ってまでクスリを求めに来るからね」
「ふぅん。でも最近、政府の人が海岸うろついてるの見かけるから注意した方がいいよ」
「ははっ、相変わらず鋭いとこを見てるねぇ」
「……いつか、大きくなったら出て行きたいから」
「そうかい。そんじゃあ、それまでは気をつけながら頑張るんだよ」
そう言って袋に酒瓶を詰め、その底には粉が入った袋を紛れ込ませたものをジャックハートに手渡す男性。
普通5歳の子どもには持つことすらままならない重量だが、すでに"覇気"を使いこなせるほどに肉体的に成長しているジャックハートには苦に感じなかった。
「うん。また来るよ」
「はいよ。代金はいつも通り、35万だよ。……うん、ちょうどある」
「残りは自分用に、だよね」
「あぁ、そうさ。……それと、本気でここを出て行きたいなら、身体を鍛えるのを忘れちゃいけないよ」
「うん。じゃ」
両手を使い、抱きかかえるように袋を持ち上げる。
残った15万ベリーはズボンのポケットに乱雑に突っ込んで、そのままジャックハートは男の元を去った。
「身体、か……。門番さんに頼んで訓練つけてもらおうかな」
そんなことを一人零しながら、帰路につく。
数ヶ月前に海岸沿いにいた政府の人間らしき人物たちが使っていた、その場から一瞬で移動する方法。
肉眼で確認することはできたが、どうしてもその通りに動かすことができなかったのだ。
「ただいま」
「んっ、はぁああっ! あなた、ジャック……んうぅうっ、はぁんっ! ジャックハートが帰ってきたわぁっ!」
「本当か、アルルッ! ハッ、それならいつも通り酒とドラッグでぶっ飛びながらキメようぜ!」
「んんぁ……は、あぁん……。もう、大好きよぉ、あなた……。朝まで離さないから、覚悟してね?」
「そりゃこっちのセリフだ」
正面門から敷地内に入り、玄関を開けると聞こえてくる実の両親の大きく卑猥な声。
大きなリビングへ入ると実の息子に一切隠す気がない2人の性行為が、およそ5歳の眼前に飛び込んでくる。
「ただいま」
「おうジャックハート! なら、買ってきたモンそこに置いて部屋戻っとけ。出てきたとしてもお前の相手はしねぇからな」
「ん」
「んもう、あなたったら。私に構ってくれるんじゃないの?」
「そのつもりだって、のっ!」
「はぁぁああんっ!」
帰宅した息子を雑にあしらい、そのまま性行為を再開するディヴェッドとアルルシェフ。
盛りだした両親を買い物に行った時と同じように視界に入れることすらなく、ジャックハートは部屋を後にした。
「さてと。頼みに行こう。いつまでもこんなクソったれみたいなとこに居てられるかってんだ」
帰宅時に考えていた、門番に頼む稽古。
この屋敷にはジャックハートと両親の合計3人以外に、ディヴェットが多額の金額で雇っている凄腕の門番やボディーガードが軽く10人以上は常にいる。
その中の一人に頼むことさえできれば、未来は変わるかもしれない。
「あいつらぶっ飛ばしてでも、俺はここから出て行くんだ」
幼心にそう決心し、ジャックハートはひとまず自分の寝室へと向かった。
◇
「え? えっと、坊ちゃん。今なんと?」
「だから、俺に稽古をつけてくれって言ってんだよ。それと、今度その呼び方したらお前が寝てる時に金タマ引きちぎるからな」
「も、申し訳ございません、ジャックハート様」
「あんたの方が年上だし、強いし、そんな言葉づかいしないでよ。気分が悪くなる」
「……分かったよ、ジャックハートくん。これでいいかい?」
「ん」
翌朝。
仕事に出かけたディヴェッドとアルルシェフは、もちろんの事屋敷に一人残したジャックハートのことなど微塵も考えることなく、一夜を通して行われた性行為からくる心地良い疲労感を抱きながらそれぞれの職に励んでいた。
ディヴェッドが屋敷に門番たちを付けている理由はただ一つ、恨みからくる襲撃から身を守るためである。
闘技場とその裏で行なっている違法薬物の売買により得た莫大な金額で彼らを雇い、命を守っているのだ。
「それでどうしたんだい、急に。強くなりたいから戦いを教えてくれだなんて」
「その言葉通りだよ。強くなって、島の外に出たいんだ」
「……この島は、ジャックハートくんのような子供からすれば地獄かも知れん。だがな、私たちのような"
「ここが? それに、あんた確か懸賞金10億ベリー超えてんだろ? なんでそんな人が負け組なんだよ」
「それが海の怖ささ。懸賞金だけが全てじゃない。私には、単純に力が足りなかったんだ。かけられている懸賞金も、"悪魔の実"による殺傷能力が高いからだよ」
自虐するようにそう呟き、力なく笑う門番。
どんな能力か聞こうとしたジャックハートの目の前に、突如として自分の顔と同じぐらいの大きさのボールが現れた。
「"ボルボルの実"のボール人間。こんな風に、シャボンのようなボールを生成することができるんだ。中に何かを入れて収納できたり、そのままサイズを変えることもできる。作ることができるのは半径100m以内。中に何か入れたままボールを消すこともできるけど、その数は最大で10個まで」
「……ふぅん」
「はは、あんまり興味無さそうだね。……でも、これに爆発する寸前の爆弾を入れて、サイズを小さくして、相手の体内に作るって考えたらどうだい?」
「っ……なかなかエグいね」
「だろう?」
門番が食したのは"ボルボルの実"という"悪魔の実"であり、効果は今彼が言った通りのもの。
単純に何の力も持たないボールならいくらでも作ることはできるが、すでに何かを中に入れたボールは10個までしか作れない。
そのボールに触れたものはもちろん"悪魔の実"に触れたことになるため感知することができ、その能力は門番の仕事にいかんなく発揮されている。
「遠くから予想外のところを爆撃したり、相手の心臓の位置にボールを作って心臓を奪ったりとか、戦闘よりも殺しに向いている能力なんだ」
「その能力でも、通用しないの?」
「航海士が病死してね。そこに追い討ちをかけるかのように海の気候と海軍、他の海賊たちの襲撃さ。船長の私以外がほとんど瀕死になってしまってリタイアしたのさ」
「へぇ……。でも、それなら俺の訓練相手として十分だな」
「本当にやるのかい?」
「当たり前だろ」
半袖に半ズボンという、年相応の格好に身を包んだジャックハート。
対する門番の男、エリック・バーガルックは黒いシャツと白いズボンを身につけていた。
ジャックハートのその言葉を聞き、エリックもシャツの袖を捲った。
「あんたは何か欲しいもんはあるのか?」
「そうだな……。強いて言うなら、安息と金だ。ここでの門番はかなりハードだし、高い懸賞金を懸けられてるからって、俺自身に金があるわけじゃない」
「分かった。なら、俺に稽古をつけてくれるんなら親父に何とか言ってやる。それでどうだ?」
「おぉ、そりゃ助かるな。んじゃあ、ジャックハートくんが強くなって将来何をしたいかってのを教えてもらおうか。目的が分からねぇ弟子を持つ気はないからな」
エリックの言葉が終わると、すぐにジャックハートの口角がつり上がった。
ジャックハートが強くなる目的を聞くということはつまり、その目的が大それたものや自分に不利益なものではない限りジャックハートを弟子にする意志が少しはあるということ。
「俺の目的もあんたに似たようなもんさ。こんなクソったれた場所にはない平和と、ムカつく奴を自分の手でぶっ飛ばせる力。この島にはアホみてぇな大人が多いし、まずはガキだからって舐められないような力をつけたい」
「ほう……。なかなかの心意気だな。よし、いいだろう。さっきの条件を飲む代わりに、君に稽古をつけてやろう」
「ホントか?」
「あぁ。……ただし」
「グッ!?」
エリックの言葉を聞いていたジャックハートの右側頭部に、突き刺さるような鋭い痛みが走る。
数メートル吹き飛ばされた彼だが、器用に一回転して受身を取った。
そして間髪入れずに今まで自分がいたところを見る。するとそこには、親指の先程度の小さな白い玉が浮いていた。
「言葉遣いには気をつけろ。これ以降、私が君の師匠だ。それでなくても、君は子どもで私は大人。肉体が子どもなのは仕方ないとして、精神までが子どもの弟子を持つつもりは無いぞ」
「……分かりました、師匠。これでいいですか?」
「うむ。……時にジャックハートくん。君は"覇気"を知っているかい?」
「うん。黒くなるやつと、相手の行動が分かるやつ」
「それは"武装色"と"見聞色"の覇気だな。私には才能が無かったんだが、実はもう一つ"覇気"がある。君が使えるかは分からんがな」
「なんでですか?」
エリックを見上げるのは、強さを求めているジャックハートからは想像できないほどに純粋な瞳。
それこそ、今まで二種類しか知らなかったものに新しいものがあると知った時の、それこそ子どもの興味を孕んだ視線だった。
「この世界に数百万人に一人しか使えないという代物でな。なんでも、全身から発する威圧で、人を気絶させることができる"覇王色"というものだ」
「……なあ師匠。それってさ」
ジャックハートが言葉をそこで止めた瞬間、エリックを壮絶な寒気が襲った。
それだけでなく、彼らが今いる地下道場の床の木材がめくれ上がり、実際にエリックの肌にもビリビリとした感覚があった。
「こんな感じのやつですか?」
「……あ、あぁ。まさしくそれだよ。……驚いたな、一体いつから使えるんだい?」
「2ヶ月前ぐらいから。外に出かけた時にチンピラが鬱陶しかったから、死ねって思ったら気絶してた」
「……本物、だな」
「何が?」
なんでもない、と呟きながら口に手を当てて何やら思案し始めるエリック。
そんな彼を見上げながら頭を傾げるジャックハートを見て、エリックはジャックハートの内に眠る才能を見出した。
「よし。まずは体を鍛えることから始めよう。いくら"覇気"が使えるとはいえ体が弱くちゃ意味がない。戦うのは、自分の体だからな」
「了解っ!」
齢5歳にして、ジャックハートの鍛錬が幕を開けた。
◇ ◇
"偉大なる航路"前半の海、マリンフォード。
海軍本部であるその場所にある"議事の間"に、大勢の海軍将校が集まっていた。
「事態は急を要します」
引き締まっていた雰囲気が、一人の中将の凜とした声により一層引き締まる。
「"偉大なる航路"後半の海、通称"新世界"。そのさらに後半に位置する島、ラスム島に大量の高額賞金首が根付いているのです」
「そんなことは事前の報告で分かっちょるわ。肝心なのはその奥じゃろうて」
「はっ!」
一人の海兵が呟いた一言にその中将は自分が言おうとしていた言葉を止め、大事だと思われる部分から話を再開する。
「その理由となるのが、"快王"ジョージ・ディヴェッドによる違法薬物の蔓延と高額なファイトマネーによる地下格闘技場だと考えられます」
「違法薬物……。覚せい剤か何かか?」
「恐らく。使用した場合、その人物のとある欲求を満たしたいという強い気持ちに駆られるようです」
「とある欲求じゃと?」
言葉に出して首を傾げた海兵。
その疑問ももちろんというもの。ただ欲求を満たしたいという欲をより強めるだけのものが、なぜ危険なのか。
現にその海兵以外のほとんどもすっきりとしない表情をしている。
「はい。戦闘欲、破壊欲、殺戮衝動といったようなものです」
「何じゃと……っ!」
「ラスムはその大半が無法地帯のスラム状態です。そこに、"新世界"の航海を断念した海賊どもが集まり、そのドラッグを使用した状態で再び海に出る、ということが多発しています」
「……副作用のようなものは起きないのかい?」
「猛烈な喪失感に襲われる、と」
「なるほどぉ……。そりゃあ、それを埋めるためにもう一度使いたくなるわけだ」
ドラッグを使った状態で地下格闘技場へと行き、そこでのファイトマネーや賭けでの勝ちにより得た多額の金を使い、船とドラッグを買い、海に出る。
さらに言ってしまえば、ストレス発散や欲求の解消が最優先の目的となっているため、"偉大なる航路"を逆走しながら関係ない一般市民に手を出す事案が多発しているのだ。
「これまでも人海戦術により沈めてきた船もありますが、ここ最近はその数が異常です。大元を叩かない限り、このままでは"偉大なる航路"前半にも影響が出るかと」
「……うぅむ。そりゃあ流石に、見逃せん事態じゃな……」
別の海兵が腕を組みながら優れない表情で唸り声を上げる。
大将の地位にいるその海兵はしばらく悩んだ後、絞り出すかのようにポツリポツリと考えを吐露し始めた。
「……殲滅部隊、で異議はないな」
男の言葉に首を横に振る海兵は誰一人としていなかった。
「標的はラスムに集まっている賞金首、並びにジョージ・ディヴェッド本人。奴に近しい人物が現れれば、尋問も許可する」
「で、肝心の部隊はどうするんじゃ。センゴク」
「私とサカズキ、サカズキの部隊と他に中将数人。それとゼファーのところの生徒を何人か連れて行こうと思っている」
「連れて行くのは構わんが、絶対に死なせるなよ。センゴク」
「もちろん。誰か適任はいるか?」
「あぁ、いるとも。つい最近実力を伸ばしてきているのがな。まだ若い女剣士だが、実力は保証する」
センゴク、サカズキ、ゼファーと呼ばれた海兵たちにより、部隊の編成が着々と進んでいく。
そのメンバーはジョージ・ディヴェッド本人の脅威よりも、ドラッグによって戦闘意欲が刺激された賞金首たちに重点を置いたものとなっていた。
「魚人島への入り口はG-1支部が見張っているし、第一まだ強行突破されるほどの人数じゃない」
「……ですが、センゴク大将。一つ問題が」
「なんだ」
殲滅部隊の編成まで完了し、あとはいつ出発するかを決めるだけ。
その段階まで来たところで新たな問題が浮上した。
「ジョージ・ディヴェッドはそのドラッグ以外にも他数種の違法薬物を生成、販売しているとの情報が」
「……そのクスリの情報が少ないということは、つまりはさらなる危険がある、ということか?」
「はい。うち一つは使用者の性的興奮を異常に高めるもの、というのは掴んでいるのですが、これは媚薬として市販されている場所もあるということです」
「殲滅するとなれば、相手がどんな状態かを知る必要はある。……どうするんじゃ、センゴク」
「情報が集まるのを待つ。万が一のこともあり、何より場所が場所。油断は禁物だろう」
そのセンゴクの提案に首を横に振るものは、またも誰もいなかった。
それほど海軍にとっても"新世界"後半の海というのは危険な場所で、またそこで脱落した海賊たちも厄介者が多い。
「では、いずれ来るラスムの賞金首殲滅まで各自他の任務をこなしつつ、最大限の準備を怠らないように。以上っ!」
センゴクの言葉で海兵たちの集会は締めくくられ、"議事の間"から大勢の海兵たちが出て行く。
確かにラスム島の現状も注意は必要だが、海軍はそれこそ世界中の治安を守らなければならず、ディヴェッドの動向ばかりを気にしてはいられない。
「フィッシャー・タイガーにロシナンテのこともある。……全く、落ち着かんな最近は」
一人になったことを確認し、センゴクは一人呟く。
自分を含め、ガープやおつる、ゼファーなども実力は確かにあるが少しずつ衰え始めている。
また、サカズキやクザン、ボルサリーノといった後進も確かに実力をつけ、成長してはいる。
だが今の海軍には、足りないものが一つあった。
「……"覇王色"。やはり、アレがなければいつまでも海賊にのらりくらりと逃げられる、か」
それが、"覇王色の覇気"の使い手だ。
数百万人に一人というその希少性と、始まってしまった大海賊時代。
文字通り"王"となる資質を備えた者が、政府の下につく海軍には集まらないのだ。
「誰か一人、一人でいい。"覇王色"を完璧に扱えて他の覇気も鍛えられていて、それでいて正義の心を持った者。さらに言えば若く、伸び代があり、仕事は完璧にできて政府と天竜人から気に入られる」
ブツブツと一人、現れるはずがない才能を持った人物の理想形を呟き続ける。
「海賊を一人で叩き潰し、かつ世界各国には好かれ、部下の育成もうまい。そんな人間が現れんかのぉ」
「ぶわっはっはっはっ! そんなバケモンおらんじゃろ、センゴク」
「っ、ガープ……いたのか」
「さっきから廊下でブツブツと気持ち悪かったからな、見てた」
そんなことを呟きながら一人廊下を歩き自室に向かっていたセンゴクの元に、彼の同期であるガープがやってきた。
つぶやいていた内容を少し聞かれて恥ずかしかったのか、一つ大きな咳払いをして、センゴクは話を続けた。
「もしも、の話だ。そんな奴が出てきたらどうする」
「海軍に置くために最大級の待遇で迎え入れる。当然じゃろう」
「まあ、そうなるか。どこかしら欠点があったとしても、それぐらいに仕事を完璧に成し遂げられるなら目を瞑ろう」
「じゃな。ま、そんなまさしく世界の王にでもなれるような才能を持ったやつがおれば、になるが」
言ってしまえばセンゴクの要望はこうだ。
数百万人に一人という才能を持ち、戦闘センスに溢れ、正義の心を持ち、若く、仕事に熱心で、人柄も良く、実力があり、信頼も勝ち取ることができて、部下に教えることもうまい。
自分たちでもそんな人物にはなれないという自覚はあるし、そんな人物がいないという確信もある。
だが、もしいるのなら喉から手が出るほどに欲しい人材に違いない。
「地道に若いのを鍛えるしかない。それに、今は開花していなくても、いずれ"覇王色"の才能を持ったやつが出てくるかも知れんだろ」
「そうだがなぁ……。いかんせん、最近は情勢が激しく動きすぎている」
「抑止力、か」
「あぁ」
めくるめくように変わる世界情勢、海賊事情、世界政府への報告、天竜人の機嫌取り。
やらなければならないことがあまりにも多すぎるため、センゴクもガープも話したはいいものの頭を抱えてしまうほどだ。
「……頭が痛いな」
「全くじゃ。それこそ、さっきのような妄想話でもしとらんと、精神が持たんわい」
そう言い残し、先ほどのように豪快に笑いながらその場を去っていくガープ。
そんな彼の背中をあきれるように見ながら、一人になったセンゴクは一人、また呟いた。
「誰か、いないだろうか……」
近い将来、史上最悪だが史上最強だと言われるほどの逸材をセンゴク自らが見つけるまで、あと3年。
というわけで、次回はここから3年後。
原作の"新世界編"スタート時にジャックハートが20歳になるようにしていて、前話の話が"新世界編"の数ヶ月前です。
なので、今回は原作"新世界編"から14年と数ヶ月前の話、と考えてください。
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今後の本番シーンについて、主にどんな内容が良い?
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主要キャラの一部を濃く
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主要キャラメインで大人数を書く
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作者好みのキャラで濃く
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現在対象キャラ全員
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