「…ここ、は…」
甲は目を覚まし、周囲を見回した。今自分がいるのは無機質な病室で、他に人の姿は見当たらない…現状を理解しようとして、思い出した。
「う、あぁ…」
自分は、生き残ってしまったのだ。後に『灰色のクリスマス』と呼ばれる事になる、あの地獄を。
恩師である久利原先生が開発していたナノマシン、アセンブラが未完成のまま流出し、通話していた画面の向こうで恋人の空は無残に溶けて死んでしまった…アセンブラによって人々が生きながら溶かされる中、空からの光…グングニールによる無差別攻撃によって街は消し飛び、瓦礫の山と化した。
甲は一連の混乱の中で目と耳が使い物にならなくなり、自分が何処にいるのかすら分からずただ死を待つだけの身の上だった。甲自身、空がいなくなった世界で生きる気力も湧かず、そのまま自らの死を受け入れようとした。
だが、甲が瓦礫の中に倒れ込む直前、一人の少女の声が木霊したのだ。少女はその場で朽ち果てようとする甲を叱咤しながら無理やり引っ張り、この病院まで連れて来たのだ。
その後、目と耳の治すべく治療を受けていた甲は未だ少女の姿を見ていない。だが、今の甲にその事に対する関心は驚く程湧かなかった…甲の精神は未だ、あの地獄の中にいるのだから。
正直、生き残ってしまった、という感覚が強い。空がああして死んだのだから、自分も死ぬべきだ…そんな悲観的な願望が、甲の中で燻っていた。
「あら、起きたのね。気分はどうかしら」
そんな中、病室のドアが開いて銀髪の少女が姿を現した。声からして、瓦礫の山で自分を助けた者に間違いない…そして、黒を基調とした制服に身を包む彼女は自分の既知の人物だった。
「クリス…?」
「ええ、正真正銘、鳳翔学園学生会長の六条クリスよ。まあ、既に鳳翔はないのだから元、がつくけどね」
クリスは記憶通りのやや棘のある声で、皮肉気にそう語った。彼女は自分が通っていた星修学園のライバル校である、鳳翔学園の学生会長だった。しかし霧島レインの抱える問題を解決する際に力になって貰って以降、自分とは交流が続いていた…千夏や空とは相性が悪かった為に如月寮を訪れる事こそなかったものの、それなりに仲良くしていた相手だった。
「瓦礫の山の中で貴方を見つけて、此処まで引っ張って来るのは苦労したわ。お礼の一つでも言ってもいいんじゃなくて」
「…ああ、すまない。ありがとう」
クリスの指摘に反射的に答えるが、心が籠っていないのが丸わかりだったからかクリスの視線が険しくなる。だがすぐに溜め息を吐き、ジト目で甲を見据えた。
「はぁ…やっぱり貴方、生きる気がなかったのね」
「え…」
「誤魔化そうとしても無駄よ。貴方の顔にハッキリと、『生き残りたくなかった』って書いてあるもの。それに、貴方のうわ言を聞いて原因も察しがついたわ…空さん、亡くなったんでしょう?」
「…っ!?」
図星と突かれ、途端に顔が青ざめる。同時に、脳裏に空が生きながらに溶けて行くあの地獄のような光景がフラッシュバックする。
『こう…たす、け…』
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!」
助けを求める空の姿を幻視し、甲は泣き叫びながらその場に蹲った。クリスの目の前である事も忘れ、みっともなく嗚咽をあげた。
「…ごめんなさい。無神経だったわね、貴方の気も知らずに」
クリスは目の前で泣き叫ぶ甲を見て、申し訳なさそうに謝罪する。そして、何を思ったのか甲に寄り添って膝を突き、背中に手を回して甲を抱き締めた。
「悲しい時は、人肌が一番落ち着くらしいわ。暫く胸を貸すから、思う存分泣きなさい」
「うぁ、あぁ、うぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!」
最早甲の涙は止まらず、クリスに縋りつきながら鬱屈した感情を吐き出すかのようにただひたすら、甲は泣き続けた。
「…すまん、みっともない所を見せちまって」
存分に泣いて少しは気が晴れた様子で、甲は俯きながらクリスに話しかける。クリスの胸元は甲が縋りつきながら泣いた所為でぐしゃぐしゃに濡れており、淡い色の下着が透けて見えてしまっている。クリスはそれに気付いていないのかはたまた気にしていないのか、腕を組んだ姿勢で笑みを浮かべた。
「別にいいわよ。それに、いい脅迫材料が出来たしね。女の子に縋りついて泣いた、なんて知られたら情けなくて涙が出そうですものね」
「…おいおい、性格悪いな」
クリスの悪態に甲はそう愚痴るが、これが彼女なりの気遣いだという事は甲でも察しがついた。クリスはわざと茶化すような態度を取る事で、甲の気を紛らわせようとしてくれているのだ…その証拠に、彼女の瞳にはこちらを気遣う色が見え隠れしている。どうやら、先ほど甲に辛い記憶を思い出させてしまった事を未だに気に病んでいるらしい。嗜虐的な性質があれど、本気で絶望している人間を見て喜ぶ程彼女は壊れてはいないのだから当然といえば当然なのだが。
「とにかく、折角私が骨を折って助けたんだから自殺なんて真似は止めて頂戴。悲嘆に暮れる気持ちは分かるけど、それで命を断とうなんてそれこそあの日死んだ人達に対する冒涜よ。死んだ人を想うなら、生きてどうにかしなさい」
「…俺は…」
クリスの本気の叱咤激励にも、甲の心は未だ動かなかった。甲の心には今もあの時の絶望が巣食い、隙あらば破滅へ向かわせようとゆっくりと手を伸ばしている…今の甲はそれに抵抗する気力もなく、ふとした切っ掛けで命を断ちかねない状態だった。
甲の表情を見て、そんな甲の心理状態を察したのだろう。途端にクリスの表情が険しくなり、素早く甲に駆け寄ると甲の身体を強引に持ち上げ、ベットに放り投げた。
「な、何を…むぅぅ…っ!」
甲が抗議する間もなく、甲の身体にのしかかったクリスは有無を言わさず甲の唇を奪い、舌を刺し入れて来た。甲は抵抗しようとするものの、口内を蹂躙される快楽で力が入らず、更にクリスは少女とは思えない力で甲を抑えつけており、甲はしばしクリスにされるがまま唇を貪られた。
「ぷはっ…ふふ、ご馳走様」
「お、お前、なんで…」
「さっきも言ったじゃない、悲しんでいる時は人肌が効果的だって。貴方がまだうじうじ悩んでるようだからこっちを責めてあげたんだけど、どうかしら。これでもファーストキスだったのよ、初めてを捧げた分くらいは立ち直って欲しいのだけれど」
暫くして甲を解放したクリスは、ぺろりと唇を舐めながらそう宣った。反論しようとする甲だが、唇を舐めるその仕草が異様な程艶っぽく、思わずごくりと唾を飲みこんでしまった。その様子を見てクリスが効果ありと判断したのか、口元を歪ませ笑みを浮かべた。
「どうやら、こっちで責めて正解みたいね。とはいえ、まだまだ生きるつもりはなさそうだし…やっぱり、身体で分かって貰うしかないようね」
クリスはそう呟くと何の躊躇いもなく自分の服に手をかけ、するすると脱ぎ始めた。そしてあっという間に一糸纏わぬ姿になり、白磁の肌が暗い病室に浮かび上がりその裸体を見た甲の下半身に一気に血が集まった。
「く、クリス…何、を…」
「何って、男と二人っきりで女が服を脱いだのよ? これからする事なんて、一つしかないじゃない」
戸惑う甲を意にも介さず、クリスは器用に甲の服を脱がせ、瞬く間に全裸にしてみせた。服を剥ぎ取られた甲が寒いと思う間もなく、クリスが全身で甲に密着しクリスの柔らかな身体が甲の身体を包み込んだ。
「私はね、このまま貴方を死なせるつもりは毛頭ないの。今までは機会が中々なかったから何もしなかったけれど、貴方を一目見た瞬間から気になっていて、空さんの事がなければ交際を申し出ていた所よ。最初は貴方と空さんが仲睦まじくしているのを見て半ば諦めていたけど、時が経つにつれてどんどん気持ちが抑えられなくなって…正直、今になって後悔したわ。もう、貴方の中で空さんは永遠のものになってしまった…生者はね、死者には勝てないのよ。だって、生きている限り人間は劣化するけれど、死者は死んだその時のまま…記憶の中で、永劫に生き続ける。貴方にとっては侮辱以外の何物でもないのでしょうけど、私…空さんが羨ましいの。貴方の中に消えない傷を作って、永遠の存在になった彼女が…だから、これは嫉妬に狂った哀れな女の意趣返し。私に構う事はないから、喋るオナホールだとでも思って好きに使いなさい。私を使って自慰をするだけなのだから、浮気にはならないでしょう?」
クリスは挑発的な笑みを浮かべ、甲にそう告げた。空が羨ましい、と話す彼女を、甲は責める気にはなれなかった…彼女は本気で甲の身を案じ、甲を立ち直らせる為だけにその身を差し出そうとしている。その献身には狂気じみたものも感じるが、それでも甲の為にその身を犠牲にしようとしている事に変わりはない。
「クリス、俺は…」
「抱かない、という選択肢はないわ。もし私を抱かないなら、私は貴方の目の前で首を切って死ぬわ。幾ら貴方でも、目の前でもう一度親しい人間が死ぬのを見たくはないでしょう?」
ハッタリ、と断じる事は出来なかった。クリスの眼は、本気だ…本気で、甲が拒めばその場で命を断つ気でいる…クリスの眼は爛々と輝き、とても正気の者の眼とは思えない…恐らく、此処で甲が彼女を拒めばこの部屋で一人の少女の屍が転がる結果になるだろう。
「分かった…すまない、クリス」
「分かればいいのよ。ほら、今の私はオナホールなんだから愛撫なんて不要よ。さっさと入れなさい」
クリスはそう言うなり甲のペニスを握り、自分の秘所に宛がった。未だぴたりと閉じたままの秘所は明らかに処女のもので、経験があるようには見えない。だというのに、クリスは愛撫もせずそのまま甲のペニスを挿入しようとしている。
「おい、ま…」
「待たないわ。私が、待ちきれないもの」
---だが、クリスはそのまま体重をかけ、無理くりに甲のペニスを自身の秘所に挿入した。
「…っ!!! いた、い…あぁ、これが貴方のくれる痛みなのね…っ! 痛い、、痛いわ…身体が、裂けてしまいそうよ…!」
「うぉ、おぉ…っ!」
処女の濡れていない秘所に挿入したのだ。結合部からは鮮血が飛び散り、見るも痛々しい…だが、クリスは激痛を感じつつも顔を恍惚に歪めており、秘所を割り開かれた痛みを歓喜を以て受け入れている。
「折角貴方に処女を奪って貰うのだもの。最初から快楽を感じるのもいいけれど、これだけの痛みなら一生忘れる事はないわ…同時に、貴方に私が無残に処女を散らした姿を焼き付ける事も出来た…我ながら、最高の処女喪失だったわ」
「…っ! 正気か、クリス…こん、な…」
「正気? 正気なワケないじゃない…よく言うでしょ、『恋は狂気』だって。女の情って怖いのよ? 貴方は私の甘言に乗って、こんなタチの悪い女に捕まった…そう思って諦めた方が得策よ」
クリスは痛みに耐えつつも、凄絶な笑みを浮かべて甲に語り掛けた。その笑みには女の暗い情念が煮詰まっているようで、甲の背筋に思わず悪感が奔った…だがそれもすぐにクリスのきつい膣の締め付けによる快楽に流され、今すぐにでも腰を動かしたい衝動に駆られてしまう。
「ふふ、動きたいのね。いいわよ、好きに動きなさい…思う存分、私の身体を貪るといいわ」
そんな甲の内心を見抜いたのか、クリスは甲のペニスを秘所に挿入したまま体勢を入れ替え、するりと甲の身体の下に入り込んだ。体勢を入れ替えた事で甲のペニスが刺激され、びくんと甲の身体が快感に震えた。
「ほら、何やってるのよ。早くやりなさい…それとも、もしかして童貞だったのかしら? 空さんも、こんないい男を放っておくなんて酷いのね。だったらほら、空さんで出来なかった事をやれるチャンスじゃない。オナホールに、遠慮なんて必要ないでしょう?」
「…っ!」
空を詰られた事で甲は衝動的にクリスの腰を掴み、全力で腰を叩きつけた。ぱぁん、という鈍い音が響き、結合部から再び破瓜の証が弾け飛ぶ。いきなりの突き上げにクリスは痛みに呻き、甲はその表情を見て暗い情動を覚え衝動のまま抽挿を開始した。
「お、お、おぉぉ…っ!」
「…っ、あぅ…くぅ…!」
相手の事を考えない、強引なピストン運動。甲は暗い情動に突き動かされるまま、クリスの身体を抑えつけ、自身のペニスで痛々しく割り開かれた秘所を抉り続けている。腰を突き上げる度にクリスの口から苦痛の呻きが漏れるが、徐々に秘所が愛液で潤いクリスの口から洩れる声に快楽の嬌声が混じり始める。
「…っ、ふ、ふふ…いい、いいわ…もっと、もっと犯しなさい! 空さんを馬鹿にした私が憎いでしょう!? そんな女なんか、オナホール扱いで充分でしょう? 首を絞めながら犯すと、男は気持ちいいらしいわよ? 折角目の前に何でも出来る玩具があるんだから、やってみればいいじゃない!」
クリスは嬌声と共に狂気すら感じる声で、甲を煽り続ける。甲はそんなクリスの声を無視し、ひたすらクリスの身体を犯し続ける。肉を打ち付ける音が病室に響き、徐々に射精欲が我慢出来なくなっていく。
「ああ、出そうなのね! いいわ、私の中に出しなさい! 無抵抗の女を抑えつけて、思う存分種付けするといいわ!」
「…っ! う、お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…っ!」
クリスの言葉に最後の枷が外れ、クリスを逃がさないように全身でベットに抑えつけると腰を思い切り叩き付け、最奥に亀頭を突き付けた状態で肉棒の栓を解放した。
「あぁっ、出てるわ! 貴方のザーメン、私の中に一杯出てるわ…!」
「お、おぉぉぉ…!」
びゅるるるるるるるる!と堰を切ったように溢れ出した精液が瞬く間にクリスの膣内を埋め尽くし、結合部から収まりきらなかった白濁液が漏れ出ている…肉棒が脈動する度、どくりどくりと次から次へと新たな精液がクリスの胎内に注ぎ込まれる。
「あぁ、まだ出てるわ…もう、精液でお腹一杯になりそう…」
「う、おぉ…!」
甲が腰をぶるぶると震わせる度、更なる精液がクリスの胎内に注ぎ込まれ、胎の奥に精を受けたクリスは体をびくびくと痙攣させる。終わりがないかと思われた射精は徐々に収束していき、やがて全ての精を出し切った甲は脱力してクリスの身体に倒れ込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「…ふふ、落ち着いたかしら…私の身体を差し出したのだから、立ち直って貰わないと困るのだけれど」
クリスは好き勝手に自分を犯した男を詰るでもなく、純粋に甲の身を案じる言葉をかけた。行為の最中、わざと甲を挑発するような事を言ったのも甲に自分を遠慮なく抱かせる事で鬱憤を吐き出させるのが狙いだったのだろう…事実、甲は欲望の全てをクリスにぶつけた結果、さっきまで燻っていた破滅願望が遠のいていくのを感じていた。正確に言えば、クリスとの間に出来た縁に引っ張り上げられた、といった感想が正しいのだろう。
クリスは生きる事に絶望している甲に対し、自分を乱暴に抱かせる事でクリスに対する『負い目』を作り、ある程度甲が自分に逆らい難い状況を作り出す事で強引に甲の意識を強引に生者の世界に引っ張り上げたのだ。幾ら生きる希望を失っている甲でも、目の前で自分の為に処女を捧げてくれた少女を放って置ける程、生来の善性を捨ててはいなかった。クリスは甲の奥底の善性に訴えかける事で、見事に甲に死を思い留まらせたのだ。もう自分は、当分クリスに頭を上げられる事はないだろう。
「どうやら、その様子だと大丈夫そうね。また私の身体が必要なら言いなさい、いつだって抱かせてあげるわ…他にも必要な事があるなら、なんだってやってあげる…その代わり、貴方もちゃんと生きる事に前向きになる事。いいわね」
「…ああ、クリスにこんな事までさせちまったんだ…その責任くらい、取らせてくれ」
甲の返事を聞いて満足したのか、クリスは笑みを浮かべて甲と唇を重ねた。甲もクリスのキスに応え、互いに舌を絡ませていく…それからすぐに、病室からは肉を打ち付ける音が響き、その音は朝まで収まる事はなかった…
この話はまず大前提として『クリスと学園生時代に交流があり、尚且つクリスは予言の記憶を持っていない』状態でクリスが灰色のクリスマスで死ななかった場合のイフ話となります。前回投稿した真ちゃんルートとは少し違った世界で、真ちゃんルートの場合まず真ちゃんと再開して手を出してからクリスと合流する事になるので、この話からはクリス単独ルートかクリス&ノイルートへの分岐となります。真ちゃんルートの話については後でR18ではない別の話として少しだけ書こうかと思います。連載は続けられる気がしないので、恐らく書きたい話だけを抽出して書く事になるかと。
原作の『戦場の二人』ではレインが空を演じて甲に抱かれる、という慰め方をしますが、瓦礫の山で空を演じていないクリスがそんな事するワケがないので、叱咤しつつ自分を抱かせて責任を取らせる形で強引に生きる気力を取り戻させる、といった流れにしました。その為に憎まれ役を買って出て、濡れていない状態で挿入して敢えて激痛に苦しむ姿を甲に見せつけるなど、自分の描くクリスらしいやり方となりました。バルドスカイではクリスが一番好きで、自分の書くクリスはどこかしら病んでるので、今後またクリスを書く事があってもこの路線は変わりません。DiveXが出るまでは真ちゃんが一番だったんですが、クリスの声を聞いた瞬間順位が変わりました。原作で甲と結ばれてないのも、創作意欲を掻き立てたのかもしれません。