※この作品はR-18です。

東方楽園譚   作:筑波翠

3 / 16
第3話 藤原妹紅 ※

 

「それじゃ、行ってくる。しばらく帰らないだろうから後は頼んだよ妹紅、詠くん」

「はい、お父様」

 

 

あれから数日。

おれは一応養生のためしばらく休むことになった。

妹紅や不比等とはかなり仲良くなり、不比等からは家族の1人の様に扱われていた。

妹紅とは話せる様になったがまだまだギクシャクしている。

理由としてはおれが不甲斐ないからなのと妹紅が極度の恥ずかしがり屋であることに他ならない。

 

 

「そうだ詠くん、ちょっとちょっと」

「ん?」

 

 

妹紅に聞かれたくないのか耳を貸せとジェスチャーしながら手招きする。

妹紅は不満そうな顔をするが不比等は見ないふりをする。

妹紅のことを気にしながらも不比等に耳を貸す。

こういうところはあっても何だかんだいいやつなんだ。

 

 

「私がいないんだ、妹紅と近づくチャンスだよ?君が妹紅を好きなのはよ〜くわかっている。」

 

 

ー前言撤回、やっぱこいつ嫌なやつだ、

 

 

「藤原の娘だ、時が来たら縁談などいくらでもくるだろう。でも私は妹紅に幸せになって欲しいんだ。自分が選んだ相手と幸せになって欲しいんだ!」

 

 

胸を張りながら言う。

これは前言撤回を撤回だな、なんだかんだでいいやつだ。

こしょこしょ話なのでもちろん妹紅には聞こえていない。

 

 

「だから妹紅は決まった相手はいない。今なら君が何をやっても私の目には映らない。妹紅を射止めなさい。あ、そろそろ行かねば、では行ってくる!」

 

 

ーあ〜、いいやつなのか嫌なやつなのかわからなくなってきた

 

 

結局おれが話す暇を与えることなく言うだけ言って去っていった。

ここ数日でわかったことは不比等がおれと妹紅がつながることを本気で許していることだ。

 

 

「行っちゃったね。」

「そうですね。詠さま。」

 

 

最近妹紅から詠さまと呼ばれるようになった。

理由はわからないがなんかくすぐったいので正直呼び捨てにしてほしいとこだった。

 

 

ーそれにしても不比等のやつ。心をつかめって、どうすればいいんだよ

 

 

結局その日は妹紅との関係が進展することなく1日が終わった。

と、おもっていた。

 

 

「すーすー」

 

 

ー寝息が聞こえる。なんか布団がいつもより暖かい?

 

 

夜中にたまたま目を覚ましたおれは寝息の様な音に気づいた。

視界が定まらず、まだ周りが見えない。

視界が定まるまで少し待つ。

襖が少し空いていたのだろうかなどと思考を巡らせているとだんだん目が慣れてきて見えるようになった。

 

 

「え、妹紅さん!?」

「んぁ、あ、詠ぁ、おはよぉ」

 

 

視界が定まり、周囲を見渡した。

妙にあったかいと思った方向には妹紅がいた。

心臓が止まるかとおもった。

今も止まりそう。

 

 

「あ、あの妹紅さん?何してるんですか?」

「んん?添い寝ぇ、じゃあ、おやすみ、詠ぁ」

「はい、おやすみなさい」

 

 

「...じゃなくて!妹紅さん起きてください!」

「んん、おきる、起きるからぁ」

 

 

ーあ、この子寝起き相当悪いのね

 

 

いやいや、何のんきなこと考えたんだ。

それよりもなんでこんなことになっているかだ。

 

 

「あの、妹紅さん?なんでおれの布団に入ってるんですか?」

「んん、眠いよぉ〜、えーとねぇ、最初はぁ、お父様もいないし夜這いしに来たのぉ、そしたら詠が寝てるからぁ、ちょっと添い寝しただけだよぉ、おやすみぃ」

「はい、おやすみなさ〜い...じゃなk」

「詠ぁ、好きだよぉ?」

 

 

ーはい?聞き間違い?てかこの人寝ぼけてるし全部間違いだよね?普段は詠さまだったよね?

 

 

とりあえず妹紅を起こしにかかる。

 

 

「妹紅さん!ほんとに起きてください。起きないとおやつなしですよ?」

 

 

妹紅がぴくっと反応したかと思うと目を覚ます。

実はここ数日、妹紅や不比等におれのいた世界の食べ物を聞かれて知っていたスイーツをいくつかご馳走していたのである。

妹紅は甘いものが好きらしくかなり気に入ってくれた。

その結果おやつなしって言うと大体言うことを聞いてくれる。

 

 

「詠さま。それだけはお許しを。ってあれ。なんで詠さまが私のお布団に?」

「え?ここおれの布団ですよ?」

「え、あれ、なんで私ここにいるの!?え?え?」

 

 

みるみる顔を赤くしながら妹紅は落ち着きをなくしていく。

これはこれで可愛いので、更にからかってみる。

 

 

「妹紅は夜這いに来たんでしたよね?」

「ふぇ!?夜這い!!??」

「おれのこと好きって言ってたみたいですけど」

「そ、そそそそそんなこと言ってない...です...」

 

 

ー寝ぼけてここに来たのか

 

ちょっと悲しい顔をしながら落ち込んでみる。

それを見た妹紅は少し焦り始めた。

それにしても普段恥ずかしがり屋な妹紅がここまで強く言ってくるのは珍しい。

寝起きだからだろうか。

だけどやっぱり声がフェードアウトしていく。

可哀想なのでいじるのはこの辺に...

 

 

「でも!...でも...私は...」

「妹紅さん?」

「好き...です...。」

「え...」

「だから...詠さまのこと...好きです。一目惚れ...だったんです。詠さまは妹紅のことどう思ってますか?」

「どうって...」

 

 

唐突な上に予想するわけもないことを言われて答えが口から出てこない。

妹紅は耳まで真っ赤に染めて今にも泣きそうな表情でこちらを見つめてくる。

布団を握っているのは答えが怖いからだろう。

しばらく口を開けられずにいた。

妹紅の頬に涙が流れた。

 

 

「そうですよね。私なんて男の人に慣れてなくていつも口ごもって、素直に慣れなくて、詠さまも嫌ですよね...」

「そんなわけない!」

「え」

 

 

「そんなわけない。」

「詠...さま?」

「妹紅は、妹紅は、とても優しくて、可愛くて、綺麗で、しっかりしていて、」

 

 

止まることはなく、するすると口にでた。

 

 

「おれが作ったスイーツを美味しいって言ってくれて、いつも笑顔をくれて、」

 

 

言いたいことはたくさんあった。

妹紅と会ったのは数日前だ。

でもそれで十分だった、十分すぎた。

 

 

「おれは、」

 

 

妹紅の涙は止まっていた。

突然のことに驚きながらもおれのことを見つめ、おれの言葉を聞いてくれていた。

本当に綺麗だった。

 

 

「妹紅が好きだ」

 

 

最後まで言った。

この文章といい、このセリフといい、生涯黒歴史となるだろう。

でも今は関係ない。

最後まで聞いた妹紅の目から再び涙が溢れた。

 

 

「う、詠さまぁ...」

「ごめんな妹紅。おれもびっくりして口が開かなかったんだ、でも妹紅が好きなのは本当だ。」

「私も、私も詠さまが大好きです。」

 

 

とびきりの笑顔。

今まで見せたことのない笑顔。

それが向けられる相手はどこのだれでもなく俺。

本当に可愛いくて本当に綺麗な笑顔だった。

今まで妹紅に対して敬語だったおれだが自然と抜けていた

 

 

「詠さま、キス...して欲しいです。」

「ああ、いくらでもしてやる。でもその前に詠さまは無しだ。呼べたらしてやる。敬語も無しだ。」

「詠...くん。キス...しよ?」

 

 

心臓はありえないくらい早く鼓動を刻んでいる。

おれはそんな心臓を無視して妹紅の唇に自分のを重ねる。

ふにふにで柔らかくていい匂いがして、なんというか気持ちよかった。

最初はおれが唇を押しつけるようにしていたがやがて妹紅の方からも押すようになった。

 

 

「……んっ、ふぁ……んん」

 

 

妹紅の口から艶かしい嬌声が漏れる。

唇を重ねているだけなのにとても幸せで落ち着いた。

長い間キスを堪能した。

唇を離し、頬を上気させた妹紅は更にキスを求めてきた。

 

 

「うたくん...、もっとキスしたい。うたくんを感じたいよぉ」

 

 

再び唇を重ねる。

今度は少し激しいキス。

お互い唇を貪るように相手を求めた。

 

 

「...ふぁ、......これ、いいよぉ...うたくんをかんじられて...しあわせだよぉ...んん...」

 

 

この後妹紅と体を重ね、お互いを求め合った。

朝になる頃には疲れ果てたのか幸せそうな顔で眠りについた。

おれも二度寝して、起きたのは昼を回ってからだった。

 

 

ーそれにしても詠くんかぁ、悪くないな。さて、不比等になんて言おうか...

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。