※この作品はR-18です。

海軍史上最悪の男   作:チャリ丸

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たくさんの感想、ありがとうございます。
就活と卒研でメンタルズタボロの作者の癒しとなっております。

パンクハザード編は恐らく後2〜3話で終わると思います。

「あれ、このメンツでここにいたら絡みあるのでは……?」という部分がありますが、今回はあえて入れていません。
次回以降、原作キャラにも焦点を当ててストーリーを深くしていきたいので、お楽しみに!


※6/29追記

コメントにてご意見をいただき、投稿してから少し修正させていただきます。話のストーリーにはほぼ関係ない部分にはなりますが、キャラ同士の掛け合いだったり立場が変わっております。申し訳ございませんでした。

修正内容
支部の階級は全て本部より下がると勘違いしていたため、修正前ではスモーカーの方がたしぎより下の立場になっておりました。
修正後は、本部と支部という距離の差はあれど、スモーカーの方がたしぎよりも階級は上、となっております。

重ね重ね、申し訳ございませんでした。


チキンレース

 

 

「で、お前とスモーカーがローから攻撃を受けて精神が入れ替わった、と」

「うん。"悪魔の実"とかそもそもの体のサイズが違うから、動きづらさを狙ってるんじゃないかなって」

「そりゃそうだろうな。……でもリリー。今のままじゃお前は戦力じゃねぇな」

「えーっ!? なんでー!?」

 

 先にパンクハザードについていた"G-5"の海兵たちから今までの事情を聞いたジャックハート。

 彼の部下の一部がパンクハザードに降り立ち、残った者は一旦海軍本部に事の顛末の報告に向かった。

 そのパンクハザードで、見た目はスモーカーのリリーがジャックハートに駄々をこねるという側から見ると絵面がやばすぎる場面が完成した。

 

「まず一つ。"悪魔の実"の扱いに慣れてないから。そして二つ。相手がいくら王下七武海だからって、心臓は取られるわ精神は入れ替えられるわ、やりたい放題にされすぎだ」

「……う〜」

「ジャックハートさん、それぐらいに……」

「ダメだ。これは親子の問題じゃなく、上司部下の問題だからな。俺の意見もあってここに赴任して、階級にもついてるんならちゃんとしねぇと」

「……うん」

 

 普段部下たちに向けるような怒りではなく、まさしく子どもを叱る親のよう。

 しかし、海軍本部大将と支部の少尉という、明らかな上司部下の関係性もある。

 そのためジャックハートは、親という立場から仕事を全うできていなかったリリーを叱っているのだ。

 

「パパもママも、仕事中は一切ふざけてなんかいないし、本気でやってる。手を抜くなんて選択肢がそもそもないからだ。……そして、今のリリーには失敗しても許される二つの大きな理由がある」

「……パパが強くて、私が子供だから?」

「そう。リリーがどんなことをしても、パパの娘なら怒れない。失敗しても、まだ子供だからで済まされる。リリーはそれでいいのか?」

「よくないっ」

「なら大丈夫だ。このままだとダレスにどんどん差をつけられるかも、と思ってたけど安心だ。これからは頑張るんだぞ」

「うんっ!」

 

 ジャックハートと自分の身体になったリリーとの会話を見て、リリーの身体になったスモーカーはあんぐりと口を開けた。

 まさかあいつがこんなにちゃんとした父親らしくしているとは、と驚いていたのだ。

 そんな彼に、ひとつの人影が近づいた。

 

「可愛らしくなりましたね、スモーカー中将」

「っ、たしぎ……!」

「……ついに、後一つです。すぐにあなたに追いつき、追い抜いてみせます」

「……チッ。そんなにあいつにくっついていたいのか」

「えぇ。当然です」

 

 たしぎ。

 ジャックハートの元に正式に部下として配備され、セックスだけでなく戦闘のノウハウもバッチリと指導されている彼女は、昇進に昇進を重ね、今や海軍本部少将にまで登りつめていた。

 

「私の今の目標は、本部の中将になること。いずれはその先に行くことです。スモーカー中将も、目先の標的を追い過ぎず、自分を見つめ直してみることも必要かと」

「随分と偉くなったじゃねぇか、お前……」

「おいスモーカー。何俺の可愛い部下を睨みつけてくれてんだ、あぁ?」

 

 その2人のやり取りに、この場で最も強いといってもいいジャックハートが割り込んだ。

 今まで彼と話をしていたリリーはというと、父親に発破をかけられ、まるで身体から炎が出ているかのように燃えていた。

 

「元はと言えばてめぇが不甲斐ないせいでリリーが汚ねぇヤニカスジジイの身体になっちまったんだろうが。責任取れや」

「……それに関しては、悪いとは思っている」

「ケハハハ。ここにいる間こき使わせてもらうぜ。それでチャラだ」

 

 スモーカーの目の前にいる男にとって、部下が逆らうということは正しく怒りの琴線に触れること。

 自分に否があり、そして立場は完全に向こうの方が上。

 ジャックハートにパンクハザードで何が起きたかを説明する前に部下たちに徹底的に指導しておいた、態度には気をつけろという言葉がなければどうなっていたか分からない。

 

「たしぎ。この一件、指揮はお前に任せる。今言った通り、こいつは今んとこ信用できねぇからな」

「えっ!? ジャックハートさんはどうするんですか?」

「一人で動く。要するにシーザー・クラウンが怪しいってんだろ? 今はもう政府の人間でもねぇただの賞金首だ。黒幕だろうがそうでなかろうがボコボコにして持っていきゃあいい」

 

 そう告げ、簡単な作戦会議を開いていた場所から去ろうとするジャックハート。

 彼につられ、複数人が立ち上がる。

 

「お待ちくださいあなた様っ! わらわは、わらわ達はどうすれば……」

「たしぎを手伝ってやれ。俺の想像を超える働きを見せてくれた子には、それ相応のご褒美をやるぜ」

「〜〜〜っ! このハンコック、必ずやあなた様の期待に応えてみせます!」

「わ、私もです、ジャックハートさんッ!」

「もちろん、私もです。リリーのためにも、身を粉にして働きます」

「ケハハハハハッ! 期待してるぜ」

 

 たしぎ、ハンコック、カリファなど普段ジャックハートに愛されている女性たち。。

 一旦通報に戻った軍艦に、ジャックハートを囲っている女性たちは誰一人として乗っていない。

 戦闘が全くのド素人であるノジコですら、島に降りていた。

 

「す、すげぇ光景だな……。これが、本部の大将……」

「そういうことだ。入ってねぇ脳みそでも格の違いぐらいは認識できただろ?」

「っ、そ、そこまで言うか!?」

「あ? 単純に海兵としてのデキで考えてみろよ。ここにいる俺以外のテメェら全員束になってかかってきても2分と持たねぇっての。身の程わきまえろよザコども。懸賞金が高い見てくれだけの海賊にビビってんじゃねぇよ」

 

 自分が抱きたいと思う女性には比較的優しく、どうでもいいと思っている男性陣には辛辣。

 普段からジャックハートのその言動に慣れている直属の部下たちは問題ないが、"G-5"の面々はいくら強いとは言えそのあまりの横暴さに少しばかり気が立っていた。

 

「なあ、リリー。お前もそう思うだろ?」

「うん。だってみんな、任務中私よりも楽しそうに遊んでるもん」

「やってることの差ってわけだ。汚ねぇ馬鹿な弱い海兵に、どこの女が抱かれたいって思うんだよ」

 

 少し歩いたジャックハートと、その後ろに固まる"G-5"の海兵たち。

 容姿、頭脳、実力、財産、地位、名声。その全てにおいてジャックハートが勝っており、"G-5"側はその言葉に思うことはあれど言い返すことはできなかった。

 

「せいぜいうちの可愛い部下たちの邪魔はすんなよ。俺とのはさみ打ち要員に、一応だが期待している。じゃあたしぎ、他のみんなも、リリーも。また後でな」

 

 "正義"の白いコートを腰に巻き、すたすたと一人歩いていくジャックハート。

 その後ろ姿が吹雪で完全に見えなくなった途端、彼らの怒りが爆発した。

 

「いいんすかスモさんっ! あんな言われたい放題のままでっ!」

「俺らだってそれなりには頑張ってきたつもりだぜ!?」

「いくら海軍本部大将だからって、ありゃむかつくぜ……!」

 

 彼らの怒りの矛先は、もちろん先ほどのジャックハート。

 彼は、本部で直接見ていた部下たちには当たりはかなり厳しいがまだ部下として扱うことがある。しかし、今のジャックハートは完全に自分の視界にも入れたくない存在を扱うような態度だった。

 

「……なあスモさん。こいつらあの大将サンの女たちなんだろ……?」

「一回ぐらいヤラせてもらってもバチ当たらねぇよな……へへっ」

 

 そしてその捌け口は、ジャックハートが連れてきた女たちへと向いた。

 スモーカーが制止しようとするも、その目はギラついており、すでにジャックハートへの腹いせと性欲発散しか頭になかった。

 

「黙れッ!」

 

 しかし、そんな彼らに向けてさらなる怒りをぶつけるものが、一人。

 

「さっきから無能な猿が猿らしい下品な考えを垂れ流しているぐらいだと聞いてどうとも思っておらんかったが、わらわたちに手を出そうとするなら話は別じゃ」

 

 ジャックハートが連れてきていた女性たちの中で唯一"覇王色の覇気"を扱えるハンコックが、その片鱗を漏らしながら男たちを制止したのだ。

 

「わらわたちの身体も心も、全てはジャックハート様のもの。本来、お前たちのようなクズどもにはわらわたちの影すら見せていいものではない」

「っ、なんだとこのアマッ!」

「……じゃが、獣でも見惚れてしまうほどの肢体になったと思えば、それも美しさを求める者としては良いことじゃ。ここに人の言葉を話せる珍しい獣がいることに感謝せねばならんの」

 

 何処かの誰かから彷彿とさせるような、口から出る言葉の数々。

 正式にジャックハートの嫁として彼に迎え入れられ、愛し愛される日々。その日々の中で、似なくてもいい部分まで似てしまったのだろう。

 

「それにお前たち、忘れておらんか?」

「何……?」

「ここには、そこのタバコ男よりも一時的に立場が上となった海兵がおるのだぞ? のう、たしぎ」

「えぇ。……今の皆さんの言動は、そう簡単に許されることではありません」

「そんなこと言ったら、さっきの大将サンだってそうじゃねぇか!」

「ジャックハートさんをあなたたちなんかと同じにしないでください。大将権限というものを知らないのですか?」

 

 流れる険悪な雰囲気。

 相手が海軍本部の大将なら仕方ない。そう思う気持ちもありつつ、男たちはまだ完全には収まっていなかった。

 

「それと、補足しておきますが私達は全員、ジャックハートさんの部下か所有物、または秘書です。これは海軍本部だけではなく、世界政府からも認められていること。それに手を出して、無事でいられる保証はありませんよ」

「っ……」

「むしろ今のままでもお前たちが罰せられる立場じゃ。わらわたちの愛するお方、そしてあれだけの強さを誇るジャックハート様を侮辱し、その所有物に手を出した。わらわにその権限があるのなら、今すぐにでもお前たちに自害を命じておる」

 

 リリーの姿になってしまっているスモーカーも諦めてしまう程の重々しい雰囲気。

 元はと言えば、ジャックハートに歯向かうなと指示しておきながら歯向かってしまった"G-5"の男たちも悪いが、根本的なことを言うならジャックハートがそもそもおかしいのだ。

 

「……ねぇみんな、いつまでそうやって言い合ってるの?」

 

 そこに待ったをかけたのが、スモーカーの姿となったリリーだった。

 

「パパに怒られても知らないよ? ここにいる全員で、パパの反対方向から攻めて挟み撃ちにする。それすら出来なかったら、多分ゲンコツじゃ済まないよ」

「パパのことよく分かっているわね、リリー。……この子の言う通り、恐らくですが何の役にも立たないと思われた時点で、一切の期待もされないかと。ジャックハート様は若い身でありながら、世界的に発言力があるお方です。念のため、忠告をしておきます」

 

 この中で最もジャックハートの海兵ではない、素の部分を多く知っていると言っても過言ではないだろうリリーとカリファからの忠告。

 それまでどれだけ気に入っている人間であろうと、ジャックハートの中にある琴線に触れてしまえばどうなるかは分からない。

 

「先ほどジャックハート様は2分もあれば倒せる、とおっしゃっていましたが、殺すだけならばもっと早いです。……そして、ジャックハート様の今のブームはじっくりといたぶることです。仮にも同じ職種の海兵に、さすがに今はそういったことをなさるとは思いませんが……」

 

 "新世界"に来ることになり、まず初めにジャックハートを刺激することとなったのが、まさしくそれだった。

 "偉大なる航路"の前半の海と比べて強者が多い"新世界"。それでも今の所ジャックハートのお眼鏡に叶う相手はそうそう現れず、彼の目の前に来るのはリタイアしかけか、さらに名乗りを上げようとするアホな海賊ばかり。

 普通に倒すのもさすがに飽きてきたジャックハートは、遊び感覚で手加減をしながらじわじわとなぶっているのだ。

 

「……ま、ジャックハートがどうだろうと関係ぇねぇ。俺たちは俺たちの仕事をこなすだけだ」

「ではスモーカーさん。まずはリリーちゃんの心臓、そしてお二人の精神を戻すことを優先しましょう」

「あぁ。じゃあ行くぞ、お前ら。気を引き締めろ……!」

 

 たしぎやスモーカー達が行こうとしている研究所。

 そこを阻む、ひとつの大きな扉。それを開かなければ研究所には入れない。

 

「ふん、良いかゴロツキ共。わらわがこの場で言うことを聞くのは普段からジャックハート様を愛している女たちと、ジャックハート様の娘のリリーだけじゃ。無論、これはわらわだけではなく、海兵であるたしぎとアイン以外の者もじゃ」

「分かってる。元々、海賊だったお前らに協力は期待してねぇよ」

「……その言葉、数ヶ月先まできっちりと覚えておくと良い」

 

 ジャックハート部隊と"G-5"支部。

 彼らを迎え撃つように、どこからかシーザーの部下が現れ始めた。

 

 

 ◇

 

 

「ここから入るか。……3億と4億と4億ちょい。かー、しょっぺー島だぜ。肌寒ぃし、向こうは暑いらしいし。やりすぎだろあの二人」

 

 たしぎたちから離れたジャックハートは、研究所の裏口へと通じているであろう道を進み、その扉の前まで来ていた。

 ここに来るまでの間、アインとカリファ、そしてヒナとドミノ、サディの計5人を抱いただけでは足らず、そこからバカラとカリーナ、ハニークイーンといった新しくジャックハートの元に来た女性たちとの関係を深めていたのだ。

 性欲は満たされ、休息も栄養も十分に摂った彼にとって今唯一不足しているもの。

 

「まあ、今後のこと考えりゃあちょっとは楽しめそうだ」

 

 数多くの極上の女を抱き、存分に休み、そして肌がひりつくような戦闘をずっと心待ちにしてきたのだ。

 磨かれていくまさに神に愛されたかのような天性の肉体。

 そこに最高潮にまで高まった精神が組み合わさり、彼の感覚は人生史上最高クラスにまで研ぎ澄まされていた。

 

「この気配……。あぁ、やっぱそうだ。間違いなくナミちゃんとロビンちゃんはまだ一味にいる。ベルメールとオルビアも無事か。んで、強いので言えば麦わらとトラファルガー、シーザー……と、なんでここにいるのかは分からねぇ奴が一人、か」

 

 片手で扉を押し開け、中へと入っていく。

 そこには研究所とは思えない談話室のような部屋があり、バーカウンターにはアルコールが入ったボトルが並んでいた。

 

「趣味悪ぃとこだなおい。……ん? 誰か、いるな」

 

 ある程度存分に戦えはするであろうその場所に、自分以外の誰かがいる。

 白いコートを左の脇に挟んだまま辺りを見渡すものの、それらしい人影はいない。

 

「……名乗りもしねぇってことはクソ雑魚か。一応眠らせておくか。ここ以外にも、牽制しておこう」

 

 そう言い切った瞬間、彼からまるで空間がきしむような圧力が放たれる。

 発動させる範囲をかなり広めた"覇王色の覇気"。それは、研究所だけではなくその外、島全体にまで及んだ。

 

「遠い奴にはもしかしたら効いてねえかもだが、まあいいだろ。さっさとぶっ殺すもんぶっ殺して、こんなとこ出て行こうか」

 

 カツカツと靴音を鳴らしながら奥へ奥へと進んでいく。

 初めてきた場所にも関わらずジャックハートが迷うことなく進んでいるのは、そこにとある気配があるからだ。

 

「あーあー、せっかくリリーを倒したって実力を確かめようと思ってたのによぉ。なんで玉無し野郎に負けてんだよ、トラファルガー」

 

 右手で乱雑に後頭部を掻きながら言い切った後にあくびをする。

 ジャックハートが歩いていた通路の先に、血を吐きながら倒れているトラファルガー・ローともう一人、彼にとって懐かしい顔がいた。

 

「久しぶりだな、ヴェルゴ。テメェの部下は今外にいるぞ。早く行ってやれ」

「……じゃ、ジャックハート……」

「あぁ? 口の利き方に気をつけろよカス。お前がペーペーの時に鍛えてやった上司だろうが」

 

 ヴェルゴ。

 海軍に入隊して約15年。"G-5"の基地長にまで昇りつめた男が、なぜかそこに立っていた。

 

「お前、首さえ繋がってりゃ言い訳できるだろ。基地長のお前がここの内部になぜか入り込んでいること、お前がトップの"G-5"の報告が間違いまくってたこと、んで最後に、海兵の格好すらせずにこの場にいること。……どういうことか洗いざらい吐いてもらうぞ。敵意を見せた瞬間に拘束させてもらう。大人しく……」

「このッ!」

 

 歩み寄ろうとするジャックハートに構うことなく、勢いよく近くの壁を殴るヴェルゴ。

 その壁の奥にはなにやらスイッチのようなものがあり、押されたと同時にジャックハートの目の前に壁がせり上がり、それと共にガスが噴射された。

 

「ガス……。くそ、シーザーのやつか」

 

 振り返って見るも、後ろにも壁がせり上がっており、完全に密室が完成してしまっている。

 綺麗な空気を存分に吸えるのならば息を長く止めていられるだろうが、今は空間も制限されており、何より耐えるのは性に合わない。

 

「舐めてんじゃねぇぞクソがッ!」

 

 ジャックハートが生身で放つことができる衝撃、"六王銃"。

 シーザーの研究所で使われている分厚い防護壁に大きな穴を開け、そこから外に出る。

 

「……逃げられたか。ってことでこの時点でヴェルゴは黒。犯人はあいつか。ここにいる奴らを潰しにきたってことは、十中八九ドフラミンゴの手下じゃねぇか」

 

 ガスが充満する前に密室から脱出したものの、そこにすでにヴェルゴとトラファルガーの姿はない。

 以前から3人を抱くついでに上手く聞き出していた情報を照らし合わせ、ジャックハートの中で全ての事柄が繋がっていく。

 

「政府に捨てられ殺戮兵器を開発しまくってたシーザーに人造悪魔の実の元、SADを作らせて、それを元に"SMILE"を大量生産。それをカイドウに売っぱらって自分は大儲け。王下七武海として表向きは普通の取引をしてる裏で"JOKER"として働いてる、って感じだな」

 

 誰に伝えるわけでもないが、ポツポツと一人考えを零していく。

 そんなことを一人しているうちに、とあることに気づいた。

 

「ん? ……"見聞色"が鈍ってるな。神経ガスか……小賢しい」

 

 先ほど噴射されたガスを少しだけ吸ってしまったのか、"見聞色の覇気"が少し鈍っているのだ。

 強い気配があることはなんとなく分かるが、その位置までは分からなくなってしまっていた。

 

「探索……する気もねえし。女を抱く……にもここじゃ殺風景すぎるし。マジでなんもねぇなこの島」

 

 ゴキゴキと首を鳴らしながらゆっくりと歩き出す。

 近道を作ろうと左の腰に手をやるも、そこに彼の求めるものはなかった。

 

「……あー、そういや軍艦に置き忘れたか」

 

 アレ(・・)があれば手っ取り早かったのに。と一人ため息をつき、壁の方を向く。

 軽く準備体操をして、構える。

 

「ちゃんと避けねぇ奴が悪い。嵐脚・賽」

 

 右足から縦横三本ずつの斬撃を放つ。

 目の前にある壁を切り裂き、その斬撃はジャックハートの目に映らなくなっても轟音とともに進んでいった。

 

「とりあえず戻るか」

 

 斬撃を飛ばした方向は、先ほどたしぎたちと別れた研究所の正面入り口がある場所。

 その場所へ向けて、ジャックハートは歩き出す。

 白いコートのポケットから電伝虫を取り出し、通話を始める。

 

「あぁ、もしもしサカズキさんですか? 俺です」

『ん、ジャックハートか。どうした』

「さっき連絡してた通りです。予想通り、ヴェルゴは黒。入隊時からドンキホーテファミリーだった可能性が高いっすね」

『そうけぇ……。ご苦労』

「いえ。それと、もう確認は取れたので……」

『あぁ、もうヴェルゴは用済みじゃ。情報を抜き取り次第、始末せい』

 

 通話の相手は、自分の海軍内での唯一の上司と言ってもいい元帥のサカズキ。

 パンクハザードに到着する前にジャックハートが立てていた推測通りだった結末をサカズキに伝え、その決断を待ったのだ。

 

「了解。方法は?」

『任せる』

「うっす。遺体は持って帰りますか?」

『ドフラミンゴの手土産にでもしてやれ。……どうせ、この後ドレスローザに行く予定じゃろうて』

「あらら。バレてるんすねぇー」

『お前が今回立てた航路からしてあからさますぎる。まあ、止めはせん』

「あざーっす」

 

 サカズキの判断は、殺せ。

 スパイを疑われ、そしてその容疑が黒。どっぷりと海賊側に浸かっている海兵をサカズキが許しておくはずがなく、その下手人のジャックハートが見逃すはずもない。

 

『ジャックハート。"麦わら"、トラファルガー、シーザー、ヴェルゴの相手はさすがに面倒じゃろう。帰ってき次第、何らかの報酬を用意しておくけぇの』

「えっ、いいんすか?」

 

 何が欲しいかなー、と電伝虫片手に考えながら歩く。

 その先には一直線に穴が空いており、迷いなくそこを進んでいく。

 

 

 ◇ ◇

 

 

「シュロロロロ……ッ! 七武海に4億の首、白猟のスモーカーに白龍の娘、パシフィスタもどきに悪魔の子、本部少将や九蛇まで。ひとつの檻に入るには、豪勢過ぎるメンツだな」

 

 研究所の正面玄関で行われていた戦闘に顔を出し、その能力を使って主力を戦闘不能にしたシーザーは、それら全員をひとつの檻に閉じ込めていた。

 全員を海楼石でできた鎖を繋ぎ、シーザーは高笑いを続ける。

 

「いいかスモーカー。これからお前達の部下は死ぬ。そしてそれは、お前達もだ。どれだけ強固な肉体を持っていようと、あのシノクニはその全てを飲み込む……!」

 

 シーザー、ヴェルゴ、そしてシーザーの側近の3人が檻の外におり、その部屋には大きなモニターが設置されている。

 そこには、紫色の毒々しい煙がまるで意志を持つかのように人間を追いかける映像が映し出されていた。

 

「シュロロロロロロッ! まさか本部少将までいたとはな! ……だが、残念。いつも通り、海難事故で処理してもらうさ」

「うわっ!」

 

 ガコンッと大きな音を立て、檻が研究所の外へと移動させられる。

 全員が海楼石でできた鎖に繋がれ、宙に檻ごとぶら下げられ、徐々に殺戮ガスが近づいてきているこの状況は、文字通り捕まっている側から見れば絶体絶命だった。

 

「シュロロロロロロロロッ! これでもう、俺を邪魔する奴は誰もいないっ!」

「……シーザー。一つ、報告だ」

「何? どうしたヴェルゴ」

 

 先ほどまでは檻の中に入ったスモーカーとリリー、ローの3人を見て平静を保っていたヴェルゴだったが、そんな彼を突如として強烈な寒気が襲った。

 彼も、相当な実力の持ち主である。それこそ、"武装色の覇気"だけで言えばかなりのものだ。

 それゆえに、その寒気が自分の勘違いではないことを悟ってしまったのだ。

 

「この島に、最悪の海軍本部大将がすでに潜入している」

「…………は? ど、どういう……」

「簡単なことだ。恐らく、スモーカーたちの援軍に来たのだろう。蛇姫たちが奴の船に乗っていると考えればあのメンツが揃うのも分かる」

「お、おまえっ! 分かってるならさっさと──」

「無理だっ!」

 

 落ち着きのあるヴェルゴから一変。何かに怯えるかのように額に汗を浮かべ、彼は叫んだ。

 

「奴は、次元が違う……! 10年前ですら、手も足も出ずに一度殺されかけた……」

「シュロロロ。安心しろ、今は状況が違う。シノクニもあるし、何なら俺が息を止めてやろう」

「……どうかな。とにかく、俺はまだ死にたくない。用が済んだら帰らせてもらうぞ」

「らしくないな、ヴェルゴ。シノクニがあると言っただろう?」

 

 シーザーの表情は、勝ち誇った表情そのものだった。

 灰のように体にまとわりつき、皮膚から侵入することで全身を一気に麻痺させるシノクニを完成させた時点で、彼の中では勝ったも同然なのだ。

 しかし、ヴェルゴの表情はそれでも晴れない。

 

「言っただろう、すでに研究所の中だと。外気を入れない限り、あのガスでは倒せない」

「なら外気を入れるだけだっ!」

「……シーザー。一つ言っておく。俺はもう奴とは戦いたくないからな」

 

 10年前、ジャックハートがわずか10歳の頃だが、ヴェルゴの脳裏には今でもトラウマとして映像が残り、痛みを思い出す。

 

「奴は、恐ろしく強い。単純な戦闘力だけじゃない。根本はお前に似ているかも知れんが、強さが違う」

「シュロロロロ。何、どれほど強い奴でも関係なく、シノクニが固めて殺す……! 天下の最強の海兵ですらも、だ」

「……そうか。では、少し外させてもらう」

「どこに行くんだ」

「万が一を考え、少し準備をしてくるだけだ」

 

 そう言い残し、一人足早に部屋を去るヴェルゴ。

 彼が今思い出しているのは、10年前にジャックハートに扱かれていた時の全身に走る痛み。

 

「……」

 

 そのトラウマがフラッシュバックする。

 奥歯を噛み締め、険しい表情のまま彼は歩いて行った。




ヴェルゴとジャックハート。
早く書きてぇなぁ……。

ドレスローザ編で自分の中では戦闘シーンとか結構考えられているので、最近楽しいです。
あそこには今の所エチエチ4人娘がいるのでね……へへっ……。

コメント、評価などお待ちしておりますっ!

今後の本番シーンについて、主にどんな内容が良い?

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  • 作者好みのキャラで濃く
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