結論から言って、俺と櫛田はほぼ毎日のように肉体関係を持つようになった。
初めて知った性行為の快感に魅了されたというのも、勿論ある。櫛田とのセックスは自慰が馬鹿らしくなるくらいの快感を俺に与えてくれたし、他に経験がないので比較は出来ないが…櫛田桔梗という女生徒の肉体は、極上と言って差し支えないものだった。
肉感的な肢体に、豊満な乳房…そして、俺の逸物を柔らかく包み込んで来る膣内…裏の顔という最大級の地雷が埋め込まれているものの、セフレという関係を結ぶのに櫛田桔梗はこの上ない逸材だった。
俺とのセフレ契約は、櫛田なりに俺への最終的な対処を考えた末の妥協案だ。俺を陥れる事が不可能だと悟り、その代替案として自らの身を差し出して自分の身の安全を図ったのだ。
櫛田は確かに、優秀な生徒だ。勉強も運動も人並み以上に出来るし、誰が相手でも交友関係を結べる常軌を逸したコミュニケーション能力と、それを可能にした人間観察能力…そして、笑顔の裏に隠した手段を選ばない悪辣さは大したものだ。
だが、櫛田は
櫛田の最大の武器は、そのコミュニケーション能力を用いて勝ち取った
しかし逆に言えば、その
勿論どんな手段でも実行してしまう胆力は脅威だが、自らの暴君ぶりを隠そうとしなかった龍園と違い、櫛田は普段模範的な優等生として振る舞っている…下手に派手な行動を起こせば今まで積み上げて来た信頼が台無しになる為、櫛田は自分自身に課したルールによって自分を縛り行動に大幅な制限がかかっている状態にある…そんな相手に、俺を潰せる筈がない。それを理解したからこそ、 櫛田は
故に、俺と櫛田の間に恋愛感情なんて甘ったるいものはない…櫛田も以前俺の事が嫌いだとハッキリ言っていたし、櫛田から感じる他の女生徒とは違う種類の感情も恐らく憎悪とか苛立ちとかそういう類いのものだろう。自分を男性として執着していないならば、関係を清算する時に面倒がなくていい。櫛田との関係も、この高校を卒業すれば終わりだろう…櫛田はあくまで高校生活の中で秘密を暴露されたくないだけで、その後まで執着する理由はないのだから。
ともあれ、折角出来たセフレは有効活用しないと損だ。俺は今日もまた、部屋にやって来た櫛田と情事に耽っていた。
「あぅ…っ! 猿、みたいに腰を、振ってまるでケダモノだね…っ! 女の子を好き放題出来るのは、楽しい…っ!?」
「ふっ、はっ…っ! 自分から、抱かれに来てるお前が言うのかよ…っ!」
俺は櫛田の腰を背後から抱えながら、激しく腰を打ち付けていた。櫛田は俺の前だからか裏の顔を曝け出しており、据わった眼でこちらを詰って来る。適当に相槌を打つが、櫛田は顔をにやけさせながら返答した。
「その、私の身体に夢中になってるのはアンタの方でしょ…っ! そんなに顔を真っ赤にしちゃって、それだけ私の身体が気持ちいいんでしょっ!? 当然よねっ! 堀北なんかより、あたしの方がずっと魅力的に決まってるんだから…っ!」
櫛田は自ら目の敵にしている堀北を揶揄し、眼を血走らせながら激情を口走る。その間にも俺は腰を打ち付けるのを止めないが、櫛田は構わず続けた。
「堀北は、どう思うでしょうね? あいつが、頼りにしてるアンタが、あいつを敵視してるあたしの身体に夢中になってるなんて…っ! あいつ、お高くとまってるから、どうせ処女でしょうし、事実を知ったら、軽蔑してっ、自然と離れてくんじゃないっ? いいじゃないっ、あんなブラコン女放っとこうよ…っ! 性欲処理なら、あたしが全部やってあげるわよ…っ!」
「…そろそろ、射精すぞ」
俺は櫛田の言葉には耳を貸さず、射精欲に身を任せて腰を打ち付けるスピードを上げて行く。櫛田はまだ何か言いたげだったが無言のピストン運動でそれを封じ、射精欲が限界を迎えた時遠慮なく俺はそれを解放した。
「う…っ!」
「うぁ、あぁぁぁぁぁ…っ! あつ、い…っ! 熱いよ、綾小路くん…っ!」
櫛田の尻に指を食いこませ、腰をぴったりと押し付けたまま射精を開始する。びゅるるるるる!と凄まじい勢いで精液が櫛田の中に注ぎ込まれ、熱い白濁液が膣奥を叩く度に櫛田は痙攣し、快感の呻きを漏らした。俺はぐいぐいと腰を櫛田の尻に押し付けながら射精を続け、最後まで精液を出し終えるとそのまま櫛田の身体の上に倒れ込んだ。男一人の体重がのしかかった事で櫛田は呻き声をあげるが、特に文句は言わずに俺の身体の下で荒い息を吐いている。
「…あーあ、こんなに出しちゃって…本当に私を妊娠させる気? 言っとくけど、私は退学なんてしたくないからね。裏切ったら勿論道連れにしてやるけど、好き好んで学校を辞めたいワケじゃないし」
「俺だって退学なんてごめんだよ。心配しなくても、裏切ったりなんかしないよ」
俺は本心から言っているのだが、櫛田の視線からは猜疑心が消えていない。俺がどう言おうと、彼女の中では俺が絶対に裏切らないという確信がないのだ。こればかりは櫛田の性格の問題なので、どうしようもない。
「どうかな? もしも堀北が私と同じように身体を使って来たら、そっちに乗り換える事もあるんじゃない? あの女、外見だけはいいもんね…性欲旺盛な綾小路くんからしたら、別の女子の身体も味遭ってみたいんじゃないの?」
「あのなあ…もうお前を抱けてるのに、無用なリスクを冒す真似なんてするワケないだろ…まだ童貞だったならともかく、俺はお前相手に童貞卒業してるし…今のままなら無理なく抱けるお前がいるのに、他の女子を漁るような理由はないだろ」
櫛田を抱くまで童貞だった事を打ち明けると、何故か櫛田は上機嫌になり口元を歪めた。全く、何がそんなに嬉しいんだか。
「ふぅん…そっか、やっぱり童貞だったのか…じゃあ、私が童貞喪失の相手って事ね。どうだった? 最高の童貞喪失だったでしょ?」
「…最後に脅迫されてなければ最高だったな。まあ、そうでもなければお前を抱く機会なんて巡って来る事もなかっただろうが」
「そうだね。根暗な綾小路くんじゃあたしが相手してあげなかったらずっと童貞のままだったんじゃない? 少しは感謝してくれてもいいと思うけど」
確かに櫛田の身体は最高だったが、最後にきっちり脅迫して来た相手に感謝するのは無理があると思うぞ櫛田。まあ、故意に妊娠して俺を道連れにするなんて自爆戦法もいい所だから、濫用して来ないだろうって事は確かだが。
--ピンポーン!--
そんな時、不意に部屋のチャイムが鳴った。今の時間に来訪の約束なんてしていない筈だが、とにかくこのままではマズイ。何せ、今の俺達は共に全裸でしかも櫛田は俺の精液を股から垂れ流している状態だ。この状況を他者に見られれば、俺も櫛田も無事では済まない。
「わ、悪い櫛田。俺が時間を稼ぐからお前は早く着替えててくれっ!」
俺は櫛田の返答も待たず、大慌てで服を着て玄関に直行した。多少服が乱れているが、自分の部屋という事である程度言い訳は出来るだろう。とにかく今は櫛田が恰好を整えるまで時間を稼ぐ事が最優先事項なので、相手が疑問を覚える前に応対する必要があった。
「あ、なんだいるんじゃない。もう、折角来たんだからさっさと出なさいよね」
来客は意外な事に、クラスメイトの軽井沢恵だった。俺と彼女はとある事情から協力関係を結んでおり、彼女は俺の事情も他のクラスメイトよりも多く知っている。しかし、今日は此処に来いなどという指示は出していなかった筈だが…
「…お前を呼んだ覚えはないぞ。一体何の用だ?」
「何よ。許可がなきゃ来ちゃいけないっての? もうあたしは平田くんの彼女じゃないんだし、別に来たって不都合はないでしょ」
俺の返答が不服だったのか、軽井沢…いや、恵は頬を膨らませてそう告げた。恵はこれまで平田というイケメンの男子生徒の彼女だったが、つい先日その関係は解消された…正しくは、
恵と平田は、本当の彼氏彼女ではない。クラス内での地位を得る為、恵が平田に彼氏の振りを頼んだだけの間柄だ…恵は人気者の平田の彼女という立ち位置を得る事で自分の地位を守って来たのだが、今彼女は自らその地位を放棄した…その原因に関して、俺は無関係ではない。
俺は恵を協力者にする為、他利用者の女生徒に恵をいじめるように嗾け、その女生徒から身を守る事を約束する事で自分という宿り木に依存させて彼女を協力者に仕立て上げた。
そしてつい先日、Dクラスで策略を巡らせた俺の正体を突き止める為に龍園が恵を呼び出して過去のいじめを再現させる事で恵を追い詰め、俺がその場面で助けに入った事で恵の俺への依存は完璧なものになった。恵は俺の事を
恵は俺という存在の強さを再三目の当たりにした事で平田の彼女という地位に固執しなくなり、先日正式に平田との関係解消を宣言した。平田と恵が別れた事でクラスに少なくない波紋が広がったが、平田の取り成しによって大した問題にはならずに済んでいる。平田としても、もう自分が必要ないと分かればいつでも恵との関係を解消する気でいたので、渡りに船でもあったのだ。
その後平田から「彼女を頼む」と頭を下げられたのだが、俺としては恵の事をどう扱っていいか判断がつかずにいた。櫛田と関係を持ってしまった今となっては、どうするのが正解は分からなかったからだ。櫛田とセフレの関係になっているなどと話せば、恵がどう反応するか不明な部分があるからだ。
「そういうワケで、ちょっとアンタ付き合いなさいよ。あたし一人で街に出たらナンパされる事もあるかもしれないし? 虫よけとして付いて来なさい」
「おいおい、虫よけ役が俺でいいのか? 変な噂が立っても知らないぞ」
「大丈夫よ。アンタの評価って前はともかく今はそこそこイケてるし、なんだったら本当に付き合ってる事にしちゃう? その方が今後色々とやり易いんじゃない?」
恵は何げない風を装って喋っているが、頬は上気して眼は泳いでおり本心が別にある事は丸わかりだ。割と頭が回る彼女でも、こういった事には不慣れと見える。
正直に言ってしまえば、恵が俺に対して向けている好意には気付いている。しかし、その好意は俺に対する依存から発生したものに違いない…更に言えば、今の俺は櫛田と肉体関係を持っている。そんな状態で彼女の好意を受け入れるのは、違う気がしてどうすればいいか悩んでいた。
「--こんにちは、軽井沢さん。奇遇だね? こんな所で会うなんて」
「え…? 櫛田、さん…?」
「…っ!?」
--そんな時、不意に冷たい声が耳に入り反射的に振り向けば…そこには、笑みを浮かべた櫛田が立っていた。だが、その眼はどう見ても笑っていない…しかも、その恰好も問題だった。
一応服は着ているが、靴下は履かず素足のままだしネクタイも結んでおらずシャツの隙間から胸元が覗いている…ハッキリ言って、男子の部屋でしていい恰好ではない。しかもその素足には俺が吐き出した精液が太腿を伝って垂れており、勘のいい人物ならば一目で彼女が此処で何をしていたか察しを付けてしまうだろう。
「え、嘘…? アンタ、まさか櫛田さんと…」
そして、マズイ事に恵はその勘のいいタイプの人間だった。即座に櫛田がこの場所で何をしていたかを察してしまい、瞬く間に顔面蒼白になっていく。俺も咄嗟の事で言うべき言葉が見つからず困惑している最中、櫛田はそっと恵に歩み寄り耳元に口を近付けた。
「…お察しの通りだよ。私、綾小路くんに抱かれたんだ。この意味、分かるよね?」
「…っ!!??」
恵は櫛田の言葉を耳にするなり声なき悲鳴をあげて踵を返し、走り去っていく…一瞬呆気にとられた俺だったが振り返って櫛田を睨みつけ、舌打ちする。
「…後で、説明して貰うからな」
俺は強い口調でそう告げると、恵を追って駆け出した。今此処で、彼女を失うワケにはいかない…故に全力で走り去った俺は、櫛田の漏らした呟きを聞き届ける事はなかった。
「…なんで私、こんな事したんだろ…綾小路くんの、ばか…」
櫛田の言葉は風に溶け、消える…その眼に浮かんだ一瞬の涙は、何よりも彼女の心境を如実に物語っていた…
軽井沢回と書きながらも前半は軽井沢とのエッチはなしです。思ったより長くなったので、1話じゃ収まり切らなかったので。
櫛田も軽井沢も、ただの外面通りのキャラなら此処まで好きにはならなかったと思うんですよね。櫛田が好きになったのも本性露見が原因ですし、軽井沢も7巻が決定的でした。この作品は癖の多いキャラが多く集まってますが、その中でもこの二人は特に魅力的に見えたんですよね。
自分はちょっと病んでる感じの女の子キャラが大好きです。依存し合う関係とかちょっと退廃的な関係とかも大好物です。櫛田と軽井沢は正にドンピシャでした。
一ノ瀬も何やら過去に爆弾を抱え込んでるっぽいので、それが明かされたらキャラの好感度が逆転する可能性はありますね。そろそろ彼女の内面にも踏み込んでいく筈なので、どうなるか楽しみです。