「本当にこれでいいのか?」
「うん、おにいさんのDNAをちょうだい。そうすれば契約完了だよ」
霧雨魔法店は周りを木々が囲む森の中にあり、建物の前は少し拓けた土地になっている。
その真ん中で俺とイリアは契約のため、儀式の準備を進めていた。
これは有理沙も知らなかったらしいが魔道具というのは魔道精霊という精霊の事らしく契約することで魔道書よりも遥かに優秀な魔法記録媒体になり契約者と行動を共にする相棒のような存在らしい。
だが有理沙の言う通り伝説に近い存在で魔道精霊と契約した者は数百年に一人いるかと言うほどらしい。
魔道精霊の住処は本来この世界とは違う次元に存在するらしく、ごくたまにこちらの世界に迷い込むことがあるらしい。
別次元とか信じられないのが実情だけど、イリアの存在がそれを証明しているから信じないわけにもいかない。
魔道精霊は迷い込んでも必ず契約するわけではなく、人知れず死んでしまうこともあるらしい。
イリアも長い間独りぼっちだったで、おれと会わなければ人知れず終わりを告げる運命だったのかも知れない。
魔道精霊との契約は簡単で魔道精霊の主となるもののDNAを魔道精霊が取り込めばそれで終わる。
イリアの故郷はここよりもファンタジーで人を含め様々な種族が暮らし、人間は子供のうちに魔道精霊と契約し一生を共にするという場所らしい。
魔道精霊は男子なら女子と女子なら男子としか契約しないので契約の儀式では大体キスと決まっているらしい。
「ほらおにいさん、早く済ませてよ。その、こうしてると恥ずかしいから」
「ああ、ごめん。じゃあいいな?」
「うん」
顔を赤らめるイリアが目を閉じて唇を差し出してくる。
イリアは緊張からか少し呼吸が乱れている。
それがまたイリアの魅力を俺に伝えてくる。
唇が触れるとイリアの舌が俺の唇を割って入ってくる。
答えるように舌を絡ませ、イリアという存在を堪能していく。
イリアの口内を舌でなぞりあげていくとイリアは身体をビクつかせながら嬌声をあげ始める。
「んっ、おにいさん...ひす...はげひいよぉ...もう...じゅうぶんらよぉ...」
少し苦しそうにイリアは俺を優しく押しのける。
絡まった舌が糸を引いて離れイリアがうっとりとした表情をみせる。
そんなイリアの身体が発行し始め周りから魔力が集まり始めた。
「な、なんだ!?」
竜巻のように集まっていく光はイリアの姿が見えなくなるほど大きくなり、地面から離れ、膨大な魔力の渦になっていく。
魔力の渦がイリアを飲み込みイリアの手元に集まっていった。
「な、なんなんだぜ!?大丈夫か?」
「わからない、有理沙は建物の中に」
「わ、わかったぜ」
有理沙が家に入る頃には周りの木々がぎしぎしと音を立て始め、イリアが白く輝いていた。
しばらくして魔力の渦は収まりイリアを包み込んでいた光りは手元に集まった。
ゆっくりと降りてきたイリアは白く輝く石を握りしめていた。
「大丈夫かイリア」
「大丈夫だよ。おにいさん、これで契約完了。これがおにいさんと私が契約した証。そして魔道具」
「これが、魔道具。綺麗だ」
「これからおにいさんは私のマスター。なんて呼べばいい?マスター?ご主人様?」
「今まで通りでいいよ」
「はーい!」
いつも、といっても出会って二日だが今までのイリアに戻った。
イリアが魔力を集めて作り上げたのは魔力の塊で親指サイズの綺麗な石だ。
「なんだ、終わったのか?」
「ああ、これが契約の証。魔道具だ。ネックレスと言うか首にかけられるようにできないか?」
「それならお安い御用だぜ。それにしてもこれが魔道具か。思ってたより小さくて綺麗だな」
魔道具を持って有理沙が建物に入っていく。
俺と魔道具を適合させるために俺の魔力もごっそり持っていかれたので正直疲れた。
イリアだって同じように疲れただろうから外の椅子までイリアを引っ張っていく。
「疲れたろ?ほら、座れ」
「うん、ありがと。でも膝の上がいい」
「仕方ないやつだな」
腰掛けた俺の上にイリアが座る。
確かこの椅子はロッキングチェアと言うはずで前後に揺らせばゆりかごのように揺れる。
日は天高く昇り照りつけているのでとても暑いが、椅子があるのは日陰になっている木の下だ。
「ありがとな俺と契約してくれて」
「うん、私なんかで、、いいなら、、」
しばらく風を浴びて自然を感じていると俺の胸に頭を預けていたイリアは寝息を立て始めた。
銀色に輝く髪をすいてやるとくすぐったそうに頭を押し付けてくる。
平和だな。
それにしてもあれほどの魔力、やっぱり疲れてたのかな、そういや俺も眠く、なって、、。
「二人とも、出来上がったぜ、、、って二人ともお眠りか」
俺たち二人が目を覚ましたのは日が彼方の空に沈み始めあたりが夕陽に包まれる頃であった。
冷たい風が吹き始め肌寒くなってきて目を覚ましたのだ。
隣を見るとイリアは変わらず寝息を立てていた。
試しにつついてみるが多少反応は見せてもやはり寝ている。
「よく寝てるな。さて、もう出来上がったかな」
そっとイリアを持ち上げて有理沙を呼びに行く。
かすかながら虫の鳴き声も聞こえている。
一つ大きな風が駆け抜けていくと首筋から全身に寒気が広がっていって身震いした。
いつのまにか腕の中で寝ていたイリアはおれの首に手を回していた。
相変わらず寝息を立てているけど。
「世話になったな、泊めてもらっちゃって」
「気にすることないんだぜ、何かあったらいつでもくるんだぜ、イリアちゃんも元気にするんだぜ」
「はーい」
「じゃあ、おれたちは行くな」
イリアがぶんぶん後ろに手を振りながら来た道を戻る。
結局イリアが目を覚ましたのがあたりが暗くなってからだったので有理沙の家兼魔法店に泊まることになったのだ。
ちなみに料理番は案の定というべきかおれだった。
「おにいさん、この後はどこ行くの?」
「このまま道なりに東へ向かうんだよ、ルーミアって人喰い妖怪を探すんだ」
「人喰い妖怪?危険なの?」
「らしいな、でもやんなきゃいけないからな」
「頑張ろうね」