※この作品はR-18です。

海軍史上最悪の男   作:チャリ丸

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えっちなシーン無くてすんません……!
戦闘とか、原作シーンが終われば増やしますので……!

ちなみに、原作から大きく乖離し出すのはドレスローザ編となります。
パンクハザードももうめちゃくちゃになり始めてるとか言ってはいけない。


最悪と最悪と最悪と

 

 

M(マスター)、どうしますか。ロー氏とスモーカーがどハデな戦闘を……。どうやら、脱走した海賊たちがガキどもを引き連れていたところに遭遇したようで……」

「……っ! 海軍にガキどもを見られたのかっ!? ただでさえ最近のアイツらは厄介だってのに……!」

「ロー氏も、殺すことなく追い払うことにはかなり苦戦しているようでして」

「七武海なんだろうが! ったく、使えねぇ……!」

 

 以前は青々とした緑に溢れ、今は吹雪と炎に包まれる島、パンクハザード。

 その半分、吹雪側にある研究所の一室に、二人の声が響く。

 一人はもう一人のことを敬意を込めて"M"と呼び、その"M"は、煙を形どりながら焦りを露わにしていた。

 

「"JOKER"も使える秘書を寄越してくれねぇし、かと思えばこの近海での移動も相当に制限されてきてやがる……。おい、海軍側には本当にスモーカーしかいねぇのか?」

「は、はい……。あとは大半が"G-5"のゴロツキどもと……あぁ、そう言えば一人、ガキの女がいました」

「ガキの女? 名前は分かってるのか?」

「えぇ。数ヶ月前に"G-5"配属になった、リリーとか言う奴です」

「そうか。……ん? リリー……? お、おい。一応だが、そいつの名前を全部聴かせろ」

 

 "自然系"の悪魔の実である"ガスガスの実"の能力者である彼。

 パンクハザードの、否、"新世界"全体の闇の部分の中心に近い場所にいる彼が、一人の少女の名前に何かを感じた。

 

「ジョー・リリー。これが本名とされていますが……ど、どうかしましたか?」

「ジョー……リリー、だとぉ!? なんであんなイカれた血統の奴がスモーカーごときの部下になってんだ!」

 

 部下からリリーの本名を聞き、父親が誰かを完全に悟ってしまった"M"こと、シーザー・クラウン。

 過去、ベガパンクに事故の責任を押し付けたり、現在進行形で部下たちや誘拐してきた子どもたちを使って殺戮兵器の開発を行っている彼が、部下の前で珍しく心の底から(・・・・・)取り乱した。

 

「このガキが、何か……?」

「何かってもんじゃねぇ! そいつはあのジョー・ジャックハートの長女だ! 父親が十分すぎる働きをしてるってのとそいつ自身がガキだからって理由で実戦経験こそ少ないが、将来性で見れば第2、第3のジャックハートになる素質があるやつだぞ!」

「ジョー・ジャックハートって、あの最年少で大将になったっていう……」

「クソッ! 混戦に持ち込めばローに勝ち目はあるが……そもそもの話、ガキどもを見られちまってる……」

 

 素顔は見せていないためその表情は分からないが、シーザーの声色から相当に焦っていることはひしひしと伝わっていた。

 そもそもシーザーがこの本来立ち入り禁止となっているパンクハザードにいるのは、極秘で違法な実験を繰り返しているからだ。

 もし海軍に捕まえられてしまえば、自分の立場上どうなるかは分かりきっている。

 その恐怖感が、シーザーを突き動かしていた。

 

「M?」

「……シュロロロロロ。いや、いい。このまま待つ。そうだ。よく考えれば、今この状況は、あいつらがホイホイ研究所の中に入ってくれる状況だ。ということは、今必要なのは隠すことではない。殺しの許可だ。シュロロロロ……」

 

 部下の問いに対し、シーザーは高い笑い声で返した。

 自身の能力の性質もあるが、彼には様々な実験を可能とする頭脳もある。ふと冷静になった時に、あのスモーカーがこの研究所に足を踏み込んでこないはずがないと確信したのだ。

 

「ローとスモーカーの結果がどうであれ、必ず研究所には入ってくる。もし一部が逃げれば、それは海難事故扱いでいい。シュロロロロ……」

 

 ローは立場上、交戦はしても海軍を殺しはしない。

 スモーカーも海兵という立場でありながら、殺しはせずに捕まえようとする傾向がある。

 また、脱走した海賊たちもローと海軍の争いに首を突っ込んでまで強引に逃げようとはしないだろう。

 

「まあまずは、ガキどもを連れ帰ることが先決だな。ローとスモーカーなら、こちらに分がある」

 

 今度は声をあげて笑うことなく、ニヤリと口端を釣り上げて笑う。

 最も、このパンクハザードに来てしまったシーザーが予想していなかった来客以上に彼にとって脅威となる男が来るのだが。

 

「シュロロロロ。そういや、脱走した海賊の中に一人、妊婦がいたな。あの女はどうした?」

「男どもと同じ部屋に寝かせています。連れていた子どもも3人とも同じ部屋に」

「そうかそうか。もう一人女もいたが、シュロロ。男どもで船員の女をマワしてるなんて、決裂しない理由が知りたいぜ」

 

 シーザーの部下が捕らえた海賊たち。

 それこそが、スモーカーの軍艦が通話をキャッチした"麦わらの一味"だったのだ。

 彼らが研究所の一室に閉じ込めたのは、部下を船に乗り込ませた時に船にいた7人。近海を通過するかもしれない新しく"新世界"に乗り込んでくる海賊たちは予め調べ上げていたため、その面子も知っていた。

 

「"麦わらの一味"……。2年間の謎の失踪、船長だけの頂上戦争参戦。その間にまさかガキまで作るとはな……」

「しかしM、いいんですか? ガキなら実験材料に最適なのでは?」

「シュロロロロ、考えてもみろ。堕さずに産むんだ。それだけガキと相手の男に気持ちが入ってるってことだ。それを引き離してみろ。研究所内で何をされるか分かったもんじゃない」

 

 シーザーの研究所には、近隣の島々から攫ってきた子どもたちが多くいる。

 そのほとんどが彼の実験材料となり、近い将来の政府の戦士となるため、巨大化の実験を受けている。

 しかし、そんな暴挙ができるのは、その子どもたちを海難事故での死亡扱いとして、そして近くに親がおらず、子どもも無知なためだ。

 近くに親がいて、しかもその母親が賞金首。となれば、3億の懸賞金がかかるほどの実力者でもあるシーザーでも対応できないことがあるかもしれない。

 

「危険はできるだけ取り除いておく。そこから、安全なところから変えていく。あいつらが何もしねぇってんなら、帰してやるさ。どうせ海賊の言うことなんざ、誰も信用しねぇし、させやしねぇ(・・・・・・)

 

 用心深く、能力も強力であり、平静ならば頭もキレる男、シーザー。

 そのため彼は、許可を得るためにとある人物へと許可を求めた。

 

「……あぁ、"JOKER"。一つ頼みたいことがあるんだ……」

 

 そう切り出し、シーザーは"JOKER"と呼ばれる男に電話をした。

 

 

 ◇

 

 

「"メス"ッ!」

「ほっ! はぁっ!」

 

 シーザーの研究所の正面入り口。

 そこでは、研究所の持ち主であるシーザーが想像している以上に激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「チッ……。すばしっこい奴だ」

「私だって海兵だもんっ! これぐらいできるよ! それに、負けちゃったらやだもん」

「ガキか……!」

 

 一方は、一定環境下では最強クラスの能力といっても過言ではない"超人系"の悪魔の実である"オペオペの実"の能力者、王下七武海のトラファルガー・ロー。

 そしてもう一方は、パンクハザードに乗り込んできた海軍の軍艦において、最も階級が高いスモーカー……ではなく、彼の右腕として働いている、少尉のジョー・リリーだった。

 

「そ、れ、にッ!」

「ぐ……ッ!?」

 

 ローの鋭い突きを避け、一旦距離をとったリリー。

 しかし、ローの一瞬の思考の隙にいつの間にか懐まで彼女が潜り込んでいた。

 

「私ももう、子どもじゃないもんっ!」

「ガッ!?」

 

 アッパーの要領で突き上げられる右拳。

 それがローの顎ではなく、喉を直撃した。

 

「ゲホッ、ゲホッ……! 中々えげつねぇな……」

「狙えるなら顎じゃなくて喉の方が効率いいもんね」

「言い方を子供っぽくすりゃいいって訳じゃねぇぞ」

 

 トラファルガー・ロー。

 現王下七武海の一人で、その元懸賞金は4億4千万ベリー。

 そんな世界でも実力者と謳われる彼だが、目の前に現れた少女の見た目と実力のギャップを、未だ埋められずにいた。

 

「白龍屋の長女。最初にお前が切り掛かってきたのには驚いた」

「"自然系"のスモーカーさんよりも、私の方が戦うのに向いてそうだしね」

「……なるほどな。相性も良く理解できているらしい」

 

 ローの"オペオペの実"の能力は強力だ。

 サークルと呼ばれる球体を作り、自分を含むその円の中にあるものを改造できる。

 雪と銃弾の位置を入れ替えたり、手足を分断して付け替えたりなど、その用途は多岐に渡る。

 

「それにスモーカーさんも私のこと信じてくれてるもんっ! "覇気"も使えるようになってきてるって!」

「使えるようになってきた、ってレベルでそれか。末恐ろしいな」

 

 そんな彼の唯一の弱点とも言えるのが、能力を使用する際の代償だ。

 能力を使用すればするほどに体力を消費する彼が一対一で取れる戦法は、実際のところそれほど多くはない。

 特に、今目の前にいるリリーのような、小柄で能力を使うことなく戦うスタイルの、超速近接戦闘に置いては、よほどの実力差がない限りローが苦戦を強いられることがある。

 

「むぅ。だって、まだパパみたいにうまくは戦えないもん」

「……戦闘の何もかもが父親基準、か」

「パパは凄いんだよ!」

「知ってるさ。嫌という程な」

 

 王下七武海。

 世界政府によって公認された海賊たちではあるが、そのおかげで海軍とのコンタクトを取ることもある。

 ローがそこで聞いたのは、圧倒的という言葉すら甘く聞こえるほどの、ジョー・ジャックハートという男の力だった。

 

「一戦交えたくもねぇ。その考えだけで七武海や四皇の座にしがみついている奴らもいるって噂だ」

「ほえ? 誰のこと?」

「お前は知らなくてもいいことだ。……で、どうする。まだお前がやるのか」

「もちろんっ! そろそろ本気、出しちゃうもんね!」

 

 腰に携えた刀、"影羽"を抜く。

 その瞬間、リリーのくりくりとした大きな瞳が、スッと細くなっていく。

 

「おいリリー」

「分かってるよスモーカーさん。油断はしないし、殺しもしない」

「……大した自信だな。まるでおれに勝てるかのような……」

 

 わずか10歳の少女。

 いくら海軍本部大将の娘とはいえ、これまで海賊として活動し、王下七武海にまでなった実力がローにはある。

 その気持ちが、命取りとなる。

 

「勝てるよ」

「何……ッ!?」

 

 まばたきをしたわけでも、視線を外したわけでもない。

 しかし、ローの一瞬の隙を突いたリリーが"剃"で彼の背後に回っていたのだ。

 ローが気づいた時には遅く、すでに抜かれた"影羽"が彼の首筋を捉えようとしていた。

 

「くっ!」

「っ、嵐脚・飛沫」

「ぐぁっ……!」

 

 とっさの判断で自身の持っている刀である大太刀・鬼哭で防ぐ。

 だが、リリーの攻撃はそれだけでは終わらずに、防がれた勢いそのままにふわりと宙に浮き、蹴りによる斬撃の嵐をローに浴びせた。

 

「一刀流……」

「クソ、休ませてもくれねぇか……! "ROOM"!」

「"大斬波(おおざんぱ)"ッ!」

「"タクト"」

 

 そしてそのまま着地するかと思えば、"影羽"を大きく振りかぶり、勢いよく振り下ろしながら大きな音を立てて着地した。

 それと同時にローに巨大な斬撃が飛ぶが、サークルの中に入った斬撃はローの右手人差し指の動きにつられるように上に反れた。

 

「……あれ? んー、まあそっか」

「随分と大雑把な攻撃だったな」

「うん。だって、それが元の名前だし。技名が"大雑把"はダサいってお兄ちゃんに言われたの。今の大雑把な攻撃を避けられないのは弱い人だって」

 

 目の前の敵のコロコロと変わる雰囲気に若干のやり辛さを感じながら、ローは先ほど飛んで行った斬撃の方向を見た。

 確かに大雑把な攻撃ではあったが、その破壊力は抜群。

 その小さな体のどこにそんな力が隠されているのかと思うほどの斬撃は、ローが作った氷塊と軍艦のオブジェを真っ二つに分断していた。

 

「リリーちゃん危ねぇ! 俺らのこと考えてる!?」

「え? ……う、うん。大丈夫。バッチリ」

「絶対嘘だろ!?」

「もう嫌だぜスモやんっ! あんたが戦ってくれよ! リリーちゃんが戦ってるといろんな意味で体が持たねぇ!」

「そうだな。……そろそろ本気でカタつけるか」

 

 リリーとローが戦っている後ろでギャーギャーと喚く"G-5"支部の面々。

 その一番前でリリーの戦いを眺めていたスモーカーが、一歩前に出た。

 

「出るか白猟屋」

「いや、今回お前と戦うのはリリーだ」

「いいのか?」

「あぁ。……何せ、そいつはある意味俺よりも強いからな」

「何?」

 

 スモーカーのその言葉を聞き、ローは再びリリーの方に視線を向けた。

 するとそこには、"影羽"を鞘に収め、凍てつくような視線と殺気を向ける少女がいた。

 

「っ!?」

「よく言えば純粋、悪く言えば子どもっぽい。気分が乗れば容赦なくなるぜ、リリーは」

「一刀流・居合……」

「チッ……!」

 

 柄に手をやり、ロー目がけて駆け出すリリー。

 その彼女の姿を見てローもまた、鞘に収めたままの鬼哭を構える。

 

「"気龍"ッ!」

「……ッ!」

 

 一瞬でローの懐まで潜り込んだリリーの右手から放たれる、神速の一撃。

 間近で受け止めたローだから分かることだが、その刃には一切の無駄なく"武装色の覇気"が込められており、文字通りその気配は架空の生物である龍のように強大なものだった。

 

「厄介だな。逃げられても困る……」

「逃げないよ。私だって海兵。あなたがここで何をしているのか、ちゃんとパパやサカズキさんたちに報告しなきゃ」

「……そうか。なら、少し行動を制限させてもらおう。……悪く思うなよ」

 

 リリーの攻撃を自身の重心を落とすことで受け切ったロー。

 10歳の少女の身長から繰り出される高精度の攻撃というのは、高低差が生まれやすい。

 だが、それだけで戦いの行方が左右されることも多いのだ。

 

「何を……? わっ!」

「"タクト"。……"メス"」

 

 ローとリリー。その間の距離は、互いの身長差はあるものの一歩踏み込めば刃が届く程度。

 これまで近距離でのやり取りしかなかったためにリリーに植え付けられてしまった固定観念がここで邪魔をする。

 彼女の足元が勢いよく持ち上がり、目線がローとほぼ同じ位置にまでせり上がった。

 その勢いにふらついてしまい、バランスを崩してしまったのだ。

 

「え……?」

「っ、おいリリーッ!」

「将来厄介な海兵になりそうだ。……これ(・・)は預かっておくぞ」

 

 ローの左手による攻撃。

 それによりくり貫かれたリリーの胸は空洞と化し、そこに本来あるはずの心臓がローの手元に渡った。

 

「……くそがっ!」

「自分の判断ミスを責める気持ちも分かるが、それは悪手だ。スモーカー」

「っ!?」

 

 積もった雪に倒れていくリリーの姿を見て、完全に自分の判断ミスだと自責の念に駆られたスモーカー。

 そうだと言われればそうに違いないが、事実リリーとローの実力が拮抗しているように見えたのもまた事実。

 "G-5支部"側が正しく認識できていなかったのは、自分たちの実力でも、部下の経験値不足でもない。

 

「今はおとなしくしていてくれ」

 

 倒れているリリーと、ローに向かっていくスモーカーに向けられる鬼哭の突き。

 それを受けた二人の胸からハートのようなものが飛び出たかと思えば、今度はスモーカーが雪に沈んだ。

 

「な、何が起きたんだ!?」

「リリーちゃんならまだしも、スモさんまで!?」

 

 現状この場にいる海軍のツートップが一人に倒されどよめく"G-5支部"の海兵たち。

 

「あれ〜〜っ! お前は〜〜〜ッ!!」

「……麦わら屋」

 

 王下七武海と海軍の戦いがひとまず決着が着いたこの場に、また一人、海賊が現れる。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「ゴメンなさい、サンジ。私だけ運んでもらって」

「大丈夫だ、ロビンちゃん! フランキーの身体になってナミさんの身体を運べるし、お腹の中の子どもにも無茶させないためだ。これぐらい、なんてことねぇ!」

「ゴメンね、サンジくん。チョッパーとフランキーも、任せっきりになっちゃって」

「入れ替えられる選択肢の中じゃ、まだいい方だぞ!」

「ン〜〜〜……普段こんな毛皮に覆われてんのか、チョッパー」

「頼むぜチョッパー。俺の身体なら蹴りで戦うことはできるだろ」

 

 リリーがローと戦いを始める少し前。

 誰もいないはずだった研究所の中から、麦わらの一味の数人と大きな子どもたちが飛び出してきたのだ。

 王下七武海であるローと海兵たちの姿を見て海賊達は引き返した。……が、その際ローから攻撃を受けてしまったのだ。

 

「ナミと私が入れ替わったのは幸いだわ」

「だな。母体はデリケートだから、性別が同じならまだ安心だ」

「走り辛ぇなこの身体……。チョッパー、走りに特化した形はないのか!?」

「あるにはあるけど、フランキーは変形に慣れてねぇから、下手にすると逆に危ないぞ!?」

 

 ロビンとナミの精神が入れ替わり。

 サンジの精神がフランキーの肉体に、フランキーの精神がチョッパーの肉体に、チョッパーの精神がサンジの肉体に入った。

 ローの"オペオペの実"の能力により、精神を入れ替えられてしまったのだ。

 

「あぅ……」

「っ、ロビンちゃん、2人は大丈夫か? おれも出来るだけ、揺れないようには気をつけてるんだが……」

「えぇ、大丈夫そうよ。ありがとう」

 

 今ここにいるメンバーの中で最も身体が大きいフランキーの肉体になったサンジがお腹が大きくなったナミの身体と赤子二人を抱えて走る。

 普段改造した自分の身体で戦っているフランキーはチョッパーの身体になってしまっているため、満足に戦うことは難しい。

 そのため、そもそもの肉体のスペックが高いサンジの肉体となったチョッパーが、このメンバーの中で唯一戦える存在となっていた。

 

「むむぅ。なにやら面妖なことになっているでござるな……」

「悪いがちょっとだけ我慢してもらうぜ、サムライ。服を出してくれたことに感謝しちゃいるが、海兵がいるんなら動きにくいんだ」

「お主らが海賊ならば海軍と敵対するのは当然。……しかし、拙者の体を斬った男もあそこにいたとは……」

「ねーねーお姉ちゃんたち。これからどうするの?」

「え? んー、そうねぇ……。どうしましょ」

「考えてねぇのかよ!?」

 

 ナミの精神がロビンの体に入ったことにより、発言のギャップが普段よりもさらに激しく感じられるが、それはフランキーの精神が入ったチョッパーも同じこと。

 怪しげな研究所から謎の大きくなった子ども達を連れ出すことには成功したが、海軍と王下七武海がこの島にいたことにより、どうすればいいかという考えが止まってしまった。

 

「いた〜〜〜! お前ら〜〜!!」

 

 しかしそこに、彼らの残った仲間達である4人が合流する。

 これまた謎の人の体にワニの足がついた生物に乗ったルフィ、ゾロ、ウソップ、ブルック。

 彼らがナミ達が走ってきていた道を追いかけてやってきたのだ。

 

「おーいっ! ルフィ、ゾロ、ウソップ、ブルック──!!」

「何だあのアホコックのハイテンション。……あぁ、寒さでとうとう……」

「やばいやつ扱いすなっ。てかなんだあのデカい子ども達」

 

 ゾロが来たことに飛び上がって喜ぶサンジ、ナミやロビンのことをやたらと気にかけているフランキー、普段からは想像できないような表情と立ち方で彼らを迎えたチョッパー。そしてフランキーの体よりも大きな数人の子どもたち。

 船の上での生活が多い彼らにとって見慣れない光景が広がるが、話は落ち着いてから。

 天変地異や怪奇現象などは、それなりには慣れてきている。

 

「みんな、詳しい話は後よ。とにかくまずは吹雪をしのげる場所に行きましょう」

 

 ロビンの提案により、ひとまず吹きさらしになっているこの場所から離れる。

 

 

 少し歩いた場所にあった、ボロボロの施設の跡地のような場所。

 

 

 そこに一旦全員身を入れて、情報の共有を行うことにしたのだ。

 

「えー、っと。つまりだ。チョッパーがサンジになって、フランキーがチョッパーになって、サンジがフランキーになったのか?」

「そうだぞウソップ。料理はできねぇけど、けが人はおれが見るからな!」

「というわけで、ケガしてもおれには頼るな」

「ビームはどうやって出すのかしらねぇが、まあ一応蹴りでは戦えるだろ」

「あのクソコックがおかしくなったかと思ったが、そういうことか」

「なんだとクソマリモッ!」

「あ、そういうことか」

「今のやりとりで理解すんな、ルフィ」

 

 繰り広げられる、混沌とした会話。

 フランキーとゾロが罵り合い、チョッパーが自分の変形に翻弄され、サンジがナミとロビンと彼女たちの子どもの診察を始める。

 そんな中、ブルックだけは冷静に。

 

「ルフィさん。やっぱりこの下半身さん、頭さんがいたようですよ」

「なに〜〜!? ホントかブルックッ!」

「うおっ、ホントだ。サンジたちの方に頭があったのか」

「か、下半身が戻ったでござる!」

 

 下半身と頭が繋がった奇妙な人間を分析していた。

 このサムライこそが"麦わらの一味"がパンクハザードに上陸するきっかけとなった、人斬りのサムライだったのだ。

 

「あぅ、あ〜う〜」

「ん〜? どうしたの、ベルメール」

「あ〜……」

「オルビアも……。トラファルガー・ローと海軍が戦っている方向に何かあるのかしら」

 

 状況が落ち着くのを時間が解決することを待つ女性陣。

 ナミの体も今はフランキーに抱えられてはおらず、お互いの子供を抱いていたのだが、その赤ん坊たちが先ほど海軍がいた方向に向かって手を伸ばしたのだ。

 

「何か気になるのがあったのかも知れないな。子どもは好奇心旺盛だし、スモーカーのケムリとか、ローの戦いが面白かったのかも」

「あう〜!」

「きゃっ。……もう、どうしたのかしら」

「……そういえば、ローと戦っている海兵、子どもみたいだったわ。……もしかして」

「っ、や、やめてよロビン。まだそうと決まったわけでもないでしょ?」

「ん? どうしたんだナミ、ロビン。何か体調の変化とかあるのか?」

 

 ロビンとナミの脳裏に一瞬だけよぎる、つい先ほど見たローと小さい海兵の戦い。

 研究所から出てその場面に遭遇し、すぐさま裏に逃げたのだが、その衝撃的な光景は嫌でも目に焼きついた。

 王下七武海になれるほどの実力を持った海賊。そして、その海賊と渡り合えていた少女。

 一体どれほどの実力と可能性があるのかと考えてしまった瞬間、ナミの体になったロビンは頭を横に振った。

 

「い、いいえ。大丈夫よチョッパー。ただちょっと……なんて言えばいいのかしら」

「懐かしいようで強烈な、嫌なんだけど忘れたくないっていう、変な感覚が……」

「……授乳期とか、ナミの体は今も妊娠してるけど、そう言った時期の人間は精神的に不安定になりやすいから、言いにくいことは別に言わなくても大丈夫だぞ?」

「……えぇ。ありがとう、チョッパー」

 

 子どもたちが喜びながら手を伸ばし、その方向に這ってでも行こうとするような勢いを見せている。

 その瞬間、吹雪をしのげていたこの場所ですらも凍えてしまうような猛烈な冷たい風が吹いた。

 

「っ、寒いわね……」

「だ、大丈夫かロビンっ! 体もだけど、お腹は特に冷やさないようになっ!」

 

 吹雪く島。もちろんそれ相応の寒さがある。

 しかしロビンとナミには、それ以上に寒気を感じていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あはははははははっ! あははは、すっごーいっ! おもしろーいっ!」

「ひ、ひぇえ……。あんな笑顔で爆笑してるスモさん初めて見たぜ……」

「おいリリー。俺の姿でみっともねぇことすんのはやめてくれ」

「逆にこっちのリリーちゃんはすんげえ貫禄あるっつぅか、あんま違和感ないのなんでだ?」

 

 麦わらの一味が合流するほんの少し前。

 サンジやナミたちと同じ技で精神を入れ替えられていたリリーとスモーカーが目を覚まし、"G-5支部"の海兵たちが子どもたちやロー、麦わらが同じ島にいることへの推測を始めていた。

 

「そりゃリリーの父親の遺伝子考えたら分かるだろ」

「あ、あぁ……なるほど」

「ん、パパがどうしたの?」

「リリーちゃん、頼むからその姿でパパはやめてくれ……」

 

 10歳の少女と36歳の男。

 その二人が入れ替わってしまったことにより、ある種麦わらの一味よりもひどいギャップが生まれてしまった。

 

「で、リリーちゃん。何が面白いんだ?」

「んっとね、すっごいタバコ臭いの!」

「……スモさん」

「分かってんだよッ! こいつの体にいる間は一切吸わねぇ! ……で、だ。リリー。お前がさっき言っていた違和感って何だ」

 

 10歳の少女の肉体に精神が入ってしまったスモーカーが、本来の自分の体に凄む。

 ジョー・リリーが"G-5"にて主に行っている任務。それと関連していたのだ。

 

「えっとね。小さい女の子だとだいたいみんな油断してくれるの。だから、スモーカーさんとかだったら怖くて話せないこともいっぱい話してくれるんだ」

「それが、ガキの海難事故と関係してるのか?」

「多分。通信部には誘拐された〜って通報がくるのに、そのほとんどが海難事故になってるの。まあどっちも子どもがいなくなってるから勘違いかなって思ってたんだけど、この島にいたあの数はおかしいなって」

「……だな。あと何か、気になるところはあるか?」

 

 以前から"G-5支部"に多かった近隣の島からの子どもの死亡数。

 それが海難事故と扱っていたが、誘拐としての報告が本当に正しいのかもしれない可能性が浮上してきたのだ。

 そして、リリー自身気になる点が、もう少し。

 

「うん。この研究所の中、ただの誘拐犯じゃない人たちもいるよ」

「何? ……見聞色か。俺の体でも問題なく"覇気"は使えそうなのか?」

「むしろ鍛えられてる体だし、いつも以上に使えそうだよ。……でも、なんだかつい最近感じた気がする気配もあるんだけど……」

 

 そう言いながら、研究所の方を見るリリー。

 強い気配をひしひしと感じるその方向を見ていると、ふと真後ろから音が聞こえた。

 

「えっ!? ぐ、軍艦っ!?」

「や、やった……っ! 援軍だーっ!」

「……来たか」

 

 スモーカーたちを乗せた軍艦が通ってきた道と全く同じルートを通ってきた軍艦。

 事前にここに来るであろう人物を、スモーカーはリリーから聞いていた。

 

「つっても、こんなやべぇとこに弱ぇやつが来ても意味ねぇだろ……」

「た、確かに……。スモさんより弱ぇやつなら話にならねぇ!」

「頼むぜオイ!」

「っ、お前ら。あんま変なこと言うんじゃねぇ……」

「えっ? どうしたんすか、リリーちゃん」

「俺はスモーカーだ……。安心しろ。癪だが、あそこにいるやつは俺より強ぇよ」

 

 甲板に出ている海兵たちですら、"G-5支部"の面々よりも軒並み修羅場をくぐった風格を見せている。

 

 その奥から、上半身裸の男が現れた。

 

「おい、誰だよ今俺の事弱ぇとか言ったやつ。半殺しにでもすりゃあ分かってくれるか?」

「……だ、誰だ?」

「ったく、頼むぜスモーカー。いくらアホでも雇ってんなら教育ぐらいしてくれや。俺ァ、海軍内じゃ名は売れてるとは思うんだが」

 

 黒い短髪を右手でかきあげて眠たげに欠伸をしながら口元を左手で覆う。

 本人がそう言っているが、そもそもの話、本部にいなければ声はおろか姿を見ることも珍しいのだから仕方ない。

 

「あーっ、パパだーっ!」

「え……。す、スモさんに入ったリリーちゃんがそう言うってことは、もしかして……?」

「……どういうことだ? そんなヤニカスのおっさんの子ども、育てた覚えは無いんだが」

 

 貫くような視線。

 そこからしばらくして、ため息を吐いたその男は、面倒くさそうに部下から手渡された黒いシャツに袖を通した。

 

「まあ良い。無能なアホどもに自己紹介をしといてやる」

 

 トン、と甲板から軽やかに飛び、"G-5支部"の海兵たちの前に降り立つ。

 その手には大きな白いコートを持っていた。

 

「娘が世話になってるな。海軍本部大将、ジョー・ジャックハートだ」

 

 彼の登場に、場がさらにかき乱されることとなる。




最悪(の科学者)と最悪(の世代の海賊)と最悪(の海兵)と

誰が1番最悪なんでしょうかねぇ……。

感想などよろしくお願いします。予想以上にモチベーションに関わっているので、誰とのが見たい、どこがどうだった、など気軽によろしくです。

評価もお待ちしております。

今後の本番シーンについて、主にどんな内容が良い?

  • 主要キャラの一部を濃く
  • 主要キャラメインで大人数を書く
  • 作者好みのキャラで濃く
  • 現在対象キャラ全員
  • このキャラを!(感想に書いてください)
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